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表題作つみびとの花

北川巽,35歳,妻に先立たれたシングルファザー
氏家志信,27歳,保育士

その他の収録作品

  • 苦しい息もたえだえに

あらすじ

男手ひとつで育てていた娘を、北川巽は保育園のバス事故で失った。
罪悪感に苦しむ保育士の氏家志信を無理やり抱くことで、底なしの絶望と孤独からひととき逃れようとする北川。彼を恐れながらも、償うために身体を差し出す氏家。
やがて北川は氏家の生真面目さや優しさを愛しく思うようになるが、氏家は頑なな態度を崩さない。
氏家には、結婚を決めた女性がいた──。

作品情報

作品名
つみびとの花
著者
佐田三季 
イラスト
上田規代 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラノベルス
発売日
ISBN
9784778109714
4.2

(67)

(42)

萌々

(11)

(6)

中立

(3)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
17
得点
275
評価数
67
平均
4.2 / 5
神率
62.7%

レビュー投稿数17

ハードカバーで読みたい

帯「二ヶ月連続刊行第一弾。期待の新人、初ノベルズ」
255P(後書き2P、口絵カラー1P、本部内イラスト10P)

こりゃどえらい新人さんが現れたもんです、すげー。
これは迷わず神です、新人神!!!
初ノベルズにしてこの完成度の高さはまさに帯通り「期待の新人」ですね。
後書きに続刊報告があったので読み終えて即効買いリストに入れましたよ。
こういう表現は好きじゃないんですが、BL枠だけに留まらないものを感じました(うーん、やっぱりこの表現は好きじゃないけどこうとしか書き様がないです)
作中でタイトルの「つみびとの花」の言葉が出てくる部分で無性に感動しました。
喘息が北川[攻]と氏家[受]との2人にとってそれぞれ意味を持ち、2人を繋ぐ要因の一つにもなるのですが、一般小説も合わせてここまで喘息描写を丁寧に書いた作品も珍しいんじゃないでしょうか。
あと漢字とひらがなのバランスが絶妙、普通これは漢字変換するんじゃね?って字をあえてひらがなが使われてるんですがその匙加減がいいんですよ。

安さ優先で基本文庫大好き人間なんですが、これはハードカバーで読みたい!と思いました。
ともふみさんのレビューに「挿絵なしでもいい」とありましたが、それ凄いよく分かります。
ハードカバーの挿絵なしで読みたい、そんな作品です。
二段組でボリュームたっぷりなのでがっつり時間を忘れて読みたい、そんな時にお勧め。

11

深い作品でした

深い作品でした。

シングルファーザーである攻めが、いきなり娘を事故でなくしてしまうところから物語がはじまります。
どうしようもない悲しみの中で、「本当は責任はないけど少しは責任のある男」をレイプする。攻め本人も、自分のしたことが無茶苦茶なことだというのを自覚している。
最初はやり場のない感情(悲しみ、怒り、苦しみ、その他ぐちゃぐちゃの名前もつけられないような感情)のはけ口でしかなかった受け。
でも受けは娘と同じ喘息の病気を持ってて、その看護をしたことから、攻めは受けを「娘の身代わり」として慈しみはじめた――ように思えました。
後半あきらかになってくる受けの半生も相当過酷なもので、読み進むうち、この二人が惹かれあった理由が分かる気がしました。
受けもまた、「親の愛」に激しく飢えてる人間だったのだ。
二人ともはっきり自覚はしてないけど、互いに求めるものが一致してたんだなって思って。

もちろん性的な関係があるわけだから親子愛じゃないし、恋愛感情も芽生えてくるんだけど、それ以上に「子供を慈しみたい気持ち」と「親から慈しまれたい気持ち」が合致して、ゆえに余計に惹かれあったんじゃないかなって。

読んでる間ずっと胸がちりちりと痛かったです。

9

ブログの方で…

最初に…ほんっとにこの方の作品素晴らしいです!!
デビューされたばかりとは思えません!
どうか、どうぞ読んでみて下さい。
何かを感じて頂けると思うのですが…
なんか回し者みたいですね(笑)

私はまだ、この作品は買ってはいないのですが、以前佐田さんが小説ブログをされていた時に『つみびとの花』読ませて頂きました。
ちょっと話の雰囲気として水城せとなさん寄りかな~と思ったり。

ネタバレはあえてしませんがとにかくお話が深いです。考えさせられるし、男同士、お互い対等な関係で書かれていますので女々しかったりショタが苦手の方にとってはかなりの確率でヒットなんではないでしょうか。

佐田三季さんのファンがどんどん増えたらいいなーと思う今日この頃です。

7

ともふみ

再びこんばんはです。
わー、わー、やはり同じ方なんですね!嬉しいです。
日記ブログのお知らせもありがとうございました。早速のぞいてきましたよ~。やはり小説の方は休止されたままなんですね。残念ですが、これからは商業の方での活躍を応援したいと思います。
そして明日の仕事帰りに、スキップで買いに行ってきまっス!押忍!

ルイ

うわーコメント有り難うございます!!
そうです!まさにその方です!!
今はブログの方は休止されてますが日記の方のブログは続けてらっしゃいますよ★(夜の終わりに ちょっと一服)
本当、佐田さんのお話は痛くて暗いんですが最後は救われるし、その救われ方が100パーセントじゃない所が自然でいいんですよね…

あ、調度今『あの日、校舎の~』がアマゾンから来ました(笑)
ともふみさんも書店へダッシュですねb

ともふみ

ルイさん、こんにちは!&はじめまして、ともふみと申します

ルイさんと茶鬼さんのレビューに惹かれて二作品ともとても気になっていました。
でも、あらすじを読むとものすっごくデジャブ感があって自分でも??だったのですが、ルイさんのレビューを拝見して、もしかしてネット小説として掲載されていた頃に泣きながら読んだ作品と同じような気がしてきて、確認したくていてもたってもいられずコメントしてしまいました。

作者さまのHNを全く覚えていないのですが、確かサイト名が「夜のホニャララに(←うろ覚え)愛について」というような感じで、BLの他に男女ものの作品も一緒に掲載されていた小説ブログさまでしょうか??
もしそうなら、好きな作風の方だったのに読めなくなってしまい悲しかったので、書店にダッシュしなきゃー!と、ウズウズしてます。

心に残る作品

これまた不幸のオンパレード。
でも単純に、可哀想なシチュで泣かせるためだけのお話ではないと思う。

上手く言えなくてもどかしいんですが、物語の根っこには人と人の関わり合いがあって、切実で真摯な人間ドラマのような趣きがあります。でもちゃんと恋愛もの。
恋愛だって人と人が向き合う上で生まれる関係性の一つなんだから、人間ドラマとも言える。そんな風に感じました。

最愛の娘を事故で亡くした北川(攻め)の前に現れたのは、バス事故の時に運転していた氏家(受け)という青年。直接的な加害者ではないけれど、監督責任があった保育士です。
圧倒的な喪失感の中で自分を見失っている北川は、目の前に転がり込んで来たこの青年の罪悪感に付け込み身体を強要することで、自分が味わっている地獄への道連れにしようとします。

なんともシビアな始まり。
でも、テーマは贖罪や愛憎ではありません。
脅しという非常識な形で始まった関係の変化。それをもたらす心の推移がメインとなっていて、ヒリヒリとした重たい話ながらも余韻は優しく、心に残る良作でした。


主役である北川が色んな顔を覗かせていて、いちいち胸にきました。
娘を心から愛する父親、劣情を抱く雄、愛情深い世話焼きな保護者、脅迫する犯罪者、寂しくてたまらない弱り切った孤独者、恋をする一人の男。
そのひとつひとつの感情が、淡々としているのに切実で、身につまされます。

恐怖に近い孤独感に苛まれていた北川が氏家を求める様子は、陵辱ではなく、ほとんど溺れる者が藁をも縋るような切迫感があります。
そういう意味では完全な依存で、純粋な恋愛感情とは言えないかも。
でも、純粋な恋愛ってなんだろうな?

北川にとって氏家は、偶然見つけた八つ当たりの道具でしかなかった。多分誰でも良かった。でも、「だれもな、だれかのかわりになれないんだよ」という台詞が示すように、その後に生まれた関係性は氏家相手だから築けた。
娘の羽奈ちゃんの先生であり、同じく孤独を知る氏家だったからこそ、北川の苦しみや寂しさや優しさを違えずに汲み取れたんだろうな。
誰かを愛しく思う感情は、巡り合わせなんだなあとしみじみしてしまいました。

色んな箇所でホロリとなりました。
特に2話目でのまどかちゃんや柳瀬親子とのエピソードでは、やたら涙が出てしょうがなかったです。
なんていうか、脇役がみな生きているんですね。
キャラが立っているという意味じゃなくて、小さな子から年配者まで例外なく、それぞれの事情と価値観のもとで自分の人生を生きているんです。
日々を送る中で時にはそんな彼らと接点があり、その都度で何かを得たり、噛み合わなかったり。
主役たちの目を通して彼らを嫌だなと思うシーンはあっても、(主役を含め)そこには「いい人」「悪い人」という作者による線引きがありません。そういう人と人の関わり合い方が描かれている。
もはやBLとしての感想なのか自分でも疑問ですが、単純な勧善懲悪ではないそんな世界観が、個人的にはとても好きだなあと思いました。

それとこのお話、イラスト無しでいいかもと感じたり。。
レーターさんには申し訳ないんだけど、漫画的な挿し絵にもの凄く違和感が…って、わたしだけでしょうか?萌えを求める話ではないからかな。
そんな話が好きな方は、是非是非読んでみてほしいです。

7

ともふみ

こんばんは茶鬼さん!
はい、ようやく読めて嬉しいです~。
ネットで読んでいるので多分3度目なのにのめり込む様に読んで、またしてもボロボロ泣いちゃって、鼻が詰まってオエッってなりました。
悲しい話なんですが、癒しがありますよね…タイトルも沁みました。
ほんと、色んな人に試してみてほしい本だと思います。
おふたりのレビューのおかげで再び巡り会えてよかった…。ありがとうございますーーーーーーーーーーーー!

マイページの好きな作家さんリストに加えねば!

茶鬼

ともふみさま
よまれましたね♪
「神」がついていて、感激しました!!
本当に、BLっていう枠を超えてズシンと心に響くお話でしたよね。
自分も、共依存が始まりだなとは思いましたが、ものすごく納得のいく展開でした。
涙もボロボロでした~
イラストは、、気にしなかった、というか話に熱中するあまり、絵があることにもあまり気がつかなかったくらいです。
この本、もっと皆に知ってもらいたいし、読んでもらいたいと思いますっ!!

心にガッツリくるお話でした。

作品全体に漂う雰囲気に呑まれてしまいました。
泣けるところは沢山あるんですが、どこかでドバーっと泣くというよりは、全編を通してず~っとじわっと涙目で読んだ感じです。

主人公である北川がとても人間らしくて、悲しんだり、途方にくれたり、理不尽な八つ当たりをしたり、酷いとしたり、優しくしたり、甘えたり、大事にしたり、落ち込んだり、無理したり……、本当に沢山の感情を見せるのですが、それが全然ブレて見えないのはバックボーンがしっかりしてるからなんだな、と、佐田さんの力量と丁寧さに感嘆させられました。

当人同士だけじゃなく、脇のキャラたちも、漫画的いい人でも極悪人でもなくて、それぞれに事情を抱えている普通の人たちで、ホントに人間くさい。
BLというよりも、ヒューマンドラマを見たような気がします。

いや、もちろんちゃんとガッツリBL要素はあるんですが。

こんなに切ないお話の中、私は北川が好意を隠さない人だったことが、本当に救いでした。
強姦から始まった関係だから、好きだと自覚しても「今更好きなんて言えない」って展開に転ぶこともありえたと思うし、実際BLではそういう展開のほうが多い気がするんです。
それももちろん好きだけど、このお話に関しては「好きになったから傍に居て」と言ってくれて良かったと思いました。
縋るようで痛々しくはあったけれど、北川が氏家を求めるたびに、「この人はまだ大丈夫。何度も一人ぼっちにされてしまった人だけれど、まだ誰かに優しくしたりされたりすることを諦めてない」と、そう思えました。


この作家さんの書かれるお話を、もっと読みたい!
もっといろんな人に読んで欲しい!
いや、きっと近いうちにとても大きく羽ばたかれる方だから、今くらいはこっそり宝物として大事にしときたい!

読み終えてそんな気持ちになりました。

6

この作品が収納されている本棚

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