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表題作Home A place in the sun

八神 亨 弁護士 34歳
桂木 遼一 設計士 28才

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  • あとがき

あらすじ

神戸に事務所を構える弁護士の八神亨は高級バーでひとりグラスを傾けていた。
その時、ふいに八神の体にほろ酔い気分の男が倒れこんできた。
建築設計士の桂木遼一。
全身に水割りを浴びた八神だったが、目許に泣きぼくろのあるこの青年に懐かしさを感じた。
これが縁で、八神は大阪にある家のリフォームを桂木に依頼した。
改築工事が終わった天神祭の夜、遼一は八神を尋ねた・・・・・・。
かわいゆみこ、茶屋町勝呂が贈るロマンティック・ラブストーリー。

作品情報

作品名
Home A place in the sun
著者
かわいゆみこ 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
ワニブックス
レーベル
Kirara novels
発売日
ISBN
9784847032585
4

(5)

(0)

萌々

(5)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
20
評価数
5
平均
4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

A House is Not A Home

「家」とは何か。
ある人にとっては安らぎ、ある人にとっては絶ち切りたい因縁の象徴。
また他人と「家」を作ることは、その人の人生を受けとめ責任を持つことも意味する。

本書は恋愛小説であると同時に、そうした「家」への様々な想いも伝わってくる、上質なヒューマンドラマ。
97年の発行だが、少しも古さを感じさせない。
とても普遍的で身近なテーマが胸に迫ってくる。


大阪の暴力団組長の妾腹の息子で、弁護士の八神。
生まれを隠し、共通語でスマートに人と接する八神だが
自身の神戸の事務所は親兄弟の息のかかったもので
組の仕事も手伝っている。
そんな八神が、初恋の少女に似た建築士の青年・桂木に
実家のリフォームを依頼する。

身体が弱く、繊細で頼りなげな桂木。
おおよそ家庭を持つのに向いていなさそうな青年が
建築家としては非凡な才能を持ち、
創造的で温かな住環境を作り上げていく。
その意外性が面白いし、世渡りに長けた八神が
桂木の純粋さに惹かれ誠実になっていく過程もとても自然。

桂木を甘やかす八神。
優しい八神に心酔する桂木。
しっとりと落ち着いた、甘く静かな筆致が心地よい。


だからこそ、八神が生まれの言葉で感情を露にする場面は
はっと息を呑むほど激しく、鮮烈。
それでいて、八神の痛いほどのコンプレックスや
桂木を慈しむような愛情も伝わってきて、切ない。

その過去ごと桂木に受けとめてもらったことで、八神は「家」の呪縛から逃れ、新たな道を歩む決意をする。
これから桂木は、八神に甘やかされるばかりでなく、
色々苦労しそうな八神を優しく包み込むような
芯の強さも見せていくのだろう。


余韻の残るとても良い終わり方だけど、少々名残惜しさも。
再出発する二人が、明るく温かな「家」を作り上げていくところも見たかった。
いつか書き下ろし付で新装版を出していただけることを
願ってやみません!!

2

Krovopizza

>平仮名時代のかわい作品は初読み
ごめんなさい、よく考えたらEGOISTEシリーズを既読でした!
クロスノベルスの新装版の方を読んだせいか、うっかり忘れていたという…。
そそっかしくてすみません( ノД`)

Krovopizza

snowblackさま

こんばんは、いつもお世話になっております!

>「いのせんとわーるど」の新装版
わぁ!そんなところに八神さんが?
そうですか、幸せに…。
もうその情報だけで胸が一杯ですが、近いうちに必ず読みたいです。
貴重な情報ありがとうございます(*^^*)

snowblackさまにとっても印象深い作品だったのですね!
私は平仮名時代のかわい作品は初読みでしたが、上手い作家さんは昔から上手いんだなぁと実感しました。
新装版、できれば茶屋町さんの挿絵のままで出していだきたいですね…!
コメントありがとうございました(*^▽^*)

snowblack

Krovopizzaさま、こんばんは。

いまや大作家のかわいさんが、まだ平仮名表記だった時代の作品ですね。
個人的なことですが、実は私にとって初めて読んだかわいさんの作品でした。
茶屋町勝呂さんの絵が好きなので、そこから辿り着いて手にしたのですが
とても印象的な作品でした。

「いのせんとわーるど」の新装版が、改題「光の雨」として出ましたが
その最初の方で、八神さんと思われる人物が話題に出てきます。
それから察するに幸せに暮しているのでは、と。
本当に、この作新も新装版が望まれますね。
勿論、書き下ろしつきで!
(でも、そうすると絵師さんは変更かなぁ……)

生い立ちと性癖、嫌悪と諦めを持つ者同士の出会いでした。

ハードカバーです。
登場人物達は“大人”ばかりで静かな文章なんですが、だからこそ吐露するその思いは、とても現実的で切実でした。

ヤクザの妾腹の自分の生い立ちを卑下していながら、その繋がりで仕事をする弁護士の八神と、自分を壊す程の辛い恋愛をしてしまう桂木。
どちらも仕事に関しては“やり手”だけど、消せない過去がそれぞれを卑屈にさせていて空気感は重かった・・・
とくに、八神の母の死の章は、息を積めながら読んでいました。
子供の純粋な八神の目が母としての自分を責める刃になったのか。
もう少し八神が年を重ねていれば、母を理解する事が出来ただろうにと残念でした。

静かな恋愛進行に、山場は数々とありました。
初めての夜、天神祭、桂木が八神のヤクザ絡みの仕事を知った時、八神が兇刃に倒れた時・・・。
ひょんな出会いからずっと八神を想う桂木の執着と誠実さが、読み手にどう写るか、受け止め方は違うかも知れません。
自分は「辛くて可愛いヤツ」と思いました。

かわい&茶屋町!
自分にとっての最上クラスの作家さんの作品は、浮ついた場面1つもない良作でした。

1

橘盾

Krovopizzaさん こんにちは!

中古通販で見つけた時、かわい&茶屋町―!?わーい♪と即ポチったのに、
手に取れば自分にもBL初のハードカバーで、
何だか敷居が高く感じてしまって、積本数か月の本でした;
ハードカバーの中身も堅かったですよね^^

>>桂木を甘やかす八神
 やさしい八神に心酔する桂木
Krovopizzaさんのレビューを拝見して、また読み返したくなりました。
今度は、先の明るさもニマニマして読めそうです。
コメント、どうも有難うございました♪
これからも宜しくお願いします<(_ _)>

Krovopizza

橘盾さま

はじめまして!Krovopizzaと申します。

>登場人物達は“大人”ばかりで静かな文章なんですが、だからこそ吐露するその思いは、とても現実的で切実でした。

全く同感です!
抑えた文章だからこそ、ふと言葉や想いが漏れる瞬間がより鮮烈で、胸に迫ってくるものがありましたね。

昔の作品だし(ハードカバーBLは初体験でした!)どうかな~と思っていたのですが、橘さまのレビューを信じてポチッて大正解でした!ありがとうございます♪

かわい&茶屋町、私にとってもトップクラスに好きなお二方なので、何とも幸せな出会いでした(*´ω`*)

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