首にかけた鎖は愛か憎悪か──。

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表題作FRAGILE

青池達郎、大河内の才能あふれる元部下、27
大河内友巳、性悪なサラリーマン、31

その他の収録作品

  • ADDICT
  • あとがき

あらすじ

大河内の人生は、バラバラに壊されてしまった。一人の男の手で―。才能あふれる部下・青池を嫌い、一方的に蔑ろにしてきた大河内。我慢の限界を迎えた青池は大河内に襲いかかるという事件を起こし、社を去っていく。目障りな存在がいなくなり安堵したのも束の間、ある夜、その青池が大河内の自宅で待ち構えていた…!大反響の雑誌掲載作に大量書き下ろしを収録。二人が踏み込んだ愛憎の迷路のたどり着く先は―。

作品情報

作品名
FRAGILE
著者
木原音瀬 
イラスト
高緒拾 
媒体
小説
出版社
アスキー・メディアワークス(角川グループパブリッシング)
レーベル
B-PRINCE文庫
発売日
ISBN
9784048670029
4

(287)

(161)

萌々

(51)

(26)

中立

(18)

趣味じゃない

(31)

レビュー数
72
得点
1105
評価数
287
平均
4 / 5
神率
56.1%

レビュー投稿数72

最後の最後まで!!

いや~・・・ 何と言うか読んで疲れました。正直、「軽く明るくハッピーになりたい」人は読んじゃいけませんね。
元々木原さんと言う作家を知ってる人は絶対そんな事しないと思いますが、表紙だけ見て「あれ?監禁もの?」と興味本位で読んだら、痛い目に遭うこと間違いなしです。
私はライトキハラーなので、全ての木原作品は読めてないのですが、これは大丈夫でした。好きの部類です。

とにかく痛い。お互い血がどくどく流れ出てそのまんまな感じです。
気持ちがすれ違うにも程があるだろう!?ってくらいのすれ違いっぷり。
きっかけは、とても好みのノンケ男性にゲイの男が惚れてしまったというありふれた出来事だったのに、大河内(受け)の性格の悪さと、青池(攻め)の執着が相乗効果でここまで悪化させてしまったんですね。
多分、青池が粘着系ゲイじゃなければここまで悪化する前にお互い離れて事なきを得たんでしょうが・・・

殺したいほど憎んでたはずなのに、やはりどうしても最後には甘い青池が切なかったですね。
どうしてそこまで惚れたのかなんて、結局は本人にしかわからないですから。
そして、大河内の性格の悪さは、BL界では珍しいですが、フツーの現実社会には結構いそうな人です。
したたかで、自分の保身以外には興味がなく、それで周りを傷つけても切り捨ててもお構いなしの男が、監禁によりひどい状態になっていくさまが痛々しいです。
しかもそれを見た青池も不快に思ってるし!
監禁ものの新機軸!? とも言えるかもですね。BLの監禁は何だか閉じ込めた瞬間からエロ展開になるんですけど、これは本当に生きるか死ぬかという、ギリギリの所を汚い所まで見せちゃいますからね・・・

とりあえず救いはあります、今回は。
・・・そこまで頑張って読んでみてください。

28

陥れる、執着する

ず~っと前に一度読んで、心に傷を付けた一冊です。
好き嫌いは確かに分かれると思うんだけど、読んだ人の心には必ず残り続ける作品だと思うのです。それくらい衝撃的。
他は結構ポロポロ忘れるんだけど(若年性アル…いやいや)、これは忘れられないです。
恋です!なんて言葉で表せないんだけど、青池の執着心と、二人がお互いを貶めるための執念は…どこかで愛にも近い何かな気もしなくもない…(曖昧な言葉になるけど、読んだ人なら誰しもそうなるはずです)
萌えるか、萌えないかって言ったら、萌えません。なんだかそういう感覚とは対極の気持ちを持ちました。一冊を通して、狂気じみてる…。
でも、読んで良かったとも思うんです。
こんなに人を憎んだり、執着する感覚は普通に人生で味わう人は少ないんじゃないかな。
クライマックスの青池に対する大河内の一言には、鳥肌が立ちました。
上手いなぁ…木原先生は。


例えば、どちらかがこの先家庭を持つことになったとしても、二人の歪んだ関係は長く続くんだろうなと思います。
絞め殺しの木みたいに、お互い絡み合って、人生を歪めていくんだろうなぁ…。



これ、怖いもの見たさで音声化して欲しいです。
帝王×遊佐さんとか、良い作品に絶対なると思うんですよね。
宝くじ当たらないかなぁ…、BLの神様!お願いします!オラに力を!


読んでみてください。

23

どちらに肩入れしますか?

上の人間に媚びへつらうことしか能がなく
罪のない真面目で有能な部下を執拗に苛めたおし
プライドを踏みつけた上司。

元上司を犬のように鎖をつけ裸で監禁し
人間としてのプライドを毟り取る元部下。

最後まで読み終えた後、自分がどちらに肩入れしているか
それが知りたかった。
ま、どっちも酷いんだけどねーw

「FRAGILE」=脆い
で、はじまり
「ADDICT」=中毒者
で、終わる。

ADDICTとなったのは、青池でも大河内でもなく読者である自分。
やっぱり青池に肩入れして読んでしまったから
異様なシチュエーションで繰り広げられる愛憎劇に
酷いとは思うけど、よかったな・・・
なんつー気持ちになってしまったよ。

木原先生の作品の真価は、読後感なんですよね。
読んでる間も、もちろんおもしろいんだけど
読後、悶悶とエンディングのその先を考えてみるのが楽しい。
そんでもって、同じ本を読み終えた人の感想がまちまちなのも
木原先生ならではなのではないだろうか?

21

あとがきまでが作品でした

好みからすると「しゅみじゃない」なのですが、
そんな、自分のものさしや尺度を捨てざるを得ないような、圧倒的な力のある作品です。

まず、自分の中の「鬼畜」のイメージがいかに甘かったかということを実感。
驚愕の連続で、心臓がバクバクいいっぱなしでした。


特に後半激しくネタバレします******************

自分本位で人を見下し、職場の後輩の青池(攻め)を徹底的に苛め抜き、青池がゲイであることをバラした上、退職に追い込んだ大河内(受け)。

いつか大河内に復讐をすることを誓い、そして彼に対する暗い愛情を心に秘めた青池。

二人の愛憎劇です。

監禁。
凌辱。
小スカあり。

大河内の
「ひぃぃぃぃ!」
「ぎゃあああ!」といった
色気のない断末魔の叫びが、行為の異常性を物語っています。

鎖で監禁され、絶望する大河内。
大河内を掌握し、凌辱を繰り返す青池。
その場面は目を覆いたくなるくらい酷いもので、読んでいて、精神的にきつくなったほどです。

やがて、お互いの計算や思惑、心の機微や、相手の態度に心を動かされる様子などが見えるようになり、物語が動いて行きます。

印象的だったのは、
鎖で繋がれ自由を奪われた状態で、長時間たった一人で放置された大河内が精神的に追い詰められ、シェーバーで自身の全身の毛を剃ってしまうくだり。
「だって…何もすることがないから…」と涙をためて訴える様子は邪気がなく幼子のようで、思わず心を揺さぶられました。

ご褒美(本)を与えると嬉しそうに笑う大河内。
帰宅の遅い青池を責め、しがみついて涙をこぼす大河内。
いけ好かない会社員だった頃の面影はなく、どんどん可愛くなって行く大河内に完全に萌え☆でした。

そのため、
“大河内側の心情の描写が一切ない”という伏線を見落としました。

案の定、青池は大河内を心から愛してしまいます。
凌辱している相手を愛してしまったことの葛藤。
一方、大河内は抵抗をしなくなり、青池に身をゆだねるようになるのです。

凌辱ではない、愛のあるセックス。
抱き寄せて髪を撫で、初めての口づけを交す二人。

大河内は、手錠を外しても逃げません。
青池も、一抹の不安を抱えながらも、大河内の心を疑おうとはしません。

私が好きなシーンは、初めて手錠を外した日の朝。
逃げることを選ばず、自由になった手で大河内がまずしたことは、青池の鼻をつまんでいたずらっぽく笑うことでした。
そしてそれを抱きしめる青池。恋人同士のような風景に、胸がいっぱいになりました。

どうかこのまま終わってくれ!と思いましたが、ここで終わってしまったら、この作品がここまで支持されている理由が弱く、終盤は、ヒヤヒヤしながら、「何かが来るぞ…来るぞ…」と思いながら頁をめくっていました。

うわぁぁ!そして来たぁぁぁぁ!!
空っぽの部屋。
「死ね」のメッセージ。
大河内の心情が描かれなかった理由。
鋏で、自らの喉をかき切る青池。

容赦のない怒涛の展開です。
心身共に健康な方以外にはおすすめ出来ません(-_-;)

そしてエンディングを迎えます。

このエンディングがとても不思議。
青池は、大河内と一緒に食べようとぶどうを取り寄せしているし、大河内は、ぶどうの実を食べさせてもらうために口を開けている。
そして、大河内は「こんな自分は不幸だ」と思っているという、まんざらでもない余韻を残すラスト。

これは作者さんのあとがきで補完されます。
そっか、やっぱりそうなんだ!!という、安堵と嬉しさがありました。
あぁ、このラストで良かったなぁ…。

誰にでも気軽におすすめ出来る作品ではありませんが、鬼畜モノが苦手という方にも、ぜひ一度読んで頂きたい作品です。

20

まさに激辛料理

初めて読んだときは過激な描写に圧倒されて、あとがきの「ハッピーエンド」が納得できなかったのですが、繰り返し読むうちに、傷つけ合い、相手の嫌なところも体も全て知り尽くした男二人がたどり着いた結末と考えれば、これはありだと思うようになりました。

表題作「FRAGILE」は、優秀な広告プランナー・青池が卑劣な上司・大河内に凄まじい復讐をする話。
大河内が犬のように裸で首輪につながれ、辱められ、プライドをズタズタにされる描写には背筋が凍りました。青池の怒りの凄まじさ。中でもドッグフードの場面は吐き気を感じるほど。
大河内の視点で書かれているので、途中までは青池がただ恐ろしく残酷な男にしか見えなかったのですが、大河内が入院した時には大慌てしたり、お粥を大河内にかいがいしく食べさせたりするあたりから、何かあるような気がしてきました。そして大河内に「愛していますよ」と言う…。青池の中に隠されている感情がほんの少しだけ暗示されて、この話は終わります。
人の自尊心は壊れやすく(=FRAGILE)、理不尽に傷つけると痛い目にあうという教訓は感じても、続く「ADDICT」を読まなければ、なんだか消化不良で。

一転して、青池視点で語られる「ADDICT」では、真面目で繊細な青池の人間性が浮き彫りになり、驚きました。卑劣な男と分かっていても、好きと言う気持ちをどうしても手放せない。大河内の反応にいちいち傷つく青池が哀れです。
憎しみが薄れ大河内を性的にいたぶるようになると、青池は心を手に入れられない虚しさを感じ始めます。この「調教」が後に大河内の中でじわじわと毒のように効いてくる仕掛けが面白い。
たまらず青池が「好き」と口にした時から、大河内は密かにそれを利用して復讐の機会をうかがい、強烈な仕返しをします。しかし、傷ついた青池が自爆するような行動に出て…。渡辺淳一の「失楽園」を思い出しました。若い人はしらないかもしれませんね(笑)。失楽園は合意の上でしたが、こちらは青池の強制。そんなに大河内がよかったのか。青池も「自分は頭がおかしいんだろう」と言っていますが、有能な男が卑劣で臆病な男にここまではまるのは、まさに中毒(=ADDICT)。
一方、大河内の体も、知らないうちに青池の「調教」で青池中毒に。物語の最後、大河内の視点に切り替わり、青池に付きまとわれる自分は最高に運が悪い、不幸、とつぶやくのが、まったく説得力がなくて、笑えます。青池に「もう一個」とブドウを催促する言葉のなんと甘いこと!汁気たっぷりのブドウがまたエロティックで。体の相性が良く、取り繕う必要が全くないないなんて、青池は見栄っ張りな大河内には最高の相手だと思います。本人は認めていませんが。

一番面白かったのが、大河内が女性との普通のセックスが激辛料理の後の豆腐料理のように味気なく感じるというくだり。お豆腐、おいしくてヘルシーですが、辛い料理のおいしさを知ってしまったら、戻るのは難しいですよね。すごい説得力です。
この作品が激辛料理のようだと思いました。辛さに慣れると、酸味、旨味、甘みをじわじわ感じて。その混然一体のおいしさを、読み返して何度でも味わいたくなります。

19

この作品が収納されている本棚

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