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表題作最果ての空

江波郁彦,28歳,公安部外事一課4係
篠塚英之,41歳,公安部参事官

あらすじ

警視庁公安部外事第一課第四係の刑事であり、ウラに属する江波郁彦は、ある日、秘匿追尾していた男に尾行を見破られるという失敗をおかしてしまう。そしてその日、上司に呼び出された江波は、そこで警視正、篠塚秀之からある事件の班員に指名される。篠塚は若くして公安部部長に次ぐ地位にあり、一見穏和だが常に冷静で、なにを考えているのかわからない男だ。江波はある事実から篠塚に反抗にも似た感情を持っており……!? 事件にはできない事件を追う、男たちの静かな闘いの物語!
(出版社より)

作品情報

作品名
最果ての空
著者
英田サキ 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
エス
発売日
ISBN
9784813012061
4.3

(81)

(49)

萌々

(19)

(9)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
23
得点
351
評価数
81
平均
4.3 / 5
神率
60.5%

レビュー投稿数23

篠塚兄ィーーーーーー!!(絶叫&涙)

待ちに待った「エス」スピンオフ最後の”篠塚兄”編ですっ!!
篠塚兄には、一生椎葉ラブで行って欲しい。もしも、万が一ならポジションは”受け”で、相手は浅川あたりで・・・と安易に願っておりましたが、やはり英田さんも篠塚兄のスタンスは崩したくなかったのねと、ある種の安堵さえも。
これはBLというには余りに重く、深く、「篠塚」という人間の生き様の小説です。

ロシアの機関の視察を主に行う外事一課4係の江波は、新しい任務の直接指揮に公安部参事官の篠塚が着き、自ら指揮を執る任務のチームに組み込まれる。
この本で明らかになった新事実は、篠塚は由香里が亡くなってから3年間外務省に出向してロシアに行っていたのです!
江波は半年前からバレエ講師をしている日露ハーフの井澤と恋人関係にあるのですが、リバです。
今回監視の対象になったロシア外交官の追尾を通して、篠塚と江波の仕事情の絡みが篠塚の心をさらけ出して見せてくれる場面となっています。
江波がゲイであることを知っても卑下もしなければ、排除もしない篠塚。
井澤が怪しいと睨んで、江波と井澤の情事の場面へ踏み込んで尻尾を掴むという捜査に出たところは篠塚の冷徹さと冷静さを演出します。
江波には、篠塚と同期でライバルのキャリアの兄・神津がいますが、神津が篠塚の事を「嫌いだから自分のものにしてとことん屈服させて楽しみたい」と言わせます。
江波もそれに似た汚したいという感情を持つほどに、篠塚が潔癖で孤高の人であることがわかります。
篠塚の本質を知ることで、篠塚を好きになる江波。でも江波と篠塚には身体の関係は発生しません。
篠塚は、由香里の死後独り身を通すことによって、警察という組織へのささやかな当てつけをしているのだと独白しています。
自分が幸せになると誰も由香里を思い出さなくなり、事件のことも忘れ去られてしまう。
彼女の死を背負うことで謝罪になるのだと、、、とことん寂しい人なんだなと悲しくなります。そして、寂しくない人生なんかあるだろうか?と問う篠塚。
最後に江波との別れの時、「平気な顔をしていても一人で生きていくのは恐ろしく寂しい」と本音を漏らす篠塚に思わず江波だけでなく、自分まで涙が・・・
恋人でなくても友人としてという江波に「忍という字は心に刃と書く、心が切り刻まれてしまう」と諭す姿もまた涙・・・
江波の兄・神津も不正の引責で退職し、3人が別れてそれぞれの道を歩いていく。
男達の後姿が印象的です。

最後になりましたが、浅川は27歳の女性とデキ婚で子供が生まれました!
椎葉も登場しますが、最後宗近も登場して、篠塚と会話しています。
開いた題字の下にある絵は江波と神津の兄弟、連れいているアヒルは篠塚なのか?
もちろん篠塚の声は三木さんで脳内変換されておりました。

10

ともふみ

こんばんは、茶鬼さん。
購入迷ってたんですが、茶鬼さんの力強い雄叫びと、椎葉&宗近の登場にそそのかされて買ってきてしまいました。
今から、篠兄ぃの生き様見届けてきます!

茶鬼

MOKURANさま
はじめまして、コメントありがとうございます。
本当はもっとたくさん感じたこと書きたかったのですが、字数が足りなくなり、また余り自分の主観を書くのもと思い、これでも言い足りないくらいの感動でした。
篠塚、悲しくて厳しくて、あくまでも孤高の人ですね。

>タイトルページのイラストですが、
>私としては「白鳥が兄弟を引っ張っている」様に見えました(笑)
>白鳥の正面顔を見たことが無いので、自分も最初はアヒルかと思ってましたが。
そうそう、自分もこれは牧水の短歌が最後のシーンに引用されていて、この白鳥が篠塚だと思ったのですが、これは”はくちょう”ではなく”しらとり”なので、イラストの見た目印象で、アヒルにしました。
目は白鳥っぽいんですが、白鳥だと、くちばしが黒く、鼻の周りが黄色なので・・・
でも首の長さが白鳥かな~と、悩みどころですね。
兄弟が篠塚を好きだったということで、二人で取り合いしてるみたいな絵でほほえましいですよね。

>今作はオヤジスキーには堪らない作品でした~~!
本当に、オヤジオンーパレードでしたね。
篠塚の絵も41歳おじさんて感じに変身して渋かったです!

MOKURAN

私の書きたかったことはほとんど全て!茶鬼さんがコメントされているので、
繰り返しませんが……一つだけお尋ねしますね。

タイトルページのイラストですが、
私としては「白鳥が兄弟を引っ張っている」様に見えました(笑)
白鳥の正面顔を見たことが無いので、自分も最初はアヒルかと思ってましたが。

今作はオヤジスキーには堪らない作品でした~~!
裏表紙も良かったです。

うわ、ちょっ!ドラマCD化希望しますっ!!

篠塚さんが幸せになってほしい…!と願う読者に、篠塚さんが篠塚さんなりの答えを示す1冊。
傑作ですけども、単品で読むことはオススメしません。
篠塚さんの立ち位置を読者側が捉えていないと、読者は江波に感情移入して堅物なオッサンと葛藤するハメになりそう……。
また、BL的な恋愛描写を期待されている方にも向きません。
恋に近いほどの熱さで、けれど性愛(≒恋愛)ではない愛(≒家族愛)の話だからです。
私はそういうのも読みたいのですが^^;


篠塚さんって埋み火を抱えた低反発枕みたいな人なんですよね。苦笑
でもシリーズを通してブレがない。最愛の妻を亡くしてから孤独と共に歩む決意をし、決して歩みを止めることなく孤独を愛した男。
彼の場合こういうストーリーになったのはすごく自然な話で、もし江波が女だったとしても篠塚さんは彼を好きにならなかったんじゃないかな…。
宗近が言った言葉が少なからず篠塚さんの救いになればいいなぁ…なんて感傷に浸ったりしました。

『誰かを想って耐え忍んでいると、心が切り刻まれてしまうよ。』by篠塚
このひと言が全てな気がします。篠塚さんも切り裂かれて辛い日々があったのでしょう?

終わり方として最高に素敵だったと思います。
英田先生、長い間お疲れ様でした。『エス』シリーズ大好きです!
久しぶりに英田先生の作品で熱く語った気がします…。
『今宵、天使と杯を』の次に『最果ての空』が好きです。

あと、『最果ての空』のドラマCD化を希望します!
せっかく三木眞が篠塚さんな訳ですから、ここは江波→篠塚中心にじわっとナレたっぷりにまとめて欲しいです!
2枚組でもワタシは買うよ!笑

7

どうしてここで泣けるんだろう?

篠塚さん、罪作りな男だ。
でも、きっとずっと、貴方はみんなに愛されていくんでしょうね。

「エス」シリーズ最後の男・篠塚英之。
彼のお話が読めるということで、大変楽しみにしておりました。
彼を幸せにしてくれるのはどんな人物なんだろう?そればっかりが気になって仕方がなかったわけですが、彼は、誰かに幸せにしてもらいたい人ではなく、他人のために生きていくのを選んだ男だったんですね。
どこまでもどこまでも篠塚英之でした。

もう一人の主人公・江波郁彦は部下として任務をこなすうち、心地よく受け止めてくれるのに同じ力で弾いてくれるような篠塚という存在にどんどん惹かれていきます。

スパイを追尾する任務という特殊な仕事を絡めてお話は進み、江波の篠塚への想いも膨れ上がっていくわけですが、彼らの仕事と恋の駆け引きもさることながら、それぞれの兄弟や友人、同僚や恋人あるいは過去の人と、たくさんの人物が登場するので、奥行きのある作品になっていると思います。
(過去のシリーズの、篠塚絡みの登場人物もちゃんとフォローされています。)

で、その奥行きのおかげで、もう少しで篠塚さんほだされちゃうのか?っていう場面がそこここに。
で、そのたびにはぐらかされて・・・なんて罪作りなの?・・・
それだけのお話だったら萌評価だったと思うんです。
あまりにもどかしいので。あまりにも篠塚さんが篠塚さんなので。

しかし、篠塚さんが「ひとりは寂しい」と認めた後からが猛ダッシュ!
どうしてここでこんなに泣けるんだろうって程ボロボロに泣けましたので、神評価になりました。
寂しさを認め、江波を愛しいと言いながら、一人を貫く。
最後のシーンなんか減らず口を叩く江波のお兄さんとのやりとりで締められているのに、もう涙ボロボロですよ。
男の生き様っていう感じですよね。カッコイイ。

で、もっと年をとったら、江波も椎葉も浅川も、そして神津(江波兄)も篠塚が嫌がりそうな手土産を持ってしょっちゅう遊びに行っちゃえばいいんだよって思いました。
もちろん、浅川と神津には何人も赤ちゃん作ってもらってさ。

ああ、これでまた一つ終止符が打たれてしまったのですね。

5

「忍」という文字。

ようやく読み終えました。
一言で感想を口にするならば「読んでよかった」です。

私は「デコイ」しか読んでないので「エス」シリーズで何が起きていたのかとかそういうことを知らないままで。
篠塚という人物に対しても「デコイ」に出てきた時の印象だけで。
それでも篠塚という人物が誰かと交わるというのが想像できなくて。
どんな物語になるのかと読んでみたくて手に取ってみました。

そんなわけで以前何があったかについては物語の中で語られた程度にしか知りません。
それでも、篠塚がその件について複雑な思いを持っていることはわかって。
それが彼の人生に大きくのしかかっていることも。

江波という人物は読み終えてみればすごくかわいい人物に見えて仕方なかったです。
軽薄そうにも見えるのに自分の気持ちに実に素直にも見えたり。
それまで付き合ってきた相手に対して男同士というせいもあってか「好き」と口にすることさえしなかった江波が篠塚に対しては何度もちゃんと「好きです」と告白している姿はそれだけで彼の本気がひしひしと伝わってきて。
最初は反発していた気持ちがあったはずなのに、篠塚という人物を知るにつれて気持ちがどんどん傾いていくのが見えて。

篠塚という人はホント罪作りな人だ。
彼の口調はどこか江波に対して優しい父親のような雰囲気もあるのだけれども、江波がゲイだということを考えればそれはそれで誘惑される材料にも見えて。
ほかの人物と接するのとは別に確かに篠塚の中で江波に対して芽生えているものがあるのに、先に選んでしまった信念を曲げないところが篠塚らしいというかなんというか…。
どんなに淋しくても1人を選んでしまって、それを貫き通すところに男を感じました。

浅川の赤ちゃんの抱いてその尊さを体感しているところ。
江波の肩に頭を預けて眠るところ。
愛おしいと感じつつも、どうにか自制して離れるところ。
そして、「このさびしさに君は耐ふるや」なラストシーン。
どれもこれもが印象的。

BLというカテゴライズに果たしてこの物語がどこまで属するのかは疑問だけれど、そんなことは抜きにしても読みごたえのある面白い作品で。
ラブストーリーというより人間ドラマ。
篠塚という自分の生き様を書いたお話だったなぁと。

これを機に「エス」シリーズを読みたいと思います。
そして、読み終えた後にまたこの物語を読みたい。
お話にもっと深みが増すだろうし、また違った感想が出てくるかもしれない。

CDでも是非聞いてみたいです。
当然、篠塚の声は全て三木さんの声に脳内変換されて聞こえておりましたが。

4

義兄さんは、最後の砦

エス、デコイと続いたシリーズの最後の砦、篠塚メインの本。

よかったよ~~
篠塚が転ばず踏みとどまってくれて、
ほんっと~に、よかった。

BL的には、結局江波にほだされて、一発くらい食っちゃう展開になったっておかしくない
でも、篠塚だけは、そんなBL的なお約束や、エロや濡れ場とは別の次元にいて欲しいと強く願っていたので、思いが通じて、ほんっとうに、うれしい。
さすがに『英田サキ』!!

篠塚は、ちゃんと「一人は寂しい」と認めた上で、潔く、一人でいることを選んだ。
篠塚って、こうでなくっちゃ!

エスで、宗近が椎葉とあることを選ぶために、今まで生きてきたヤクザの世界を捨てたラストと、
この作品で、篠塚が一人であり続ける事を再認識するラストが、呼応して、
ようやくこのシリーズの、大きなリンクが閉じた気がする。

英田先生、お疲れ様でした。

4

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