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第3回 BL小説アワード「怪談」

愛の夢

学園モノ/エロなし

汝に心開く者あらば 愛のために尽くせ どんな時も彼の者を喜ばせよ どんな時も悲しませてはならない

紅宮 夕月
グッジョブ


 愛しうる限り愛せよ
 愛したいと思うかぎり愛せよ
 その時は来る。その時は来る
 君が墓の前に立って歎く時が

——フライリヒラート「おお、愛しうる限り愛せ」より


 人がまばらになった校舎に響くピアノ。
 柔和な雰囲気を身にまとう少年の指から、その響きは紡ぎ出されていた。少年は時々、時の流れを気にするかのように、雨粒に濡れる窓の外へと寂寥を交えた視線を向ける。
 その時、音楽室の扉が静かに開き、袴姿の少年が入ってきた。まっすぐにピアノを弾いている少年に近づいてやわらかなテノールで一言発した。
「待たせたな、豊」
「誠一郎さん!」
 豊と呼ばれた少年は花が咲き誇らんばかりの笑顔を浮かべて静かに振り返った。
「いい曲だな」
「愛の夢って言う曲なんですよ。人を愛せるだけ愛しましょうっていう内容の詩をもとに書かれた曲なんです」
「そうか」
「それにね、心を開いてくれた人を喜ばせましょう、悲しませてはいけませんっていう一節もあるんです」
「俺は豊を悲しませているのか?」
「そんなことはありません! 僕は誠一郎さんと一緒にいることができてとても幸せです」
 誠一郎の大きな手に頭をぽんぽんと叩かれて、豊は目を細める。
「でも……明日からしばらく会えないのですよね?」
「すまない。弓道部の合宿でな。一週間ほど行かなくてはならない」
「高校総体のためですから! それに誠一郎さんにとっては最後の大会でしょう? 僕は高校総体での誠一郎さんのかっこいい姿、見たいです!」
 無邪気に笑う豊の瞳の奥に一瞬の陰りを見た誠一郎は豊を抱きすくめる。誠一郎さん?と少し慌てた豊の背を誠一郎は軽く叩いた。その仕草にふふふと豊が笑う。
「そのためなら少しくらい会えなくても……平気です」
「ありがとう。帰ったら一番に豊に会いに来るよ」
「誠一郎さん……ずっと待ってます。だから……約束ですよ?」
「ああ、約束だ」


 汝に心開く者あらば
 愛のために尽くせ
 どんな時も彼の者を喜ばせよ
 どんな時も悲しませてはならない


「おい和希。ピアノに突っ伏して寝るなよ。風邪引いちまうぞ」
「……ん……ふあぁ……。オレ寝ちゃってたのか……あれ、おはよう蓮…。サッカー部、終わったの?」
「いや、休憩」
 おはよう、じゃねーよと笑いながら蓮が和希の頬に触れる。
「俺がいない間、寂しかった?」
「べ、別に。それより何で休憩?」
「外見てみ。これじゃグラウンド、使えないだろ?」
 いつの間にか窓が雨に濡れていた。
「さっきの夢と同じ……?」
「和希? どした?」
 とろん、とした目つきで窓の外を見る和希に違和感を感じて蓮が心配そうに声をかける。
「ん?いや…なんかね、今夢を見たんだ」
「夢…?」
「そう…すごく素敵な夢だったな。恋人がこの音楽室で語らい合う夢。ちょうど、外は今と同じような雨が降っていてね……ってちょっと蓮、ここではダメだって!」
 和希の話に飽きたのか、蓮がちょっかいをかける。
「なんだよ? 俺ら二人だけなんだからいいだろ?」
「そういう問題じゃ…ん……ふぁ……」
 重なる吐息、触れる唇。
 蓮のユニフォームからは土埃と汗の匂いがする。身体の芯から蕩けそうになる感覚に支配されかけ、制服の裾から侵入しようとした蓮の手でハッと意識を浮上させた。
「ダメだって!」
 制服に侵入しかけた手を払いのけて、和希は立ち上がった。
「あ、逃げた。」
「ここは公共の場だろ!」
「今この空間には俺と和希しかいないんだぞ? 人様に迷惑をかけてるわけでなし。愛しい愛しい恋人にキスのひとつやふたつ、したくならない方がおかしいだろ」
 一瞬まぁ確かに。と思いかけて和希はかぶりを振る。
 校舎の四階にある音楽室に好き好んで放課後にやってくる人間は居ない。だからといって全く人が来ない保証はないのだ。
「グラウンド使えなくても室内で筋トレとかあるだろ? 休憩、終わるんじゃない? 早く行きなよ」
 すいーっと蓮から目を逸らして一歩下がりかけた和希を
「隙ありっ!」
 電光石火のごとく蓮は腕の中に取り戻すと、ついばむようなキスを落としてにっこり笑いかけた。
「さっき来たばかりなのにもう行けとは随分なご挨拶じゃないか。何も最後までしようとは言ってねーよ?せっかく会いに来てやったんだからおとなしくしてろ。な?」
 何が「な?」だよと思いつつ、蓮の腕の中の居心地の良さにため息をつく。
「そう言えば、夢に出てきた人、ちょっと蓮に似てたな」
「んー? 俺ほどのイケメンはなかなか居ないぜ?」
「自分で言うなよな……」
 このままだとまた寝てしまいそうだ。居心地が良いと思っていることを知られたくなくて和希は新しい抗議に出てみた。
「蓮、暑い」
「ん? どこが熱いって?」
 蓮の手がスッと和希の下肢へと伸びる。
「そういう意味じゃないよっ!」
「はいはい」
 お手上げ、とばかりに蓮はいたずらっぽく笑った。
「じゃあそんな暑がりな俺の恋人に、とっておきの話をしてやるよ」
 蓮は急に声を低めて和希の耳朶に言葉を直接送り込む。
「実はな。この音楽室には幽霊がいるんだと。帰ってこない恋人を在学中、永遠と待ち続けてな。とうとう卒業式の日に飛び降りたらしい」
 腕の中でピクリと動いた和希に「可愛いな」と思いつつ蓮は言葉を続けた。
「その霊は夕方になると窓辺に現われるらしいぜ。どうだ? 少しは涼しくなっただろ?」
「な、なんだそれ。そんなことあるわけないじゃん。早く部活行けよ!」
 もぞもぞ、となんとか蓮の腕から逃れようとする。
「和希、好きって言って? そしたら俺、部活行く」
「そ、そういうのを強制的に言わせるのはどうかと思う」
 無理やり蓮の腕から抜け出して息を荒げる和希に蓮は肩をすくめた。
「しょうがないな。俺が帰ってくるまでいい子にしてろよ」
 じゃあな、と蓮は頬に軽いキスをし、手をひらひらと振った。
 蓮がいなくなり、あたりが急に静寂を取り戻した。
「窓辺の幽霊ね…。もし幽霊がいたとしたら、オレと一緒でこうやって誰かを見ていたのかな……?」
 急に一人になった寂しさについつい独り言をつぶやいてしまう。窓辺に立ってみるとグラウンドでサッカー部が練習をしているのが見える。音楽室の真下にある出入り口を出て蓮が上を向いた。軽く手を振ると、振りかえしてくれた。次の瞬間「遅いっ」と言う怒鳴り声が音楽室にも届いた気がした。蓮が慌ててグラウンドへ走って行く。その様子を見て和希はクスリと笑ってしまった。
「何が休憩だよ」
 蓮のしてくれることは素直に嬉しい、と思う。たったそれだけのことで幸せを感じれる自分はつくづく蓮のことが好きなんだな、と思う。
「何考えてんだか」
 早口につぶやくと、和希は乱暴にピアノの前に座り直した。
 フランツ・リスト「愛の夢 第三番」
 リストが詩をモチーフに書き上げた歌曲をさらに自分の手でピアノ曲へと編曲したロマンティックな夜想曲。「ロマンティックな」というと恋愛をイメージしてしまうが、本来は宗教的に人を愛しましょう。と言う意味で書かれている。
 夜想曲といえば「社交界のパーティーで夜通し歌い、踊り、恋語らいと騒いだ後の明け方にその夜をしみじみと想う」といった解釈もある。
 和希にとって蓮との時間はまさにそれだ。
 思えば、この曲に出会ったのも、蓮と出会ったのも、この音楽室だった。家に帰らなくてもピアノが弾けるところ。帰りたくない時に、自由に自分を表現できるところ。それを探し求めて足を運んだら譜面台の上にちょうど愛の夢の楽譜が置いてあったのだ。存在を知ってはいたが、弾いたことのなかった曲に興味を惹かれた。初見ではつっかえつっかえだったものの、突然一人の男子生徒が扉を開けはなって駆け込んできて
「今の、お前が弾いてたのか?」
と息も荒く聞いてきたのには本当に驚いた。
「そ、そうだけど……。なんか用?」
「お前スッゲーな! 今の曲すごく綺麗だった。あ、お前も綺麗だけどな」
 すごく怪訝な顔を自分はしていたと思う。しかし安っぽいナンパのようだったが、自分をまっすぐに見つめるその目はとても好感が持てた。それから幾度となくピアノを弾いていると蓮に突入され、口説かれ、という紆余曲折を経て今に至る。
 どんな気分の時でも蓮を想い起こさせてくれるこの優美な旋律が和希はとても気に入っていた。蓮と一緒にいられないときでもこの曲さえあれば落ち着ける。
 半分まで弾いてところで突然、風が強く吹き窓が悲鳴をあげた。びくっとして和希はピアノを弾く手を止める。
「何……?」
 窓の外に目をやればグラウンドが見えなくなるほどに雨が強くなっている。急いで窓辺に駆け寄って目を凝らして見るが、先ほどまで見えていた蓮の姿も見えない。
 嫌な感じがする。
 不安に駆られていると、真下の出入り口付近に人影が見えた気がした。
「蓮?」
 いてもたってもいられなくなって音楽室を飛び出す。校舎内にまで雨が地面を叩きつける音が聞こえてきて、和希の不安をより一層煽る。四階から二階までを一気に駆け下り、最後の階段をひとっ飛びに降りてる。しかし、よく考えたら階段を降りている途中ですれ違わなかったのはおかしい。
「蓮! どこ? 蓮! 応えて、蓮!」
 もしかすると、人影が見えたのは気のせいでまだ蓮はグラウンドにいるのかもしれない。そう思って外に出ると一瞬でずぶ濡れになった。音楽室に置いてある置き傘を取りに行こうか、と見上げれば音楽室の窓際に人影が見えた。
「蓮!」
 違う階段を上ってすれ違ってしまったのだろうか? 兎にも角にも音楽室に戻ろうと急いで一歩足を踏み入れたところで和希は滑った。しまった。と思った時には遅く、そこで意識が遠のいていった。


 気づけばいつの間にか音楽室に戻ってきていた。そして聴き覚えの、先程まで弾いていた旋律。
「愛の夢……?」
 柔和な雰囲気を身にまとう少年の指からその響きは紡ぎ出されていた。和希はハッと息を飲む。
「……君は……豊?」
「貴方は誰?」
 和希には目もくれず豊が口を開いた。
「オレは和希。……君は豊、だよね?」
 如何にも。と演奏を止めずに豊はうなづいた。
「何……してるの?」
「人を待ってる」
「誰?」
「誠一郎さん」
 名を呼ぶときに少しはにかんで頬を染める豊。予想はしていたが本当にその答えが返ってくるとは思っていなかった。
「……帰ってこないの……?」
「僕は誠一郎さんを待ってる」
 明確な答えは返さずに豊は穏やかに演奏を続ける。急に蓮の言葉がリフレインする。「音楽室には幽霊が出るんだと」咄嗟の蓮の意地悪だと思っていたがあながち間違いでもないのかもしれない。だとしたら……
「……誠一郎さんはもう帰って来れないんじゃないかな……」
 ピアノの音がやむ。
 豊がゆっくりと和希に視線を向けた。危うく悲鳴をあげそうになった。あまりに虚な、何も見えてない真っ暗な空洞。
「誠一郎さん……どこ……?」
 鼻先が擦れそうなくらいの距離に一瞬で豊が現れ和希の首に手をかけた。氷のような手とはこのことを言うのだろう。ゾッとするくらいに豊の手は冷たい。
「ク、…苦し……」
 和希の首にかかっている腕に特別力が入っていなさそうなのに、豊の腕は和希を床から持ち上げる。視界に靄がかかる。
「れ、れ、ん、たすけ……」
 豊の虚ろな目に飲み込まれそうだ。と思ったところでふ、と体が軽くなり意識が途切れた。

「和希! 和希! おい、どうした? しっかりしろ!」
 ゲホゲホという自分の咳で意識がはっきりする。
「れ、蓮……」
 声が掠れる。
「お、オレ、ど、どうなって……?」
「雨が一瞬強くなって部活が中断されたから音楽室に戻ってみたら倒れていたから連れてきた」
 蓮が心配そうに覗き込む。
「和希、大丈夫か? 顔が真っ青だ。……急に苦しみだすから叩いちまった。ごめんな。痛むか?」
 頬に添えられた手をとても暖かく感じて、和希は一瞬泣きだしそうになるがグッと堪えて周りを見渡す。どうやら保健室のようだ。窓の外を見れば、滝のように降っていた雨は小雨に戻っていた。
「ゆ、豊は……?」
「豊?」
 蓮が形のいい眉をひそめた。夢、ではない。現に喉元がまだひやりとしている気がする。素早く答えを返さない和希に蓮がイライラしているのが見て取れたのでしどろもどろ一部始終を話す。
「オレ、頭がおかしくなっちゃったのかな……?」
「いや…実際、その夕立ちみたいに降った雨って言うのは俺も合ってるからな」
「信じてくれるの……?」
「何で俺がお前を信じないと思うんだ?」
「ありがとう……」
「おう」
 ぎゅっと抱きこまれた途端に身体中の力が抜けた。やはり居心地が良い場所だ、と和希は頭を預けた。
「オレ、豊にも幸せになってほしい……」
「和希……?」
「豊、夢の中ですごくいい笑顔で笑ってたんだ。あの笑顔を取り戻してあげたい」
 続けて、というように蓮が背中を優しく撫でてくれる。それに勇気をもらって和希は言葉を続ける。
「オレ、多分豊を傷つけた。言っちゃいけないことを言ったと思う。……豊にちゃんと謝りたい……」
「そうか……」
「蓮、手伝って欲しい」
 そっと腕を解いて蓮が和希をまっすぐに見つめる。
「何か当てがあるのか?」
「多分……だけど……」
「そうか! じゃあ手伝おう。その代わり……」
「その代わり?」
「ここ先一ヶ月、学校内で俺のこと、拒むなよ?」
 自分はとんでもない約束をしてしまったかもかもしれない、と和希は後悔する羽目になった。

 音楽室のある方へと蓮と二人、手をつないで歩く。近くに連れて、雨が段々と激しくなっていった。階段を昇るのを躊躇すると、蓮がぎゅっと手を握ってくれた。「何があっても守るよ」言葉はなかったがそう言われている気がして、和希は一段、また一段と階段を昇る。音楽室のある四階に差し掛かるところまで来ると、背筋に首を掴まれた時と同じ寒さが走った。
「豊!」
 急に蓮を置いて、和希が走り出す。扉を一気に開け放って音楽室へ一歩踏み入れたところで、和希は崩れおちそうになった。
「おい、和希!」
 一歩遅れて蓮が和希を支える。
「大丈夫か?」
 ゆっくりと和希が瞳を開けた。だがそこに光はない。
『誠一郎…さん?』
「かず……豊……?」
『誠一郎さんだ。やっと、帰ってきてくれたんですね……」
 つ、と光を失った瞳から涙がこぼれ落ちる。
「悪かった」
『大丈夫です……僕、ずっと待ってました。約束通り…」
「悲しませて悪かった。約束をずっと守れなくて悪かった」
『誠一郎さん…』
 豊がそっと蓮の頬に触れた。その手を握って蓮は何かを言おうとして一瞬言葉に詰まると再び口を開いた。
「悪い……豊。それに和希も」
 一度言葉を切って短く息を吸う。
「俺は誠一郎じゃない。でも、わかってるんだる?豊。なぁ和希……聞こえるか?……戻ってきてくれよ。俺が好きなのはお前じゃない。和希なんだよ。だから和希を返してくれ、豊……」
 豊が一瞬の逡巡の後、寂しそうに笑って蓮に口付ける。
『誠一郎さん、愛しています』
 一瞬だが、豊が瞳に光を取り戻した気がした。だが次の瞬間にはがくりと身体が蓮の腕の中で力をなくした。
「……和希? おい、和希!」
「ん……んん……蓮……?」
「よかった!」
 これでもか、と抱く腕に力を込める蓮に和希が抗議の声を上げる。
「待って待って苦しい! 蓮……苦しいよ……」
「よかった……和希……」
「蓮…? 泣いているの?」
「泣いてねーよ…」
 そっかそっか、と和希が肩を震わす蓮の髪を優しく撫でる。
「豊、誠一郎さんに逢えた、よね?」
「悪かったな。わかってはいたんだが、途中から我慢できなくなった」
 和希がゆっくり横に首を振る。
「……なんとなく憶えてるよ、オレ。蓮がオレを呼んでるのもわかってたんだけれど、大好きな人に逢えないのは辛いから……。オレだって蓮と逢えなくなったら嫌だから」
「和希……お前……」
「だから、悪いとは思ったんだけど、しばらく豊に身体預けちゃった。心配かけてごめん。蓮」
「こうなるってわかってたのか?」
「そういうわけじゃないけど、でも豊はオレに対して怒っていたし、首を絞められた時に蓮に助けを求めようとしたら、一瞬だけなんだけど力が弱くなった気がしてたんだよね」
 和希が頭を撫でる手は止めずに蓮の頬に唇を寄せた。
「夢に出てきた誠一郎さん、なんとなく蓮に似てた気がしたから。……多分、まっすぐに感情をぶつけるところ、かな? だから、きっと豊は蓮に会えれば誠一郎さんのところに行けるんじゃないかな?って思ってさ」
 まさか本当に勘違いするとは思わなかったけどね、と和希は笑う。蓮が身体を離して和希を見つめる。
「な、なんだよ。そ、そんなに見るなよ……」
「愛してるよ、和希」
 和希が視線を伏せる。
「お、オレも……。蓮のこと、す……好きだよ」
「ん? なんだって? 聞こえなかった」
「い、い、今の絶対聞こえてただろ! も、もう言わないよ!」
 あははと笑ってついばむようなキスを落とす蓮。
「耳まで真っ赤にしちまって。本当、お前って可愛いよな」
「う、うるさい! そ、そろそろ帰ろう? 家だったら……何してもいいから……?」
「ん? あれ?和希くん、約束を忘れてもらっちゃ困るな?」
 一瞬なんのことだっけ?と首を捻ってから、和希は耳だけでなく首まで真っ赤になる。
「れ、蓮のバカ!」
 そうだな、と笑って蓮はもう一度、和希に口付けた。今度は深く。それに応えて和希は
「ねぇ、蓮…………オレは蓮を愛してる。ずっとずっと! 永遠にオレが愛し続けることができる間! 愛し続けるって決めた。だから蓮も俺を愛して。約束してくれる?」
 一瞬目を丸くした後に和希でさえ今まで見たことのないほど顔をくしゃくしゃにして蓮が笑う。
「ああ、約束だ」

 いつの間にか雨は上がり、真っ青な空へと虹が彩りをそえていた。

紅宮 夕月
グッジョブ
1
ひかこ 16/07/16 14:58

豊君と誠一郎さんの切ない話と、和希君と蓮君の、きっと幸せな未来の待ってる話と。
2つがお互いに引き立てあってて、とても面白かったです。
ハッピーエンドでよかったー・・・!
そして、タイトルとテーマ曲がとても合ってました。

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