遙々アルク改め、ARUKUが贈る純潔と官能が交差する短編集。

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表題作黒猫亭雑記帳

英,大学の助教授で官能小説家 
水町(クロ),一人暮らしの水道局員 

同時収録作品台風13号/土屋観測日記/ウェザー・ニュース

武藤,受様に嫌がらせをする一団のリーダー→社会人
土屋,教室でハブにされている高校生→社会人

同時収録作品昨日の今日で

カフェの客
ひなた,カフェ店員 

同時収録作品琥珀の月/ストーカーをストーキング

小山田健,受様をストーキングする商社マン,25才
砂原,宝飾店の販売員 

同時収録作品SNOW BLIND

遠山,祖父の葬式で帰省した会社員 
桃井,街の土木課に勤める公務員 

同時収録作品凍える海の底にあるもの

根津,社会人
綾瀬

同時収録作品僕はあなたの夜になりたい

杠,彩田の大学の後輩,
彩田,夜盲症を患う先輩,大学4年生

その他の収録作品

  • 黒猫の言い分

あらすじ

「先生、あの小説を書きましたか?」
ある日、偶然手に取った小説「黒猫の庭」。そこには、自分と思しき主人公と男やもめのいかがわしき情交が赤裸々に綴られていた。助教授・英にそのことを訊ねたのをきっかけに、激しい情事が徐々に現実のものとなっていく…!
話題の気鋭が放つ純潔と官能が交差する短編集。描き下ろしあり。
(出版社より)

作品情報

作品名
黒猫亭雑記帳
著者
ARUKU  
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイコミックス~BE×BOYCOMICS~
発売日
ISBN
9784862638823
4

(51)

(19)

萌々

(20)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
14
得点
203
評価数
51
平均
4 / 5
神率
37.3%

レビュー投稿数14

1番好きなのは「凍える海の底にあるもの」です。

【もくじ】
黒猫亭雑記帳
台風13号
土屋観測日記
昨日の今日で
琥珀の月
SNOW BLIND
ストーカーをストーキング
ウェザー・ニュース
凍える海の底にあるもの
僕はあなたの夜になりたい
黒猫の言い分

《続き物》
1. 黒猫亭雑記帳 → 黒猫の言い分
2. 台風13号 → 土屋観測日記 → ウェザー・ニュース
3. 琥珀の月 → ストーカーをストーキング

《読み切り》
4. 昨日の今日で
5. SNOW BLIND
6. 凍える海の底にあるもの
7. 僕はあなたの夜になりたい

0

耽美な世界観

短編集ですが物足りなさを覚えないところが不思議です。またキャラクターの目や指の動きに滲む麗しさといいますか、艶やかさがたまりません。
セクシーなのですよね、言葉の選び方ひとつから。特に表題作「黒猫亭雑記帳」ではその美しい言葉遊びも織り込まれていて、アルクワールド全開の一冊だと感じます。

[黒猫亭雑記帳・黒猫の言い分]
英先生のエロスもさることながら、クロ君の不思議な人間性もまたエロス。
パキパキした絵柄(だと思っている)にも関わらず、肉感を覚えるのです。だから、クロ君の自慰行為の描写も、英先生との交わりも、とても淫猥で拝見しているこちらが気恥ずかしくなるくらい。
最中を持って帰るエピソードも、他人とうまく関わることができないクロ君の性格も、そして酸漿の力に惹かれる危うい面も、すべて関係ないように見えてでも繋がっている。短いお話でも、薫るものがあります。
鯛を欲しがるのもかわいい。めでたいものだしね、食べたいのかな。

[台風13号・土屋観測日記・ウェザーニュース]
やんちゃといじめられっ子のあるあるカップルでも、ARUKU先生が描くとこうなるのか…と唸った作品たち。
土屋がやや卑屈なところも好きです。あとその後、武藤のおかげか見事羽化した彼もまた素晴らしい。かわいいおでこ、とはなんぞや!(笑)
土屋みたいな子は、おそらくいじめっ子の加虐心をくすぐるのでしょう。認められることではありませんし、いやいや武藤もそう思うなら腰ぎんちゃく黙らしておこうよとも考えますが、それは置いといて…。(結果的に土屋が田村を飼い慣らしてしまいましたしね)
大人になって出会ったふたり、昔とは違う土屋の凛とした姿。もしかして、ああして古井戸に落ちたからこそ気象予報会社に勤めることになったのかな。
となると、土屋の根底には武藤が居るわけです。あのときの武藤が! 因縁にも近い、憧憬のような想いがあるといいな。学生→社会人ときたらあとは成り行きで同棲までぜひ! ぜひ行ってほしいわ!

[昨日の今日で]
恋が こんなに恥ずかしいなんて知らなかった――。独特の一文です、好き。

[琥珀の月・ストーカーをストーキング]
ストーカーなんてとてつもなく怖いことですし、粘着系攻めだと尚怖いのですが、この作品に関しては恐怖<愛を感じてまた怖い!(笑)
砂原さんが恐れる様子を見ているうえ、彼が頼んだ興信所の職員をフルボッコにしたことをわかっているから、一層小山田のことが怖くなります。だってただ…ただちょっとした親切をしただけなのに…。
お話の中盤に至るまでは、こうして「怖い」という感情を抱くのに、砂原のことを身を呈して守ったときに 恐怖<愛 になるのです。紙一重ですが、この紙一重が非常に大きい!
しかも最終的に開き直っちゃいますしね。こう、とにかくアルク先生の描かれる受けって、やたらと内面が可愛くってたまらないです。

[SNOW BLIND]
すべてを壊してでも俺のものにしてしまいたい。
ふたりの先になにがあるのだろう、これからどうするのだろう。不安になるのですが、私個人としてはこういうほの暗くどうしようもないお話がものすごく好きです。
彼女のこと結婚のこと、介護のこと仕事のこと、葬式のこと灯油のこと、なにより刺された傷のこと。気になることは山ほどありますのに、もう二人しか見えなくなる。
彼らそれぞれが10年間ずぅっと抱え込んでいたものは、一目見ただけで崩れてしまうくらい大きなものだったのですよね。攫って逃げるなんて、桃井は赦さないだろうけれど……遠山はほんとうに成し遂げてしまいそう。

[凍える海の底にあるもの]
20キロは相当ですが、最後に勝つのは愛だと聞いています。

[僕はあなたの夜になりたい]
単行本のなかにもカラー表紙としてこちらの表紙を塗られたものがありますが、それぞれすこーし顔が違います。
モノクロの頃よりも、カラーで塗られたほうのが後のふたりかなと感じました。見守る杠、安心しきっている彩田、当方にはそう見えました。
愛のことをちっとも信用せず、有用性を感じられなかった杠が、彩田に心傾き愛とはなにかを分かる……真に心寄せる人が現れない限り恋愛の意味なんて分かりませんものね。
そのうちレモングラスティーを作って、魔法瓶に入れるのも杠の仕事になるのでしょう。
そんな日常を妄想します。だってお世話するんだもの!

ARUKU先生は、人が避けたがるところを、たとえば汚いものは汚いものとして、悲しいものは悲しいものとして描かれるからこそ美しい箇所が際立つのかな…と感じます。
らしさがギュッと詰まった一冊でした。

9

改名されたのですね

ペンネームが遙々アルクさんだったときからずっと好きな作家さんで、最近新刊でないな~と本屋に行くたびに落ち込んでいたのですが、作家あ行で偶然みつけてビックリしました!

今回は10編からなる短篇集ですね。
絵柄が独特で好みが分かれるかもしれませんが、この作家さんの感性は素晴らしいです。
時代背景、キャラ設定、セリフのチョイス…
ハイセンスで文学的。
たった数ページの短編でもその優れた感性はちゃんと存在して、改めて力のある方だなと感心しました。

■黒猫亭雑記帳
昭和。着流しの作家先生と田舎育ちの貧乏な青年。
昔っぽい言葉遣いが萌。エッチが春画のようです。

■台風13号 /土屋観測日記
一番好きな話。イジメっ子×いじめられっ子。いじめられっ子のうぶさがたまらん。ダマされるようにキスされ犯される(未遂だけど)。この二人で1冊出してほしい。

■昨日の今日で
おそらく前日美味しく頂かれたであろうカフェの店員(受)と常連客(攻)の話。まだ恋の過程らしい。二人の関係性や前後のエピソードがなく語られる短編は珍しいので、こーゆーのもありかも、と思った。

■琥珀の月/ストーカーをストーキング
ガチのストーカーとその被害者。個人的にストーカーものは苦手。怖いし、現実的じゃない。この作品のストーカーも、盗聴、脅迫、被害者の恋人への嫌がらせ等々…しっかりばっちり危険なストーカー行為をしてくれちゃってるので、そんな相手と結果的に結ばれるなんて・・・。と、個人的なストーカーへの嫌悪が優ってしまい、主人公に共感できなかった。ストーカーでさえなければふたりのやり取りは好きなんだが。

■SNOW BLIND
10年ぶりに再開した同級生の話。お互いの気持を知っていながら、見て見ぬ振りして過ごしてきたのに、結婚話をきいて逆上し、強引に関係を持つに至る。雪に閉ざされた田舎町を舞台にしているからか、この話のもつ閉塞感を一層際立たせていた。ARUKUさんの描く鬱々とした作品は好きです。

■ウェザー・ニュース
『台風13号』の続編。社会人になってから再開。短い話だけど淡々とした会話のテンポがいい。この二人で1冊出してほしい(2回目)。

■凍える海の底にあるもの
この作品のモノローグに痺れた。なんだこれは。何度も書くが、単語のチョイス。これに尽きます。漫画は長けりゃいいってもんではない。

■僕はあなたの夜になりたい
トリ目(夜盲症)の男と人を愛せない男の話。ともに大学生で、先輩後輩の関係です。非常に哲学的で高尚な印象を受けました。こういう話すごく好きです。淡々としていて切ない。ベタベタした馴れ合いはないのに、真っ直ぐで深い優しさが描かれていて気持ちがいい。

作品集よりは、1個のお話をじっくり描いてくれてる作品のほうが好きですが、こういう短編ならありだと思いました。短編だからこそいいのだろうという作品もありますよね。
やっぱり上手い。ARUKUさん、さすがです!(●o・∪・o●)+:

6

もー、大好き

短編集です。
全体的に、ARUKU作品比では軽めなお話が多いかなと思います。あくまでもARUKU比でのことですが。
どのお話も珠玉でした。

『黒猫亭雑記帳』
『黒猫の言い分』
ARUKUさんは格差のあるところで萌えを描くのが本当に上手いです。
黒猫と遊ぶためにたびたび訪れている家の大学の先生が、自分たちをモデルにしたと思われる官能小説を描いているのを知る。
小説を読みながらオナニーしてる受けがエロかったな。
古い日本家屋の縁側っていいですね。

『台風13号』
『土屋観測日記』
『ウェザー・ニュース』
この連作が一番好きです。
いじめられてた主人公が、あることをきっかけに変化していく。
若いとき特有の不器用さも残酷さも愛おしい。
これ、最終的には武藤が受けになるんだよね?ね?そのほうが萌えるので、そっちで妄想しておきます。

『昨日の今日で』
なんてことはないお話なのに、なんでこんなに萌えるんだろ。
エッチの翌日の気恥ずかしさ、可愛いなァ。アホっぽくて可愛い。

『琥珀の月』
『ストーカーをストーキング』
病的なストーカーと、なぜかどんどん健全な恋へと発展していきそうな、キモいのに爽やかで、やっぱりキモいお話です。
いざとなるとへたれてしまうストーカーくんが可愛い。

『SNOW BLIND』
捨てたのはどっちだったのか、捨てられたのはどっちだったのか。
恋のはじまりは、10年前だったということ。

『凍える海の底にあるもの』
話の終わらせ方が憎らしいよ。
先を想像してニヤニヤできる小品でした。

『僕はあなたの夜になりたい』
ARUKUさんの得意技の一つが「血まみれ」ですね。
面倒を見たいと思う気持ちが恋のはじまり。

5

珠玉の短編集

お名前がいつの間にか改変されておられましたが、内容の良さは相変わらす良かったです。

表題作の「黒猫亭雑記帳」はノスタルジックな雰囲気でした。
大学の教授で小説家の英と水道局員の水町(クロ)がひょんなことから知り合う話です。
どうしてこう、文豪とか小説家とかいう設定のものは「昔」の設定のほうがすんなりと受け入れられるのか、なんだか不思議です。
現代作家さんの設定の話ももちろん好きなのですが、ノスタルジックなもののほうが、より好みのようです。

こちらは一冊・短編集なのですが、
一つ一つの作品に味わいがあり、非常に良かったです。
『台風13号』と『ウェザー・ニュース』はページは飛んでいますが、続きものです。
なかなか短編だと面白くなかったり中途半端に感じることは多いですが、
こちらの作品は「この作品もっと続きを読みたいな」とは思っても、中途半端とは感じませんでした。
それほどARUKUさんがお話をうまくまとめておられるからなのでしょうね。

どこか不思議で、ちょっと怖かったり、ほっこりしたり、ドキドキしたり、感動したり、
ARUKUさんらしい短編集でした。

4

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