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表題作あいの、うた

小菅博近,音楽雑誌のエディター,25歳
久保山明人,売れないミュージシャン,28歳

同時収録作品The end of youth

小日向力 雇われマスター 27歳
田頭眞一 落ちぶれた歌手 28歳

その他の収録作品

  • その後の・・・The end of youth

あらすじ

田頭は一時アイドルとして成功した。
一枚目のシングルは大ヒットしたが、その後のCDは鳴かず飛ばず。
ミュージシャンとしての才能は皆無だった。
スタジオミュージシャンとして日々を送る田頭は昔の栄光を忘れられず、仕事がほとんどない現在も音楽の世界から足を洗えずにいた。
そんな時、高校時代のバンド仲間・小日向に再会し…。

作品情報

作品名
あいの、うた
著者
木原音瀬 
イラスト
宮本佳野 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
ISBN
9784883862801
4

(47)

(23)

萌々

(6)

(15)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
13
得点
185
評価数
47
平均
4 / 5
神率
48.9%

レビュー投稿数13

普通こそ最高!

「あいの、うた —the end of youth—」
木原音瀬先生 読了

一言で言うと、かわいかった…。もう最高!

簡単にストーリーを整理すると、本の前半と後半が2つの話に分かれていて、わたしから見ると前半のほうがスピンオフで、後半が本篇のような気がしますね。
前篇は隠れゲイの音楽雑誌のエディターと野良猫のようなボーカル(ノンケ)の話。なぜかストーリーを読んでいると久保山が野良の黒猫に見えて仕方がありません(笑)。特に小菅に追い出され駅前で丸まって寝ている久保山が最高にかわいかったです!残念ながらこのシーンはイラストがないんですが、黒猫のイメージが勝手に頭に浮かびます(笑)。いくら下手に出て謝っても「一生行くか」「あっち行け」とか言って拗ねている久保山が本当にかわいすぎます!(←語彙力が乏しい)
でも最終的には飼い主が無事に野良猫を手馴してよかったです(笑)。小菅の腕の中で文句を言いつつも撫でられるがままでいる久保山に萌え禿げましたm(_ _)m最高な終わりです!

一方、後編はその音楽雑誌の編集長の学生時代を遡り、昔から自分だけに執着する変わった男との話になります。これはあくまで個人的な感覚ですが、力っていう人物像はすごく「箱の中」の喜多川を連想させました。(もし先生のご本意ではなかったら、大変申し訳ありませんでした)というか後編は全体「箱の中」を彷彿させました。もし同じ意見を抱く方がいましたらぜひ語り合いたいです。
しかしな…自分を裏切った田頭をそう簡単に許してしまった力には少し不満だった(笑)。靴の裏を蹴るくらいって力が優しすぎます!w木原先生の作品なら(←)もうちょっと懲りてやってもいいじゃん…と思ってしまう自分にゾッとした(汗)。

すごく心に染み付くやさしい話で、とても癒されました。BLによくあるアイドルとかキラキラしたスターたちの話ではなく、ごく普通な男たちの恋愛像で、普通こそ最高で神評価とさせていただきます。今回も、素敵な作品ありがとうございました。

9

この文体を評価します

木原作品としては、あまりレビューもついておらず神評価も少ないために読む前の期待はなく本を入手後もすぐに読まずにおいていました。サラッと読みたいなという気分の時にページを開いて読みだすと、おもしろくてスルスルと進んでしまいました。
「あいの、うた」は、感情のまま自分を偽らずに生きているボーカリスト(作詞作曲もする)と極小?音楽雑誌エディターとのジワジワとつめてゆく愛の話。正直にそのまんまのタイトルが邦画っぽくて好きです。
「The end of youth」は「あいの、うた」の主人公の勤め先の編集長・田頭が17歳の高校生~27歳のおちぶれミュージシャンだった20~10年前のお話。友達の一つ年下の弟が強烈な性格で田頭を煩わせつつも、その誰にも劣らない真っ直ぐな個性でやがては田頭の拠所となっていきます。青春の果てに青春は終り、音楽の才能なく夢破れた田頭ですがこのお話の終盤で田頭はコンビニで誰の歌かもわからない歌を耳にして、歌を「聴きたい」と渇望します。自分が歌を歌うこと作ることは諦めてもまだ音楽を手放せないラストは余韻を残しました。
登場人物はどれもありがちな人々ばかりだけれど、この作者さんは無駄な説明などなくとも情景描写に長けているため、シンプルな文体の一般小説として十分に読めます。
この作者の中でも、リバーズエンドの中の「god bless you」「箱の中」などの淡々とした描写を折り重ねていく文体で綴られています。とても読みやすく、おすすめです。

6

アイアム木原フリーク

万人にはオススメしません。
夢を失うことの怖さがリアルでした。
この、フンづまりのような展開…嫌いな人は嫌いなんだろうなァ。個人ブログやAmazonでレビューを見てると、木原音瀬さんを苦手にしてる人も相当数いるみたいですが、木原音瀬フリークな私からしても、『分かる分かる』と思ってしまいますw
つくづく木原音瀬節です。
売れないミュージシャンや一発屋のミュージシャンを、とことん突き落として突き落として、結局浮上させてあげなかったり。
暴力的でエキセントリックで、ちゃんと愛を返してくれるのかも分かんないような男を相手役にしてみたり。この小説なんて、相手役は、アスペルガーもしくは境界性人格障害だとしか思えなかったよ…w

私も若いときに、全身タトゥーでチンコにまでピアスつけてる気合い入ったバンドマンと付き合ってたことがあるんだけどw、彼らのプライドの高さとか音楽への情熱とかって、一種独特なんだよね。仲間で語りはじめると、入りこめないし。
なんかイロイロ思い出しちゃって、まともに読めなかったかも。ただ胸がヒリヒリしました。

5

愛と裏切りと赦しの…(ू˃̣̣̣̣̣̣︿˂̣̣̣̣̣̣ ू)

例によって例のごとく木原音瀬先生の作品の中から選びました。私は購入の際はあらすじや評価を丹念に読みますが、購入後は一切の情報を忘れるよう努めます。今回もあらすじを読まずに読了しました。後から知ったのですが、あらすじとして紹介されているのは「The end of youth」の方のみなのですね!本書は2話に分かれており、したがって2CPが登場します。いわゆるスピンオフ作品です。



目次
・あいの、うた(攻め・小菅博近×受け・久保山明人)攻め視点(44%)
・The end of youth(攻め・小日向力×受け・田頭眞一)受け視点(50%)
・その後の…The end of youth(受け視点)5%
・・・・・・chapter1(受け・田頭視点)
・・・・・・chapter2(受け・田頭視点)
・あとがき1%



・あいのうた
あらすじ
小菅博近(攻め)はエディターになって3年の25歳。大学時代にバンドをやっていた影響で音楽に携わる仕事をと思い、小さな雑誌社で働いています。187cmと長身の小菅はゲイです。編集部一押しのバンドSCUAの良さが分からない、いわゆるアンチSCUAです。
ある日、そのボーカルの久保山(受け)に自分の音楽観を語ったところ、短気な彼に顔を殴られボコボコに。その頃から小菅のコンサート通いが始まります。才能のない奴らだと烙印を押す、その目標を胸に。ところがあるキッカケから久保山が小菅の家に泊まることが多くなっていき…。

感想
面白かったです!今回は音楽ネタです。しかも!売れないミュージシャンのお話し。サクセスストーリーではありません。そのため全体的に重々しく、厳しい現実感を見せつけられます。

SCUAのボーカル・久保山は28歳。170足らずの身長で線が細く、顔も小さい。プライドが高く自分の曲に対して絶大な自信を持っています。すぐに血が上り、手も早い。一方的な喋り方をするし、頑固ですがとても繊細。

でも小菅は久保山と接していくうちに、いつの間にか好きになっていくのです。BLだしゲイだから当たり前の流れかもしれません。でもそれまでは嫌いだと思っていた相手をいつの間にか好きになる過程が素敵で、応援したくなりました。

SCUAは今年でデビュー6年目になるバンド。けれどもヒット曲もなく、レコード売り上げも芳しくありません。しかも今年の9月で事務所との契約が切れてしまいます。そんなSCUAの窮地を救うべく奔走する久保山ですが、現実はあまりにも厳しかったのです。

一時は何もかも上手くいくかにみえた久保山の努力。ところがその努力も一瞬にして海の藻屑と消えていきました。小菅自身も会社が窮地に陥り…。でも今はまだ先が見えないものの、BL的には最後がとても良い終わり方でした。

とはいえちょっと攻めが強引に迫った為、嫌いな方は嫌いかもしれません。言うまでもなく私にはめちゃくちゃ好きなラストでしたがね (ノ≧ڡ≦)テヘペロ



・The end of youth
あらすじ
田頭眞一(受け)は、一時はアイドルとして成功したことのある28歳。でもミュージシャンとしての才能がなかったため今は落ち目です。でも俳優としての道だったら残されていました。ところが自分には才能がないと分かっていながら音楽への未練を断ち切ることができません。
ある日、高校時代の同級生でありバンド仲間だった小日向優と再会します。田頭は皆を裏切るような形で上京した過去がありました。それなのに気さくに話しかけてくれた優。その後、優の弟・小日向力(攻め)が近くの店でマスターとして働いていると聞きます。
10年経った今も、あのきつい眼差しと、人を食った物言いは変わらないかもしれない。そう思うと会うのが怖く辞退したものの、一緒に行こうと誘われ…。

感想
2話目は、1話目で攻めだった小菅の編集長として登場していた田頭の若い頃のお話です。1話目の田頭は37歳の設定。いろいろあったんだな~、と感慨無量。この2話目こそメインだったのでしょうか。心に残るとても良い作品でした。

とは言え、嫌いな方は嫌いなストーリーかもしれません。過去には、受けの攻めに対する嘘や裏切りがありました。それゆえ若い頃の田頭を嫌いと思う方は多くいらっしゃることと思います。

でも私は小ズルかったり、人を裏切ったり、卑怯なところとかも、案外人間らしくて好きなのです。本当の悪人は私も嫌いです。情がなく、冷酷で、平気で人を殺せるような人。でも少しでも情があって、ある時目が覚め、心から改心し、赦しを乞うようなシーンとかはグッときます。

そうそう攻めの力ですが、標準語じゃありません。それはもうコテコテの関西弁で最初は違和感。そのうち癖になると言うか、力の話し方はこうじゃなきゃ!とまで思うようになりました (。◠‿ ◠。)


・その後の…The end of youth
・・・chapter1
2話目の「The end of youth」から2年後のお話し。田頭が編集プロダクションを立ち上げ、音楽雑誌「move」を創刊。そこでの奮闘ぶりがサラッと描かれています。そして何年か経ったある日、求人を募ります。面接に訪れたのは1話目のメインCP・小菅でした。


・・・chapter2
1話目の「あいの、うた」から3ヶ月後のお話し。田頭は偶然、小菅に会い「山千」で一緒に飲みます。小菅は無事、女性誌で働いていますが、音楽雑誌の仕事への未練を仄めかします。SCUAも新しい事務所が決まったことが分かり、素敵な情報が聞けました。そして小菅らしく正直にカミングアウト。力は相変わらずの力で…。出会って20年経つと言うのに、衰えることのない田頭への執着。ラストがまた、余韻がたまりません…。この物語に続きがあって本当に良かったなあ、とホッとしました (*´◒`*)

4

鬱BL

芸術を仕事にしている人、しようと思っている人には読ませたくない一品。
それほど心に来ます。
後味は悪い方かと。

題が、青春の終わりですからね、切ない話でした。

最初のあいの、うたは心にじんわりと来るいいBLだと思います。
途中やっていることが何もかも上手くいかないのは解って、先は読めるんですけど、
木原がよく表現しているむき出しの愛が痛いくて愛おしい。
攻めのあいのうたは率直で飾らなくてドキっとしました。

The end of youthは辛い良い意味でBLではない。
田頭の弱っている心に付け込んだ力みたいな。
運と才能を若い頃に使い切ってしまった田頭が不憫。
音楽で食って行こうとした者の末路がリアルすぎて泣ける

最後、編集長どうなったんでしょうか、それが気になります。
音楽に関わり続ける限り彼は永遠に世間一般に思われる幸せにはなれない。

3

この作品が収納されている本棚

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