イラスト入り
前作「FLOWER」で、恋人の松本を失って初めて愛に気付いた谷脇。急患で手術した自閉症の少年・佑哉に松本の面影を感じて、行き場のない彼を引き取り暮らし始めます。初めは松本の身代わりだったのに、気づけば扱いの難しい佑哉の世話を焼き、可愛く思い始めて。しかし、谷脇が佑哉自身を愛していると気付いた途端、佑哉は谷脇の元を逃げ出してしまいます。
以前、私は自閉症のお子さんの特性について知る機会がありました。この作品を読み、彼らの行動についてようやく腑に落ちた部分が多々あり、木原さんの入念な取材姿勢に感嘆しました。
抽象的な感情を理解できない佑哉という人物を通して描きたかったことは何か。口絵のイラストにある佑哉のセリフ、「思いやりは、なんですか」、「優しさは、なんですか」、「愛は、なんですか」。その問いかけを描きたかったのではないかと思いました。
佑哉は、自分の中に芽生えた谷脇への愛情を理解できなくて一度は谷脇の元を逃げ出すのですが、考えてみれば、恋愛感情というのはひどく曖昧で、苦しい時もあるため、そういう感情の浮き沈みに耐えられない人がいるのは不思議ではないのかもしれません。思いやり、優しさも、愛と同様、目に見えず、それが何かと問われたら、簡単に説明するのは難しいことに気付きます。
ヒントかなと思ったのが、佑哉の大学の顔見知りの金髪男・加藤の言葉。「大切にされてたら、一般的に嬉しいもんなんよ」。大切にされたら嬉しい、だから自分も相手を大切にしたい。優しくされたら嬉しいから、優しくしたい。愛されたら嬉しいから、愛したい。嬉しいと言う気持ちが、思いやりや優しさ、愛の出発点なのかもしれないなと思いました。
でも、佑哉は加藤の言葉が理解できません。加藤に「お前は谷脇に大切にされている」と言われ、大切にされると苦しいなら、『苦しみ』が『好き』ということなのか?と、分からなくなってしまいます。
その後、谷脇が風邪で寝込んで、佑哉に小さな変化が生まれます。佑哉は、再び谷脇と暮らすようになってから毎晩セックスすることを習慣にしていたので、寝込む谷脇の服を脱がせるのですが、だるそうな谷脇を見て、今は『しない方がいいのかもしれない』と考えます。それが思いやりや優しさと分からなくて、そして谷脇が自分にとって何なのか知りたくて、「思いやりは、なんですか」「優しさは、なんですか」「愛は、なんですか」と問うのです。
谷脇の「知りたかったら、俺のそばにいればいい」という返事が、谷脇の成長を感じさせてグッときました。男も女も欲望のままに弄んできた谷脇が、こんなことをいう日が来るなんて。佑哉が自分を好きになるのは砂漠の中で探し物をするようなものだから、気軽にやっていこう。そんな大きな気持ちで佑哉と一緒にいることにした谷脇が、すごくいい男に思えました。佑哉の身の回りの世話をし、同じ質問を10回以上繰り返す佑哉に、細かなニュアンスを変えて応える谷脇は、もうスパダリの域に到達している気がします。
松本の墓参りの後、谷脇は切なくなって佑哉の胸に顔を押し付けます。佑哉は、砂場で泣く子どもが母親に抱きしめられていた姿を思い出し、谷脇の頭を撫でてやります。そして、谷脇が切ないとき自分はそばにいないといけないと思うのです。心で感じるのではなく、形から入る独特のアプローチ。それでも谷脇は慰められたでしょう。少しずつですが、佑哉なりに谷脇に近づいています。
希望が感じられるラストに、愛にはいろいろな形があっていいと、しみじみ思いました。
タイトルのPOLLINAIONとは、植物の受粉のこと。佑哉は、谷脇と自分の行為は男同士で雄蕊と雌蕊じゃないから、セックスじゃないと固く言い張ります。タイトルと共に、谷脇と佑哉の物語は忘れられないものになりました。
裸ん坊シリーズ最終巻「POLLINATION」=植物受粉
最初は何ぞやと思ったけど読み終えてちょっと理解できた気がします。
非常に繊細で難しいテーマだったと思います。あの人間とも思えない愚かな谷脇が自閉症の少年と出会ってどう変わるのか、どう自閉症が描かれるのかドキドキちょっと不安を抱えながら読みました。
松本を失ってから改善されるだろうと思われていた谷脇の行為はほぼ改善されることはなく次に目を付けたのは自閉症の少年。自分に見向きもしない佑哉を無理やり自分の部屋に住まわせて身体の関係をもたせる。性懲りもないどうしようもない愚か者ですよホントに。
でも、確実に佑哉と出会って少しづつですが谷脇が変化していきます。松本の存在も影響があったように思われます。この豹変っぷりにビックリでした。今まで本気で人を想ったことがなかった谷脇が他人のために自分の手を煩わせるような行動を取っちゃうわけですからね。
自分の手から離れていった佑哉を必死に追いかける姿も度肝抜かれました。谷脇の根源的な厭味なところは抜けていませんがホントに谷脇が丸くなりました。にしても、こんだけ多くの人を傷つけて愛してくれる人を亡くしても“人を想う、愛すること”に気付けなかったってホントに愚かだよ谷脇。
「NEED」は大学生になった佑哉視点でお話が進みます。
皆さんも描いていらっしゃいますがラストの佑哉の『愛は、なんですか』と問いかけるシーンがやはり一番印象深い。谷脇の『知りたかったら、俺のそばにいればいい』という答えも感慨深いですね。乱菊さんと同様に私も谷脇自身も知りたいことだろうなと思いました。
確かに『愛』とは何だろうって究極の質問で、たぶんこの先定義づけられることってないだろうし、人間が永遠に問い続けても明確な答えってないものはない。谷脇と佑哉にとっての『愛』はこれから死ぬまで探し続けることでしょうね^^
それとこの「NEED」では自閉症の方に対する接し方ってどうあるべきなんだろうという、木原さん自身のメッセージも含まれていたのかなと思いました。
評価はこの裸ん坊シリーズ3作品通しての“神”です。3作品に収録された「Passed by~scene 1,2,3」もすごく良かったです。3作品に登場したキャラがそれぞれ違う時空間で絡み合ってて素敵なお話があったんだなと、救われた感がありました。
COLDシリーズ同様大好きなシリーズになりそうです♪
谷脇よ、お主懲りなさ過ぎないか・・・。
ガッツがある人だなぁ…。
自閉症の子が最終的なお相手だとは驚きです。自分はリアルでも自閉症の子を何人も見てきたのですが…ちょっと違うかもしれないけれど、愛という複雑な感情を受け止められないのだなぁと…思ってしまった。
最後出した答えが「愛はなんですか」の問いに「俺の傍にいれば分かる」って切ない…。
でも、それしかないんですよ。愛してるって何万回言っても今は伝わらないから。
…これはどうなっていくんだろう…。
谷脇…頑張って…すげぇ応援してしまう。
最低な奴だけど応援しちゃうよ。頑張れー!
自閉症の子ってキラキラしたのが好きですよね。
作中でも金髪のチャラ男・加藤君の金髪を触りまくる佑哉が可愛いw
WEED→FLOWER→POLLINATIONの3作目です。
常識で考えたら「こんな作品出版して大丈夫なの?」と思ってしまうようなハラハラする描写が多々ありますが、そこは木原マジックですんなり受け入れられちゃいます。
最初のWEEDではゲスかった谷脇が作品を通してだんだん本当の愛に目覚めPOLLINATIONの後半には溺愛攻めに覚醒。感動しました。
木原先生はエロくて魅力的なキャラを書くのが本当に上手いなと思います。
読んだのは図書館に蔵書されていた旧版です。だからpassed〜が読めてません。
さらに、三部作の最後を先に読んでしまったって言う悲しい出来事。
後書きを読むまで気が付いてませんでした。なのでこれだけ読んでも違和感はありません。
で、、、何ですか、これはBoysのLoveなんですか?!
Loveが無い(実際にはあるんだと思うが)んですよ。攻めは良く出てくるタイプの誠実じゃ無い医者。受けは意思疎通をしにくいけど、ちゃんと生活できるレベルの自閉症の子。ひょんなことから、攻めの治療を受けて…なのですが、もう恋愛小説じゃ無いですよね。さすが木原音瀬さん、って。
途中に出てくる吉村なんかは典型的な偽善者だし。最初はもしや吉村と他にわきが取り合うのか?とか思いましたけど、そんな型にハマったものじゃなかった。コイツもイケてないクソ野郎だった(爆)
金髪の加藤の方がフラットに物事を見られるいい奴じゃ無いか。
しかし、谷脇の改心?が佑也の力だとしたらすごい。彼がこれから見えない感情を理解して言葉にできる時がやって来るのかな。
二人の間にあるものが愛情だと良いのに。。。
木原さんの作品って、その後、のお話がとても良いので、やはり新装版を手に入れるべきか…と思ったのでした。