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表題作硝子の街にて(19) 風 BLOW

シドニー・ホプキンズ/刑事/33歳
広瀬伸行/ツアーガイド/30歳

あらすじ

悪夢ではなく、現実なのだ……
その日。二機の旅客機がツイン・タワーに激突した。ニューヨークを描き続けてきた著者、渾身の鎮魂歌。

2001年9月11日。私たちは決してこの日を忘れることができないだろう。空はどこまでも高く、蒼く、爽やかだった。前夜、ささいな喧嘩をしたノブとシドニーの目に映ったものは、紅蓮(ぐれん)の炎を上げるツイン・タワー。NY消防局のスティーブはシフト明けだったが、出動命令がだされるやいなや、ビルへ向かって飛び出していく。それぞれの9・11が始まった。どこまでもピュアなNYラブストーリー。
出版社より

作品情報

作品名
硝子の街にて(19) 風 BLOW
著者
柏枝真郷 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
硝子の街にて
発売日
ISBN
9784062557849
4.7

(4)

(3)

萌々

(1)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
19
評価数
4
平均
4.7 / 5
神率
75%

レビュー投稿数2

忘れられない日を迎える

舞台は2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロが起こった日。
BLにしては珍しいかもしれませんが、実在する人物らが出てきます。

読んだ時の率直な感想は、よくこれを書いたなぁと。
この街で暮らす主人公たちを書くからには、いつかは書かないといけないと言ってましたが、これを書くには精神的にも、下調べなどの意味でも、もちろんBLとしてでも、非常に難しかっただろうと思います。
それをまた、色んな考えを持った人々が出てきて、色んな観点で書いています。

ここで行われた行為は絶対に許せるものではないですが、それはまたこの本の感想とは別のものになってしまうので、この本と作者さんを見て私がただ思ったことは本当にニューヨークが好きなんだろうなぁと。
この日が来る前に物語を終わらせることも考えたと書いてらっしゃいましたが、出版社さんとも相談した結果書いてもいいと言って頂いたそうです。
ニューヨークが好きだから、おそらくこの先未来までもずっと一番辛い日になるかもしれないこの日を避けたくなかったのではないかと思います。

この日の朝、伸行とシドニーは些細なことで喧嘩したまま出勤します。
本当に些細なすれ違いなのですが、こんな喧嘩でさえ幸せだと後で思えるくらい、その日までは日常は当たり前にあるはずのものだったんですね。

BL的な感想は全くと言っていいほど書けないのですが、というより、これはお話だと割りきって客観的に読まないとかなり辛いです。
もう読んでる間辛くて辛くて、私はほんとにBLを読んでるのか?と思いました。

幸いにもシドニーと伸行は直接の被害には遭わず、シドニーは警察として市民の避難のために走り回り、伸行も自分が勤める日本の観光会社の客が行方不明のため奔走します。
そしてシドニーの恋敵で消防隊員であるスティーブは非番にも関わらず、逃げ遅れた人を助けるため標的になったツインタワーの中へ入っていきます。

その後ツインタワーが一つずつ崩壊していく様子が詳細に描かれているのですが、私はもうスティーブが死んじゃうんじゃないかと気が気でなくて…。
読みながら大分顔がゆがんでいたんじゃないかと思います・・・。

TVでは離れた場所からの映像しか流れなかったから、出来るだけ人間の、タワーの下に立ったときの本当に小さな視点から描きたかったということですが、よくこんなにリアルな情景を書けたと思います。
リアルであればあるほど、書いている方はかなり辛かったのではないかと思う。

暗いシーンもありますが、緊急事態に遭って出てくる人間の本能や生き延びようとする姿が前向きに描かれています。
携帯電話が繋がらなくて他の街にすむひとが中継してくれたり、知らない人同士で助け合ったり。
伸行は日本の観光客の安否確認と、空港が閉鎖されてしまったけど、必ず客を全員無事に日本に帰そうと決意します。

伸行が勤めているのが日本の会社で本当によかったと思いました。
何となく残っている日本感がテロの標的になった街のなかにあってちょっと読んでるこっちに安心や和みをくれるというか。
この会社の事務所の中がなんだかちょっと気を休められる場所でした。
シドニーやスティーブは公的な立場からどうしても危険に突っ込んでい
てしまうので・・・。

結局、伸行とシドニーは再会できるのかわからないまま、長い一日はまだ次回へ続きます。

でもこの話のMVPはスティーブだなぁ。
怪我をした人を命がけで崩落するビルから救い出し、骨を折ったのにまた出て行ったスティーブ…でも彼にはこれからまだまだ辛いことが待っているんですよね。

でも不謹慎な言い方かもしれませんが、お話としてはとても引き込まれてしまい、途中でやめられなくて一気に読んでしまいました。
小説というより、一種の映画を見ているような気分でした。

4

第19巻。とうとうその日が来た

前巻あとがきで予告はされていましたが、このNY物語でもついに2001年9月11日が訪れました。冒頭からすぐにその日の朝が始まります。午前8時半過ぎには飛行機がビルに衝突し、史上最悪とも言えるテロ事件が発生します。

日本の旅行会社社員から見たあの日、警察官から見たあの日、消防士から見たあの日、それぞれの視点から詳細に描かれ、まるで自分もそこにいるような臨場感。悲惨な出来事の数々に涙を抑えられません。こんなにもNY市民目線であのテロを描いた小説ってBL以外でもあまりないと思います。柏枝真郷さん、もっと評価されていい方だと思います。

柏枝先生はこの物語を書き始めた時はまさか現実のNYでこんな事が起こるとは思ってなくて、日本人の自分がこれを書いていいのだろうかと葛藤されたそうですが、他にも素晴らしいNYの物語を書かれていてNY愛のとても強い先生だからこそ書けたんじゃないかと私は思います。BLファンはもちろんそれ以外の人々にも響く本だと思います。

さて朝ケンカ別れしたままだった恋人達、ノブとシドニーは事件後話はできたけどまだ会えてはいません。次巻では会えるのか。あのテロでは300人以上もの消防士が殉職されたそうなので、読者も登場人物達も心配なのはスティーブ。重々しい3ショットの表紙からして不穏ですから。現場近くに職場のあった心優しいシドニーの元彼・ロッドも心配です。彼らの運命がどうなるのか皆様の目で確かめて頂きたいなと思います。

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