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5つの話が入った短編集。あとがきでも書かれていますが、少々カオスな作風で、東京都の条例が変更される前と言うことで、漫画家として色々と考えて描かれた作品のようです。表題作と、『指喰い、月の色人』が好きでした。
・『涕涙まくら』
2つ違いの兄と弟。容姿端麗で勉強も出来る弟と、優しいだけが取り柄の兄。兄は全てが平凡で自らを「出来そこないの方」と言う。けれども自嘲しているわけではない。
優しい兄は弟を犯し、弟は優しさの見返りに体を与えている。兄の優しさは全ての人に向けられるけれど、犯す対象は自分だけだ、だから僕だけを見ていると思っていたのに・・・。兄が女生徒と遅くに帰宅したところを見て、自分の方こそ、兄弟以上の感情を抱いていたと気付くのです。自ら兄の上に乗り、「好き」と言いながら涙する弟を見て、兄は雨の如く涕涙します。兄の複雑な涙がいいのですよ!禁忌の苦しみと恐れ、弟への申し訳なさ、兄としての責任感、けれどもそれらのすべてを上回る幸福感に「嬉しい」と何度も言いながら、まくらを濡らすのです。兄の嗚咽が聞こえるようで胸がキリキリ痛みます。兄目線の話とか、子供の頃、そしてこの先の話も読んでみたいと思いますが、最後の「不安で不安でただ、しがみついた」というモノローグに、ハッピーエンドが想像できなくて、それならここで終わるのがやはり一番いいのかなと思いました。
・『指喰い、月の色人 』前後編
ミステリー仕立ての物語。愛しあっていた幼馴染は実は指喰いだったというお話なのですが、結局その正体はわかりません。本人にすらわからないのですから、池先生にもわからないのでは?と思います。謎を謎のまま放りだすミステリー、私は嫌いじゃないです。むしろ真相を求めてあれこれ考えるのが楽しくて好きなのです。まぁいくら考えてもわからないし、わかったとしても確かめることが出来るわけでもなく。それでも、想像するのです。竣が指を食べ始めたのは亜希生と出会ったからなのかな?とか、地元の子供たちの中で一人離れたところで遊んでいた竣は、その頃からすでにみんなとは違う子供だったのでは?とか、体の成長や亜希生との関係が飢えのサイクルと関係があるのか?と、そして姿を消したのは亜希生を本当に愛していたからなのだろうと確信すると、満月の夜に、亜希生が窓を開けて眠るのを、やめられない気持ちがよくわかる気がするのです。
私の記憶では「月の色人」は羽衣伝説だったと思います。確か羽衣を返してもらった天女が、天に帰る姿が月のように美しい様を、月の色人と呼んでいました。亜希生も月を見るたびに思い出すのでしょうか。自分を魅了した美しい色人の姿を・・・。
・『シューカツ』
就活で苦労する学生が地獄に就職するお話なのですが、研修生の制服が鬼のパンツって!小さなツノに鬼のパンツにスニーカー。笑えます。
・『宵越しルーガルー』
獣さながらに致すお話
・『夏に死にゆく物語』
池先生がきょとんとするという予言付きのお話。・・・という漫画を描くゲイの漫画家、というオチの後に、それを描く池先生という再オチがあり、カバー下に更なるオチがあるという、カオスな作品。
耽美な池先生と、シュールなギャグの池先生が楽しめる短編集でした。
『涕涙まくら』でハッピーエンドが想像できないとレビューしましたが、池先生のブログでその後の二人の甘く愛しあう姿が見られます!
表題作の涕涙まくらですが、兄弟ものですね。
こりゃ兄弟ものスキーさんにはたまらん作品です。
なんだかんだで君たち溺愛兄弟じゃないの!!
で、ほかにも作品が4(前編後編分けると5)作品ありますが、
自分がこの作品集の中で一番好きだったのは「シューカツ」です。
閻魔様と壇田が美味しい!!この組み合わせで一冊作って欲しいくらいです。
池玲文先生によるとこの作品は同時期に同じようなネタを書いておられる方がいたのでこの作品はお蔵入りさせたかったそうですが、
いやぁ、コミックスにして下さってありがとうございました。
あと指喰いの話が印象的でしたねぇ。
悲しいんだけど、どこかバッドエンドで納得してしまう悲しさがありました。
どちらにしろバッドなんですよね。主人公を思いやって喰わずにいても、主人公を喰っても。
愛しい人を喰って永遠のものにするという実に恐ろしい話だとも思えました。
でもこういうホラーちっくなのも好きなので目がいっちゃってる竣にゾクゾク致しました。
ご自身は「少々カオスな作品集」とあとがきで仰られているんですが、私はこの短編集結構気に入ってます。
コミカルだったり、シュールだったり、切なかったり、ファンタジーだったり、直球エロだったり、ビアズリー的耽美だったり…様々な作風のBLを描かれる池玲文さんの魅力が少しずつ詰まっていて、1冊で色んな池さんを楽しめます!
唯一ここに足りていないのは、媚シリーズのような甘々のお話かな。
「涕涙まくら」
実兄弟モノ。兄×弟。切ない。
「指喰い、月の色人」(全2話)
ダークホラー風味のファンタジー。
「シューカツ」
閻魔×鬼に就職した人間。コミカル。BL未満。
「宵越しルーガルー」(4ページSS)
人狼村、今宵も元気に発情中!
「夏に死にゆく物語」
あの条例への痛烈な風刺または疑問提起。
一番好きだなぁと思うのは「指喰い、月の色人」。
『No.99:人間玩具』収録の「雪ぐサディズム」、『Geofront』収録の「女帝の首狩り」と並んで、萌えとは別のところでお気に入りの池作品です。
池玲文さんのこういうエロスとタナトスを潜ませた耽美な作品すごい好き。
中村明日美子さんや座裏屋蘭丸さん同様、広い意味でアーティスティックな方なのだろうなぁ。
ビジュアル的には、「シューカツ」の閻魔様と「夏に死にゆく物語」の国家権力様が非常に美しく、眼福です。
改めて、池玲文さん好きだー!!!と思った1冊でした。
ファンタジックで印象的な作品が多く収録されていたと思います。
表題作と「シューカツ」はコミックスになる前に読んでいたのですが、「シューカツ」がお蔵入りにならずコミックスになってよかったです。閻魔様がかなり好きだったので(笑)。
地獄モノでちょっと恐ろしげなカットもあるんですが、閻魔様本人はとってもコミカルで楽しい(しかも壇田には甘い。笑)。
「宵越しルーガルー」は単行本「hide and seek」で前のお話を読んだ時からまたこの二人のお話が読みたいと思っていたので、この本で読むのがとても楽しみでした。
胡禄が壱にメロメロみたいで、ラブラブな二人が見れてよかったです。
きっとこのことから学んで、今後は満月の日以外にもラブラブになることでしょう(笑)。
表題作も一見、しょうがないからお兄さんの相手をしていると思われた弟がお兄さんをとっても好きで、そのとった行動がもう可愛かったです。^^
そしてなんとも一番印象的だったのは「指喰い、月の色人」でした。
私はファンアジーとか吸血鬼系のお話大好きなので、このお話も興味深かったです。
切なさが言えずいい余韻を与えてくれました。
「夏に死にゆく物語」はぶっとんでいるというか、真面目な内容なんですが面白く読ませてくれました。