帰宅

帰宅
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  • R18
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レビュー数
2
得点
35
評価数
8件
平均
4.4 / 5
神率
62.5%
著者
 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
角川書店
シリーズ
ルビー文庫(小説・角川書店)
発売日
価格
¥480(税抜)  ¥518(税込)
ISBN
9784044362010

あらすじ

事故で妻を失い、一人息子も大怪我を負った中堅俳優・佐伯は事故後、異常な愛情を示す息子を苦悩しつつも受容するが、彼は本当の息子ではなかった。表題作他、デビュー作に書き下ろしを加えた初の作品集。

表題作帰宅

佐伯裕造 人気俳優 
裕造の息子の同級生の達実? 高校生 

同時収録作品一枚の遺書

近江政彦 中3
須藤真澄 中3

同時収録作品ぴすとる

山内光史 秀明の2年上
秀明 中3 

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レビュー投稿数2

剛先生の、極・初期もの。

茶屋町イラストを捜していて遭遇。
剛先生の作品って、ちゃんと“好き・嫌い”が別れるので、これはどーなの?と探り探り読み始めるのですが、この薄い文庫本の1ページから嵌っていました。

以下、起承転結の起~承部分をネタバレしています。

『ピストル』
秀明は苛められ易い。
不登校を続ける中暇つぶしのゲーセンで、自分を褐上げしていた嫌な先輩・山内光史と出逢ってしまう。
下卑た表情、しっかりとした体躯と怒声に竦み上がった秀明は、光史の言いなりにコンビニ強盗の片棒を担いでしまう。
そこから2人の、支配する者・される者の逃避行が始まった・・・

『帰宅』
俳優・佐伯の元に、妻と一人息子が爆発事故に巻き込まれたと知らせが入った。
警察で妻の焼死体を確認・・否、恐ろしくて出来なかったのだが、息子は重体で病院に運ばれたとの報に胸を撫で下ろす。
人気が出始めてから忙しさにかまけ、息子とは溝が出来ていたから、これからは妻の分も出来る限りしてやろうと決心する。
だが、退院し帰宅した息子は今までと全く違う。
佐伯にべったり付きまとってくるのだーあまつさえ恋人の様に。佐伯の不安は深続きまる。

『一枚の遺書』
真澄が自殺した。
遺書には、苛められたと自分のイニシャルが記されていた。
2年で同じクラスになって仲良くなって、クラスの誰もが親友だと苛めなど無かったと証言してくれている。それどころじゃない2人の関係は良好だった。
何故あの真澄が、自分を陥れる様な事を?

3作ともに根底に「孤独への嫌厭」があります。
『帰宅』だったら、家族を突然亡くした中年男のこの先の不安が、偽りの関係を許容したように、その先が暗かろうとも虚構だとしても、小っさな光に縋っているんです。
何だか、夜の光に集まる虫みたい。
今が孤独・将来が孤独、自分の恋心や居場所が叶えられない孤独。
それらが見えてしまった登場人物達が、暴力・策略・請願・妥協を術として使い、どうにかあがなっているのを、AパターンBパターンとして見せてくれた3作品だと思います。
誰もが考えたくないから蓋をしている問題なんですよね。
この暗さ、癖になりそうです♪

1

人と人が寄り添うことの尊さ

三つのお話が収められた短篇集。表題作「帰宅」と「一枚の遺書」には読了寸前に味わう、ある共通の感覚がある。最後の文章まで辿り着くと与えられる、するりとしのび寄ってくるような悲しみの感覚。それぞれのタイトルにもなっている「帰宅」と「一枚の遺書」というキィワードが、あざやかな真実を見せてくれる、巧緻に仕掛けられた鋭さがある。

中堅俳優の佐伯は爆発事故で妻を失い、ひとり息子の尚紀も火傷と、顔面に大怪我を負った。事故の前にはろくに話もしなかった父と子だったが、失う恐怖を知った佐伯は、いい父親になろうと決心する。
本当の息子ではないかもしれないという戸惑いを押しのけて、誰かが待っていてくれる家に帰る喜びは大きい。佐伯に執着し懇願してくる尚紀の姿に鬼気迫るものを感じ、恐れながらも、愛されることの喜びを佐伯が見出す糸口として、「帰宅」という事象があるのだ。
禁忌を犯して求め合った後で、ふと我に返るように、ぽつりとこぼされた一言。それに込められた万感が、胸に迫って苦しい。佐伯が尚紀を受け入れてなお、空虚がまだシンと存在している、それが、じわりと怖いようでもある。

「一枚の遺書」は、高校生続きの近江政彦がある朝、クラスメイトの少年の自殺を知らされ衝撃を受けるところから始まる。自殺した須藤眞澄は、政彦にいじめられていたと、恨みの言葉を連ねた遺書を残していた。
なぜ眞澄は自殺したのか。なぜあんな遺書を遺したのか。政彦は周囲に問い詰められても、断罪されて然るべきだと口を閉ざしたままだ。自分の本心からも目をそらし、向き合うことを恐れる彼を、受け止めてくれる存在が現れる。眞澄の自殺を調べる刑事と、彼らの担任教諭という二人の大人だ。
著者の作品には、青少年の健全な育成を担う大人のあるべき姿が描かれる。「ぴすとる」においても、閉塞感に悩まされ日常を逸脱した少年と向き合う一人の刑事が、ラストにさらりと書かれている。著者の信念なのだろう。あからさまでありながら厭味を感じないのは、著者の切なる願いがそこに見えるからだと思う。

このお話は読後の後味がいい意味で、悪い。とても遣り切れない。誤解がとけても、どんな真実が明らかになっても、取り戻せないものがある。
政彦は大人たちに自分の真実を語る。しかし本当のカタストロフが待つのは、さらにその後、不意打ちのように。これは、苦しい。嬉しくも、悲しくもあり、ただひたむらに出口のない感情に見舞われて苦しい。救いは、そこには確かに愛しか存在しなかったことだ。

「ぴすとる」もまた結末に近付く頃、それまで見えていたものがガラリと姿を変える。しかしこれは悲しみばかりではなく、やり切れなさの向こう側から希望が微笑みかけてくれる。
三編をとおして紡がれる人と人が寄り添うことの尊さ。ぜひ多くの人に読んでもらいたい一冊。

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