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表題作工事現場で逢いましょう

有吉龍市28歳・塗装業
橘旭23歳・フード関連企業の跡取り

あらすじ

世間知らずの社長令息・橘(たちばな)は、社会勉強のためスーパーのアルバイトをすることに。けれど、初めての仕事は失敗ばかり。そんな橘に「この仕事、向いてないんじゃないか」とキツイ一言を浴びせたのは、近所の工事現場で働く有吉(ありよし)だ。日に焼けた褐色の肌が逞しい有吉に、密かに憧れていた橘。でも、悪気はないけれど率直な物言いに反発心が芽生えて!? ガテンな男×お坊ちゃまのサクセス・ラブ。
出版社より

作品情報

作品名
工事現場で逢いましょう
著者
池戸裕子 
イラスト
有馬かつみ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199004988
3

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
2
得点
6
評価数
2
平均
3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

ガテン好きな方に

社長令息として何の不自由もなく育った橘は、大学を卒業後も父の会社に就職し、次期社長として、息子に甘い現社長である父が与えてくれた橘のための部署で“主任”の肩書きをもらい仕事を学ぶことに励んでいます。
橘には父が見込んで高校二年生の時に家庭教師としてつけてくれ、一足先に「マル冨フーズ」に就職して社長の信任も厚い高山(たかやま)が学生時代と同様に教育係としてつき、厳しい指導をしています。

優秀でクールで、いかにもできるエリートサラリーマンという高山に憧れ、橘は彼を目標に日々頑張っている・・・つもりでしたが、如何せん苦労知らずのお坊ちゃま。修業の一貫として他社のスーパーでアルバイトとして働くことになるのですが、そこで、近所のマンションで塗装工事をしている有吉と知り合うことになるわけです。

お坊ちゃんですから、最初はああいうガテンな方々の独特の仕事着や雰囲気に「カッコいいけどちょっと怖い」と憧れつつも“猛獣の群れを隠れて見つめるインパラ”状態だった橘ですが、あるきっかけで言葉を交わすようになり、率直な物言いに腹を立てることがあっても、若くして人の上にたち、部下から慕われる有吉の男らしさや真っ直ぐさに、少しずつ惹かれるようになっていきます。
やがて、実際に働くことで本当の意味での「働く」という意味を学んでいき、また二人の(有吉と高山)タイプの違う言わば「働く先輩たち」を通してなんとなく恵まれた環境に暖かく包まれてすごしてきた橘が社会人としての自覚を芽生えさせていく、成長と恋のお話。

「ガテン」というだけでツボなのでそれだけでも私には美味しいお話。先日の烏城さんのトラック野郎もそうだけど・・・ああ、もっとどっかにガテンはないものか。
しかしキャラとして印象深かったのは、実は有吉ではなく橘の教育係・高山の方です。

高山は橘が高校生の頃から「先生」として令息に相応しい教育を施して橘を育ててきたわけですが、彼にはもちろん橘への特別な感情がありました。
そんな想いはひとかけらも滲ませることなく大切に育ててきた掌中の珠を、後からきた有吉に掻っ攫われてしまうという、高山は可哀相な役回りだったのですが、しかし彼は引き際が非常に綺麗だった。大変株を上げたと思います。
高山は恋には破れても仕事の出来る男として橘の憧れを受けるに足る男でした。そんな彼のお話も読んでみたいな。
池戸さんはあとがきで、有吉と橘、高山と橘の、種類は違えど等しく大切な絆を書きたいと述べておられましたが、ちゃんと伝わってきたと思いましたよ。

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お坊っちゃまの成長物語

全国展開する中規模スーパー『マルトミ』を展開するマル富フーズの社長を父に持つ橘は、甘い父親が準備してくれた“実務企画室”に配属され3ヶ月。高校2年生のときから家庭教師だった秘書室の高山から付きっきりで研修を受けていますが、いまだに合格からは程遠い成績しかもらえません。
それならば、実地で研修しようということになり、橘が近所のスーパーでバイトすることを自分で決めてきます。
高山からも許可をもらい働き始めたものの、失敗続きの橘。
そんな橘に「早めに見切りつけて、ほかの仕事見つけた方がいいかもな」と、衝撃の声をかけてきたのが、スーパーの近所の現場で塗装工として働く有吉でした。

ふたりの距離が近付くに連れて、邪魔をするように姿を見せるのが、教育係の高山です。
「バイトをやめてそろそろ会社へ戻ってこい」とまで言われると、反発したくもなるわけです。
バイト先のスーパーで、いろんな提案をし売上も上がってきて、自分なりに努力をし成長していっていると自覚もあっただけに、頭ごなしに否定されたくなくて。

ですが、有吉も橘が次期社長だと知り、会社へ行くんです。そこでしっかりした会社だと知ると、本来の場所へ戻れと冷たく突き放すんです。
これが、有吉の愛し方なんですよねぇ。

有吉がしっかりした会社なんだと気が付くシーンは、塗装工だからこそビルを見たらどんな会社なのかわかるという、有吉ならではの理解の仕方が描かれていて、ああ、だからこその有吉の職業だったのねと納得でした。
建物を一目見たらどんな会社なのかがちゃんとわかるとか、どれほどの従業員を食わせているのかとか、橘に責任を説く有吉はかっこよかったです。

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