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ほのぼの路線に癒されて 『君とハルジオン』

2008/08/19 00:00

「君は大きくなって少し変わったね。昔よりいじっぱりになった。小さい頃は天使みたいにかわいかったのに。」たったひとりの家族だった父親の葬儀の日、ハルの前にやってきたのは、青年弁護士・瀬尾だった。天涯孤独、そのうえ借金のかたに家も失ったハルに瀬尾は同居を申し出た。
ボーイズラブでありながらも、視覚的なラブはほとんどなく、日常的な物語が進行していくが、
しかし心にジンワリした何かを確実に残してくれる。作家・木下けい子のうまさが凝縮された一冊!

BL界の中で数少ない癒し系漫画家といえば木下けい子…そう言い切ってしまっても、それに反論の声を上げる人は殆どいないだろう。
この方の良さは短めの単発モノより、ある程度長めのストーリー漫画の方が味わえる気がする。この作品は私が始めて読んだ木下作品だ、だから尚更そう思うのかもしれない。

この作品の出だしはこうだ、二人っきりの家族である父を亡くした、その悲しみに追い討ちをかけるように、亡くなった父に借金があることがわかってしまい、取立て屋に押し入られ途方にくれる主人公赤石陽(あかいし がはる)。B Lモノの物語では比較的良くあるパターンだ。

借金というフレーズが出てくるとこの業界ではたいていの話で主人公が金で売られてしまったり、借金を肩代わりする代わりに躯を要求されてしまう。この話を読む前まではそれがBL業界では当たり前のことだと私は思っていた。
しかし、木下作品はそうはならない。
あくまでも正当な手段で主人公ハルを守るヒーローが登場するのだ。それが弁護士の瀬尾祐二

借金の抵当に入っていたため住む家さえも奪われたハルの身元引受人となった瀬尾はハルと一緒に暮らすことになる。最初は警戒心をあらわにしていたハルだが、成り行きとは言え生活をともにする事で、少しずつ瀬尾に信頼を寄せるようになる、それが淡い恋心に代わるに時間がかからなくとも、なんの不思議も無いだろう。
そんな風にして日常の中で揺れ動く、主人公たちの心の機微を丁重に丁重にストーリーに織り込んでいくのが上手い漫画家が木下さんなのだ。この話を読んでいると、人を好きになのは相手が同姓だろうと異性だろうと、比較的単純なところからなのだろうと言う事に気づかされる。

一見平凡ともいえるストーリーだからなのか、はたまたこの絵柄のせいなのか、木下さんの話にエロは似合わない。いやむしろ無いほうがしっくり来る。
それはエロに塗れたBL業界では、ある意味不利なことなのかもしれないけれど、この方の場合それでも十分満足できるのは、描かれたストーリーの軸がしっかりしているからではないだろうか?
じれったくて、可愛くて、そしてちょっぴり切なくて、でも最後には、あぁ良かったねと優しく心を和ませてくれる…。そんなほのぼの路線をこの方にはこれからもずっと貫き通してほしい、なぜならばいつまでも私の癒し系でいてほしいから。

エロばかりの話に飽き飽きして、たまにはホッと息が抜きたいと思ったときや、BL初心者さんにはぜひ読んでほしい1冊だ。

紹介者プロフィール:高坂ミキ
好きな作家は、英田サキさん、ひちわゆかさんなど。Hシーンよりストーリーの濃い作品が好き。 30の後半を過ぎてからヤオイに嵌った遅咲き腐女子。似たような内容のストーリーが溢れているBL海で、本当に萌えられる自分好みの作家さんやお話を今だ探検中。

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コメント2

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高坂樹

超BL初心者さん、はじめまして、コメントありがとうございます。

そうなんですよね、内容を劇的にするための派手な設定って私もあんまり好きじゃないので、木下さんの作品のような普通の話は癒されます。
これは、ほんと可愛いお話ですよ、チャンスがあったらぜひどうぞ。

書き込みが嬉しくてつい返事を返してしまったのですが、サイトの趣旨というか、このコメント挿入の管理側意向に反していたらごめんなさい。

匿名さん

コラムおもしろかったです!

わたしはボーイズラブ初心者です。エッチばっかりやドロドロで苦しいストーリーはBLじゃなくても苦手です。
借金という文字を見て、最初は木下けい子さんらしからぬドロドロが含まれているのか?と思いましたが、そうではないのですね。いや、私の場合ドロドロが苦手というよりも……借金・レイプ・死などのエピソードが、まるで物語を劇的にするためにわざと入れられたのかと思わせる、それだけ浮いたようになっている話が苦手なのです。しっかりとマッチしていればそれもまたよしなのかもですけど。
とにかくこの作品は読んでみたいと思いまし

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