日本最大級のハイブリッド書店
切ない、苦い、でもうれしい。そんな恋がつまってる。
ジュネットの新レーベル「チェリーシリーズ」から出た第一弾。
エチもエロもないアユヤマネ作品がジュネに!?っていうんで違和感たっぷりなんですが、実はこれ掲載雑誌はゲイDVDが付いている「恋ジュネ」なんですねv
あの雑誌は小椋ムクさんが載っていたりとか、エロばっかり!って思っているところにものすごく意外なツボがポロっと落ちていたことがあってびっくりしたのですよね~
この方の絵は、まるで絵本の挿絵みたいなんで、ものすごく好みが分かれる作家さんだと思います。
絵も、白黒の本体よりカラーのほうが断然イラストが際立っていてすごくいいのは確かです。
丸っこい太い線で描かれる人物達はショタな雰囲気もあるけれど、ストーリーは大人なんです。
ゲイであることの後ろめたさ、トラウマ、そんな切なさがふんわりした絵と優しい主人公達の気持ちに包まれて、ほっこりあったかく展開されていく。
本当に優しい、軽い感動さえ訴えかけるお話達なのです。
この1冊は各話毎、人物が、設定場面が、何かしらリンクした人物関係になっています。
表題の虫嫌いの先輩が、家に入ったカマキリを逃がしてくれたことで仲良くなった後輩を好きになるお話は、描き下ろしでその後の絆の深さへと補完されて、とってもあったかい話に仕上がっていますし、
『花桃花火』では、顔~身体にかけてアザのあることで人に迷惑をかけまいとする心優しい青年がバイト先で出会う仲間に、心から好きになってもらえるお話。
彼の痣を、笑った顔が桃の花が咲いたみたいと形容したその心がまた優しいし
『ふつうの生活』ではゲイではない生活を選んだ主人公が、元カレとの再会で、もう一度やり直すまでのお話だし
『我らに罪を犯す者を』ではそれぞれれに憎しみを、許せない相手を持っていた、それを赦す気持ちを持とうとする歳の差カプを。
どれもこれも心に響いて染みてきて、心の見せ方がうまいなーと感じさせられます。
雑誌中で一本だけ読むと、今一つわかりにくいものがあるかもしれませんが、こうして1冊にまとまるとその世界観がよくわかって、より伝わってくると思います。
あなどれない作家さんですよ!!
アユヤマネ氏の作品の特徴は、児童まんが風のかわいらしく個性的な絵柄で大人っぽく余白のある物語を見せるというギャップである。
とはいえ第1作品集である『泣くのはおよしよ仔リスちゃん』では、その収録作の多くが「こども」主体の構図で語られていたために、絵柄にマッチしすぎた「ショタっぽさ」が一部の読者の苦手意識を喚起したようで、「読み手を選ぶ作家」として認識されてしまったように思う。
約4年半ぶりとなる第2作品集の本作では、主人公はおそらくみな成人と見られ(少なくとも前作のように明らかな児童は登場せず)、苦さと優しさの塩梅の利いた巧みなストーリーテリングはそのままに、前作よりぐっと万人向けに仕上がっている。
収録作はどれも好きなのだが、中でも一押しは“ユニークフェイス”を真っ向からしかもさりげなくとりあげた『花桃花火』だ。
主人公は顔面をはじめ体表のかなり広範囲に“赤あざ(おそらく単純性血管腫)”のある青年である。
決して卑屈になることなく、至って真面目に真っ当に暮らしており、勤務態度もよいのだが、その外見による差別を受けることがある。
そんな彼に、もしかしたら初めて差し伸べられた救いの手。
男女によるラブストーリーに当てはめるとあざとくなってしまいそうなところ、BLだからこそ核心に迫る内容に仕上がっているのではないかと感じられる良作である。
余談であるが本作は、12月10日配信番組『オリエンタルラジオのマンガ・アニメの日』内の『今週の一冊』(オリラジの二人+場合によってはゲストが、オススメのマンガを持ち時間各5分間で紹介するコーナー)において、突如として紹介された(メインの紹介作品である河内遙氏の『オーミ先生の微熱』1巻が同性愛を扱っている流れでの紹介)。
オリラジの二人によれば、「表紙の二人(表題作カプ)が自分たちに似ているという理由でジャケ買いしたのだが、読んでみると面白かった」ということである。
彼らはジャンルを問わない結構なマンガ読みのようだが、同番組でBL作品が紹介されたのはどうやら初めてのことらしい。
直接的なシーンがなくBLを読み付けない人でも比較的読みやすいであろう作品集とはいえ(ただし事後のカットはある)、もしかしたら自分たちをモデルにしたかもしれないBL作品(実際にはアユヤマネ氏が自身のサイトで、似ているのは偶然であると表明している)をあっけらかんと受け入れ紹介してしまう彼らの度量には脱帽する。
3ヶ月間視聴可能らしいので、興味を持たれた方は早めにチェックすることをお勧めしたい。
この物語達は、本筋以外が割合に饒舌なので
読んでいて戸惑います。
本筋が饒舌なら節々だけを押さえて端折って
後からじっくり読み返そう、などと楽に棚上げも
出来るのですが、本筋が寡黙気味でともすれば
余白の余談がその補足に回っていたりする。
だから読み流した上で振り返ると意外な所の
ささくれに引っ掛かって前に進めなくなって
しまったりする。
素直な様でいて性悪なのだから始末に悪い。
この一冊ありきでこの『チェリーシリーズ』と言う
サブレーベルが創られたのか、サブレーベルを
想定してこの一冊が編まれたのか。
このサブレーベルから出たのが2014年現在
確認出来る限りこの一冊と言う現実が何かを
物語るでしょう。
新世紀以降のジュネットの特色を読み取る為の
示準標本ともなり得る一冊です。
表紙に惹かれてフラフラと購入。初めて読む作家さんでした。イラストレーターさんでもあるのですね。中表紙も素敵です。色味も塗りの感じも。全体的に、表紙のイメージそのままといった感じの本でした。
内容は、それぞれの季節毎に登場人物と舞台が変わる構成になっています。
【春】
職場で同じ部署のリーマン二人。そろそろ親戚に身固めをほのめかされる時期、二人の距離が揺らぎます。
【夏】
バイト先での同僚二人。生まれつきのアザの為に偏見の目に晒されがちな子と、彼の優しさに惹かれていくもう一人の子との温かいお話。
【秋】
彼女と同棲している男の所に、一度別れた男の恋人が会いに来た。
【冬】
家政夫バイトの大学生と、バイト先の大学教授。まるで親子のような二人の関係は、一通の手紙で変化を遂げます。
【そして春】
【春】のリーマン二人、左手の薬指にはめる指輪を買いに行く模様…!
【おまけ】
今までのお話全ての種明かし的な感じです。これが有ると無いとじゃ、終わり方のイメージが全然違うと思います。本全体の雰囲気にぴったり合ったまとめになっているので、心地良い余韻に浸れるかと…!
どういう方向性のレーベルかは詳しくない事もあり、的外れな意見になるかもですが、この絵と内容とが上手く合っていると思ったのは【秋】【冬】です。
どちらもある種の生々しさが入っている話です。しかし読後感は嫌みが無い。それら(生々しさ)の鋭さを柔らかくカバーしつつ、切なさを増幅させる、という正反対の効果が一度に味わえて、とても興味深い仕上がりだと感じました。
【春】【夏】は私にとってはちょっと甘さが多いかな、と。可愛いですけどね。季節柄しようがないか。あと【夏】のアザが分かりにくかったのがちょい残念。もっと違和感有る感じだとしっくり来たかも。
付いていた限定ペーパーはすごく普通でした…
次はどのような話を描くのかが気になる作家さんです。