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表題作残酷な神が支配する(6)

イアン・ローランド/ジェルミの義兄
ジェルミ・ローランド/母親思いの少年

作品情報

作品名
残酷な神が支配する(6)
著者
萩尾望都 
作画
萩尾望都 
媒体
漫画(コミック)
出版社
小学館
レーベル
小学館文庫【非BL】
シリーズ
残酷な神が支配する
発売日
ISBN
9784091916167
5

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
1
得点
30
評価数
6
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数1

与えられるものと本当に必要なものの溝

 グレッグがジェルミにした仕打ちを認め、もう一度彼の痛みと正面から向き合い、彼の生活を立て直したいと思い詰めるイアン。真っ当に生きてきた人間の、真っ当な感覚だと思います。リンドンはそれはイアンの単なる偽善やエゴだと言うけれど、実際ここまで堕ちてしまったジェルミが再び人間らしい生活を送れるようになるためには、強引な説得と経済力が必要だったと私は思います。

 どんなに自分だけはしっかりしていると思っても、荒んだ環境、荒んだ人間に囲まれて生活していれば、それらに一切毒されずに生きていくことは難しい。一度は注射にまで手を出しかけたわけですし。そんな中でも、キャスのように心根の良い友人がいて、ジェルミ自身も彼を見捨てずにきちんと最後まで面倒を見てから彼の元を去ったことは、この僅かな2度目のアメリカ生活の中でジェルミの糧になったように思います。イアンの元を離れて一度はこんなに堕ちた暮らしを選んだ自分を後から思い出した時、キャスと助け合いながら生活したことだけは、後悔のない事実として救いになってくれるんじゃないかなと。

 ロンドンに帰ってからも、当然そう簡単には真っ当な暮らしができるようにはなりません。真っ当に生きるために必要な環境、経済力、人脈はすべて揃っているけれど、肝心のジェルミ自身が、グレッグに出会う前の自分に戻る術が分からないのです。レイプされ続けた挙句人殺しに手を染めた上に、ドラッグと売春でさらに堕落した自分を、わざわざ元の世界に引き上げる必要などないし、引き上げられる資格もない。彼はそんな風に考えているのではないでしょうか。イアンの贖罪には付き合ってもいいけれど、それで自分が救われることはない、とまだ厚い壁で覆われているように感じます。彼の頑なな心を溶かすには何が必要なのか、読者も一緒に考えたいですね。

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