心がきしむほどの情欲に囚われて……

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表題作共棲愛―シンクロニア―

大学講師・新堂
大学生・羽月

その他の収録作品

  • 共鳴愛-レゾナンス-

あらすじ

まるで義務のように、優秀だった亡き兄を模倣し生きる大学生の羽月。だが本当は自分自身を見てくれる人にどうしようもなく餓えていたのかもしれない。そんな時、羽月は講師・新堂と出会った。本心を曝け出した羽月の躯を、男はまるで猛禽のように喰らう。熱い肉塊で悶える羽月を容赦なく穿ち、その最奥に欲望を吐き出し穢す、横暴で酷い男。―しかし、淋しさを埋める様に躰を繋ぐ内に、彼もまた喪った愛に囚われている孤独な男と知り……。
出版社より

作品情報

作品名
共棲愛―シンクロニア―
著者
華藤えれな 
イラスト
海老原由里 
媒体
小説
出版社
ワンツーマガジン社
レーベル
アルルノベルス
発売日
ISBN
9784862961501
2.6

(13)

(1)

萌々

(2)

(4)

中立

(3)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
7
得点
28
評価数
13
平均
2.6 / 5
神率
7.7%

レビュー投稿数7

移植後の細胞のシンクロ現象は実際にあるらしい

【移植後キメリズム】という現象が起きるらしいです。
>移植前は患者由来の細胞しか存在しませんが、移植後はドナーと患者、両者に由来する細胞が混合した状態(混合キメラ)となります。ドナーの細胞が正常に生着すると、ドナー由来の細胞のみとなります(完全キメラ)。

臓器や骨髄の元の持ち主の遺伝子情報が、持ち主個人の記憶を保管しているのか、
よく移植後の患者が違和感を覚える現象が報告されていて、
この物語の主人公のように、兄の記憶がフラッシュバックするって、不思議ではない。
結末が、いい具合に落着していて安堵。
亡くなった兄の記憶から恋慕したのか、主人公本人の情動なのか、区別がつかない奇妙な現象が起きるのは、自然なことなので、
主人公の体の中にいる兄の記憶とひっくるめて、亡くなった兄と自分と二人分幸せになってほしい、と思いました。
途中心配な展開になったけれど、よかった。

2

切ないけどこれからも

死にネタ、はダメって方もいるんでしょうが、私は大丈夫でした。
それより、新堂の気持ちの辛さ、羽月の辛さ、どちらも切なくて。

身代わりとして好きなのか
身代わりにされても好きなのか

移植による兄との共存、そんなこともあるのかも知れないけれど、それだけじゃ無いと思いたい。彼らもきっとそう思っていると。
振ったり振られたりして別れる関係と、ある日突然失ってしまう、それももう二度と会えない、話せない死というものでの別れは経験したことがないけれど、辛いものなのだろうなと思います。

でも新しい二人(三人)の未来は明るいものであってほしいと願います…

2

意地っ張り同士な愛

兄を愛していた攻めも兄の身代わりでもいい受けも意地を張りすぎて斜め上に行ってる感じですが、そこが精神的なすれ違い愛で萌えるのかも知れません。
何となく無理しているのを相手に気づかれているだろうなぁと思いつつ、知らないフリをやめられない。

兄が生きていたらどうなっていたんだろう?とこちらまで考えてしまいます。
あまりにも二人が兄を意識しすぎるので死んだ兄は墓の中で「おいおい」と言っているかも知れません。

その割に泣くほどではなかったのですが、共棲愛―シンクロニア―の表題作のほうではなく、書き下ろしの方の共鳴愛-レゾナンス-のほうの兄とのエピソードで泣かされてしまいました。
これはフェイント気味です。
身代わりだと落ち込んでいた弟以上に兄は辛い恋をしていたと思います。
弟は知りませんが、兄の恋の障害の一部分には弟の病気もあったのです。

どちらにしろ、あっけなく去られてしまう(死んでしまう)というのはきついですよね。
それが家族でも恋人であったとしても。

1

切ない身代わり愛

かなりシリアスで暗い話なので、面白い、と言ってしまうと語弊があるが、読み物として面白く読めた作品。

主人公は高校生の時に白血病を患い、兄から骨髄移植を受けて助かるが、その直後に兄は突然の事故で帰らぬ人に。それから兄の身代わりとして兄の歩むはずだった人生をなぞるように生きてきた彼は、ある日大学の臨時講師の新堂に出会う。

中盤に新堂の亡くした恋人というのが兄だったということを知ってからの受けの行動が、いじらしくて切ない。
攻めに愛されたい、もっと求められたい、と思う受けは記憶のなかの兄を模倣した振る舞いを見せるように。そんな受けが痛々しくて見ていられない攻めは、お前はバカなガキでいい、お前のままでいろと言うのだけど、兄の呪縛から逃れられない受けは、自分が紛い物としても不完全だから愛されないのだと思い込んでいる…。
いろいろあって、最終的に攻めは受けが失いたくない大事な存在だと気づくのだけど、そこまでがかなり切なく苦しい話だった。

これだけなら、愛する兄、愛する恋人の死を乗り越えたふたりの再出発、という感じでよかったのだけど、書き下ろしの後日談がちょっとなあ…。受けと攻めが普通に、身代わりとか関係なしにイチャイチャしてるのが見たかったのだけど。

攻めと兄の馴れ初め、結ばれた時のエピソード、別れの理由が詳しく語られる。
兄から骨髄移植を受けたことで、受けは自分のなかに兄の存在を強く意識していて、攻めと愛し合う時にもそれを感じている。
攻めと兄、同時に二人から愛されているような、という3Pっぽい描写。受けは兄の分まで、攻めを愛したいというスタンス。攻めも、そんな受けの中に時々兄を見ている、という感じで。

うーん、精神的には兄を含む三人の愛、ってこと? 作者様のやりたかったことはわかるけど、BLってやっぱりお互いがお互いのオンリーワンというのが、一番スッキリするんだよなあ。

1

ちょっと地雷

健気な、すれ違いラブ。

白血病の自分に、骨髄移植の提供した兄。
移植は成功したのに、兄は病院に見舞いに来た帰りに交通事故であっけなく死んでしまい、、、

死んだ兄の身代わりを、自分に課して生きているような羽月は、新しく来た講師・新堂に言われた言葉で、自分を抑えきれなくなって、、、

華藤さんの文体と相性がいいのか、いつも通り、とっても読みやすい。
泣かせ所もあって、結構泣かされちゃった。

でも、この設定は、私としては、ちょっと地雷。
「兄は死んでしまったけれど、自分の中の細胞となって生きているから……」
で、
「兄の身代わりでもいいから…」
とか、
病気で、死にネタで、兄弟で同じ人をとかって、小説的には「盛り上がりアイテム」で、それなりに泣かされちゃう。
でも、なんだか、まんまと乗せられちゃうのが悔しいんだよなぁ

と言う訳で、評価は中立。

3

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