日本最大級のハイブリッド書店
私がこの世界に足を踏み入れるきっかけになった作品です。(もはや古典の域?) 先日、かわい有美子さんの両性具有もの「微睡の月の皇子」を読んでてまた読みたくなってしまいました。かわい作品の方は、両性具有といっても当人が別段苦にしてないので(なんてったって神様なので。恋人も神様だし)エッチのバリエーションが増えてラッキー、くらいなライトさでしたが、地上に生きる普通の人間、それも封建貴族の嫡男という立場ではあまりにつらい。まして本作の主人公シュリルは、そのことで実父に忌み嫌われ、殺されかけてもいる。彼にとってはすべての不幸の発端で、それこそ命がけで守るべき秘密だった。
でもその秘密は、彼を妹のかたきと狙う隣国の貴族マクシミリアンの手で暴かれる。革命に乗じてシュリルを自分の城に拉致監禁し、凌辱の限りを尽くす。最初は激しく抵抗するシュリルだが、マクシミリアンの復讐の意味を知り、甘んじて受け入れる。不本意にも自分が死に追いやってしまった可憐な乙女への贖罪として(それも彼の肉体の秘密と無縁ではないのに・・・)。
日ごと夜ごと繰り返される行為が、やがて暴力から愛に変容する過程を、山藍さんの筆は丹念に、かつドラマティックに描く。重すぎる秘密を独り抱えて誰にも心許せず、親にすら抱き締められたことのなかったシュリルに、初めて人肌の温もりを教えたのはマクシミリアンだった。
2人の関係が動きだす矢先、周囲もにわかに騒がしくなる。マクシミリアンには王女との縁談が舞いこみ、シュリルは母国へ呼び戻される。優秀な軍人でもあり、日頃は怖いもの知らずに己の意志を貫くマクシミリアンだけど、この時だけはシュリルを引き留める勇気が持てない。(今更どの面下げて好きだなんて言えるかよって感じですね)
一度は国境を越えて引き裂かれる2人。かねてよりシュリルに執着していたラモン将軍は、彼を完全にわがものにするため「女として洗礼を受け直して妻になれ」と迫る。身体の秘密を公表するくらいならいっそ・・・死を覚悟したシュリルは生まれて初めて周囲に流されず自分自身で選ぶ。雪の中馬を駆り、再び国境を越える。最後にいちばん会いたい人に、ひとめ、と。
旧版の後書きで山藍さんもおっしゃってましたが、マクシミリアンは本当に不器用な男です。なかなか本音を口にしないから、深い想いはその行動から汲み取るしかない。かたやシュリルは恋愛面では生まれたての雛鳥同然。いきなりそんな難易度の高い技を要求されても無理というもの。おまけに自分に自信がないから自ら「獲りに行く」という発想もない。命がけで会いに来たのにマクシミリアンの「奥方」の存在を思い出してドアで立ちすくむ。奥方が誤解してはいけないと女物の着替えを断るシュリル。なんていぢらしい・・・不器用なのはよくわかったから、早く何とかしてやれよ、と思わずにいられませんでした。
ラモンと2人がかりで凌辱してシュリルを立ち直れないほど痛めつけた翌朝、マクシミリアンがシュリルに出した食事がいかにもでした。激甘のお菓子とかクリームたっぷりの苺とか、一見???なメニューでシュリルも困惑してましたが、実は「泣いている子どもをあやすための特効薬」で、その効能は昔彼自身が身を以て知っていたんです。そんな分かりにくいやさしさが、彼のいちばんの魅力だと思う。ラモンもなあ・・・。シュリルにマジなのは解るけど、相手の一番嫌がることを強要する時点でアウトでしょ。エッチの時も若さゆえの持久力とかモノの立派さだけ誇られても…脳みそ総筋肉の体育会系馬鹿って感じで、ラストは「お呼びでない」感満載でした。そこらへん不器用でもマクシミリアンはちゃんとシュリルの望むものを見抜いて与えてあげてたと思うよ。
エロシーンは回数といい濃さといいたっぷり詰め込まれてますが、山藍さんのはどれ一つとっても他と同じものがなく、安易な読み飛ばしを許しません。そしてどんなに淫猥な表現を連ねようと格調高さを損なわない。
わたしの「原点」であり、記念碑的作品なのですが、今なお色あせるどころか、輝きは増すばかり。うっかり読み返すと、最近のBL作品があまりにお手軽に思えてしばらく読みたくなくなるのが難点といえるかも。
大袈裟かも知れないが、驚愕しましたよね。BLでここまでの作品があるとは思わなかった。
山藍紫姫子先生の世界を知ったのもこの作品。
本屋でこのシュリルが表紙じゃなかったら目にも止めてなかったと思う。
BLコーナーじゃなくて、一般の小説コーナーにありましたから。
性器に蝋燭の蝋をたらすシーンは本気で嫌がってるし、これは残酷だなと思った。マクシミリアンは良いけどラモンは私も嫌だ。
ちょっと精神的に参ってしまったシュリルには可哀想で、誰にも愛されない、愛してもらえない、殺して欲しいと懇願するシーンには涙も出そうになりました。
でも、あれだわ。こういう受けが酷い仕打ちされてるのとか好きなんだ。
シュリルって妊娠出来るのか?いつの間にか妊娠していて病気かも知れないって悩んでるシュリルとかみたい。
生まれたら、双子で一人は両性具有っていう妄想。
攻・マクシミリアン(20代後半)
受・シェリル(22)
間男(?)・ラモン(シェリルより年下)
シェリルには妻がいました。
しかしお忍びの旅先で賊に辱められ、自殺してしまいます。
シェリルの妻はマクシミリアンの妹でした。
妹を死に至らしめた復讐として、革命に乗じてシェリルを浚います。
浚う途中で湖に落され水濡れに。
その衣服を奪い取ろうとしたマクシミリアンは、シェリルの異常な怯えに興味を覚え、シェリルの秘密を知ります。
復讐には絶好の秘密。
最初は本当に…恥辱陵辱拷問です。
間男(笑)のラモンと一緒にやりたい放題。
しかし雷に我を失い正気を失った様子のシェリルに、マクシミリアンの復讐心が少しずつ消えてゆきます。
シェリルは父親に殺されかけた事があり、一時は廃嫡されていたにもかかわらず弟の死によって再び呼び戻され、しかし弟のデスマスクを傍らに暮らす父から怨み呪われる少年時代を過ごしていました。
その記憶が雷とともに蘇って正気を失うほどに苦しむシェリルを知り、マクシミリアンに憎悪とは別の感情が生まれることに。
革命が終わってシェリルを国に帰すことになり、ラモンが現れます。
ラモンはマクシミリアンに激しく嫉妬しシェリルを責めますが。
シェリルの秘密を楯に取り、洗礼を受けなおして妻になれと迫るラモン。
生まれてからずっと力の強い者に従い、希望を抱かず、流されるままに生きてきたシェリルは、初めて自分の望みのままにマクシミリアンのもとへと走ります。
いつものレビューのようにあらすじを書き出すと、なんだか軽く感じられますが…物語は重厚です。
濃厚で、エロティックで、ドラマチックで切ない。
強姦から始まった関係が、いつしか互いに愛し合うように…というBL定番のストーリーなのに、心理描写も詳細で自然。
これまで読んできた定番ストーリーがご都合っぽく思えるくらい、読み応えがありました。
筆力は凄いし、他の文庫よりも詰まった行間・ページ数の長編を、全く飽きさせずに最後まで読ませてしまうパワーがあります。
マクシミリアンの苦悩も、シェリル心身の開花も、ラモンの執着も。
(ラモンはシェリルの秘密を知る前から執着してたよなぁ…)
全部が愛しい作品でした。
1991年の作品なので、むしろこの作品がその後のBLテンプレの基礎になったのかなぁ、なんて思います。
圧倒的です。
耽美というと手に取るのをためらわれる方もいるかもですが、耽美です。
で、一見難しそうに見えるかもですが、あらすじそのものは極めて単純なので、読めば簡単に物語世界に入っていけると思います。
直接的な心理描写の少なさも魅力だと思います。
正直BLには、つらい苦しい悲しいこの胸に生まれた感情は何だ?などと(←はいはい、恋心に決まってるだろと言いたくなる)、シーンごとにくどくどしい心理描写のある小説が多く、私はそれがどうにも好かんのですが、この小説にはそれがない。
長いお話なのにもたつきを感じないのは、このくどくどしさがないからだと思いました。
でも、登場人物の気持ちはちゃんと伝わってくるんですよ。
くどくどしいというか、極めて丁寧に描写されるのは凌辱シーンです。デコレーションの限りが尽くされている。
情も快楽も一片もない最初の悲惨な凌辱シーンからはじまって、どんだけバラエティに富んでるんだよと言いたくなるような濡れ場の数々の圧倒的なことといったらもう。
とにかくエロス。エロスの神様ありがとう。痛くて生々しいのに強烈に美しいです。この小説が耽美の代表作と呼ばれるゆえんだと思います。この手の耽美な凌辱シーンは女性にしか描けないと思います。
ラスト近くで主人公のシュリルが雪が降りしきるなかを馬で疾走していく場面があるんですが、訳のわからない涙が出ました。
ああ、綺麗だな…と思って。
名作です。
BL好きなら一度は読んでおくべき作品だと思います。
のちの作品に様々な影響を与えてますよね。でも、似たようなコンセプトの作品でこの作品を超えるものは、いまだ出てないなと思いました。
感動。
読み終えた途端 涙が止まりません。
美しいシュリル。(受け)
男も女も超えた素晴らしいモノを持っているのです。
嫌悪感は一切ありません。
シュリルが 気高く 綺麗だから。
どんな事をしても奪いたいと想わせる美しい人。
攻め二人(ライバル)は 本当に愛してしまったのです。
好きだからこそ ひどく虐めたい。
男の感情がうまく表現されています。
ライバル二人の お互いへの嫉妬も醜いほどむき出しているし。
最後はどちらかと納まるのですが 読んでのお楽しみです。
名作です。
BL好きは 読むべし!!