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表題作薔薇色の人生

百田保男(モモちゃん),36歳,前科持ちの風俗店のマネージャー
浜渦論(ロンちゃん),30歳,刑事

その他の収録作品

  • 年上の恋人
  • 後輩の恋人

あらすじ

愚かな生き方のせいで、家も家族もなくしてしまった百田。生きていても仕方がないと自棄になりかけた時、偶然通りかかった警官に制止される。生真面目な正論に腹を立て、その警官・浜渦に「抱かせろ」と無理難題をふっかけるが、彼はすべてをなげうち、百田を救ってくれた。彼のために生きることを誓う百田だったが…。ひたむきな恋がすべてを変えていく。大人気のモモ×ロンちゃんシリーズ!
 書き下ろしショートつきv
出版社より

作品情報

作品名
薔薇色の人生
著者
木原音瀬 
イラスト
ヤマシタトモコ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784862634221
4.5

(175)

(128)

萌々

(31)

(8)

中立

(2)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
33
得点
790
評価数
175
平均
4.5 / 5
神率
73.1%

レビュー投稿数33

泣きじゃくってしまった

そんなに号泣できるような作品ではないと思うんですが、なぜかボロボロに泣きじゃくりながら読んでしまいました。
木原音瀬さんがデリヘル業界にやたら詳しいのにも驚きました。知りあいにデリヘルのオーナーやってる人がいて、たま~に事務所に遊びに行ってたんですが、登場するデリヘル嬢について、『こーゆう娘、いるいるw』とか思っちゃいましたよ。彼女たちはたいがいわがままでルーズなんだけど、あっけらかんと明るくて、人なつこいのだ。意外と貞操観念が固かったり。(ゆきずりのエッチなんてあり得ない!痴漢はシネ!アタシに触りたいなら金を出せ!みたいな話を聞いて、何度笑ったかw)

前置き長くなっちゃった。
攻めのモモは、本当に可愛い男だなァと思いました。
刑務所に何度も入り、社会の底辺を這いずるように生きてきた、本当にバカな男だ。堕ちる人間の、ひとつの典型的な転落コースを辿っていたモモ。
そんなバカな男が、ロンちゃんに出会ったことで、人生のすべてが変わるのだ。
ロンちゃんただ一人に捧げられるモモの人生。

モモの愛は究極だ。
最初はロンちゃんを貶めたいだけのために、半分レイプのようなかたちでカラダを奪ったわけだけど、関係が続くにつれて少しずつ気持ちが変質していく。
彼はロンちゃんのためなら死ねる。←こう書いてるだけの作品ならよくあるけど、この作品は説得力が違うのだ。モモがそうするだろうことは、説明がなくても分かるのだ。
美辞麗句の限りを尽くしたイケメンや金持ち攻めの多いこのBLというジャンルのなか、『不細工で、社会の底辺を歩む男』であるモモを、あまたのイケメン攻めよりも魅力的に描きあげることができる木原音瀬さんの筆力には、つくづく脱帽します。

で、そこまで愛されてる受けのロンちゃん。
後半で、『実はロンちゃんこそ、モモが必要』っていうのが分かるのがいいですねw
そうそう、そうじゃなきゃ!っていうツボを、ギューッと押されました。

ロンちゃんの同僚刑事のキャラも良かったなァ~。
人間くさいのがイイ。

イビツな男たちがイビツな世界で、ある意味イビツな愛を育むこのお話。
イケメン同士が美しい愛を育むお話よりも惹かれてしまいます。

26

愛しいロクデナシ男・モモ式、薔薇色の人生

前科持ちデリヘルマネージャー・モモ×警察官のロンちゃん、という対照的なふたりの恋愛を突き詰めた、シンプルな物語。
読み終わった後には、格別な幸福感をもたらしてくれます。

カッコイイ素敵キャラもいいですが、みっともなかったり、不器用だったり…欠点があるキャラ造形でしか生まれないドラマや説得力ってあると思います。
人間クサイ体温が感じられるからこそ、フィクションの枠を越えて読み手に響いてくるんじゃないかなと。
箸にも棒にも掛からない、この冴えないロクデナシ主人公・モモが、それを証明してくれています。

BL攻めとしてはありえない程、駄目ツボを詰め込みまくったモモ。
甘ったれで、考え無しの30男。楽な方へと流れるうちに、気が付けば家族もお金も仕事も友人もなくし、残ったのは前科三犯だけという、人生に行き詰まったヤク中です。おまけに顔も頭も悪いときたもんだ。
何がびっくりって、このどーしようもなく惨めなモモが、とても魅力的な人物に思えてくるところ。その変化が素晴らしいんです。

なーんにも無いモモにも、一つだけ胸を張れることがあります。
それはロンちゃんへ捧げるモモの愛情。
ひたすら健気でとにかく一途です。でもお馬鹿だから、求愛行動は空回りのピエロ。だけどそこには、掛け値無しの愛情が溢れている。
『捨てられたくない、足枷になりたくない、役に立ちたい――』
ひたむきにロンちゃんのことを想い続け、その恋慕はいつしかモモ自身と人生に意味を持たせ、やがてロンちゃんの人生をも変えてゆく力となります。

初めて人に感謝され、これでクズを一個でも返上できたかと、モモが泣きながらロンちゃんに会いたい、会いたいと願うシーンでの、
『胸の中が温かくて、嬉しい。嬉しいのに涙が出る。悲しくもないのに涙が出る』
このフレーズは、まさにこの本の印象そのまま。
読みながらわたしの胸も温かくなって、嬉しくなって、でも悲しくもないのになんでか無性に泣けてくる。
「なんてバカなんだろう」と上から目線で見ていたハズのロクデナシ男に感情移入しまくって、モモが泣くたんび、何度も一緒に鼻水を垂らしました。
自己変革を高らかに掲げた美談として装飾せず、あくまで単なる恋愛話として投影していることにこそ、この物語の意味があるんだと思います。

そして、一見立派にみえるロンちゃんも、不器用人間という点ではモモと変わりないところがいいな。一匹狼なんて聞こえがいいけど、真面目だけが取り柄の、社交性ゼロな面白味がない性格。
だけど、他人に疎まれがちなその生真面目さを、モモは心から愛している。
そしてロンちゃんもまた、モモのどうしようもなく馬鹿なところを愛している。
欠点でありながら、同時に何にも勝る魅力としても成り立たせているところが、ものすごーーーく好きです。
不格好で滑稽な人間が持つ物哀しさを滲ませつつ、だからこそ、逆説的にこれほどまでに愛おしく思える物語に仕立て上げてしまえる筆力が見事。
不器用極まりない彼らが、愛しくて愛しくてたまりませんでした。

モモの人生は、客観的に見れば殆どの人がパスしたい生き方なのは間違いない。
よりにもよって前科持ち男を恋人にしているロンちゃんにだって、「なんで?」と聞く人はいても、羨む人はあんまいないだろうな。
でもそんなものは、ふたりの幸せには関係ないわけです。

「俺って、サイコー幸せモンじゃん」
「彼は僕にとって、必要な人なんです」

たくさんの人に読んでみてほしいと思います。
木原流、人生礼讃。
薔薇色の人生のお裾分けを貰えますよ。

19

私は木原さんを読むには気合が必要なので、買ったまま「未読箱」に入れっぱなしになってました。
意を決して今頃読んでみたら、なんだ、可愛いラブラブな話じゃないか!
もっと早く読めば良かったです。
すごく好き。
面白かった。

なんだか冒頭からラブラブ感が漂ってます。
そこから二人の過去に遡ってなれそめが語られるので、モモ(百田)が「元ヤク中、前科三犯」で絵に描いたような転落のレールを転げていき、ロン(論)への最初の仕打ちが最低でも、不安にならずにすみました(笑)
ロンに出会い最低な自分の何もかもを受け止めてもらったモモは、ロンがそばにいてくれるならもう悪いことはしない、ちゃんと生きていくと決意し、それを貫いているのですね。
そして「ロンちゃんのために」と考えた挙句、危険なことをしてしまうのですが。

モモは確かにダメ男だけど、とてもいじらしく可愛げがありロンへの愛情に曇りがなく一途で、とても愛すべき人物でした。
あまりに生真面目で堅物なロンは、最初はモモの気持ちを量りかねていましたが、出会いから6年経つとモモの保護者みたいな感じ。
全身で愛情を表現しているモモのようにはできなくても、ロンがモモを大事に、将来のこともきちんと見据えて(その生真面目な性格で)いるのがよくわかります。

ロンの先輩視点の「後輩の恋人」も面白かったです。
きっとこのラブラブバカップルにこの先散々当てられることになるでしょうね(笑)

14

痛いのに中毒

こうまでダメダメな男を主人公にしたBLって、ないですよね。
それなのにモモが可愛くて、いらいらさせられて、どうにかして幸せになってもらいたいと願わずにいられない。

現在の話から過去へ、過去からまた現在へと、話を振り回しているようですが、そうすることによってお話が膨らみ、ただ現在に続く過去を振り返った話といった単純なものではなくしているところがすごいです。

モモ視点の本編だけでもけっこう幸せな気持ちにさせられましたが、ロン視点も用意されてあり、これが作品の深みを増しているように思えます。
チラっと出る脇役の甚呉先輩の出番も徐々に増えてきて、最後には甚呉視点のお話を載せてくださるあたりも、読み手の気持ちがおわかりだな~と嬉しくなりました。
出てくる4人の男のイメージもヤマシタさんのイラストにピッタリ。
ただ、ロンちゃんは黒髪とあったので、モモとロンの髪色が逆だったらなおよかったなあ。
表紙もね、これBLじゃないよ。でも木原さんだからどんな表紙でも売れるんだよね。
なんて思っていたのですが、読み終えてあらためて表紙絵を見て、じんわり涙ぐむほど、この二人の雰囲気が顕れている素敵な絵ということが判りました。
人を愛することって・・・ほんとに素晴らしいなあ。

木原本を読むのに毎度躊躇するのは「かなり痛いらしい」という情報に怯えることも然ることながら、読んだらしばらく他作家さんの作品を読む気にならなくなりそうだからなのです。

14

史上最強のヘタレ(笑)

読むのが勿体なくて大事に取っていた(笑)1作。
あとがきにも書いてあるが、珍しくすでにできあがった恋人同士の2人を、出会いまでさかのぼって描いてある。
出来上がった2人だから最初からアマアマな雰囲気。でも木原さんだし、どこかで痛い展開が待っていると身構えていたら、これまた最後までほとんど痛い展開がなしで、ある意味肩すかしをくらった(笑)でも、ほっと心温まるイイ作品。
刑務所行きを食らった前科まで持つ攻は脅迫まがいの体の関係から始まった警察官の受と、今は心までつながった恋人同士。
が、過去のあまりにひどすぎる自分の行為で周りを傷つけてきた罪悪感から自分をクズだと言ってはばからない攻は、デキスギタ男に見える受の愛情をいまひとつ信じ切れない。
けれど受も周りから煙たがられるような人付き合いの下手な不器用人間だった。
そのへんのことは本当に詳しく書いてあってせつなくなる。攻ももちろん描写があったが、こちらの過去話は読めば読むほどむかついてくるから困った(笑)
それぞれに不器用な2人が自分の気持ちをウマク伝えられなくて、伝わらなくてじれじれするところは涙が止まらなかった。
攻は今まで読んだ中で史上最強のヘタレ。見た目がよくないと何度も文中にあるのが笑えた。それに加えて受が好きだと言ってよく泣く。やることなすこと空回りで、でもそれが愛しい。
馬鹿がかわいいとはこのことだなと実感(笑)
同時収録は受視点のもの。地味に攻にヤキモチやいているのがかわいい。
で、その話によく出てきた受の先輩からの視点で2人のことを語られるのが書き下ろしである「後輩の恋人」。
この話の終わりかたが最高に萌え。

11

この作品が収納されている本棚

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