注目の新人作家

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2012年上旬、ちるちるユーザーの支持をもっとも集めているBL小説『渇仰』。宮緒葵先生の最新作です。2011年のデビューからこれまで小説を3作リリースし、そのうち2作の攻が「犬」。このたびのインタビューでは、先生の犬好きっぷりをたっぷりうかがうことができました。



Q. 宮緒先生の作品に、ちるちるでも多くの高評価が寄せられています。中でも3月にリリースの小説『渇仰』は、読者のアツい支持の勢いが2012年上旬のトップクラス。デビューからこれまでを振り返っての感想や、多くの支持を集める現状へのお気持ち、いかがでしょう?

A:まさか犬をここまで受け入れて頂けるとは思っていなかったので、読者の皆様には感謝の一言です。『渇仰』は本当に沢山のご感想を頂いて、犬好きな方々がこんなに沢山いらっしゃるなんて……! と感動しました。

一人でこそこそ変態犬やらストーカー犬やら下僕犬やらを書いていた頃から、思えば随分遠くまで来たものです。

Q. デビュー小説『堕つればもろとも』は、第1回プラチナ文庫小説大賞の「編集長特別賞」受賞作。こちらがデビューのきっかけだと思うのですが、それまでも作品の投稿などはされていたのでしょうか? デビュー前の活動なども含め、教えてください。

A:趣味で短い話を書いたりはしていましたが、投稿などは一度もしたことがありませんでした。前々から犬が好きで好きでたまらなかったのですが、一般的な萌え属性からは外れるんだろうなと諦めていたんですね。

でも、プラチナ文庫小説大賞の存在を知り、『フランス書院(プランタン出版)さんならもしかしたら受け入れてくれるかもしれない……!』と思い、玉砕覚悟で応募してみたらがっちり受け入れて下さったので驚きました。

Q. 『堕つればもろとも』は日本の平安時代から武士の社会に移るあたりがモチーフとなっているように感じるのですが、歴史はお好きなんでしょうか? それとも数ある先生の持ちネタの中のひとつとして、プラチナ文庫小説大賞に投稿されたという感じでしょうか?

A:歴史は犬を最大限に活かせる設定として好きです。『堕つればもろとも』も、どうせ犬を書くなら身分差が激しい時代の方が楽しい→じゃあ歴史もので→そうだ、平安にしよう! という安直な流れで決めました。『堕つればもろとも』が初めて書いた長編なので、ほかに投稿作と呼べるお話はありません。

Q. 書き上げて投稿する直前や、デビューが決まったときのお気持ちはどんなだったでしょう?

A:投稿する直前は、「いいのかな、犬なのにいいのかな」とひたすら不安で、デビューが決まったときはフランス書院さんの懐の深さにひたすら感動していました。

Q. ペンネームの由来や込めた思いは?

A:『宮緒』は420年ほど前のご先祖様から頂きました。数々の戦から生還して天寿を全うされたそうなので、そのご武運にあやかりたいと思いまして。『葵』は家紋で、どちらもご先祖様繋がりです。

Q. 先生は、作品のプロフィール欄やあとがき、そして今回のインタビューでも表明されている犬好き。デビュー作『堕つればもろとも』と最新作『渇仰』の攻がまさに犬で、ちるちるでもその犬っぷりに多くの読者が胸を高鳴らせています。先生の犬に対する思い、ご披露願えますでしょうか。

A:とにかく、受が好きで好きでたまらなくて、受のためならどんなことでも嬉々としてやってのける攻が大好きなので、全ての攻は犬になればいいと思っています。

ごくまれに犬ではない俺様を書きたい周期がやってくるんですが、ふと気付けば俺様だったはずの攻が受の足元に跪いて縋り付いていて、こんなはずじゃなかったのに……と落ち込みつつも、犬には無限の可能性があるんだなと嬉しくなったりもします。

いつか、俺様攻とか極道攻とかに混じって犬攻(ワンコではなく)というカテゴリが当たり前に存在する世界になれば本当に嬉しいです……!

Q. デビュー後二作目の小説『悪夢のように幸せな』はダークな展開や、受の高校生・一希の保護者的立場である攻・柊慈が美人かつ変態的なところに、私はもっとも読みごたえを感じ、「かなり攻めてる(BLの攻ということでなく)作品だな~」と思いました。ストーリーの着想や、書く前の心境など聞かせていただけますか?

A:デビュー作が犬だったので、次は正反対な攻めにしたいなと考えていたら、いたいけな受を洗脳してほくそ笑む魔女のような攻がぽんっと思い浮かび、柊慈と一希が思い浮かびました。魔女の敵役なら騎士だな、ということで功が生まれ、でも魔女が騎士に勝ってしまう展開が好きなのでああいう結末になりました。

こういう話が嫌いな方は多いだろうし、酷評されても仕方無いなと覚悟してたんですが、予想以上に受け入れて頂けて嬉しかったです。

Q. 『悪夢のように幸せな』だけでなく、先生の作品には、人間の本性というか、恋や愛もいいけれど、もっと根底のところを解き明かしたい、書きたい! というような気持ちが私には見える気がするのですが、先生の創作の原動力、みたいなものはなんでしょう?

A:うまく言えないんですが、愛情はどんなものであれ一種の狂気だと思っているので、温かくて幸せなだけではない一面を表現したいというのが原動力になっているような気がします。

だから私の書くキャラ(特に攻)はいつもどこか箍が外れているのかなあと。後は、客観的に幸せだとは言えなくても、本人たちさえ満足していれば、それはハッピーエンドだよね、と常に思いながら書いています。『悪夢のように幸せな』は特にそうでした。

Q. 最新作『渇仰』では、デビュー作に次いで再び攻が犬。ストーリー序盤から重ねて不幸に襲われる受のサラリーマン・明良の前に、幼馴染の攻・達幸が6年ぶりに現れるという再会展開。はじめのエッチ描写が細かくて、そんなところにも私は達幸の執着ぶりが描かれている気がしました。

A:エッチ描写に感想を頂けるのはすごく嬉しいですよ! 一番力を入れて書いてますので(犬の場合は特に)。

『渇仰』の達幸は犬な攻、というよりは人間の皮を被った犬なので、『あーちゃんにあれもしたいこれもしたいあそこもそこも舐めたいしゃぶりたい入れたい入りたい』という欲望が迸って、始めのエッチは色々大変なことになりました……。でも、内容的には犬兼恋人にしてもらった後の方が色々とハードだと思います。

Q. 『堕つればもろとも』では、男であることを隠された支配者階級の姫・珠玲が、戦で手柄をあげたポッと出の将軍・朔に……というある意味「陵辱」展開、『悪夢のように幸せな』では変態的な攻の柊慈によるプレイ的なエッチと、柊慈の親友であるヤクザ・功の強引な攻……。宮緒先生のエッチシーンへのこだわりなど教えていただけないでしょうか。

A:攻が受にどれほど深く執着しているか、どれほど夢中になっているかを描ききりたい! という一心で、攻が乗り移ったかのように書いています。なので、合意の上よりは、受が好きで好きでたまらない犬、いや攻が勢い余って受を押し倒してしまう無理矢理が好きで、ついつい書いてしまいます。

そういう意味では、『悪夢のように幸せな』の柊慈は私の中ではイレギュラーな攻です。

Q. これまでの先生の作品では、攻がすべて巨根(『渇仰』ではハッキリとは書かれていませんが)ですね。このあたりはいかがでしょう?

A:私のポリシーは『巨根にあらずんば攻にあらず』なので、攻は自動的に巨根になります。

『渇仰』は言われてみるとはっきりとは書いてなかったんですが、勿論巨根ですよ。あんなもの入れられてよく壊れなかったな……と、明良は自分で自分を誉めていると思います。

Q. 『渇仰』のあとがきで「去年以上に犬やスーツや眼鏡や下僕を書いていけるよう頑張ります」とおっしゃっていますが、次なる犬は、犬種でいうとなんでしょう?

A:色々……本当に色々あるのですが、次はドーベルマンか、アフガンハウンドか、ボルゾイがいいかな? と思っています。ゴールデンレトリバーも捨て難い……。

スーツを着て、眼鏡をかけて、敬語を喋る外面のいい変態下僕犬を書きたいです。

Q. 作家という立場を離れて、どんなカップリングやシチュエーションのBLがお好きですか?

A:攻は受を好きで好きでたまらなくて、受が居なければ生きていけないけど、受は攻が嫌いで、攻が居なくても生きていけるという設定が好きです。攻が報われなければ報われないほど良いですね。

Q. 今後、チャレンジしたい作風やストーリー、プライベートで実現させたい目標や野望はありますか?

A:誰からも慕われ尊敬される聖人君子のような攻が、酷い男の受に翻弄され、誑かされ、堕落させられた挙句、受を道連れにしてどん底に落ちるような話を書いてみたいです。

プライベートでは、先日事故に遭った野良猫を保護したんですが、なかなか懐いてくれないので、せめて頭を撫でさせてもらえるようになりたいです……。

Q. お好きな作品や作家さんなどを教えていただけますか。理由や思い入れなどもお願いします。

A:木原敏江先生の『摩利と新吾』が好きです。母の本棚にあったので何も知らずに読んだら衝撃を受けました。私の一番古いBL(というかJune)の記憶です。夢殿先輩が未だに忘れられません。

Q. 最後に、ちるちるユーザーのみなさんにメッセージをお願いします!

A:初めまして、宮緒葵と申します。私の本に興味を抱いて下さり、お読み下さった皆様、レビューを下さった皆様、本当にありがとうございます。ほんの一時でも、現実の憂さを忘れて楽しんで頂ければ嬉しいです。

おかげさまでまた色々な犬を書かせて頂けそうですので、これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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