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表題作バロックの裔~無垢なまなざし~

松宮良成,22歳,子爵家長男
三春,15歳,スリ見習い

その他の収録作品

  • バロックの裔~無垢な恋情~
  • あとがき

あらすじ

三春は、以前掏摸を働いた青年に捕まってしまう。良成という青年に、いきなり食事を誘われ従うが…。新シリーズ第一弾!!

作品情報

作品名
バロックの裔~無垢なまなざし~
著者
和泉桂 
イラスト
梨とりこ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344819993
3.1

(8)

(0)

萌々

(2)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
24
評価数
8
平均
3.1 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

善良な罪人。

スリにあった青年・良成×スリ・三春

和泉さんの再始動シリーズは大正くらいの日本にどこか似た架空の国・皇國の「バロック」と呼ばれる特殊地域に住む人たちをメインにしたもの。
本を開いた時に1段書きだったのでちょっと驚きました(普段、2段書きが多いので)
でも、その分、サクサクと読めたかな。

バロック育ちの三春。
バロックの住人は大概が裏社会というか犯罪に手を染めていて。
三春の生きるためにスリを業にしようと師匠の元で勉強中。
そんな三春が街に出てすった相手が良成。
身なりが良い良成の財布からは大金と共に大切にしまわれた写真が出てきて…。

三春がとにかく健気です。
スリなのに相手のことをすごく心配してしまうような。
少量の残金しか入ってないような財布をすった時には、「これだけしかないのに取っちゃって大丈夫かなぁ」と思いやってしまうような。
なので、良成の財布から写真が出てきた時も大事にしまっておくのですが。
そんな彼らが再会を果たし、三春が身分を明かしても蔑まなかったことから良成との交流が始まっていくのですが。
その中で、良成の置かれている立場を知り。
徐々に気持ちが傾いていく三春。
けれど、良成にはいい人がいて。
それでもなんとか良成の役に立とうと精一杯の努力をする三春がとにかく健気です。
良成が苛立ちゆえに無体を働いても少しも責めず、良成のことを思いやることができる。
最後の最後まで気持ちは擦れ違ったように噛み合わなくて。
それは良成があえて選んだ道でもあったのだけれど。
三春は片想いで少しも構わないような。
本当はちゃんと向き合いたい気持ちもありながら抱かれるあたりせつないです。
良成がようやくちゃんと告げることができた時には2人とも幸せになれてよかったなーと思いました。

そして、今回の話ではこんなふうに絡み?が見られると思ってなかった桐谷×侑生。
雑誌の方でこの次の作品にも登場していたのですが、とても気になる2人だったのですが。
そういえば、その作品でもチラリと2人の関係がわかるシーンが書かれていたなと思い出しました。
桐谷の絵を初めて見たのですが、何考えてんだかわかんない感じてとてもステキですvv
この2人シーンのイラストがとても色っぽいというか淫靡というか…。
メイン2人だとどうしても三春が幼いのでそれほどアダルトムードが漂わないのですよ。
良成も紳士って感じですし。

「バロックの裔~無垢な恋情~」
その後の2人。
師匠に2人で暮らすことを告げにいくのだが…。

なんだかんだでラブラブです(笑)
個人的には侑生の反応が見れてよかったなと。
良成、いいとこ見てますね!(笑)

そして、あとがき。
次回の雑誌が遂に桐谷×侑生だとか!
やばい、買う!!!(即決)
待ち遠しくて仕方ありません。
そして、ノベルスの方は前回雑誌に載ってたもののようです。
あー、楽しみだ♪

1

誰かが誰かのために

日本の明治時代を彷彿させる、限りなく実世界に近い架空の皇国とそこにある、バロックと呼ばれる裏社会。
表と裏の世界に住む同士を巡り合わせることで、スッパリと身分差というものを表現していましたね。
架空にすることで、あまり悲壮とか悲惨とかいう感覚が薄くなる効果があると思います。

バロックでスリとして生きようとする少年・三春が、カモとして最初の仕事をした相手が子爵家の良成。
その後も出会い、何気にお互い惹かれていきながらも、うまくいかないもどかしさにさいなまれつ、ひたすら三春の健気が全面立ちした展開で、バロックの仲間に助けられ、良成の苦悩を救うというお話になっております。

とにかく際立つのが三春の健気な一途さ。
人買いから自分を買ってくれたスリの師匠にむくいようと、全然向かないスリを行い、獲物は最初のボンヤリしていた華族の良成だけ。
純粋すぎて向いてないのですよね。
そして、また良成も家の事情で色々と悩みや困難を抱えているのに、キレイな魂の持主で、三春がかわいくて、ついつい優しくしてしまうし、美人局に騙されて。
2人とも、汚い部分がないので、どんなに困難が待ち受けていようと浮世離れした感じを受けてしまう。

しかし、この物語の中では主人公達も、主人公を見守る人達も、悪人さえも、誰もが誰かの為に動いている点が目につく。
良成は、父に疎まれているのを知っているけれど画家になりたい気持ちを抑えて父や腹違いの弟の為に金策に走るし、後は三春のために。。
三春は、そんな良成の為に何とか爵位をとりあげられないようにしてあげたいと動くし、
詐欺師の桐谷もそんな三春の為に、出世払いと言いながら力を貸し、その桐谷の為に三春に力を貸す弁護士の古閑。
三春の師匠は、三春の才能がないと知りながらも何とかしてあげたいと見放さないで面倒を見ているし。
良成を騙す美人局も、最悪の結末を与えないように最後の心配りをするし、
悪人である良成の父でさえも、良成よりかわいい二男の為に馬鹿な真似をするのであるし、
物語は全て、誰かが誰かの為にうごいているのです。
その点は、性善説に基づいたすごくきれいな物語だったと思います。

三春の健気に心打たれ、2人の恋の行方に素直に感動して、よかったねーと言ってあげる心が自分にあればいいのだが、波瀾を求める自分には、主人公達にはどうにも甘くて萌えまでいかなかったのです。
むしろ、三春に力を貸す詐欺師の片桐と、バロックで弁護士をしているという古閑のほうが気になって仕方ないのでした。

3

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