整備工場勤務の翠は、仕事先で弁護士の北原と知りあう。全く違う世界を生きている男だったが徐々に仲を深めていって…?

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表題作夜へと急ぐ二人

北原憲介,34歳,企業の渉外弁護士
遠野翠,20歳,元暴走族の自動車整備工

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

下町の整備工場勤務の翠は、偶然仕事先で弁護士の北原と知りあった。全く違う世界を生きている男だったがマシン好きという共通点以外にも徐々に仲を深めていく二人。真夜中を駆け抜ける男たちの切なく哀しい恋物語。

作品情報

作品名
夜へと急ぐ二人
著者
水原とほる 
イラスト
葛西リカコ 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796401067
3.4

(17)

(3)

萌々

(4)

(8)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
56
評価数
17
平均
3.4 / 5
神率
17.6%

レビュー投稿数4

「純愛」 この続きを読みたい

理不尽な暴力場面が無い恋愛小説。
内容は、過去と決別する再生。夜の次に訪れるのは夜明け。
以前の作品テーマは「執着」 この作品からテーマは「純愛」に変わる。


北原憲介:34歳,弁護士 ゲイ
昔、恋人を二輪事故で失う。
ポルシェのバッテリーアガリを翠が治したことで、知り合う。

遠野翠:20歳、華奢な美貌。元暴走族の姫。事故で族を辞め、高校中退。 
昼間は自動車整備工、夜は夜間に通う。母が急性白血病を発症。

族の仲間が、翠を呼び戻そうと声をかける。
仲間が車上荒らしを狙った車が、北原のポルシェだったことから、
翠は北原に頭が上がらなくなる。

痛い暴力場面は無い。
恋人を失った人と、病気の母に寄り添う不安を抱える人、
二人の共通項は、バイク。

水原先生は、乗り物系の描写が細かい。きっとバイク愛好家なのだと思う。
二人の続きを読みたくなる物語。

0

あったかい水原作品。


とにかく受けの翠がまっすぐで健気で頑張り屋で、気持ちのイイ奴でした。
なんと言うか…、若いんだけど考え方がもうしっかりとした大人なんですよね。

とにかく、母親を大切に思う気持ちや行動に、涙が出そうになるんです。
本当はいつ病気が悪化するか、先立たれるか、不安で仕方ないんだけど、母親の前ではそんな顔は絶対見せないし、なにより翠の覚悟自体が全然悲観的じゃなくて前向きなんです。
とにかく一年でも長く一緒に居たいって気持ちが伝わってきて、「もう充分立派に自慢の息子だよ」と言ってあげたくなります。

だから、後輩や昔の仲間のトラブルに首を突っ込んでいく姿にはヒヤヒヤしました。
それが彼の責任感からだとはわかってるんだけど、「優先順位を考えなさい!その責任感は自分と母親を守るためにこそ使って!」と襟首掴んで引き止めたくなります。

攻めの北原がまた、カッコイイ人でした。
エリートでボンボンで大人なのに、チラチラと昔やんちゃしてたときの名残みたいなものが垣間見えたりして、なんだか気になって目で追っちゃうタイプ。

それでも翠への距離の詰め方は、一貫して優しかったです。
翠が沢山のことを乗り越えてようやく手にした今の立場や環境をとても大切にしていると知っているから、怖がらせないように、困らせないように、最大限に気遣いながら、けども差し伸べてあげる手はいつでも傍にあるんだと根気強く伝え続けます。

2人とも、相手に優しい。
そんな2人に、周りも優しかったです。
北原サイドの人間関係は特には描かれなかったけど、翠の周りには素敵な人が沢山居ました。
「世の中まだまだ捨てたもんじゃない」って思える人たち。
工場の社長や先輩たち、夜間学校の同級生、全部、翠が今頑張っているからこそ手に入れることが出来た財産なんだなぁと、彼らとのほっこりする会話を見るにつけじんわりしました。

トラブル関係がね。ちょっと肩透かしな感じがしましたが。
元仲間たちの今の姿、水原さんだからグチャグチャに堕落した駄目人間を見せてくれるかな?と思ったんですが、何気にみんな最後はイイ子になっちゃって。
そこは「歩く道が1歩ズレていたら、翠もこの中に居たはず」って怖さを見せて欲しかった気がします。

けど、今回のテーマは「純愛」とのことだったので、OK!
なんか、キュンキュンする綺麗な純愛じゃないんだけど、大人の純愛を見せてもらいました。
色んなことに汚れて、心も疲れて、ついでに生活にも余裕や楽しみがない、そんな生きていくのに精一杯な大人が、心の中の一部分だけならとっても綺麗な感情を育てても良いよね!と思えました。
相手のことだけで心全部を満たすわけにはいかないんだけど、その分相手のことを置いているスペースだけはすっごい純粋で綺麗で大切。そんな感じ。

後半の、翠にめろめろな北原の、広くて優しい甘さがとても好きでした。

7

意外にあっさり風味

水原作品といえば執着攻めとか耐える受けのイメージだったのが、最近すごく変わってきましたよね。
ポジティブな感じで、割と困難な設定があるにも関わらずうまくきれいにまとまるというか。
あとがきを読んで納得しました。
何でも「純愛」がキーワードだとか。
これが純愛かと言われるとどうなのかな?と思いますが、受けも攻めも色んな過去を背負いながらも真っ直ぐに明るい道を生きている。
そして、真っ向から相手と向き合い、傷つけあうことはない。
そういう部分では、キレイな恋愛かもしれませんね。
今回は、かなりヤバイ事が!?みたいな展開を予想させて、それをあっさり裏切る展開が!
いい意味で裏切られて、すごくあっさり風味のものを食べた後味でした。

顔が女みたいだからと苛められたのがきっかけで、つっぱり始めた少年時代。
別に誰かとつるみたかったわけじゃないけど、バイク好きという共通点で、暴走族の№2をやっていたのだが、自分がバイクで大けがをし、母子家庭の母を心配させたこと、母が難病にかかったことから、族からは足を洗い、自動車整備工として、まっとうな人間として夜学にも通う、親孝行な息子に変身したミドリ。
そんな彼が金持ちそうな弁護士の北原に出会い、彼の車を傷つけた元仲間の後輩を庇ったことから、北原との関係が始まります。

このミドリが実に気持ちのよい青年です。
本当に元族だったの?というくらいの見事な更生ぶり。
彼は足を洗っても、元仲間の事を心配したりして、面倒見がよさそう。
自分自身がドロップアウトした身で、それを雇って親切にしてくれる人々、そんな人達のアリガタミが充分にわかっているから、優しくなれるんですね。
元後輩たちにも、自分みたいになれとは決して強要はしないけど、温かく見守って、干渉し過ぎないそういう態度がすごく男前だと思います。
でも、その優しさが後々トラブルに巻き込まれることになるのですね。
北原に対しても、ツンデレというか意地っ張りというか、そんな雰囲気ではあるものの、子供っぽいわけではない。
しっかりした青年という感じ。
彼が一番つらい時、助けが欲しい時に、他の大人でなくて北原を求めるのは、北原がミドリの周りにいないタイプで、また違った大人であり、決してミドリを縛りつけるようなマネをしないことだと思うのです。
そういった部分で、今回の攻め様はすごくスマートだったのでは?

ミドリの元相棒で族のリーダーだった男がヤクザまがいになり、ミドリに執着を見せ、彼を犯罪へ誘いこもうとするのですが・・・
これがすごくヤマになるのかしら!!
と期待したところ~拍子抜けしてしまいました。
ええーっ!?って感じで。
北原が助けに入ったからと、そんなに簡単に、、、
波瀾を期待していた身にはスマートな収まり方にそんなでいいのか?と思ったり。

しかし、ミドリがすごくイイ奴で、
北原もトラウマを抱えているとはいえ、すごく前向きでイイ奴で。
何より、ミドリの周囲の人間が佳きにつけ、悪しきにつけ、生き生きしている人間くささがあってよかったのですよね。
淡々としてるのに、やけにあったかい人情にあふれる話でした。
色々を期待して読まなければ、結構悪くない、こんな水原作品もいいかもと思える一つの作品だったかもです。

5

親孝行元暴走族受

帯『雄の匂いだ。ゾクゾクするな…』

ちょっと前までは水原さん作品=痛いのイメージが強かったんですが最近はそのイメージが取れてきたというか違う方向性の作品が多いですな。
この作品もそうで、痛さはないです。
受が元暴走族とあったのでヤンキー受かな~と思ってたんですが、完全に更正してて親孝行で夜学も仕事も一生懸命こなす実に真っ当な青年でした。
母子家庭な事もあって病気の母親を凄く大事にしてるんですよ。
こういう設定読むとそれだけでもうやばいです。
そうだよー、母親居る時に親孝行してやれよーホントにそうだよ~とか同意しつつ読んだのでなんか読み方が違う方向に行ってしまった気がしますが、偶然の出会いが結び付けた弁護士攻と工場勤め青年受、この2人の恋愛もしっかり堪能。
翠の芯の真っ直ぐな気性は読んでいて気持ちがいいし、北原は最初もっとブラックな男かと思ってたんですが、あれ意外に優しい…?みたいな。
まあ最後に北原をあそこまで大物にさせちゃう必要はあったような無かったような…って気はしますがこれはこれで。
バイクの描写も自分的には十分それっぽく感じましたし読後感はなかなか良し。

4

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