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表題作エンドゲーム 2

養子・柔道選手 伊藤克哉
挿絵画家の養父・13歳年上  伊藤透

同時収録作品番外篇 1

黒田 大学生
伊藤透 大学生

その他の収録作品

  • 第七話 好きになってはいけない人
  • 第八話 殻の割れたヤドカリ
  • 最終話 別れの日の朝のこと
  • 番外篇 2
  • 幸せな機械
  • あとがき

あらすじ

「殺したのは、オレだ」 ――衝撃の告白を聞いた克哉(かつや)は透を詰り、家を飛び出した。 透が母を殺したという事実より克哉を苦しめるのは、二人で過ごした幸せな日々が全て、償いのための偽りだったかもしれないこと。 自暴自棄になって街をさまよう克哉だが、そこにある男の影が忍び寄り……?  番外篇二篇も収録した、感動の完結巻!!

作品情報

作品名
エンドゲーム 2
著者
山中ヒコ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
新書館
レーベル
Dear+コミックス
シリーズ
エンドゲーム
発売日
ISBN
9784403662966
3.7

(90)

(38)

萌々

(21)

(12)

中立

(12)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
22
得点
322
評価数
90
平均
3.7 / 5
神率
42.2%

レビュー投稿数22

賛否両論あって当然、でも結果から考えてもいいのかもしれない

 やっぱり透が運転していて轢いたわけではなかったと知り、まずはほっと一安心。でも、黒田が飲酒していたのを知っていながら、彼に運転を任せた透にも当然責はあります。飲酒運転に対する戒め、世間の認識がもっと甘く、皆が今より気軽に飲酒運転をしていた時代というのは確かにありました。それでも、人を轢き殺してから初めてその恐ろしさに気付くのはあまりに遅過ぎる。目の前で血塗れの母親が息絶えていくのを見守るしかなかった、幼い克哉の姿には涙が出ました。絶対にしてはならないこととして改めて自戒すると同時に、どうしても黒田の名前、彼の車両を通報できなかった透に対する不信感が湧いてくるわけです。

 けれど、そこから透と黒田がどんな恋愛をしていたかが徐々に明らかになっていきます。熱のない人間だった黒田を唯一熱くさせ、彼に手作りの指輪まで作らせた透。柔らか過ぎる性格のあまり人にいいように使われて終わってしまいがちで、誰かと深い関係を築いたことがなかった中、多少強引にでも自分に近づき、好意を伝えてくれた黒田にとても心を許し、好きになった。黒田も元から人でなしだったわけではなくて。だからといって犯罪はけっして許容されないけれども、透が通報できなかった心情が痛いほど分かり、やりきれない気持ちになりました。犯罪を犯してはならないのは当然で言うだけならとても簡単ですが、実際に自分が意図せず当事者になってしまった時、ただでさえパニックになっている頭で、他の様々な要因から誤った判断を下してしまうことは、誰にでもありうることだと思います。

 もちろん、罪は背負わなければならない。そして、通報しなかった代わりに克哉の人生を背負った透。それが正解かどうか、解釈は人それぞれだと思います。真実をいつでも話す覚悟をしていたということは、克哉が自分を訴えても構わなかったということ。でも、透と長年過ごした克哉はそうしませんでした。それで十分なんじゃないでしょうか。たとえ結果論であっても、真実を知った上で克哉は透を嫌いにならなかった、好きでいてくれた。別の家庭に引き取られていても、これ以上幸せになれたとは限らない。唯一残った被害者である克哉がそれを透の贖罪だと許してくれたのなら、第三者に言えることはもうないんじゃないかと思いました。

6

忘れられない一冊

山中ヒコさんの作品はどれも大好きですが、中でも一番好きなのがこの作品です。
現実的にはちょっとありえない展開だったり登場人物の考え方だったりしますが、それをすらすらと読めてしまうのは、ヒコさんの描く「間」がとても上手いからだと思います。

とにかく一度何も考えず読んでみると、思わぬところで胸がツンと来ます。犯罪とかそういうことはいろいろ抜きにして、登場人物たちの心情にだけ焦点を当ててみると、これほど悲しい物語もないです。

少し触れたら崩れてしまう、壊れ物みたいな関係の2人が最終的に行き着く先は、決してはっきりとはしない、けれどこれ以外だったらがっかりしてしまうような…ヒコさんはいつも完全なハッピーエンドで物語を終わらせないイメージがあるのですが、この作品もそう。余韻が残るからこそ、忘れられない一冊です。

4

染み込む沁み込む

黒田が好きです。

恋というのはしたい時にできなくてしたくない時にしてしまうものなのかと考えてしまうほど、切ない作品でした。
1巻からいっきに読んで、透の抱える命と愛の重み、克哉の持つ若さと情熱、どちらも胸に響く素敵なラブストーリーだったと思います。
ですが黒田という存在が真っ白なTシャツについた染みのように、心に残ります。洗ったら落ちてしまうくらい危うくて、または洗っても洗っても落とせないくらいしつこい染みです。
お気に入りの染みです。
その上に成り立つ透と克哉の愛だからこそ、幸せを願わずにはいられません。

3

言えない言葉も愛おしい

二巻完結です
連載中ちら見しては、毛嫌いし
続けてよむことをさけていたため
コミック2巻まで発売されてから
まとめて買いました

確かに重い、暗い、黒田怖い
ってな感じですが
ヒコサンの絵柄とほんわかぶりがなかったら
怖くてうんざりしていたでしょう

二巻はひき逃げ犯人であると思い
ぶつかり、家を飛び出します
そこで黒田に拾われ、拉致されます
スタンガン怖い
黒田を悪者として終わらせたくなかったのかもしれない
黒田作品には、全く心ひかれませんでしたが

母親の近くて泣きすがる幼少のまゆげこい
ふっくら顔の克哉の姿辛過ぎましたが
克哉のセリフにもありますが
全てをしりつくして、近くで見守り続けていた
透はどれだけ心が痛かったことでしょう

沢山の写真をとったこと
離れていく克哉を思っていること
自分は家にいること
いってらっしゃいが言えなかったこと
笑顔でいること

どーーんなに辛かったのか
轢き逃げと同罪でしょうから透もいけないのですが
なんとも、辛い重い暗い話でした

3

皆、悲しい。

メインの二人も黒田も切ない。
一応、ハッピーエンドではあるし、二人は関係を持ったし、これからもこのままなのでしょう。
けれど、私は少し不安な感覚が残りました。

色々考えると設定は微妙な点(素人の克哉が気付くくらいだから、警察も透を疑うだろうとか、無関係な人が子供を引き取れるのかとか)が多いのですが、親を殺したかもしれない、殺していないけれどずっと黙っていた人、もう憎む感情を超えてしまった点は、これでいいと思います。
だからこそ、二人は幸せにならなきゃいけないし、けれど真の意味での幸せにもなれない。
重い何かを背負ったままでも、このままずっと二人でいてくれたらいいなあとは思います。

2

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