3万人の腐女子、腐男子が選んだ 2011年度BLアワード! 2011年1月~2012年1月まで今年度最強のBLを総選挙!!

2011年度ベスト小冊子はこれだ!

魅力的なお話を読んだ時程、ここで終わるなんて!とかもっと読みたい!!とか思うモノだが、最近の出版社では本編でついたエンドマークのその後や裏側事情を詳らかにするという小冊子をネタに、乙女の萌えを狙い撃ちする悪魔な企画が次々と生まれているという。
ちるちる様に諜報活動を拝命されているてんてんとしては活動の一環として、今年度もフェア特典、全員サービス、全員プレゼントの実態を調査すべく、今年も様々な小冊子類を入手致した。

榎田尤利の2冊に決定!まず交渉人シリーズから

今期入社したサンプル品は3桁に上ったが作家の遊び心の効いた小冊子も数多く、其々が本誌の魅力を存分に惹きたてられていた。出版社、書店関係者も乙女達の嗜好調査は万全の様だ。
中でもてんてんが注目した小冊子は今年デビュー10年目を迎える榎田尤利氏の手掛けた小冊子二種である。榎田氏の卓越した文章力とエンターティナーとして腕前は周知の事だが、小冊子という世界はオマケで有る分、本誌以上の萌えが希求されるモノであるが、榎田氏は遊び心に溢れた世界を展開し、物語の世界をより輝かせる事に成功している。
うち一冊は榎田氏のデビュー10周年を記念した大洋図書の全サ本『交渉人SERIES SPECIAL 榎田尤利作家生活10周年記念書き下ろし小冊子』である。てんてんは迷う事なく今期一番の花丸印をつけた。
交渉人シリーズは今期シリーズ完結巻である『交渉人は愛される』が発刊され、ちるちる様のレビューでも高評価を得ているシリーズだ。この全サ本は『交渉人は嵌められる』『交渉人は諦めない』『スウィーパーはときどき笑う』の3冊を全購入して申込むとサービスされた小冊子であった。
全100頁の本品の内容はというと本編後の小説2本、キャラクタープロフィール、周防組組員インタビューに加えて、イラストを担当された奈良千春氏のインタビューとご本人によるカバーイラスト解説となる。見出しだけでもその豪華さがわかろうと言うものだ。
小説は榎田氏が自身のツイッターで書かれたで芽吹視点の話を改稿したモノと、ソレと同時間軸での兵藤視点の話であるが、コレが実に面白い。
『HAPPY NEW YEAR』
こちらは芽吹視点で展開する。
年の瀬も迫った大晦日。年末から風邪気味だった芽吹は外出もできずにた。兵藤に買い物を頼もうかとも思うが、師走に入ってからは顔を出す回数も減った男に頼むのも気が引ける。
考えた末「風邪なう。寝てるから来るな」と打ったメールだが、兵藤に「あっために行きたいところですが忙しくて無理そうです。早く治すように」との返されて1人で赤くなる。身悶える芽吹を妄想した乙女も多い事だろう。早々にベットに入った芽吹だが、起きてみるとふわりと鰹出汁の香りがして…
『HAPPY NEW YEAR & I LOVE YOU』
こちらは『HAPPY NEW YEAR』と対となる兵藤視点で一作である。
時は師も走る月の最終日。兵藤は周防組の若頭という幹部職にありながら、大晦日まで管轄の風俗店周りを決行、文字通り走りまわっていた。そんな彼を称して「周防組のクロマグロ」という人もいる程だ。兵藤がワーカーホリックな事は毎度の事だが、マグロは泳ぐのをやめると呼吸ができなくなる事からきているらしい。その上「クロマグロ」は極上品だという舎弟の高尚なのか、ベタなのか判明不明な会話もほのぼのムードで、兵藤が下からも慕われる様子がさり気なくうかがえる。
仕事に追われる兵藤の楽しみは本日の予定を完遂すれば恋人である芽吹に会える事だったが、当の本人から「風邪なう」というメールを受けてしまう。芽吹の元に駆けつける事はできなくもない兵藤だが、芽吹の言動が目に見える兵藤はそのまま巡回を続ける事にする。
しかし、巡回先では虎のコスプレをしたアヤカに話を聞いたり、新しく入った女の子に迫られたり、さゆりさんから雑煮の作り方のメールを受けたりと大忙しな上、芽吹の事務所に向かう途中で見た夢は、大嫌いなしいたけを芽吹がセッセさと育てる夢で踏んだり蹴ったりな姿は笑いを誘う。本誌ではこういったコメディ展開は芽吹の担当である事も、本品を手した乙女達の満足度アップに貢献している事と思われる。
そんな兵藤が芽吹の事務所に辿り着いけたには、あたりもすっかり明るくなった頃であるが、そこでもさゆりの指示により雑煮を作るという難関が待ち受けているのである。新年早々お疲れモードな兵藤だったが、芽吹もなんとか復調したらしく、二人で穏やかな新年を迎えるのだった…
芽吹視点ではココまでだったが、兵藤視点で有る以上、大人しく雑煮を食べるだけなんてあまりにも彼らしくない。この後に芽吹は兵藤のマンションに連れられて行って美味しく頂かれてしまってこそ、正しい交渉人シリーズなのだ!!と思うのはてんてんだけか?!
本編は芽吹視点で有る為に、飄々としていて俺様な兵頭にかなり振り回されているという認識で展開するが、兵藤視点で見ると彼なりのポリシーと思いが見えてきて楽しい。
大晦日という特別な日を舞台にしているとは言え、本編の様に事件の起きない日にそれぞれ様子を兵藤視点でも描く事で、本編では見えなかった二人がお互いに向ける思いがより濃く描かれている。芽吹の言動が兵藤の想像通りだったに対して、兵藤の言動は芽吹の想像からちょっとズレていたりするのも萌え心をくすぐり秀逸である。
加えて収録されている主要四キャラの口語調プロフィール紹介、芽吹を姐さん呼びする周防組の組員インタビュー、奈良氏によるイラスト解説類は、雑誌媒体の無いシャイノベルズではまずお目にかかる事ができないだろう。
本品を開く時にはいつでも至福な時が約束されると断言できる逸品である。

マンガ家シリーズドラマCD発売記念の全サ本

もう一冊はリブレ出版のマンガ家シリーズドラマCD発売記念の全サ本『一時帰国は焼き肉を食べよう』である。漫画家シリーズの核である『きみがいなけりゃ息もできない』は榎田氏の代表作でもあり、榎田氏を語る上では外せない作品である。この全サ本はドラマCD『愛なら売るほど』『ごめんなさいと言ってみろ』『吸血鬼には向いてる職業』の内2枚購入して申込むとサービスされた小冊子であった。
『きみがいるなら世界の果てでも』終了後、東海林と渡伊した二木の一時帰国に合わせてマンガ家仲間で焼き肉パーティをする話なのだが、最終話に相応しく夢の全作コラボとなっている。
渡伊した二木の一時帰国に合わせて、マンガ家仲間である椎名リツが会合を計画する。リツと二木の他の出席者は『ゴスちゅる』の黒田瑞祥、『愛売る』の立花キャンディこと藤野泉。それぞれが良くも悪くも個性的なメンバーでの焼き肉パーティが開催された。
まずは黒田編。オタクな愛をワザと置いて参加した黒田だったが、愛は自力で会場に辿り着く。憧れモード全開で嬉々として加わろうとしたところを当然ながら黒田に阻止され、結局お持ち帰りされてしまう。
次は泉編。飴屋が見合いをした事を仕方がないと言って怒らせたらしくイマイチ元気のない泉。リツは泉の悩みに同調す判るが、二木は好きなら怒って当然、難しく考えすぎだと言う。悩む泉だが、迎えの電話をくれた飴屋に素直になろうと思うのだった。
次はリツ編。二木のイタリア生活や仕事の話は花を咲かすリツだが、実は彼も久々野と喧嘩中だった。リツが受けた挿画の作家が久々野のライバルだった事から久々野の傷を抉ってしまったのだ。地っ張りなリツも二木の助けで久々野の家へと向かう。
最後に二木編。残された二木は大人しく迎えを待っていたが、時間になっても東海林が現れない。メールも電話もない状態で20分過ぎた頃、近くで事故があって?!
本編中ではなかなか接触する機会のないキャラ達をそろえ、その上受様のお悩み相談でカプのその後の状況までも伝えるという高等テクニックは誰でもが発揮できるものではないだろう。本作も榎田氏の才が如何なく発揮された上、乙女の萌え心もガッツリ満足させる逸品だった。
来年度も乙女の萌えを追及する豪華な小冊子類が登場する事を切に願う。

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