夏の塩

夏の塩
  • NOT BL
  • E-BOOK ONLY
  • R18
  • 神64
  • 萌×22
  • 萌3
  • 中立2
  • しゅみじゃない8

--

レビュー数
11
得点
339
評価数
79件
平均
4.4 / 5
神率
81%
著者
 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
大洋図書
シリーズ
単行本
発売日
価格
¥1,800(税抜)  ¥1,944(税込)
ISBN
9784813012016

あらすじ

味覚障害の青年・魚住真澄は、学生時代の友人・久留米充のアパートに居候をしている。味覚を失ったのは、生きる意味を見失ったから? インド人の血を引く隣人サリームに、久留米の元彼女のマリ。日常に潜む生と死、悲しみと喜びの物語。
出版社より

表題作夏の塩

久留米充 サラリーマン
魚住真澄 大学院生

その他の収録作品

  • 夏の塩
  • この豊かな日本で
  • ラフィン フィッシュ
  • 制御されない電流
  • 鈍い男
  • プラスチックとふたつのキス
  • ハッピー バースデイ Ⅰ(書き下ろし)
  • 彼女のWine,彼のBeer
  • 月下のレヴェランス
  • メッセージ

評価・レビューする

レビュー投稿数11

言葉を失う体験。

電子書籍で購入し、すごく量がありそうだったのでなんとなく後回しにしていたのですが、読みだしたらもう止まらなくて、他のことが手につかないほど物語の世界に心がのめり込んでいました。
心揺さぶられる作品でした。
小林秀雄の何かの評論に「美は人を沈黙させる」という言葉があるのですが、本当に感動すると言葉は出てこない、という体験をすることができました。

1

そっとしまっておきたい

なんと言っていいかわかりません。
興味深い、感動するようなお話を読むと、その感動を語りたくなるものだと思っていました。
この作品を読んで、逆に何も言いたくないということもあるのだなぁと知りました。
あらすじも分析も感想も、何も言いたくないのです。
不安定な器になみなみと入った透明な水を受け取った気分です。それをこぼさず波立てず、そのまま奥深くにしまっておきたい。そんな気持ちになりました。

BLというよりも文学です。むしろこんな作品もあるのならBLも捨てたものではないと思うのです。

1

わたしの原点

再入荷とのことで記念に。
装丁の美しいこのご本、幅広い帯に印刷された茶屋町さんのイラストが目を引く印象的なデザインです。
BLという言葉で括ってしまうには余りに勿体無い作品だなと思います、文芸的というか純粋に小説らしいというか。
BL臭さがない為に嫌煙されるタイプの小説であるとも言えるかも知れません。
魚住の過去による欠落や、それを向き合い見守っていく久留米の存在。
彼らを見守る周囲のキャラクター達。
日常の中で沢山のものが形成されて、ようやく魚住になったという感じ。
すっごく重い話で、総て読み終えると萌えどころか喪失感すら覚えますがわたしはBLUE ROSEといい榎田さんの持つこの物悲しい作風も好きです。
ずきずきと痛みを感じるほど無機質な魚住の生き方が、徐々に人間としての暖かい生き方に変わっていく様子がとても切なくて愛おしい。
最近の榎田さんしか読んだことないよーって方にも是非手にとって頂きたい名作です。

0

ジャンルはBLでくくらなくても良いのでは

魚住くんシリーズの存在は知っていたのですが文庫版の新装版が単行本ということで本が高いです。
なかなか手が出せないでいました。
榎田さんは2作目です。もしかしたら良い順番で読ませて頂いたかも。
この作品はBLというジャンルでくくらなくても良いような気がしました。

「命」は必ず「死」を迎えます。
作中でもたくさんの「死」が語られ「生きている」登場人物の中に作者の真摯な視線を感じます。
たったひとり(一匹?)の家族を亡くし友人、久留米のアパートに魚住が転がり込んだことから始まった「夏の塩」
魚住が愛を知り失うことの怖さを知り人を想う涙を知ったところで次作へ続きます。

1

ofnotice

逆に自分は絵夢さんの言わんとすること、すごくわかるけどなぁ。
否定しているとも思えないし。

どっちにしても人のレビューに書き捨てIDつくってケチつけるのは卑怯だよ。

赤穂

ボーイズラブというジャンルだから映える作品でしょう。
なぜ「ジャンル:BL」を否定するんですか。

非常にうまい小説、しかしシュミかと言われると…

いろいろな意味で考えさせられた作品だった…。
榎田先生、たいへん巧みで流れるような文章を書かれる方である。
まぁ、ちっと装飾的すぎるきらいもなくはないが文章の落し込み方やひっぱり方、申し分ない。だからこの評価はいい悪いではないんです。

だが、好きかと聞かれると…

ぶっちゃけ、整いすぎていてなんとなく疲れるのであります。
うーん、BLらしいバカバカしさに欠けているというか。
むしろここまで書けるなら、ふつうに人間ドラマとか心理小説にしちゃえばとか。

BLを超えたBLといえばそうなんだが、
あまりに文学的な(村上春樹あたりの)匂いがしすぎちゃって、
いや、それはそれで楽しく読めるんだが、1ミリも萌えないんだな~。
だいたい、魚住がブレのない不思議ちゃんゆえ、周りの人物の人間性を暴いていく構造なのはわかる。でも、リアルに魅力が伝わってくるかというとあやしい。
さらになぜ魚住が久留米に惹かれるのかも、イマイチ納得できないというか?
まあ、登場人物がどれもこれも身近にいそうじゃないタイプなんで、共鳴しにくい部分はありますね…。

最強の致命傷がやはりHくさ続きいシーンで、
文学的な香りがする方々によくありがちな話だが、とにかくHシーンが余計に感じるというかなんというか…。見方によってはBLとしても一般小説としても楽しめるってことになるのだろうが、自分は逆にここまで書いたんだったら、エロティックな感情が入ってくるっていかにもとってつけたようで非常に居心地の悪さを感じるわけです。

榎田先生はおそらく現状のBL界ではもっとも筆力・バランスともにすぐれた最強の作家のひとりだろうと思いますが、それ以上になんか夢中になる要素ってのがうすい。自分的にはだけど。

しかしながら、避けては通れない「名作」に当たるのはほぼ間違いないでしょうねぇ。

9

JUNE~BL移行期の傑作

現在ではBLエンタメのプロと感じる榎田尤利さんだが、初期作品だけあって、自由に書いてる感がする。発表の場が今はなき小説JUNEということも無縁ではないだろう。最初は投稿作であり、人気を呼んでその後依頼原稿となったが、指導されたりはしなかった(自由に書いていた)といったことを作者自身が語ってらしたように記憶している。
 文章も今とずいぶん違っている。まず、視点が漫画のように混在している(なのにスラスラ読めちゃう、不思議!)。

幼児期の虐待体験のため感情を喪失した魚住が、生きること感じることを取り戻してゆく、再生の物語、とでも言えばいいのか…テーマはJUNEらしく重さもあるのに、じれじれの恋も楽しめる。

キャラ立ちは凄い。みんな魅力的!!魚住、久留米、マリちゃん、サリーム…。読んでるうちに自分も心地よい仲間たちが大好きになってしまう。加えて攻めの久留米のヘテロっぷりがリアル。BL慣れした身には新鮮に思えた。

いうまでもなく傑作であるもののしかし、私は最初「メッセージ」のエピソード(死にネタ)がベタに思えた。そこにいたるまでのお話でどこか「文学的」というイメージを抱いてい続きたからだろうと思う。
それでも物語が要求するエピソードであるのだろうし、
JUNE作品はある面「ベタ」さ「陳腐」さと無縁でいられないのではないか、とも思う。思春期の悩みや焦燥といったものが、かつてのJUNE作品には色濃く存在していた。JUNE作品は性欲持て余しかつセクシャリティに悩む(実年齢はともかく精神の一面が)未熟な、少女達の読み物であったのだ。

ベタさと混在する、例えば「マスカラの距離」(『夏の子供』収録)の洗練。----語り始めるとキリがない。この作品はJUNE末期、あるいはJUNE~BL移行期の金字塔的な作品であると思う。
 連作短編といったつくりで、好きなときに好きな話を読めるのもよいですv

3

女の子も印象的なBL

内容も色々と壮絶なのですが、出てくる女の子が印象的です。
男性陣も含め、とても魅力的で好感が持てます。
魚住くんは儚げを通り越して不器用も通り越したような不思議な子です。
度を越した天然ちゃんですね。
魚住くんの心の揺れ動きがカラフルに手に取れてとても読み応えがあります。
内容はどシリアスで痛い程ですが、読んでおいて損は無いと思います。
また茶屋町さんのイラストが綺麗で作品を綺麗に締めてくれています。
小説もイラストも含めてとても素敵でした。
続きの夏の子供も是非読んで欲しいです!

0

BL以上のなにか

コミックは読み漁る割に、小説(ティーンズ文庫系というのでしょうか)には全く手を出していなかったわたしです。小説ではほのめかせる程度のBLが好きだったので。
こちらの作品は人からおすすめしていただいて読んだのですが、ストライクでした…。

薄幸の美青年魚住くんの過去や傷は壮絶です。シリアスな話は好きですが、これはなかなか重い。言い方はものすごく悪いのですが、「所詮BL」という見方から入ったので、びっくりしました。全体を通して、恋愛色よりも、死と生、生きるつらさや喜びといった命題の色が強かったように思えます。

久留米と魚住の恋愛に関して言えば、BLにはありがちの、「とんとん拍子」がありません。ハイ出会い、ハイ告白、ハイ揉め事、ハイ解決、みたいなわかりやすすぎる起承転結ではなく、もどかしくじわりじわりと面倒臭い恋愛です。一歩進もうとしては一歩退いて、曖昧な距離のまま求め合って離れてくっついて。
時にはさっさとくっつけ!と叫びたくなりますがこの絶妙な距離感が良い。特に一番はじめの章の久留米と魚住の距離なんて、これ本当にBLのくくりなんだろうかというほど。そこからゆっくり丁寧に発展続きしていきます。

久留米と魚住以外のサイドキャラがとにかく素敵です。サイドとも言えませんね、みんな主要キャラです。礼儀正しく優しい外国人に威勢が良く面倒見の良い美女、世話好きの先輩などなど、本当にいい役割をしています。周りの人物あっての魚住。
特に個人的ベストCP(そういう言い方すると一気にBLっぽくなりますが…)は濱田と魚住…! 研究室の先輩である濱田のいい保護者っぷりが! すごくいい!

これはとても個人的な感想ですが、普段読むものが余白たっぷりの読者の想像におまかせします系だったので、ここまで書き込まれた作品にはただただ圧された感もあります。
魚住の設定にしても、登場人物たちの関係にしても、隙が無い。余白が無い。悪く言うならば「こてこて」。そこからこの作品の素晴らしさが生まれるのですが、なんといいますか、胸焼けしそうな感じもしました…(笑) 餌与えられすぎてお腹いっぱいといいますか…。

この作品は萌えよりも痛みを感じることの方が多いのではないかと。わたし自身萌えたかと言われるとうーん?と首を傾げちゃいそう。確かに魚住の色っぽさは壮絶ですし弱る姿もグッとくるものがありますが、それ以上のなにかがあります。
読み終わった後の余韻が凄まじく、「ああ……魚住くん立派になったな…ほんとに…大人になったな……」と母親のような気分になります…(笑) しばらくは日常生活に支障を来しましたね……。素晴らしかったです。

3

言葉につまる・・・

美しい顔の魚住は、味覚障害で感情も乏しい。
生きているのに死んでいるような人物。

久留米は、魚住に対して唯一普通に接することのできる男。

魚住は、久留米を好きになるし
久留米も、魚住を好きになるお話なんだけど
魚住を変えたのは久留米だけではなくて
まわりにいるインド系ハーフのサリームだったり
ちょっと変わった久留米の元カノのマリだったり
人格者の先輩、濱田だったり
その他もろもろ・・・の日常が交差して魚住は成長し形成されるんです。

読み始め、こんなに重い話だとは思わなくて
1ページ1ページ手が止りながら読みました。
登場人物たちの不幸は、ちくんちくんと胸を刺す
ものすごくドラマチックに不幸を売りにしてるわけじゃなく
あくまでも日常としてドライに語られるので痛い。

榎田尤利さんのデビュー作とのことですが
『ルコちゃんシリーズ』にどこか通じるような雰囲気ですよね。
この魚住くんシリーズがあって、ルコちゃんシリーズが出来たのか!
と、思いました。

1

BLの枠に収らない良作

ずっとシリーズ通して手に入らなくて、ハードカバーで再販と聞いて驚喜した覚えがあります。
しかもイラストは茶屋町さんのまま。
神様ありがとう、ありがとう太陽図書と拝みつつ、二冊同時に発売日に買いました。
その割には今更読んだのはもったいなくてなかなか手が伸びなかったせいです。

人ととことんずれていて、自分の痛みにすら気づかないにぶにぶの魚住と、そんな彼をどうしようもなく放っておけないんだけどそれでも自分の気持ちには気づかない違う意味でにぶい久留米。
二人ともにぶいせいでちっとも進展しない二人にじれじれしたりほのぼのしたりしていたらいつの間にやら二人の元には次々と考えなければいけない事態が。
少しずつ進んでいく関係と、しっかり生きている周りの人々が愛おしいです。

BLだけど、BLの枠に収らない良い作品だと思います。

2

今、読んで欲しい一冊

榎田尤利先生のデビュー作が、書き下ろしも加え上製本上下巻で復刊しました。
旧版は全5巻の作品なので、上巻には3巻の半分までを収録。「無自覚から自覚への移行」という、うまいところで区切ったよな~、という感じです。

表題作は、「小説JUNE」誌にて発表され、当時「文学的」と評されましたが、つまりは匂う程度で、具体的な恋愛は描かれていません。
全体を見通せば、魚住と久留米のラブストーリーに他ならないのですが、むしろ作者は、魚住の成長物語という枠を通し、様々な欠落や、それを埋めるに万能ではない「恋愛」や人との関わり、ジェンダー問題などを書きたかったのではないのかと思われます。

魚住という主人公は、姿形だけは美しいですが、浮世離れした性格の陰に様々な欠落を秘めた青年です。
本作では、多数の重要人物が登場しますが、彼らは「魚住の友人」というよりもむしろ、魚住の欠落の一つである「家族の喪失」を埋めるべく配された「疑似家族」と言った方がしっくりきます。
そう思って読むと、魚住の特異な個性は、「家族の喪失」に伴う「過去の喪失」がもたらした退化であり、言わば自ら張った羊水に浸かった状態続きで日常を営んでいるような乖離感があるのではないかと感じられました。

他方の主人公、久留米という男は、並外れて鈍感です。本人が鈍感たれと在る所もありますが、ガサツ、大雑把、様々に表現されながら、何よりもあらゆる事柄に対してニュートラルなのです。
それがどういうことなのか、というのは是非読んで実感していただきたいところですが、とにかく久留米は、非常識な魚住の世話を焼くことはままあれど、魚住を決して庇護されるべきものとして見たりはしない…絶対的な庇護者である母になったりはしません。

出産と死は隣り合わせです。痛みと、多くの血が流れる中、苦しみを伴ってやってくる命…さちのという母を得て、「メッセージ」はそういう意味では何と分かりやすい魚住の産まれ直しのメタファーであることか。
そうして産まれ出た魚住の傍らにただ立ち、彼が自ら痛みを受け止める様を見つめるラストシーンに、改めて胸が詰まりました。

出会った当時、魚住の欠落の一部は私のものでした。それは他の多くの読者の方にとってもきっと同じなのでは。
できれば最初は、10代のうち…もしくはなるべく若いうちに読んで欲しい一作だと思います。

本当の意味で歩き始めた魚住の物語はまだ続きます。

書影ではマットな白い表紙に金の箔押しタイトルと黒で印刷された著者名のカバーのみ写っていますが、実際はフルカラーの黄色系描き下ろしイラストの幅広帯がかかり、他も統一された非常に美しい本です。
そして、中のイラストも全描き下ろし…といっても、挿絵ではなく、カットと数点のイメージイラストという感じですが。

8

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