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ピュアな二人の、じれったいくらいピュアなラブストーリー。
作家買い一辺倒はやめにしよう!などと思っていたのも束の間。すっかり木原先生の作品の魅力に取りつかれてしまいました。最近ではろくにあらすじや評判など確認せず、木原先生の作品というだけで手にしています。これがまたハズレが一つもありません!全て面白く、安心して読めます。大好きな作家先生の一人です。と言う事で今回は「place」をゲット。ビジネスバッグ持ったリーマン二人が、お互い背を向け合っている表紙イラストが印象深く、気に入りました♪
目次
・place(受け視点⇔攻め視点、交互)27%
・liar(受け視点⇔攻め視点、交互)35%
・slow(受け視点)30%
・thought(攻め視点)7%
・あとがき1%
上記目次をご覧の通り、サブタイトルが4つあります。全て横山明夫(攻め)と加賀良太(受け)の二人がメインCPのお話です。
あらすじ
攻めの横山は30歳のノンケ。背中には羽がついています。幼いころ病死した父親が天使だったから。3年前に母親も病死。羽のことを知っているのは世界で叔父と横山の2人だけ。羽以外にも天使の資質があり、それは人の真意を感じ取れること。この資質のお蔭で、営業一筋の横山は商談の類に一度も失敗したことがありません。
2か月前に地方から本社に栄転した受けの加賀は25歳のゲイ。頑固で融通が利きません。それゆえ一緒に組んで仕事をする横山は最近よく胃の痛みを感じます。ところが横山の意に反し、加賀は横山に恋心を抱いています。加賀は気持ちを知られたくないあまり、好きになった相手には逆にきつく当たる癖が…。
感想
良かったです!!「天使の羽」が出てくるので、もっとメルヘンの要素がたくさん出てくるのかなと思っておりました。が、あとがきにもあるように普通のリーマン物として読んで差し支えのない内容でした。
木原先生の作品、ここまでいろいろ読んで参りましたがどれもみんな秀逸です。奇想天外なストーリーと言い、一風変わった、それでいて等身大のキャラ設定と言い、申し分なし!それにいろいろ挑戦されているなーと、いつもながら尊敬の念でいっぱいになります。
思うに木原先生は作品作りの際に、三題噺(さんだいばなし)を活用されているのではないでしょうか。今回、「天使の羽」が物語に盛り込まれたことから、過去の作品とも照らし合わせ、そのように感じました。私の尊敬する偉大な漫画家、手塚治虫先生もよくこの方法でストーリーの練習をされたそうです。
三題噺は、もともと落語の形態の一つ。お客様から出された3つのお題(=言葉)を使い、その場で落語のストーリーを演じるというものです。この技法で練習をされた作家先生は数多くいらっしゃいます。私もよく一人遊びをしたものです。でも案外難しくて、いつも途中で挫折します (◞‸◟)
何の脈絡もない3つのお題。例えば、「財布」「トンネル」「美術館」などと自分にお題を課します。次に、順不同で構わないので、必ずこの3つの単語をどこかに入れて一つの物語を作らないといけません。本書で言うと、お題の中に「リーマン」や「天使の羽」が入っていたと仮定すれば、容易に想像できます。もしホントにそうならば、実に上手な「天使の羽」の使い方です。
ちょっと楽しかった加賀の趣味。キツイ性格と容赦のない物言いの加賀が、意外にも天使グッズを集めているというくだりがあります。ギャップ萌えと言うのでしょうか。可愛いなーと思いました。
加賀は中二の時に溺れかけたことがあります。その時に天使に助けてもらったことで、天使グッズに愛着があります。この天使というのが実は横山だったのです。この話をされたとき横山は驚きました。自分が助けた子供との偶然の再会。でも本当に偶然?もしや運命の再会だったのかも…って。
加賀には大学時代から親しくしている友人のさおりがおります。このさおり、結構キツイ性格です。2年付き合った彼と職場結婚しますが、旦那さんに浮気をされたことが赦せず離婚します。そのさおりが離婚前に放った一言に疑問を感じました。
「男同士でうまくやろうなんて無茶なのよ。男と女でも難しいのに」
うーん…。むしろ男と女だから難しいのでは?と思ってしまいました。俗に、「男は火星人、女は金星人」と言われます。これはそれほど男女というのがかけ離れた存在であることを表した言葉。思考回路、感じ方から、行動パターンまでまったく違うため、相手を思いやることが難しいのです。
逆に言うと男同士、女同士の方が相手をより理解でき、一緒にいて楽な存在。男同士の方がうまくやれるし、無茶なことではありませんよ!と、さおりに言ってやりたくなりました。
最後になりますが、改めてカミングアウトって難しいなーと思いました。加賀は、恋人の横山の叔父に認められたのが嬉しくて、自分も!と思ったのでしょう。横山を母に紹介します。でも加賀の母親はとても頑なで、二人の仲を容易に認めることはしません。
さすがに加賀の母親。頑固なのは血筋かな。でも…こればっかりはしょうがないかもね。ロミオとジュリエットじゃないですが、認められない恋の方が燃え上がるって言うものです (*˘︶˘*)
天使の羽を持ち、嘘と本当を感じ分けることのできる穏やかで優しい横山と、きつい性格で容赦ない口調の隠れゲイ・加賀。二人は玩具メーカーで先輩後輩として出会います。二人の共通点は、これまで誰とも付き合ったことがないこと。秘密と寂しさを抱えながら生きてきた二人が、互いに惹かれ合い、戸惑いながらゆっくり恋愛の過程を歩んでいく描写が、じれったくて切なくて。
これまできつい態度だった加賀が酔った勢いで告白してきて、横山はそれが本心だと天使の力で知ります。加賀の好意を素直に表せない不器用さと、真面目で裏表のない仕事ぶりが相まって、横山は加賀を人として好きになっていきます。そして、加賀の美味しい手料理に心をつかまれてしまい、いっそ自分が加賀を恋愛対象にできたら上手くいくんじゃないか?と考えます。横山の発想の柔軟さと飛躍が、とても面白くて。
恋愛対象として加賀を見始めた途端に、横山は恋心に翻弄され、告白もしないで加賀を抱きしめてしまいます。振り幅の大きさに、ドキドキが止まりませんでした。この後、怯えた加賀に横山は突き飛ばされてしまうのですが (笑)。
加賀は怒りを発散するのは躊躇ないのに、好きとか会いたいとか、相手を欲しがる感情を出すのがものすごく苦手で、恋人同士になってからも、横山を寂しくさせてしまいます。今まで恋愛がうまくいったことがなかったから、経験値不足もあるのですけど、そういう感情を出すのが恥ずかしい気持ち、懐かしく、身につまされてしまいました。
だから、さおりは、恋愛に臆病な加賀にとって、親友という名の逃げ場だったのでしょうね。加賀は横山と二人でいるときに、さおりの呼び出しに応じて、横山を悲しませてしまいます。結局、さおりは加賀の心を手に入れられないと分かっているから、加賀を突き放して去っていくのですが。
逃げを打とうとする加賀を許さず「子どもみたいな言い訳ばかりしたって駄目だ」と叱る横山と、やっと素直になって、「…俺…横山さんが好きだよ」と言う加賀。この場面が、とても好きです。
穏やかな横山が初めて見せた激しい振る舞いは、寂しさと切なさが溢れたせい。年上で仕事ができる横山だって自分と同じだと、やっと分かった加賀は、自分も横山を守っていきたいと思うのです。加賀の成長が嬉しく、心がしっかりと触れ合う二人が、とてもいいなあと思いました。「一緒に、恋愛をしていこう」といった横山の言葉が、これからの二人のお守りになるような気がします。
横山が天使と人間のハーフでなくても、この物語は成立するかもしれません。でも、天使の羽で思わず人助けをしてしまう横山のその羽は、彼の優しさの象徴に思えますし、もしかしたら優しい天使がこの世に紛れて、恋したり悩んだりしながら暮らしているのかも…と考えると、フフッと笑ってしまうような楽しさがこみ上げてきて。私は、横山が天使でよかったと思いました。
加賀の作る料理が美味しそうです。サバのおろし煮、トマトとしらすのあえもの、さわらのごま焼き、海老とみつばのあえもの。生活して、食べて、恋愛して。そういう積み重ねがあって、横山と加賀の関係が深まっていくのだろうと想像すると、二人の恋愛がとても身近に感じられ、幸せな気持ちになりました。タイトルの「Place」は、きっとそんな二人の居場所、心のありかのことなのだろうと思いました。
まず最初に、コレは本当に木原音瀬さんの作品なのか?!と思うくらい純粋な恋愛のお話です。いやぁ、読みながら、実はどこかでどんでん返しがあるんじゃ無いのか?この人は実はチョー性格悪いやつで…とか、疑りながら読んでしまうという(笑)
木原病を患ってしまってるかも。一応、ややこしいもの担当!で、さおりと今瀬という登場人物は出てきますが…
二段組で、心して読まねばと思ってましたが、読み進めるに従って、これって純愛もの?学生の恋愛?と思うくらい二人共が純粋に「好き」という気持ちに揺さぶられ、相手に対する気遣いとそれでも独占欲にかられた嫉妬とに振り回される。
確かに、横山は羽根持ちというファンタジーかつ作中では奇形として扱われる問題を抱えています。加賀の方は嘘をつけないストレートな物言いで、周囲からは距離を置かれる問題児扱いのゲイ。
この辺がややこしい二人の関係がすんなりとは進まず、イライラしちゃうところではあります。二人の心の動きが深く、また優しすぎたり、卑屈だったり、面倒臭い。ここが木原さんぽいのかも(爆)それが物語をリアルに、感情移入させてるんだろうなぁ。
でも、お互いに好きって気持ちは変わらずなので、何だかんだとあっても、見守る気持ちになれば、ほんわかと第三者目線で楽しめます。
ま、最後の横山の叔父へのカムアウトと加賀の母親へのカムアウトの対比は現実的で、みんなまーるくハッピーエンドにならないってのは、私は却って良いなと思いました。
とにもかくにも、加賀が可愛かった゚(つд・o)゚+。
不器用でまっすぐで、素直になれない。
だけども本質を覗けば的な部分。そんなところウッカリときめいてしまうのであります。
正味、後半のゴタゴタさえなければ“神”つけようと思ってました。
いかんせん、あの部分で、いろいろ頭の中がグチャグチャに。
トータル思った異常にピュアなお話でした。
出来る営業マン、横山のもとにやってきた新入社員。
教育係を任されたものの、なんともストレートな物言いと、態度のキツさにほとほと参っていた。
ところが、実はこの新人→加賀。は、横山に密かなコイゴコロを抱いている。
なのだけれど、好きな人にほど素直になれずつっけんどんにあたってしまうという悪い癖。自分の性癖にコンプレックスを抱いているだけになおさらそれが露骨に現れてしまう。
そんな中、2人に芽生えるものは~・・・な今回なのでありますな。
やっぱり片想いの間が楽しい。
どうしてもノンケを好きになってしまう加賀。
いつも言葉にできず告げられることのないまま終わってしまう恋ばかりをしてきた。今回もまたそれで終わるのだと決めていた。
そんな葛藤がどうにも可愛いのである。不器用でまっすぐなこの子
やたら可愛いとおもってしまう。
視点が、横山と加賀の両方で交互になされるので、読みにくさが若干あったものの、後半になるにつれては気にならず。
加賀の友人であり、加賀のことが好きでたまらなかった女の存在。
この人の、サッパリとストレートな性格、キャラクターがすごくよかった。
どのシーンだったかな、苦悩する加賀に「そんなに好きなの」というシーン。ここのシーンがとても好きww
横山さん。この人も、実は大きなコンプレックスを持っている。
幼少のころに突然生えてきた天使の羽。父親が天使だったのよという母親の言葉は、自分の背中が真実を物語っている。これがあるから、好きな相手ができても、躊躇してしまう。抱き合うことにでもなればこれを見せなければいけない、ましてや自分の子供ができたとき、同じように羽が突然生えてきたらどうするのか・・・・その苦悩ありきで、ダレとも付き合わずにきたわけですが~・・・・。
春キャベツのくだりが好き。
加賀が自分のことを好きだと知ってしまった後
2人の距離は、恋愛云々なしに、近づいていく。
加賀のつくったご飯をたべ~な、特別なキャベツがあるのなら・・・
なんか甘い空気がすごくよかったですな。
徐々に、ジワジワ心の距離が寄っている。そんなシーンだと思います。
後半。女を挟んでの横山さんの暴走。
これまで、わりと大人~な印象があった横山が・・・な部分。
なぜあそこまで、、、、と思ってしまったりもするのだが、
そこをもうすこし掘り下げて考えることが出来ればもうすこし楽しめたのだろうかと思う。
横山は天使と人間のハーフです。
背中には真っ白な羽があり、人の言葉が嘘かどうかが分かります。
が、背中の羽はいつもサラシを巻いて隠し、横山はごく普通のサラリーマンとして日々を生きています。
そんな横山の下に配属された加賀。
無愛想な加賀のキツい性格と容赦の無い言動に辟易しかかっていた横山でしたが、酔った加賀を介抱してから、加賀がかなりの照れ屋で意地っ張りだということに気が付きます。
相変わらず無愛想な加賀に嫌われていると思っていた横山でしたが、酔った加賀が零した言葉に、加賀が嘘偽り無く切実に自分のことを好いていることに気づいてしまい・・・
木原作品を何冊か読んできましたが、読み終わって「この二人なら大丈夫だ!」とこれほど思えたカップルは初めてな気がします!
そう思えるのは、書き下ろしの『thought』の効果でしょうね。
横山と加賀、この後いろいろ困難はあるだろうけど、この二人なら乗り越えていける!!と太鼓判を押せます。そういう意味で安心感があり、幸せな読後でした。
最初は横山同様、加賀に苛ついていたのですが、読み進むうちに加賀が可愛く思えてきました。
加賀は不器用なだけなんだよ(笑)
加賀自身は真面目で真直ぐな男です。こんな生き方してたら生き辛くて仕方ないと思う・・・でも、そんな生き方しか出来ない加賀。
真直ぐ頑張る加賀に、横山だけじゃなく、最初はブチ切れてた総務部長だって最後は一目置くようになります。もう本当に加賀が愛しい!それを受け止める横山の穏やかさも萌えます!
背中の羽をあげようか?と言った横山の言葉に対する加賀の返答が、個人的にすごく好きでした。横山にとっては羽はある意味コンプレックスでもあり、それを嘘偽り無く褒めて受け止めてくれる加賀は、横山にとっても何にも変え難い存在なんだろうな・・・と。
加賀に感情移入できるか、加賀を好きになれるかが、この作品の好き嫌いを分けそうな気がします。
キャラクターは魅力的だし、内容もリアルで面白くてオススメなんですが、ちょーっと引っかかったことが(汗)
横山の背中に羽がある、のでファンタジーのはずなのに、全然ファンタジーっぽく感じませんでした。
それはいいんです。普通に、リーマン物のラブストーリーとして読めたので・・・読めたからこそ!!
天使と人間のハーフ・羽持ちの設定は必要?嘘が見抜ける能力の根拠付けとして?
過去に一度出会ってる設定は、横山の羽を加賀が気味悪がらない理由のため?
横山の天使の羽=コンプレックスと解釈するなら、羽の脹らみを言い訳する時の肩甲骨の奇形でも・・・と。
ファンタジーなのにすごく現実的。それが木原さんの良さだとは分かっているのですが・・・ちょっとそこで小骨が引っかかってしまいました。横山に羽を生やす必要があったのか・・・すごい根幹のところですね(苦笑)ごめんなさい。
でも、横山と加賀はすごく好きなんですよ。
横山の羽を私自身も受け入れられるように、何度か読み込んでみようと思います。