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表題作恋じゃなくなる日

十数年ぶりに再会した義弟 北川巴
妻に逃げられた子持ち義兄 北川真誠

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

妻が家を出、一人で息子を育てることとなった北川真誠は、直後に両親を交通事故で失ってしまう。日々の忙しさに死を悼む余裕もない真誠の前に、十数年前に別れたきりだった義弟の巴が現れた。――真誠が決して許されない罪を犯したあの日以来の再会だった。だが巴は過去のことなど無かったかのように、このまま実家に住み真誠たちを支えると申し出る。複雑な想いを抱えたまま、三人の同居生活がはじまり……。
(出版社より)

作品情報

作品名
恋じゃなくなる日
著者
妃川螢 
イラスト
緒田涼歌 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778111373
2.7

(8)

(0)

萌々

(1)

(5)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
20
評価数
8
平均
2.7 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

義兄は苦悩する。

ショコラ文庫は他のレーベルさんよりも親子モノって多くないでしょうか?
なんだかしょっちゅう親子モノを見かけている気がします。子持ちBLも定番化してきたジャンルですね。

ちびっこが出てくるので、ほのぼの路線価と思いきや案外シリアスな話しでした。
小さな子供さんが出てくるので、それなりにほのぼのした雰囲気もありましたが、受の心がギスギス・グダグダした部分もあって、読んでいてなかなかハッピーになれる物語ではなかったように思います。
きっと受の攻に対する気持ちの踏ん切りがついたクライマックスから、描かれてはいませんが物語その後~の話はハッピーな展開になるんじゃないかなと。

義弟×義兄なので血の繋がった本当の兄弟ではないということで禁忌感は幾分薄れますが、義兄である受の真誠の抱える苦悩が禁忌度をUPさせているように感じました。
兎に角、真誠は不運続きで精神的にも疲れていたのかもなーと、早く楽にというかほんわりと安堵した毎日を送ってほしいキャラでした。

乗り越えるべきは怯えて守りに入っている自分の気持ち。
両思いなのに、心の距離を測っている。素直に相手に身を任せることのできない理由は真誠の高校生時代の同級生と教諭が起こした出来事にあって、真誠の中でトラウマ的な部分であると思いました。
自分と義弟との関係は同級生と教諭との関係に似ている。世間に知られてしまえばただでは済まないという危うい関係であるという認識からくる守りと逃げ、気持ちの断ち切り。
もう何年も経っているのに、その守りに入った気持ちを解放できずにいる。結婚して子供をもうけても、妻に見透かされた『心に誰かが住んでいる』という部分。
認めたくない、というよりも目を反らしたいと言うべきか?その気持ちには蓋をして見ないようにしていたのに、他人からつきつけられる現実とはなんと心に突き刺さる事でしょう。
ぐじぐじとした部分が苛立たしくもあり、それが人間の弱さであると感じました。
読んでいて、なかなかすっきりしない性格の受だなぁと思う部分があったけれど、そう簡単に気持ちが切りかえられたら悩みはしないかとも。
逆に、義弟である巴の気持ちの切り替えについてのエピソードを読む限りでは巴の精神的成長・安定の方が真誠よりも達観しているのではないかと思われます。
良い男です。

親子モノでは必須アイテム(アイテムとは失礼ですが)の別れた母親の出現、ふたりの中をこちょこちょするお邪魔虫も登場あります。
萌える部分は少なかったものの、苦悩しぐるぐるする受けが妙にツボにハマり、突っ込み入れつつ楽しく読ませていただきました。

3

煮え切らない兄

 北川真誠は、妻に突然、家を出て行かれてしまい、一人で息子を育てることになった。
 そのため仕方なく、実家に戻ることになったのだが、今度は交通事故で両親を一度に亡くしてしまう。
 相次ぐ状況の変化に、真誠は困り果てるけれど、そこに現れたのがもう随分会っていなかった義弟の巴だった。
 巴は、このまま実家に住み、仕事に行かなければならない真誠の代わりに一人息子である創の面倒を見てくれるというが、十数年前の二人の間の出来事が、真誠に素直に巴に甘えることをよしとしなかった。
 けれど、真誠は創を育てていくためにも、会社に行かざるをえず、保育所にも行かせていない創をたった一人で家においておく訳にもいかなくて、巴に頼らざるをえない。
 巴は過去のことなど何もなかったかのように、真誠を支えてくれるけれど、真誠はそのことを素直に受け入れることはできない。

 それというのも、親の再婚で兄弟になった二人の間には、かつて兄弟以上の関係があり、親の目を盗んで体を繋げた過去があったのだ。
 当時、真誠は高校生、巴は中学生だったのだけれど、二人の関係は真誠が巴に内緒で地方の大学に進んだことで終わりを迎える。
 そのことから、巴は決まっていた志望校への進学を蹴り、海外に留学してしまったことを今でも真誠は申し訳なく思っていた。
 そんな複雑な想いを抱えたまま、三人での生活は始まるけれど……

 という話でした。
 結局のところ、明らかに両思いなのに、煮え切らない真誠にイライラする話です。(別にそれが悪いという意味ではなく)
 実は真誠がここまで煮え切らないのには、理由がない訳でもなく、真誠の同級生が当時、教師との恋愛がバレて酷く虐められてしまっていたことが、強烈に印象に残っていて、そのことで真誠の煮え切らない態度に拍車がかかってしまっていたという形で。
 決して真誠だけを責められる状況でも決してない。

 ただ、真誠がそういう過去を振り切って、巴との未来を選んだ理由の一つに、その同級生と教師の幸せそうな現在の姿を見たから、ということにはどうしても納得がいかない!
 確かにその二人が、今はどこでどうしているのかは個人的にもとっても気になった部分でもあったんですが。
 そうやって他人を判断基準にしないと自分の人生も決められないんだ……という目で見てしまうと、少し覚めてしまいます。
 やっぱり真誠には、そういう外的要因で最後の一歩を踏み出すんじゃなくて、もっと自分自身の思いで最後の一歩を踏み出してほしかったなーと、ついついいらないことを考えてしまいます。

 そんな偶然なかなかないと思うし、それがなかったらこの二人どうなっちゃってたんだろうと考えると、素直に喜べない気もします。

2

義兄弟モノ読み比べ

6月のショコラ、もう一冊の兄弟モノは妃川作品。
これも、母親と父親の子連れ再婚で兄弟になった二人が主人公。
二人とも好きっていう設定も、両親がなくなってからという点も似ている。
大きく違う点といえば、兄に別居中の妻があり、子供を引き取って育てている点。
同じような設定でどう違う味を見せるか、読み比べとなりました。
もう1冊の方がシンプル。
こちらは、過去に色々あってと言う部分、子供があるという部分、登場人物が多い部分、それがあるために色々読ませる部分はありますが。

この兄弟、兄が高校3年の時、弟が中学3年の時すでに関係しています。
弟が若いので欲望のままに突っ走り、兄はちょっとそれにためらいを感じている。
そこで決定的に、この関係はダメなんだ!と逃げる決心をさせる事件が学校で起き、大学進学を機に二人は離れ離れになる。
そして両親の事故死で、アメリカに行っていた弟が帰国して十数年ぶりの再会を果たすのです。

とにかく弟は懐が深い!
逃げた兄を責めるでもなく、普通に接し、兄の子供の面倒も良く見て、至れり尽くせりのイイ弟なんです。
兄視点の話だからかもしれませんが、兄が結構ダメダメちゃんww
妻には逃げられているし、家の事は全然できないし、動揺しまくって、
でもこういう人だから逃げたんだって言うのがよくわかります。
その性格的裏付けになってますよね。

奥さんとの事は、弟との比較とか、心の底にまだ愛している人がいるとか、そんな対比があったのかもしれないけれど、
一度作中に、息子の事で登場して兄と言い合いをしてるシーンとして出てきますが、それきりフェードアウト。
何か息子も奥さんも食事に例えるなら、色どりにはなっているけど、副食にはなってない存在でした。
むしろ、途中で登場したアメリカからやってきた弟の元セフレという登場が、兄弟の仲をとりもつのに一役買ってます。
そっちの方が重要。
しかし!それはイイ人だったはずの弟の策略と言うのが、弟の執着度合いを示しますね。
爽やかを装って、実はすごい執着!
兄は踊らされてた感満載でした。
もう逃げないよっていう、いつまでも一緒にいようね、っていうお話ですが、子供がいるだけにやっぱりその先を心配してしまいます。

そして、兄が弟から逃げる発端になった人物との再会もラストにちらりと・・・
色々スピンオフが多い妃川作品だけに、この人物が主人公になる作品があるのか?とか、息子もホモになっちゃうのか?とか、そんな事も思わせました。
登場人物が多いだけにちょっと複雑そうに見えて、一本筋は通った作品。
深刻そうな内容かと思いきや、意外にライトでした。
今月の2冊を比較してみると、どちらかというと自分的にはシンプルな方が、より主人公達の気持ちも伝わるし、深みも出て好きだったかな?という感想です。


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