amazonの電子書籍版です
いまどき珍しい手描きな表紙。
絵は余り好きなタッチではないのですが、ぐいぐいと引き込まれるストーリーに神!
表題作は、性同一性障害の男子と同級生の話。
いじめや差別があるわけでなく淡々と進んでいく高校3年生。
刀根の気持ちが痛いほど伝わってきて、切ないです。
「あたらしい家族」はゲイの家族観の物語。
箱ものの家に固執するのでなく、一緒にすむという家族にこだわるあたり、とても現実味を帯びていて、ゲイの話でなかったしても身近に感じられるお話です。
「あなたが幸せになれた日々の理」は涙出ちゃいました!
男らしく強くと厳しく育てられた為に、その理想の男性に対して女になっている自分に悩んで壊れていく東堂。
同級生の中沢は彼を救ったのでしょうか?
「恋をせずにはいられない」と「四度目の夏」はそれぞれの視点から青春時代を振り返って。
改めて、恋が再燃するのでしょうか?
まんださんの作品は初めて読みましたが、とても現実味を帯びていて青春がキーワードになっているのに甘ったるくなくて、厳しいのにどこか救われるような、あたたかいものにあふれていました。
人間に対する愛情でしょうか?
他の作品も読みたくなりましたヨ。
帯『届かなくてもいい……ただ聴いてほしいんです。』
感動のヒューマン作品という帯紹介はともすれば凄く陳腐な言葉なんだけど、この作品に関してはその表現がぴったり来ます。
感想は色々あるんだけどそれをぐっと濃縮するとヒューマン作品って事になるんだと思う。
表題作は性同一障害の刀根が好きでいつも聴いてそして歌う歌がジュリーってとこがミソ。
ただこのジュリーの持つ部分の意味がどの世代までに伝わるのかは分からないんだけど、他のどの歌手でもないジュリーって所が凄く良い。
全盛期のジュリーというのはなんかもう性の枠を飛び越えた魅力があった歌手だった。
そして波広の前で熱唱するのがダーリンってとこが良い。
もうこのシーン読むとダーリンの歌と共に想いがどんどん伝わって来る。
この感覚は多分ジュリーを知ってる世代じゃないと分からない部分もあるかもしれないけどそれを抜いたとしてもその魅力は伝わると思う。
他作品もそれぞれ読み応えがあり読み手に余韻を残してくれます。
まんださんは家族愛を描くのが上手い、男同士であっても男女間であっても母息子であっても家族愛というものを描くのがともかく上手くてそれが作品の暖かさでもあり痛さでもある。
描き手側がしっかり土台を持ってる感じがします、痛い話でも温かい話でも根っこは繋がってるみたいな。
派手さは無いけど名作です。
前作『狂いもえせず』とは打って変わって切なさ全開の短編集。
舞台が高校であったり学生時代の思い出に根ざした話が多く、エロは控えめに心情が丁寧に描かれる。
ただし話の主軸は必ずしも恋愛ではないので、それを求めて読むには物足りなさを感じる向きもあるかもしれないが、家族を持った作者ならではのアプローチなのではないかなとも思う。
内容的には、特に表題作は32ページの短編ながら秀逸。
性同一性障害の少年・刀根に好意を寄せられた主人公・波広が、性同一性障害とはどういったものかについての理解がまったくないために、刀根に対して非常にデリカシーのない言動を繰り返す様が胸を刺す。
刀根が、線は細いとはいえ学校では普通の男子として振舞っているところが、心を推し量ればこそ痛々しい。
自分がたてた「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#ans_71862
でおすすめ頂いたこちらの作品。
「短編集です。表題作はクると思います…」とレスを頂きましたが、本当にその通りでした。
こんな名作・・・こんな作品が埋もれていたとは・・・。
教えてくださり本当にありがとうございます。
「クる」と予言されていた表題作「LOVE SONG」は、性同一性障害を持つクラスメイト刀根とその同級生の波広のお話です。
心は女であっても普通の男子高校生と同じ振る舞いや言葉遣いをする刀根が何とも痛々しい。
お話のクライマックスはジュリーのダーリングをカラオケボックスで歌う刀根のシーン。
その必死さ、その後に続くお願いは同じ女性としてどんな気持ち、どんな勇気を振り絞って言ったか推し量ると心が締め付けられて泣けてきました。
思いを寄せられた波広が性同一性障害の知識が全くない故、時折非常にデリカシーのない言葉を発するのです。
彼はごくごく普通の高校生で全く悪気はない。傷つけている自覚もない。
クラスメイトになった時に性同一性障害である事を告げられていて仲良くなったにも関わらず、その事について病気の一種としか捉えていない鈍さ、
どういう病気なのかわからないと自覚しているにも関わらず、特に調べようともしない姿勢にはただただ歯痒いばかり。
無知というのは恐ろしい。無知は時によってなんという凶器になってしまうのだろう。
だからこそこの作品はBL漫画の枠にとらわれず、世代を超えて全ての人に読んで欲しいと思いました。
表題作のほかの作品もどれもしっかり読み応えがありました。
その他、気に入ったのは「あたらしい家族」
受けの母親がしっかりとお話に登場します。大人のカップルなら避けては通れない家族のお話を真っ向から描いていました。
昨日まんだ先生ご自身が流したツィで第一話のDKの話(表紙の2人です)を読み、感動で頭をぶん殴られて買いました。
すごい作品ですね。
ストーリーは結構複雑に絡むのに非常に読みやすく、読後感は爽やかで悲しい。
男子校生二人とものキャラクターがみずみずしい。
ジュリー(沢田研二)の曲『トキオ』と『ダーリング』をモチーフに話が展開し、最後にそれを絡めた山場を迎えます。
刀根の魂の叫びが『ダーリング』と重なり号泣しました。
ぜひ動画サイトで『ダーリング』見てきてください。ジュリー自身がこの頃中性的な存在だったことも含めて意味深いです。(そして当時のジュリーは無敵のセクシーさを放っています)
この本の短編は全て良いですか、表題と4作目の『恋をせずにはいられない』がこれまた胸を締め付けられる青春の郷愁に震えながら頭を壁に打ち付けたくなる傑作です。
今作‥もう随分前に描かれており、まんだ先生はBLに限らず様々なジャンルの作品を発表してみえる、ベテラン作家さんなんてすね。
失礼ながら、ツィートで見るまで存じませんでした。
これからまんだ林檎先生の過去作を巡る旅が始まりそうです。