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表題作長恨歌 下之巻 青蛾

浪人 沙門小次郎 /怪僧 鉄
越後松代藩老中嫡子/弁天(性奴隷)

その他の収録作品

  • 紫陽花

あらすじ

荒れ狂う愛の交歓の果て、沙門と心が繋がりかけた弁天だったが、沙門に横恋慕するお澪のせいで罠に落ちる。お澪の父で江戸随一の豪商、宗左衛門に捕われた弁天は、奥座敷に囲われてしまい!? 

作品情報

作品名
長恨歌 下之巻 青蛾
著者
山藍紫姫子 
イラスト
水上シン 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫black
シリーズ
長恨歌
発売日
ISBN
9784592850809
4.5

(23)

(17)

萌々

(3)

(2)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
104
評価数
23
平均
4.5 / 5
神率
73.9%

レビュー投稿数6

消えることのない憎悪もまた、SMの媚薬

下巻に入ると、病に冒された弁天を救うべく(なのか、沙門を手に入れるためなのか)お澪によって3人の仲は割かれてしまいます。
そして、弁天は、お澪の父親・吉野屋宗左衛門に囲われることに・・・

下巻では沙門・鉄の登場シーンが少ない分、弁天が宗左衛門に対して見せる微妙な心の揺れが見どころ。
宗左衛門に抱かれて、それはそれで感じてしまう弁天。
弁天ビッチやん|д゚)・・・と、唖然とさせられるわけですが、実はそういうわけでもないんですね、これが。
宗左衛門と関係することで、逆に弁天の沙門に対する無自覚な執着が炙り出される・・・という。
上巻に引き続き、憎悪に裏打ちされることよって激しく捻じれた執着愛が、じくじくと描写されていきます。

宗左衛門という男もどうやらただの商人ではないようで・・・宗左衛門の穏やかな物腰の端々に滲み出る「闇に生きる者の血のにおい」に、沙門の面影を重ねる弁天。
こういう部分に沙門を感じること自体、弁天って真性Mなんですかね。
宗左衛門の責め方も、沙門や鉄同様に苛烈。しかし2人と違って、ひどい責め苦に遭わせるかと思えば、一方では弁天にいたわりと贅沢な暮らしを与える・・・そんな中で、上巻とはまた違った趣きで、弁天のMっぷりを堪能できます。

弁天と宗左衛門の関係を見つめるお澪の視線が、作品にさらに微妙な空気を。
しかし何故山藍さんは、BLでは異例の女性視点という形を選んだんでしょうか?
旧版白夜書房の単行本の解説で、SF作家の野阿梓氏もそれについて言及されています。(白泉社版には解説はありません。)
その中で触れられている通り、お澪も弁天も、作者の分身というのは間違いないのですが・・・野阿さんもはっきりとした答えにはたどり着けなかったようです。

私自身も答えは見つけられず。でも、女性の当て馬視点というこのスタイルが、この作品を他のBL作品にはないほどBLらしいものにしている気はしています。
お澪は江戸でも評判の美人ですが、沙門はそんなお澪を歯牙にもかけず、彼女の前で平然と弁天を選ぶ。お澪は徹底的に袖にされます。
これって、女には決して割入る隙のない男同士の同性愛を至高とする腐女子の(自己矛盾に満ちた)心の構図を具現化しているようにも思えてしまいます。お澪は読者にとって恋敵であり、一方で攻めや受けに失恋し続ける読者自身でもある・・・
まさにこれこそが、読者心理も構図に含めた形での、BLの世界じゃないかと。
残忍で冷酷で、それゆえに女たちを惹きつける沙門の魅力(ズバリ眠狂四郎的な)も、お澪がいるから引き立つものですしね。

それにしてもこのラスト!!
このラストがあってこそこれまでの疑問がすっきりと解消されるのは勿論なんですが・・・やー、こう来ましたか。「ポーの一族」ですかそうですか。
唐突な感じはもの凄くしますが、実にBLっぽいと言えばそうなのかも。てっつぁん実は凄い人!!(人?)
愛って、執着って、永遠をほしがるものなんですね。

描き下ろしの「紫陽花」では、鉄に抱かれながら宗左衛門の名前を口走る弁天・・・やっぱり弁天ビッチやん|д゚)
本編の中でも弁天が紫陽花色の半襟を付けたシーンがあるのですが、微妙に色を変えていく弁天の心模様はまさに紫陽花の花の色。
愛だけじゃないから、深いんです。
ちなみに描き下ろしのスペシャル性具は、鉄つぁん特製の念珠のアナルピース!でした(-人-)南無南無

8

沙門サマが意外に可愛い件(笑

本編で登場する沙門さま。
体がツライ弁天に容赦なく行為を強い
血を吐く弁天を放置して他の女を抱く

一見冷たく冷酷に見えるのだが~なくだり。
前回見落としてた部分も沢山あり、なにより今回再読ということもあるのだが、沙門さまの弁天に対する執着が
すごい!と思いました。

それをきちんと愛とか気づいているのか否かといえば、自覚がないのかなとも思うのですが……

弁天を鉄に抱かせる理由。
弁天が他のモノにふれられたことへの怒り。
牢の中で再会のキス。
番外編で描かれたその後の話。

一見してみれば
酷くツライ話でアルなかの甘さが今回際立つて見えたのが
なによりの収穫でした
これ萌えなのよ(ノ∀≦*)ノ゛

また弁天。
弁天もまた、捉えられて犯されて。
他の男に抱かれる最中、憎いはずの沙門を想い名前を呼ぶ。
一番に助けを呼ぶのも沙門であり、触れられたいと願ってしまう。
嫌よ嫌よも好きのうちとはいいますが
なんだかんだで可愛いんですよね~。

番外編では
他の男に犯されているときは沙門のことを思っていたのにも関わらず
ふとみたあの男を沙門の腕の中で思いだす~のくだりがまた面白かったです。

弁天(笑


鉄。
最終的には
弁天と沙門を温かく見守る~なポジションに落ち着きましたね。
この和気あいあいな感じが凄くよい。
もちろん性欲あれば弁天を犯すんですけど…

本編中にあった鉄のセリフ。
沙門が自分に弁天を抱かせるのは
弁天を死なせないため
永遠につなぎとめるべく
憎しみであっても一生自分を想う弁天を

な部分

。゜(。ノωヽ。)゜。
泣けるゎい。


なんにせよ
この執着的な愛が一生巡るとおもうと
なんだか胸の動悸も治まらず。


古い作品では
ありますが
それだけに良い作品です
一見の価値アリ

5

もこ

たまゆままサマ、はじめまして。
コメントありがとうございます!

解釈の仕方ってやっぱりありますよね。
一番最初に読んだ時は、私も好み分かれる作品だな~と思いながら読んでいました。
個人的には、ゲテモノ食いなので、ちょw泥鰌w
思わず顔が緩んでしまいましたが(ォィ

昔書かれた、山藍さんとだれだかの対談エッセイに
“愛はある”の言葉がありました。
ただそれが、わかりやすいのかわかりにくいのか。
当人たちが自覚しているのか否か。
また、それが愛とわかる行為なのか。
異常なほどの執着であったり、憎しみ。
その中で見える、行動、言葉、心理のなかからの~を感じ取っていく面白さもあるのかなと、山藍作品を読むと思います。

まぁ、行われる行為が目を覆いたくなるようなものが作品によっては多々あるので、やっぱりそこはNGな人多いのかもしれないな~と思わなくもないのですが・・・。


ひとまずうまい返信になっているのかが心配ですが
このへんで。

たまゆまま

もこさま、初めまして。
山藍さんの長恨歌レビューを読み、懐かしくなりました。
長恨歌は私が山藍さんをもう買わないと決めたきっかけになった本で、もう終始弁天の体が休まることなく大変だったと記憶しています。
弁天の体から泥鰌が出てきた時は、彼が怯えていた以上に私も怯えました。
もう、大変!弁天、かわいそう!
とずっと思ってきましたが、もこさまのレビューを読み、そういう解釈もあるんだなと思うようになりました。
山藍作品は当時、好きで集めていましたがこの作品で衝撃を受けてしまい、長い間私の中で葬っていましたが、また新たに手を出そうかと思うようになりました。
つい先日、書店で新装版が発売されているのを見て「おおっ!」となりましたが、何度もイラストがかわり発売されているのを目にするとやっぱりいい作品なんだなあと思いました。

長文ですみません。

人の業とは

上下巻合わせてのレビューです。

もう、さすが山藍先生といった作品でした。
圧倒的な世界観。山藍作品は痛い話が多く好みが分かれるんじゃないかと思いますが、この作品もその作風を違うことなく何とも痛々しい内容でした。
そして何がすごいって、この作品が1991~1992年に書かれた作品だということ。素晴らしい作品は年月が経っても色褪せないんだなあとしみじみ。

読み始めた時、沙門の弁天への凄まじい執着心がどこから来ているのかさっぱりわからなかった。
読み終えた今も、沙門が、あの理由でなぜそこまで弁天に固執したのか分からない。『武士』の想いとかプライドというものは今の私たちには理解できない重いものがあったのかな。
けれど、『愛は消えていくけれど、恨みというものは消え去るものはない』という沙門の理屈はすごい。そこまで弁天にこだわったのは、結局恨みではなく愛だったと私は思うのだけれど。

この話は沙門に恋をしたお澪視点で進んでいきますが、それが何とも良かった。
沙門でも、弁天でもなく、お澪での視点で展開していくため二人の感情の機微が分かりづらい。分かりづらいのだけれど、もしかしたら彼らにも自分の気持ちが分かってないんじゃなかろうか、という気がしました。

どんなことをされても沙門から離れられない弁天。
ひどい仕打ちをしながらも、弁天を手放せない沙門。
『愛』などという生易しい感情ではなく、他人には理解しえないところでつながっている二人。
ある意味、そこまで想いあえる二人がうらやましいとさえ思いました。

モブに輪姦されるという表現が苦手なので、そして、弁天への凌辱があまりに激しすぎて、途中挫折しそうになりながら読み終えました。
が、挫折しなかったのはやはり山藍先生の文章力によるところが大きかった。あっという間にこの世界観へと引きずり込まれてしまいました。

最後のセリフも何とも意味深。
弁天さんと交わった人たちのその後がどうなったのか非常に気になります。

そしてお澪の父親の宗左衛門。
彼もいい味出してますねえ…。一番悪いヤツなんじゃなかろうか。宗左衛門という男は。
彼視点の本を出してほしいな、と思ったりしました。

山藍作品は読むとすんごい疲れます。
けれど、それらを遥かにしのぐ素晴らしさがある。
人の業。
人を愛するという想いの強さ。
そして、人の弱さ。
それらをはっきりと浮き彫りにした奥深い作品でした。

文句なく、神評価です。

5

怪僧がキーパーソンだった

表紙の絵は、上下巻で揃いの一枚になるようにデザインされています。
下巻になって、やっと奇妙な三人の秘密が分かって、ナルホド。。

鉄に沙門が「弁天について頼んでいたこと」があった。鉄は不死術を伝承する寺の後継者。
黒い吐血を弁天がしても、介抱するでもなく、ただ見ているだけの鉄。
沙門は、弁天が吐血をしだすと、キモくてその場から去ってしまう。

面白い結末でした。
美少年の弁天は、色々な事件に巻き込まれて、犯されまくりの責めまくられ。気の毒。
とうとう最後は、逆恨みした女に包丁でめった刺しにされてしまう。弁天は出血多量の失血死になるはずが、痛がるけれど生きている。
首を斬られたはずの鉄も、復活している。
鉄の不死の力は、体液の交流で移る・・鉄の不死の力を弁天を介して沙門は受けていた・・そして他人と弁天が接することを忌む理由もソレ。
沙門は、弁天に愛情を抱いているわけではないかもしれない。不死の力を得る為の媒体。

不死 死なない3人のお話でした。

1

二人の関係

沙門と弁天は愛し合ってるとは違う気がします。

弁天は毎日のように抱かれて乱されて、そばに沙門しかいないから好きになってしまったんだと思うけど。

普段は酷いやつだけど時々、優しくされるとそのギャップに惹かれてしまうんだろうなと思います。

媚薬を使われて狂わせれていたけど、「捨てないで」と叫んだのはやっぱり、本心だったんだろうなと思います。

囚われて離ればなれだった二人の格子越しのキスには萌えました。

好きな作品ではあります。

2

この作品が収納されている本棚

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