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無自覚に俺を煽るんじゃねぇ!
昭和レトロな下町商店街の元若頭が営む古い活版印刷屋。そこにうっかり就職してしまった、人のいい、どこかポヤヤンと天然直球気味の普通の青年。同僚は若頭を慕ってついてきたお世辞にも有能とは言えない元子分のおやじと若者。
そして、同じ商店街のじじばば達…。
ポイントをあげただけで、惹かれる要素がてんこ盛りのラブコメディは期待通りとても面白かったです。
なんとなく柔い、慎一の要領悪そうな風貌を「ウーパールーパー」とさりげなく突っ込んだ冒頭から笑いが滲みます。
「田舎出の地味な女」と言う比喩からも、慎一のイメージがおわかりいただけるでしょうか。ほわわんとしてるけど、芯の強い。
でも、そんなぼやっとした慎一のスれていなさが結果的には真っ直ぐに黒川の胸に届くのですね。
慎一は曇らない目を確かに持っているから、黒川の見えにくい優しさに気づくことができた。
子分社員の皆さんのいいところにもちゃんと気づける。
こういう人って、実は凄いですよね。
黒川は見た目は強面の凶悪相(よくみりゃ精悍な男前)で、口はそのままヤクザだし、気が短くすぐ手や足が出るし、服は派手だし、スケベだし、オヤジだし、フケてるし、そばに来たら裸足で逃げたいヤバい感じですけど、怖さや乱暴さの中に相手への情がちゃんとある。
ついて行くにはちょうどマゾっ気ないと辛いかもですが(笑)、愛されたら何があっても体を張って必ず一生守ってくれるでしょう。
強気でも慎一には絶対弱いよね。
強面男のそういうところがまた魅力のひとつになるわけです。
商店街で浮いていた黒川印刷も、いい感じで溶け込んでいけそうな将来が見えてきますね。もちろん表立って和気藹々ではなく、表面はけんか腰でしょうけど(笑)。荒い言葉で応酬しても、実は情が通ってる、いかにも下町らしい良さ。
藤咲がご近所づきあいの上手な、いい印刷屋の女房になりそうです。
黒川はもちろん職人のガンコ親父。
面白かったな。イラストが花本さんというのがまた嬉しいじゃないですか。
街の印刷所とか、活版印刷とか、単に仲良しなだけじゃない商店街の面々とか、個性的なキャラのたったチンピラ社員とか…BL成分以外の部分がちゃんとしていて、ライトなストーリーとして楽しめました。
あまり期待せずに読んだのですが当たり!
後書きによると、元々BLではないストーリーとして書いた下敷きがあるということでなるほどなと思いました。
主人公の前職をリストラされたサラリーマンくんが、職人としての彼に惹かれていく様子、それが恋愛に変わっていく様子も良かったです。
最初の交渉がイキナリの初体験でもうしろで良くなっちゃう!みたいなものじゃない所も良かったです。
イラストは花本安嗣さん。
全体的にライトなコメディ色が楽しめるものの、ヤクザ攻めの荒くれっぷり、男前ぶりにはなにげに凄味があります。受けは筋モン側からすると散々バカ呼ばわりされてしまうKYキャラとされているけれど、攻めからしたら「バカ」は口説き文句だったらしい笑
印刷屋の三代目、かつ元紫虎組若頭の黒川は、とにかく男惚れされる隠れハイスペ攻め。受けの藤咲は勤めていた製薬会社をリストラされ、黒川が継いだ印刷所に再就職したはず、でしたが…。
この二人がどうやって惹かれ合っていくのか、全く見当がつかない序盤からしてワクワクしかない。印刷所の社員、カンキチとアキ坊のコンビがしょーもないやりとりで物語のよき調整役を務めてくれていて、カンキチさんのオヤジボケっぷりが最終的には可愛く思えてくるから不思議。
黒川を嫌う商店街の面々(豆腐屋のヨネさんが大活躍)、逆にベタ惚れのヒロト(しぶとい美少年)、父親との確執と組長への恩など、藤咲の目を通して黒川の背景が明らかにされていく展開からすると、本作は黒川の物語といっていいのかもしれない。受けの具体的な説明描写が「ウーパールーパーみたい」だけなんですから笑
藤咲とともに、黒川という男に惚れ込めたらラッキーです。藤咲も天然で煽るタイプながら最後まで男らしさを失わないので、気をそがれることなくアレコレ堪能できました。
最後の濡れ場でのやりとりにキュンとします。
天然なおバカちゃんって、結構好みだと再認識。
ひとりでグルグルして完結しちゃう受けちゃんも、それはそれでいいんですが、何も考えず、楽~な気分で読めるっていうのも、貴重な存在だなぁ~と。
天然とはいえど(天然だから?)、ちゃんと自分というものをしっかり持っているので、いくら脅かされようがすかされようが、ゴーイングマイウェイでございます。
押しが弱く営業の成績が上がらず、製薬会社をリストラされ、「営業なら……」と履歴書を持って訪ねていったのが『黒川印刷』でした。で、面接に出てきた男3人は、見るからに『ヤクザ』なんです。
お話が始まって、いきなりイラストがあるんですが、いやぁ、インパクトのある出だしです。藤崎慎一、人生最大の危機って、初っぱなから笑わせてくれます。
最初はびびって「なかったことにしてもらえませんか」などと言い出したものの、黒川に一喝されて縮み上がり、結局採用されて鍵まで預かって。
そんなこんなで、慎一は黒川印刷で働き始めます。
一緒に働くようになって、黒川の一本筋の通った男らしさとか、仕事に対する真面目な態度とか腕の良さとか。俺様で言葉も悪いけれど、舎弟ふたりの行く末を案じ、きちんと仕事を覚えさせようとする気配りとか、黒川の人としての魅力を感じ始めた慎一。男としての魅力にも惹かれ始めるんですね。
ある日、黒川のいた組からの呼び出しを受け、出掛けていった黒川。ただならぬ雰囲気で出掛けていったので、3日も帰ってこない黒川が心配でならないんです。
心配が募り、組事務所へ乗り込むんですね。
いやぁ~大胆にもほどがある。天然ちゃんにしかできない大技ですね。まぁ、ここまでされたら黒川も、慎一を受け入れるしかないって言うか。
黒川と慎一以外の面々で、それなりにすったもんだが繰り広げられますが、慎一の天然さに勝るものはなし。商店街のみなさんとも、雪解けって感じで仲良く慣れそうな雰囲気。
まぁ、黒川の印刷の技術は相当なものらしいし、顧客にも大物がいたりするから、きっとこの先も細々とでも生き残っちゃうんでしょうねぇ。
商店街のみなさんの人情があれば、大丈夫? って気もしますし。
ほのぼのコメディー、楽しかったです。
萌萌(MAX:萌萌萌:神に近い)
元若頭で零細印刷会社社長・黒川×リストラされて就活中・藤咲の、ドタバタほのぼの下町ラブ。
失業中の主人公・藤咲は中途採用の面接に来たはずなのに、目の前にいる男はどこからどうみてもヤのつくソッチ系。
更に厳つい顔の大仏へアー中年と、まるで売れないホスト(に見えなくもない)モヒカン青年が脇を固め、真っ当な人生を送ってきた平々凡々藤咲は顔面蒼白。
そしてわけのわからん流れで営業として何故か採用されてしまい「ど、ど、どうしよう~」というスタートです。
ヤクザ攻めBLとはいえ地味めな(スイマセン)表紙に「お仕事ください!」のタイトルの印象通り、華々しい(?)他のヤクザ作品とは真逆の方向でした。
下町情緒溢れる商店街を舞台に、小市民代表のような主人公・藤咲が元ヤクザに囲まれながら、営業マンとして、冷戦状態にあった商店街の住人とのパイプ役として、笑いと涙を提供しつつ奮闘しています。
黒川の職人としてのこだわりや、父親への複雑な思い、下っぱへの配慮。そういう意外な一面が、ただの口の悪い俺様ヤクザでは終わらせません。
そんな黒川に振り回されつつも惹かれてしまう藤咲。
主人公なんだから地味でも実は美人!とかじゃなくほんとに地味らしいってのは笑えました。
小心者で空回りしがちだけど一生懸命、おばかと紙一重の純粋さはちょっと私には眩しすぎましたが、そんなタイプほど実は一番強かったりしますよね?
こんな主役二人を筆頭に、親しみもてるキャラ描写が素敵でした。商店街の人たちも結構好き。
でも個人的なお気に入りは、同僚の大仏ヘアーとモヒカン頭。
美味しすぎる二人のナイスコンビを見て欲しいです。
総合的にはとても面白かったんですが、個人的にはするっとまとまりすぎな気もしました。黒川が若頭を辞めてまで跡を継いだくだりなんかももう少し掘り下げて欲しかったかな。
でもそれを差し引いても十分楽しい1冊でした。