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表題作マイ・フェア・ダンディ

塩田苑治・19歳・貧乏大学生
山崎・26歳・チンピラ

その他の収録作品

  • ライフ・ライク
  • あとがき

あらすじ

大富豪の生き別れの孫になりすまし財産を山分け―。
そんな途方もない話に飛びついて、条件ぴったりの苦学生・塩田を探し出したチンピラの山崎。
山崎のことが気に入ったらしく、塩田は拍子抜けするほどあっさり話に乗ってくる。
お互い孤児で天涯孤独の境遇だが、バカがつくほどお人好しな山崎と、超現実主義者の塩田。
塩田を孫らしく仕立て上げるため、共同生活を始めた二人だが…?一世一代のラブ&ゲーム。

作品情報

作品名
マイ・フェア・ダンディ
著者
渡海奈穂 
イラスト
前田とも 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403521584
3.3

(8)

(1)

萌々

(1)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
27
評価数
8
平均
3.3 / 5
神率
12.5%

レビュー投稿数3

何気ない会話のやりとりに唸る

天涯孤独の苦学生と、オツム弱めなチンピラ。チグハグなようで、かつて似たような境遇にあった二人が手を組み、大企業の創業者が探している「死んだはずの孫」を仕立て上げて一儲けを企む……という、シリアスなような、コミカルなような不思議なテイストのお話。でもしっかりラブも涙もあるんです。

15才で養護施設を出た山崎の世話をしているのはヤクザの皆上。山崎に取り立て屋や割りのいい仕事を斡旋しているけれども、いかんせんお人好しで騙されやすい山崎は、金を巻き上げるどころか逆に持っていかれてしまって皆上への借金が増えるばかり…。それでも山崎を可愛がっている皆上は報われない男です。個人的には大変おいしいキャラなのであります笑

他方、大金持ちの孫に仕立て上げられた塩田は、学費と生活費を賄うためにバイト三昧。住処を追われ、山崎と同居することになってから徐々にその男前ぶりを露呈していきます。1Kの狭いアパートで二人が繰り広げる慎ましやかな共同生活は、素朴ゆえの男っぽい雑さが妙にリアル。

山崎がホスト時代にお客さんだった梅香さんも含め、ほんと、誰もが魅力的なキャラです。(実はずっと梅香さんのことが気になっている。)お話のメインは山崎が塩田を利用した偽の孫なりきりゲームではありますが、その顛末と共に二人のラブストーリーも同時に楽しめるようになっています。

山崎は自分が馬鹿で、誰の役にも立てないことに引け目を感じていて、塩田の気持ちがわかっていません。っていうか、山崎の理解力が乏しすぎるからだけれど……二人の噛み合わない気持ちを、塩田が山崎に優しく説明して説得するシーンがジワジワと胸に滲みてきます。

作者の描くアホの子はめちゃくちゃ愛おしくて、癒し効果大。

前田とも先生がイラストを手掛ける小説は地味に好みでして、さらりとした幼気な印象の絵柄が逆に色っぽく感じたりすることがあって不思議です。

0

孫探しゲーム

大富豪の孫探しゲームで勝利者となり、大金を手に入れる!
そんな突拍子もない設定の中ではじまった、山崎と塩田の恋。

作者は後書きで山崎を「バカな受け」と書いています。
確かにバカです。しかし愛すべきバカです。
こういう人を騙し・利用する人間の方が大バカ者なのです!!
お人好し過ぎて損をする山崎が、可愛くって仕方がないです(笑)

バカで人情家。そしてロマンティストで寂しがり屋。
チンピラだけどリリカル度が高そうな山崎と、超現実主義者で苦学生な塩田。
二人の微妙に食い違っているのかいないのか?な会話と同居生活が、
面白くてたまりません。

山崎と塩田は、かなり壮絶な人生を送ってきているはずなのですが。
二人に荒んだところがなく(特に塩田は飄々としている)、明るいところが魅力的。
山崎を見守る皆上さんは素敵だと思います。あれこそ漢だ(笑)

渡海さんの作品は、まだ少ししか読んでいませんが。
可哀想な状況下にあったとしても、
どこかスコーンと突き抜けた明るさがあるような気がします。
そこが心地よくて私には魅力的で、ついつい本を手に取ってしまいます。
今回の作品もほのぼのと可愛い雰囲気で、楽しめました。

1

アホチンピラ受

タイトルからするとシンデレラストーリーや逆シンデレラを想像するかもしれませんがそのどちらとも違います。
いや、全く違うとも言い切れないんだけど一般的に想像するシンデレラストーリーでは無いです。

可愛い顔しているアホで不器用でお人好しで馬鹿なチンピラ受な山崎が、財閥の孫として貧乏大学生塩田[攻]を仕立てて一儲け企もうとするんですよ。
2人も早くに両親を亡くし施設で育った身の上なんですが、山崎は苦労しているのにすれていないというより学習能力が無いアホです。
ホストをやれば給料を他に注ぎ込んでしまったり、女に騙されて金取られたり色んな物を買わされたり、そして身を持ち崩して借金取り立て屋チンピラやってますがそこでも元来の性格から悪役になりきれない、そんな馬鹿でアホな山崎。
その山崎が持ってきたトンデモ話に、何故か塩田は乗ります。
そして財閥の孫になりすます為に、山崎宅に塩田は同居して山崎は借金をして塩田の服を買い、高級料理店に連れていったりあげくの果てには自宅で自分が女パートになって(腰にカーテンまで巻いて!!)ダンスレッスンをしたりの試行錯誤っぷり。
読んでいる内に分かるんですが、塩田は苦労してきただけあってなかなか食えないしたたかさを持った男で年下ではあるんだけど、このお人好しでアホな山崎が心配でもあり可愛くて仕方がない。
結局、塩田は本当に財閥の孫だったんですが冷酷と言われていた祖父もそれなりにの愛情を向けつつも結局は思いっきり金より愛を取ります、それもしたたかに。
2人はお金持ちになる訳じゃないけれど、あまりに生きるのに不器用な山崎には塩田が必要だなーとホント思いました。
お幸せに~~っていうほのぼのした読後感。

1

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