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以前から「読まねば」と思っていたんですけれど、この本9年前の作品なんですね。
あらためて剛さんは凄いと思いました。
「スゴイ!」って言うより「……凄い」のよね。
旧財閥の直系で、子どもの頃から家業(と言っても、大財閥なので仕事は様々あるんですけれどもね)を継ぐことを運命づけられている風宮。
なのに覇気がない。自分の意見が言えず、廻りの言いなり。
結果として、破産寸前と言われている造船会社の社長になっています。
そこに父の親友の息子で幼馴染み、高校時代は恋人関係だったのに突然アメリカに渡ってしまった祐一朗が帰国して秘書として入社し、ドラマが始まります。
風宮が幼い頃したかくれんぼで、『怖いところ』と思われていたため子どもは誰も近づかなかった納戸に隠れていたエピソードが冒頭に出て来ます。
これがとんでもなく秀逸なんですよ。
そしてこの物語を最後まで引っ張っていきます。
風宮は『狭いくて暗いところに入っていると安心する』人なんです。
祐一朗との行為も、風宮をベッドカバーで包んだ形で行なわれる。
人の目に晒されたくないのです。
身も心も剥き出しにされたくない。隠していたい。
でも「ずっと隠れていたい」と思うのと同時に「誰かに見つけて欲しい」と思っていた気がします。
それは、自分というものを見つけてくれる人を渇望しているということ。
誰もが風宮を探すのを諦めたかくれんぼで、彼を見つけてくれたのは祐一朗でした。
風宮の人生を引っ張っていく祐一朗は2人の関係においてイニシアティブを取っている様に見えます。
でも、多分違うんですよね。
風宮が納戸に隠れていた時、小さな穴から入る光に照らされて外の風景が逆さまに見えることに気づくのですが、2人の関係もそういうものの様に思いました。
こういう『つくり』がとても上手いのです。
読んでいて興奮に打ち震えました。
あ、BLだからエロについて書かなきゃ。
とにかく淫靡です。
風宮を覆ったままでいたす行為や、大きなキャリーケースに全裸の風宮を入れて六本木を『散歩』するなど、まあ凄い凄い。挙げ句の果てには風宮を巡った恋敵の和輝と祐一朗の『対決食事』にまで、キャリーケース風宮を連れていく徹底ぶり。
淫靡という言葉はこの物語のためにあるんじゃないかと思いましたです。
実に甘美な、二人だけの間で閉じている、愛の物語。
包んで、隠して、閉じこめて
愛すればこそ、その望み通りに
仕事中に、役員室の机の中に入らせてのフェラとか、
裸にして、スーツケースでのお散歩とか
これだけ見れば、鬼畜な調教物のようだけど、実は、支配し、支配されているのは、お互い様。
こんな始まり方をしたストーリーが、あんな風に終わるだなんて、、
純粋な愛に満たされた、とてつもなくロマンチックなお話でした。
率直に言います。すごく面白かった!剛さんの引き出しの多さには感服致します。
剛さんは好きな作家さんで既読本も多数あります。そのため読む前から自分の中でかなりハードルが上がっていたのですが、期待以上の出来の良さでびっくり。
執着攻めスキーの私にはたまらない作品でした。
お気に入りのシーンはたくさんありますが、私のイチ押しは高校時代のエピソードです。カウンセラーに相談しようとする風宮を阻止するためにあんな手を使うとは!
でもこの時の祐一朗って結構追い詰められていたのでしょうね。風宮が自分以外の誰かに頼ることすら許せないという気持ちが表れています。
そして風宮がまともになることを危惧している祐一朗の様子に、風宮以上にこっちの方が危ないなと認識しました(笑)
雄一郎が風宮にベッドのシーツにくるまるように促すのが萌えます。風宮を性癖ごと愛し
ていて、同時に最高の理解者であることが窺える行動だな~と。
ベッドのシーツにくるまりながらのエッチが通常のようですが、後半で初めて対面しながらエッチをする時の慣れない様子の風宮の初々しさがたまらんです。可愛い。
でも実は高校時代の手コキがすごく萌えだったり。雄一郎が自分のモノを風宮に握らせてハアハアしてるのがちょっと変態チックで素敵!
後半にかけてエスカレートしていくプレイにもご注目!ハードなわけではないのですが、どことなく異質な雰囲気。個人的にああいうのは大好き。
そして祐一朗が抜かりなさすぎる。もう和樹が途中で哀れになってしまいましたよ。勝てない相手に喧嘩を売るのは辞めましょう。
義兄ざまあな展開にはスッキリしました!
ラスト数ページは二年後。きっちり最後まで設定を生かした締め方でした。お見事!
すごく面白かったです。少し変わった設定を楽しみたい方におススメの1冊。
最後に、口絵のアングルが素晴らしかったです!
まずはじめに。非常に面白かった!
この作品は、これまで読んだことのないような何とも奇妙な不可思議な物語。
江戸川乱歩から猟奇を抜いて甘い愛を振りかけたような…
逃れられないフェティッシュとそれを許可し包み込む愛。貫徹する唯一無二のラブストーリーを描いているのです。
主人公・風宮(ふみや)は、かつての財閥で船舶・商社・金融業に関わる藤島家の跡取り。
しかし、幼い頃からおどおどして、いつも夢を見ているようにぼんやりして、周囲の言いなりになるばかり。心が落ち着くのは、窓もなく古い物が置かれている納戸。1人で狭くて暗い場所にいるのが好きだった。
そんな、ある程度誰でも理解できる心境が変態じみたフェティッシュに変貌するのが、幼馴染の祐一朗の存在のため。
狭いところでじっとしていたがる風宮の心を深く理解し、絶対否定せずに傷付けずにいつも助けてくれる祐一朗。祐一朗に身を委ねる風宮の全身をベッドカバーでくるんでお尻だけ出してつながるセックス。風宮はもう祐一朗なしではいられない…
…と、設定はよく考えるとかなり変態。でも祐一朗は深く深く深く風宮を愛しているのですよ。だから自分の性癖としては普通のセックスをしたくても、風宮に合わせて部屋は真っ暗、顔も体も見ず、キスもせずの行為をしてくれるわけ。
風宮のためにアメリカで勉強し、体を鍛え、経営者には向かないが将来は社長になる風宮をサポートするためだけに奮闘する。そして誰に対しても臆せず風宮を支える事を宣言する。(ただし、風宮本人にだけは面と向かっては言わない。どんなシチュエーションで言うかって?スーツケースに押し込んで…!)
ここに至ってねじれて逆転する主従の趣きもありの、お互いがお互いだけを欲し愛する完全世界が出現する物語でした。
狭いところに入ると興奮してしまうという風宮(ふみや)と、それを守る人、祐一朗。
小さい頃にこもった、蔵。小さな隙間から漏れた陽の光が作った逆象が鮮明に記憶に焼き付いている。一人だけの密室を隠れ家として心地よく感じるとともに、必ず自分を探し出してくれる唯一の存在がいることの安心感。
一方、祐一朗は、幼い頃から風宮に執着し、自分だけが風宮を見つけ出せる存在であることに満足を覚えている。
そんな共依存関係が、社会人になるとともにどう成長するか、が描かれた作品です。
御曹司だが仕事ができず疎まれている風宮と、風宮への愛故に血のにじむような努力を重ねてキャリアを積んだ祐一朗。
トランクで昂揚するというあたりが一番ヘンタイっぽかったです。最後は薄皮であったシーツをはぎとっての幸せなHでよかったね、という感じ。
着想は閉所、というところだったかもしれませんが、二人の成長物語という感じでした。