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表題作虜囚の花と優しき暗殺者

東城英明 豊永家の新しい運転手(暗殺者)
晴士 豊永会長の養子 20才

あらすじ

大富豪の豊永会長の養子として贅沢に暮らす晴士だが、その実態は、少年好きの会長に淫らに愛でられる性奴隷。20歳になり青年に近づきつつある今、寵を失い始末される日もそう遠くはない。ある夜、中庭で夜桜を眺めていた晴士は、鮮やかな殺人を目撃する。殺されたのは会長の客、手を下した黒ずくめの男は最近雇われたばかりの運転手に似ていて…?  囀ることさえ諦めた籠の鳥と、優しい暗殺者の魂が奏でる、とびきりのディスティニーラブv
(出版社より)

作品情報

作品名
虜囚の花と優しき暗殺者
著者
六堂葉月 
イラスト
竹中せい 
媒体
小説
出版社
オークラ出版
レーベル
プリズム文庫
発売日
ISBN
9784775516638
2.7

(4)

(0)

萌々

(1)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
10
評価数
4
平均
2.7 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

諦める事に慣れてる受け様が唯一望んだもの

稀に見る程受け様の背景が可愛そうな設定な作品なのですよ。
幼い頃に母に捨てられ、義父に殴られご飯もろくに食べさせてもらえないような
悪辣な生活環境、夜に明かりを付ける事さえ許されず、皮肉にも夜目が利くように
なるくらい、そして更に受け様を今度は使って売春をさせ始め挙句売り飛ばす。
売り飛ばされた先では男娼として常に客に抱かれ、それでも明るいところで毎日
ご飯も食べられて風呂にも入れるから幸せなんて思うような受け様。
酷い状態にいながらも、幸せを見つけられるような純粋な心を持っている。
でも、全てに期待をしない、欲張らない、今を冷静に受け止めて生きてる。
そして身請けをされるように、資産家の男に引き取られ、傍から見れば裕福で贅沢な
生活をしている受け様なのですが、現実はペットや愛玩人形のような扱いで養父の
愛人だけでなく、お客様の相手をさせられたりとやっぱり酷い環境なのです。

さらに、この養父は政治的力もあって、愛人に飽きると人知れず始末される運命で
受け様はそれも全て承知していて、20才も過ぎた今、いつ消されても仕方ないって
自分の運命をなんの感慨も無く受け止めているんです。
そんな受け様は自宅で人が殺されるのを見てしまう。
しかし恐怖もわかず、ただ音も無く見事に暗殺を遂行した攻め様に見惚れる。
そして攻め様に見つかり、自分も殺されるのだと思った時、受け様は逆に嬉しくなる。
今、死んでも何の未練も無い受け様は流れるように音も無く暗殺する攻め様に
自分も殺して貰えることに喜びを感じて微笑んでしまう。
それを見た攻め様は・・・・

結局攻め様は受け様を始末する事が出来ず、運転手として屋敷に留まっている。
そして受け様は夜目が利くので攻め様の正体も解ってしまう。
暗殺者相手に、無邪気に受け様は懐いていくんです。
そして義父が開く乱交や受け様を見世物にした会で受け様の相手役として攻め様が
やってくるのですが、そこで初めて受け様は羞恥に似た感情や胸の痛みを覚える。
受け様が始めて何かを求めた時だったように感じました。
その後も何度か養父の前で攻め様に抱かれるのですが、受け様は攻め様と抱き合う事に
幸せを感じていくようになるのです。
そして攻め様の寡黙だけれど、どこか優しい態度に惹かれていく受け様。

でも、受け様は自分の命が後数年しかないだろうと言う事も解っていて、攻め様に
養父に殺される前に攻め様に殺して欲しいと願うのです。
これから先の幸せを望めない受け様の願いはとても悲しい願いなんです。
そして攻め様も、暗殺者なのに、攻め様に心を動かされてしまった事に戸惑う。

ラストはもちろんハッピーなのですが、受け様が今までの生い立ちから自分の
望みを口にする事が出来なかったのですが、最後に心からの望みを口にする。
攻め様は受け様が自発的に心の、思いを出してくれるのを待っていた。
そんなストーリーになっています。
二人の未来が明るいものになると感じられる作品でした。

2

求めた望み

表向きは大富豪の家に養子になり、贅沢な暮らしを送っている晴士。
けれどその実態は、少年趣味の義父に飼われる生活だった。
慰み者になり、性奴隷として扱われる日々。
だけどご飯があって、寝るところがあって、それだけで充分だと自分のことを卑下することも、そして何かを望むこともなくすべてを享受する。

夜、部屋を抜け出して夜桜を眺めるのが好きだった晴士は、そこで殺人を目撃する。恐怖はなく、ただ魅入ってしまった。
いつか自分は義父に葬り去られるんだろう。だったら、この人に。

「いつかオレを殺しに来て」


何も望まない晴士の望みは東城に殺してもらうこと。
諦めの延長にある、死。
義父に消されるぐらいなら、優しい東城の手によって殺されたい。
最期ぐらい、幸せに──。
それを幸せだという晴士が切ない。
晴士の生い立ちが、彼をそこまでおいやっているのかと思うと苦しい。

東城がやったのか、天命なのか。
義父の死の真相はハッキリと記されてはいませんが、晴士はこれで自由となります。

莫大な資産、一生遊んで暮らせる金が手に入る。
だけど、晴士の望みは。

『一緒に行きたい』

晴士の初めての、心から溢れる決意。
諦めるのではなく、求めて出た言葉にじんわり胸があたたかくなりました。

明るく優しい未来が垣間見えて、最後は幸せな気分になりました。

2

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