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「恋」と「友情」行ったり来たり あぁ…焦れる、このじれったさは何? 『くちびるを濡らす恋の雫』

2009/02/20 00:00

偶然の再会。逢いたかった!けど、遭いたくなかった?だって今の自分の生き方を決めた、忘れられない男だったのだ!!テキトーに要領のいい聡は、高校時代に一方的に知っていた堅物の蔵元の息子、四條と専門学校で親友に。四條の真っすぐさが煩くて、大好きだった。卒業の夜、獣じみた慾情で日本酒の芳醇な匂いの唇を舐め噛みそして…!あの陶酔も熱も衝撃も落胆も消化されないのに、男前に磨きがかかった四條はムカつくほど爽やかだ。だが今の四條にも実は…。

 BLにおいて、「友情が恋に変わる」というパターンはよくありますね。
では、「友情」と「恋」は両立するのでしょうか?
これもまた、それ風なのはたくさんあるんですけど、この作品は実にうまく「友情と愛情」が両立している!と思います。
萩野さんは“黒ラキ”等の作品から、どちらかというと「エロ」方面に目立ったイメージを持たれることも多いのですが、最近の作品を数点読むとそれだけではない面白さがあるのですね。
本作は、本当にいい親友同士の間に恋情が生まれ、友情と愛情の間を揺れ動く微妙な気持ちが非常にわかりやすく書かれていて伝わって、それがたまりません。とても心に残る作品のひとつです。

主人公の二人・四條春海(しじょうはるみ)×佐々木聡(ささきさとし)は高校の元同級生。
高校時代は性格の違いからそれほど接点はありませんが、同じ専門学校に入学した頃から、顔見知りのよしみで親しくなり、やがて親友になっていきます。
しかし、専門学校の卒業後、聡は父の転勤で引っ越すことになり、その日を間近に控えたある晩、四條の部屋で酒を呑んでいた二人の間の「親友」としての親密な空気は突然色を変え、キスをしてしまう。
そのとたん、聡は自分の四條への気持ちが恋情であることに気づきます。
しかし四條は我にかえったようにキスを止めたあと、何も言わない。聡も聞けない。
気まずい空気を残したまま二人は離れ離れとなり、連絡もできずに数年。
東京で再会した二人は再び「親友」の距離を取り戻しますが、また一緒に飲んで・・・キスをしてしまうんですね。
同じことをそこでも繰り返してしまう。
しかし、また二人は何も言わない。何も聞けない。
相手の本心が知りたくてジリジリさせられるけれど、表立っては「酔っていたから」ということで親友という関係は変わらない。
この言わない聞けない気持ちがヒシヒシとよくわかるように書かれています。
「ひと言聞けばそれで済むじゃん」というのもよくあるんですが、この作品の場合はそうできない気持ちが理解できる。
そしてこのじれったい微妙な感じもたまらなく良いんですよ。

友人としての関係を大切にしたい気持ち。
でも時々心の針が「恋」にフッと揺れる。
二人とも悩んで迷って逡巡してる。
それがわかるので、なんだか凄く可愛い二人だなと思うし、このじれったさも恋の醍醐味。

お互いに相手を尊敬していて、そんな相手に憧憬もある。
きちんと男として矜持や意思を認め合って大切にしようとしている二人は素敵だと思う。
友情の中に恋が生まれ、二つがちゃんと同時に存在しているのが非常にうまく書かれていたと思います。

舞台となるのは「日本酒」の世界ですが、そういう仕事面もおろそかにせずにきちんと触れてあって、とても丁寧に書かれた作品だと思います。
面白いですよ。
ベタほめしてしまいましたが、ホントに好きな作品のひとつなので、機会があったら是非お手にとってみてください。

紹介者プロフィール:汐
本代を捻出するため(もちろんBL)、日々いかに節約するかで頭がいっぱいの主婦。砂原糖子の商業誌作品はコンプリート。小川いら、たけうちりうと、も即買い。BL以外では、椹野道流「鬼籍通覧シリーズ」に勝手に腐の香りを嗅ぎ取り萌え狂っているらしい。しかし好きな本ほど絶版になるというジンクスが……。

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