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表題作徒花(アダバナ)

赤澤修,27歳,暴力団構成員
佐伯和彦,27歳,赤澤とは高校時代の同級生

あらすじ

会社勤めの和彦は、ある夜高校時代に片思いをしていた同級生の赤澤に再会する。
整った顔つきに鋭い視線で周囲を威嚇していた赤澤は今は暴力団の構成員になっていた。
酔った赤澤に気まぐれに抱かれて、昔と変わらぬ想いを自覚する和彦。
赤澤にとって自分は特別な存在じゃない。けれどもっと奥深いところまで赤澤が欲しい。
両親に愛されずに育った、本当は不器用で繊細な赤澤を守ってあげたい。
危険な目に遭わないよう組を抜けて欲しいと強く思った和彦は…。

作品情報

作品名
徒花(アダバナ)
著者
水原とほる 
イラスト
水名瀬雅良 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784877245511
3.4

(21)

(4)

萌々

(6)

(8)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
8
得点
69
評価数
21
平均
3.4 / 5
神率
19%

レビュー投稿数8

徒花

 これは本当に和彦の芯の強さに泣けました。
こんなに思われている赤澤は幸せ者だと思います。
 途中悲しい出来事があり、二人の間に亀裂が入る場面は、
読み進めていくにつれて流石にきつかったですが、
それでも和彦の優しさと心強さに、赤澤が心を許していく過程には、
『良かったね和彦!!頑張ったね!!』と、私まで嬉しくなりました。

 発売されてもう何年も経ちますが、今でも和彦や赤澤に会いたくて、
何度でも読み返しては、二人のこれからがずっと幸せである様に祈っています。
出会えて良かったと思える作品です。

 

7

受けの芯の強さ

普通に仕事をし、普通に暮らしていた受けの和彦。
たまたま通りがかったケンカの中にかつて同級生だった、そして好きだった赤澤を見つける。

高校時代に告白をし、振られていたが、まだ好きな気持ちは残っていて…
そこからは、ヤクザとサラリーマンで住む世界が違うもののお互いが少しづつ心を許して、体を重ねるまでに至る関係になります。といっても、和彦の方は、心を許すと言うより、赤澤への想いがしっかりとあり、どちらかと言うと危ないことにならないようにという庇護の気持ちが増えていきます。

ある事件で、赤澤を裏切り、陥れたことになってしまい赤澤は和彦に制裁を加える。しかし、最後の最後で解放してしまう。
それから二人はお互いの過去や思いを語り、赤澤はヤクザから足を洗う決断をする。それはすなわち二人が引き裂かれるということで…
けど、赤澤もこの程度で組から抜けれるんだ、とは思っちゃいました。

いやぁ、和彦、すごいわ。本当に赤澤に惚れてたんだね。何年も片思いから振られたと思って過ごしていた間は、気もまぎれただろうけど、両思いになって、その後の数年って長いよね。でも、ちゃんと赤澤も手紙を書いたりして、ちゃんと未来に向かっていたんだなぁと思うと二人には幸せになって欲しい。
元ヤクザの赤澤がどういう仕事して行くのか謎だけど。ま、住むところや心の支えがいれば、アホじゃないみたいだし、生活できるかな。

0

その花の色は。

「徒花(あだばな)」とは・・・

・咲いても実を結ばずに散る花。むだ花。
・季節はずれに咲く花。
・はかなく散る桜花。あだざくら。

タイトルが好きだ、とまず思った。
そして読み進むにつれて「徒花」の持つ意味と登場人物たちの人生が重なり、何とも言えず切ない気持ちになった。

サラリーマンの佐伯和彦は、高校時代に想いを寄せていた赤澤修と、偶然に9年振りの再会を果たす。
赤澤は暴力団の構成員となっていたのだが、この機会を逃したくなかった和彦は、半ば強引に赤澤との接点を持とうとし、せめて友人でもいいので彼の傍にいたいと願うようになる。
ちなみに表紙イラストの和彦を見たときは、うわ~弱そうな受けちゃんだと思ったのだが、意外に積極的で、精神的にかなりオトナだった。
片や粗暴で強引な赤澤は、実は押しに弱く子供っぽい面があり、それは普段の力関係とは全く逆になるので、素のふたりというのはくすぐったいような甘い雰囲気が漂っていた(*´Д`)

そうして体を重ねるうちに、やはり友人などではなく恋人になりたいと貪欲になってしまう和彦。
その心情がモノローグで切々と綴られてゆくのだが、これがまた細やかでいて情熱的。
赤澤を欲しがる心の描写や台詞も非常に生々しく濃厚である。
またエロもこの方、半端じゃない。
相当暴力的であるので、その辺りを受け付けられなければ、水原とほるは読めないと思う。
終盤、ある出来事で赤澤の怒りを買ってしまった和彦は、おとし前をつけさせられるのだが、ここからが筆者本領発揮のえげつなさだった。
痛いものが苦手な方は本当に注意である。
レイプに注射にフィストにエネマと、陵辱の限りを尽くされる様子は、まあスゴイとしか言えない。

その後、紆余曲折を経て、赤澤は和彦のために組を抜ける決心をするのだが、その代わりに最後の奉公として身代わりで服役することになってしまう。
その直前に赤澤が残していった短い手紙があるのだが、これが素朴ですごく胸にズシンとくる。
そこには赤澤の苦悩・決意・戸惑いの気持ちが、飾らずそのままの言葉で綴られており、最後は「そばにいてくれて嬉しかった」というシンプルな言葉で締めくくられている。

和彦と赤澤は確かに徒花ではあったけども、ふたり共に行くことで、そして互いに互いを必要とし合うことで、徒花ではない存在になり得たのではないのだろうか。
『人のためになれないのなら、せめて人の害にならずに生きていきたい』
高校生の頃からそんな事を思いながら生きてきた男、がやっと掴んだ幸せはどんな花だったのだろうかと、言葉にするのはあまりに陳腐ではあるが、やはり想像せずにはいられない。

8

ヤクザ攻めの王道話はもうお腹いっぱいという方へ

萌。(MAX:萌萌萌:めちゃオススメ)
「徒花」とは咲いても実を結ばない花のこと。片思いしていたかつての同級生、再会した今はヤクザとなっていた赤澤に捧げる和彦の想いでしょうか、それとも二人の関係のことでしょうか。なんとも自虐的な題ですが、しかし読了してみれば、それ以上にどこか開き直ったような逞しさを感じました。

やくざ攻めと言えば「強引に迫られる受け」というのがお決まりの法則ですが、この話は違います。やくざの赤澤にその気はなくほぼ和彦の片思い、体の関係はもてどもあくまで友情の延長のまま。
こう書くとなにやら切ない話を想像しそうですが、和彦のしなやかな性格に救われ悲壮感はありません。ただしそこは水原さん、痛い陵辱シーンはあります。
ヒエーとのけぞりつつなぜか平気だった自分が怖いですが。笑

執着や溺愛される受けが読みたいという方には決して向きませんが、そうこだわらない方はたまにはこういうヤクザ攻めの話も面白いんじゃないんでしょうか。
私はとても興味深く感じました。足を洗わせようとする堅気というのは珍しい。
もっと書いて欲しいくらい。

展開や結末は満足ですが、ひとつだけ言うと終盤の手紙のシーンがやや不満かな。
和彦の手紙解説(?)思考に、想像して味わう読み手の楽しみを奪われたかんじで…大事なくだりだっただけに余韻が欲しかったです、惜しい。(私的に)
でもそれを差し置いても、ヤクザ×サラリーマンもので意外なアプローチをとったという意味で水原さんに拍手!

~独り言~
どう考えても翻弄されてしまったのは赤澤の方だよなあ。
この話ぜひともヤクザ赤澤視点で読んでみたい。
堅気の元同級生に人生を狂わされるやくざ攻めって……!萌え萌え。

この本で水原さんはマイ陵辱クイーンの座を確保しました。笑

8

主人公がイイ

惚れたら負けですな。
高校時代の初恋の男に再会したら、彼はヤクザだった。
主人公の性格がイイです。あっけらかんとして明るい。馬鹿なんじゃなく、根っこが強いのだ。ヤクザになった初恋の人の欠点まるごと許容する包容力がある。しなやかな柳の強さだ。
対するヤクザはガキです。力のあるヤクザで、舎弟に慕われてて強いんだけど、根っこは愛情を知らずに育ったワガママな子供だ。母親のように甘えられる主人公に出会って、甘えることを覚える。
それだけに、主人公の裏切りを知ったときの怒りは凄まじく、水原とほるらしい強烈に痛い凌辱シーンが用意されてました。
まじで痛いです。私、貧血起こしそうになったよ。読まれるときは気をつけてください。

最後まで悲しかった。
正直、ヤクザが主人公に対して抱いた感情は、恋愛感情ではないと思う。それが悲しくて切ない。でも、いずれにしても恋愛感情以上の感情があるのだろうとは思えた。
ちょっと涙が出ました。
最後四ページほどは蛇足だと思ったけど、いいお話でした。

6

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