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腐女子の履歴書vol2.(下)アンソロはこうやって作ってる

2016/06/24 12:01


「腐女子は、なぜ腐女子になったのか?人は生まれながら、腐女子なのか?」
素朴な疑問を不躾にぶつけてみるコーナー
「腐女子の履歴書」、異色のBL編集者の第二回目、完結編です。
自社レーベルの宣伝のはずが、アンソロジー論が興味深いですよ!!

メディアソフト シャルルコミックス編集 Tさん

「バケモノBL」などキャッチーなアンソロジーでキラリと光り輝く出版社メディソフト。4月から新レーベル「シャルルコミックス」を創刊。いま最も熱いBL出版社で編集の仕事に携わっています

 

BLシーンの変遷


・BLを10年以上読んでいて、BLシーンは、変わってきたと思いますか?
ここ最近のコミックに関しての話だけに絞ると、編集者になってから感じるのは、新人の作家さんがとても活躍できるジャンルになっている気がします。逆に、ノベルは全然違うので難しそうだなって気がします。


・ノベルはなかなか新人が出て来れないですよね。

そうなんですよ。だから、阿賀先生がすごいと思っているんです。

・ここ2年ぐらいっていうと一穂ミチ先生とかそのあたりがメジャーになってきていると思うのですが、コミックほど盛り上がっていないんですよね。コミックだと新人からブレイクされた方が、いっぱいいますよね。
そうなんですよ、本当に少なくて。
逆にコミックに関しては、新人作家がどんどん大活躍できるジャンルだから良くも悪くも代謝が良くて活発ですよね。
売り手側も買い手側も活気がある。


・市場が広がっているような感じがしたけど現場的にはどうなのでしょうか?
広がっているんじゃないですかね。特にライト層っていうんですかね、ライトにBLを読むみたいな方が増えてる気がします。

・みんなカミングアウトしちゃって、なんか「ちょっとヲタクだよ」とか「腐女子だよ」とかなんか全然普通になっちゃってますよね……時代の流れを感じてます(苦笑)
そう、びっくりしますけどね!!
周りの目を気にしないとは違うんですけど、自分の好きなものを素直にアピールできるみたいな世代の方が増えています。その辺を含めてライト層の方が多いんじゃないかなっていう気はなんとなくします。


BLはなんでもあり!


・BLは、大ざっぱな言い方で悪いのですが、男と男がくっついていれば何でもアリみたいなすごい懐の広いジャンルだと思っているのですが……
なんでしょうね、好みが多様化しているというか、なんか「BLはこうじゃないとダメ」っていうのが1個じゃなくて、いろんな人が「Aさんはこういうタイプ」「Bさんはこういうタイプ」のようにそれぞれの趣味趣向を楽しめる感じがします。昔は「絶対ハッピーエンド」みたいなのがあったと聞いたこともありますけど、今は「絶対ハッピーじゃないとダメ」、「ちょっとイタイ系が好き」、「暗い系が好き」とか…なんかそれぞれのこだわりが増えているのかな、と思います。

・そういう意味だと、エロが別にあっても無くてもBLは成立すると思っていますか?
私は、すると思っていますね。

・最近、そのエロシーンが無いって作品が増えていて、例えばvol1のMさんにインタビューして彼女はシーンに対して怒っていて、
「こんなぬるいのはBLじゃない!」みたいな「BLってのはもっとお下劣でなんか実用的なものだろ!」みたいなことをおっしゃっておりました。
そういう方も全然いらっしゃるし、そういう考え方も良いと思うんですよ。
私は編集として、そこだけに絞らずに色々なものをやってみた方が、色々なタイプの読者の方に作品を供給できていいな、と思っているだけで。作家さんも近年いろんなタイプの方が出てきているので、まぁチャレンジしてもらえる幅が増えた方がいいかなと思います。


一周回ってレトロな絵柄が流行り


・少し話はズレますが、はらだ先生などの絵柄って正直なんか90年代前半ていうか、一周回ったかなって感じがしているんだけどそんなことはないでしょうか?ちょっとレトロな絵柄なんだけど、青年マンガの大御所だと80年代の上條淳士先生じゃないけど。
確かに、レトロな感じの絵柄の作品は最近結構多いなと思います。
BLに限らず他のジャンルとかでもちょっと懐かしい気がするなって思う作品の作家さんは意外に若くてビックリすることがありますからね。私が前職で担当していた雑誌で描かれていた作家さんにもそういう方がいて、その方は、「昔の作品がすごい好きなんです」って仰ってました。20代の若い作家さんで、でも絵柄は90年代みたいな。

・内容はちゃんと、今風なんですよね。
ちょっとレトロな感じが、逆に新しく感じるのかそれの良さを自分の中で消化して出している方が多いです。絵柄も流行りの絵柄っていっても結構何パターンかあるので…。例えると髪型の流行的な感じですよね。
昔って、「聖子ちゃんカットが流行ったら、みんな聖子ちゃんカット」だった印象なんですが、今はあらゆるファッションタイプにそれぞれ流行りの髪型がある…みたいな。なんかそれとBLの絵柄とか作風も一緒かなと思っています。
いろんなタイプの人の中で流行があるみたいなイメージでしょうか。
だから今は、流行っているものが一つじゃない時代って感じがします。

シャルルコミックスについて~アンソロジー論

・御社のレーベルについて軽く聞かせて頂きます。アンソロジーであれほど斬新なのは、なかなかないと思います。しかも筋肉、心中、怪談、涙とか「これは、絶対に悪手だろう」というテーマで(笑)

よくアンソロジーをずっと出し続けられるなと思うのですが、テーマの基準は、誰が考えているのですか?
考えているのは、編集者全員です。うちにいるBL編集者全員が参加の会議があります。
どこの会社でもあると思いますが、そこで案をみんなで持ち寄って、出てきた中からいいものを採用します。

・ちょっと質問を変えますが、例えば筋肉とか心中怪談って今までにないものじゃないですか?
それは市場予測できないと思うのですが、どうしているのですか?
タイトルや切り口を変えているだけで、実は中身は結構王道だったり、メジャーどころも多いです。
「涙BL」は各作家さんにテーマとなる言葉(「空涙」や「血涙」など)を振り分けていますが、その他は「心中」や「怪談」といったテーマだけ振って、あとは被らないように気をつけて作家と編集が話し合いながら作っていく感じです。

 

普通にやっては勝てない


・そこのテーマを選ぶってすごいなんだろう攻撃的なセレクトだなという感じがしていて
例えば大手のレーベルだと、「できない」セレクトだと思っているのですよ。
素直に言うと、もう老舗の出版社さんがやられているところに後から乗っかったのでは、うちみたいな新設の弱小レーベルは一緒に戦えないので、せめて同じことはするけど切り口だけでも変えないと見てもらえないじゃないですか(切実)

・たとえば、普通に考えると「俺様」とか「年下攻め」とか「鬼畜」とかメジャーなラインに行きますよね?
いや、それだと勝てないんで(笑)

・勝てないのですね(笑)割り切りが凄いです。
それでも若い編集部だから、思い切ってできるんだと思いますよ。

・それもあると思いますねぇ
だから、それこそ本当に恥ずかしながら、ノウハウがまだまだ無いところだから「とりあえずやってみよう」でできたとこが大きいと思います。ノウハウがあれば、ストップがかかったかもしれませんね。
   

依頼が先か?テーマが先か?


・周りの皆さんは穿った見方をしていて、メディアソフトさんのアンソロはたぶん一人二人、キラー作家さんが口説けた段階でテーマが決まっているのかなと思っている人が多い。
あ~、そういう動きをする時もありますね。

・それもありで良いのですか?
テーマによりけりですね。
動かし方がテーマによって違うっていうのは、正直あります。

・どのテーマのアンソロジーも一人二人大御所が、混ざっていたりするじゃないですか。
そこも凄いと思っています。
作家さんが、そのテーマに興味を持ってくださっている、というところが大きいですね。
このテーマだったらこの方にお願いしたい、読者さんならこの方のこのテーマの作品を読みたいだろうなっていうときに、依頼をしたら作家さん側からも興味を持っていただけて…、という感じです。


・BLアンソロジーの表紙がオシャレなイメージがあるのですが、何か表紙デザインに対して、こだわりがありますか?
テーマで狙いたい読者さんが手に取りたいと思うもの、そこに刺さるデザインを、というのは考えていますけどね。どこの編集部も考えてることではありますが…。
あとは、デザイナーさんが良いので、デザイナーさんのおかげです。


アンソロジーの裏事情


・アンソロジーのタイトルと内容が不一致との声もあるのですが、アンソロジーの裏事情ありましたら、語れる範囲でお願い致します(他社も不一致なタイトルが多いですが)
さっきの作り方と同じような回答になってしまいますが、そのテーマをキーワード的に10人弱くらいの作家さんにお願いしている中で、とにかく被っちゃいけないじゃないですか。色んなお話が読めるのがアンソロジーの良い所だと思っているので。
そうすると、10パターンのものができるので、ある程度テーマによって系統があったとしても、10パターンあったらその読み手の方もAは好みドンピシャだけど、Bは違う、でも違う人が読んだらBはドンピシャだけどAは違うみたいなことが出てくると思うので、それでイメージが違うっていう風になりやすいのかなとは思います。

・キーワードは後付ではなくて、最初にキーワードを提示した上で原稿依頼しているってことでいいですよね?
テーマを決めてからお願いしています。

・ページが余っているから、別の作品をなんか「これあるんだよね」っていうのを持ってきているわけではない?
それは弊社では基本的にないです。

・読者が、アンソロジーは、何本か失敗あるよねみたいなことを言っている場合が多くて、聞いてみたかった質問でした。
パターンを入れなきゃいけないものなので、あるとは思います。

・例えば10人依頼したときに、同じようなストーリーが上がるのでしょうか?
いや、あまりならないです。作品の被りがないようにしたいので、ある程度、各作家さんのプロットが決まってきたらこちらから残りの方に提示します。「こういうの決まってますよ」って。それで極力調整していきます。

 

アンソロジーの依頼のHOW TO


・提示する時は、どういう言い方をされるのですか?
「縛×BL」を例に出していうと、精神的な縛りの「束縛系」と、肉体的な縛りの「緊縛系」、それだけだとつまらないので+αで「金縛り」をテーマにした作品を収録したのですが、まず事前に作家さんの作風から「束縛系」か「緊縛系」のどちらでプロットがあがりそうかをある程度予想します。その後、もし「束縛系」が多そうだったら、作風が合う作家さんには「緊縛系」でお願いします、と提案したりします。


・そうか、難しいですね。確かに、そう説明されれば、納得します
でも、パターンは用意していますよ。
自分が読み手だったら、「このテーマでこうきたか!」みたいなのがあった方がアンソロジーは面白いと思うので。
やっぱり「このテーマならこの話が読みたい!」っていう人もたくさんいらっしゃると思うので、そういう方にとってはいろんなパターンがあると、このタイプが読みたかったのに、そのタイプじゃないものが何本か出てくる。そうしたら、求めていたものがこの中では1、2作品だったっていう結果にはなってしまいますよね。そういう方には申し訳ないなとは思いつつ、でもアンソロジーってなると同じものばかり入れられないのです。それこそ「心中」をやったときに全員「心中」で死んでたら結果読めちゃうので、「心中」をテーマに色んな作品を描いていただきました。

・確かに(笑)
アンソロジーとして作るなら色んなパターンのお話を提供しないと、それはちょっとプロの仕事じゃないかなって思います。
作家さんがいろいろ考えて、あらゆるパターンのお話を出していただくので、私はいつも本当にすごいなと思っています。

 

雑誌とアンソロの違いは何?


・自身がBL作品を編集する上で譲れないこだわりのようなものは、ありますか?
すごく普通なことですが、まずは自分が面白いと思うことですかね。流行りの傾向とかはもちろんありますけど、その中にプラスちゃんと自分も面白いと思ってないと、キャラなり設定なり、とにかく「萌え」が大切なジャンルなので。そこを理解できた上でちゃんと作りたいとは、いつも思ってます。

・雑誌とアンソロジーの違いはなんだと思いますか?本質に近づいている気がしてますが。
テーマアンソロジーのお話になってしまうのですが、やはり、テーマじゃないですかね。
テーマがあるか無いかで、作家さんの作り方が全然違うと思います。
雑誌の読み切りってなるとその作家さんの良さが100%なんですけど、テーマアンソロジーになってくると、テーマを入れなきゃいけないので、「自分の作風+テーマ」を考えないといけない分、たぶん骨が折れる部分が多々あると思います。逆に、テーマがあるほうが作りやすい作家さんもいらっしゃったりはするので、骨が折れるか折れないかは向き不向きの話になってくるとは思いますが。
読者さんの側からすると、「この作家さんの作品が読みたい」とか「このレーベルの作品が読みたい」って思って買うものが雑誌で、「このテーマ、このいう話が読みたい」と思って買うものがアンソロジー(テーマアンソロジー)な気がします。
雑誌とアンソロジーの違いは、作品の作り方と、読者さんが手にとるキッカケかな、と思います。


・最後に、シャルルコミックスがどんなレーベルか?ご紹介をお願い致します。
すごくザックリではありますが、作る過程を少しお話しさせていただいたテーマアンソロジーの最新刊「バケモノBL」が6月25日(土)に発売となります。テーマは意外と王道なものも多いですよ、と言ったそばからコアなテーマですが、今度は妖怪や触手、悪魔など人外がテーマです。
また、同日に単行本が2冊、桐式トキコ先生の「俺の嫌いなつがい様」と、itz先生の「雪解けの恋」も発売となります。プレゼント企画やTwitterレビューキャンペーンもやってますのぜひご参加ください。



お試し読みや特典情報は、シャルルコミックスのHPTwitterで公開してますので、少しでも気になるな、と思われた方は、まずはお試し読みをご覧ください。
まだまだ新しいレーベルですが、応援のほど、よろしくお願いいたします。

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