君が指先で綴るI LOVE YOU

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表題作君の指が好きと言ったら

松永元道/工務店の息子/24才
三田芳郎/医療事務/25才

あらすじ

聴覚障害がある芳郎の穏やかで平凡な日々に突如現れた弟・拓郎の元同級生、元道。芳郎は障害を気にもしない彼の朗らかさにいつしか惹かれていく。だが二人の急接近を知った途端、兄想いだった拓郎の様子がおかしくなり……!?

(出版社より)

作品情報

作品名
君の指が好きと言ったら
著者
小川いら 
イラスト
木下けい子 
媒体
小説
出版社
ムービック
レーベル
LUNA NOVELS
発売日
ISBN
9784896018066
3.3

(16)

(1)

萌々

(4)

(10)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
52
評価数
16
平均
3.3 / 5
神率
6.3%

レビュー投稿数5

物語の冒頭から良かった…

音のない世界は、どんなかんじなんだろう?と、想像しながら読みはじめました。

知らない男の子と遊んだ記憶。
木の実がバラバラと上から落ちてきて、頭や肩にコツンコツンと当たる。
見上げると、木登りをしたその男の子が、一緒に集めた木の実を落としている。
耳が聞こえなくて話ができなくても、木の実が落ちてくることが楽しくて、手を叩いて笑いながら逃げ回る…
電子書籍のサンプルで、冒頭の子供たちが無邪気に遊ぶ姿にきゅんきゅんしたので購入しました。
『よろこべばしきりに落つる木の実かな』
この句が、物語の軸になっているように思います。
芳郎はひたむきで家族や周りの人々に感謝しながら、聴覚障害も自分の個性だと思い生きています。
たまに男の人に声をかけられるけど、華奢で中性的な外見だからと考え、25歳になっても恋愛をしたことはない。
自然を愛し、それを俳句にして日々過ごしています。
もちろん仕事もちゃんとしています。
そんな穏やかな生活の中で、お相手の元道と出会うわけですが、芳郎はかわいくて(庇護欲ってやつかな?)、大事にしたい元道の気持ちも、執着している弟の気持ちもわかるような気がしました。
芳郎はみんなに感謝しながら生きていているので、芳郎と関わる人々は、更に愛情を注ぐのではないのでしょうか。
この物語の中の『よろこべばしきりに落つる木の実かな』は
よろこべば=感謝または愛、木の実=愛、なのかなと思いました。
穏やかな気持ちになれる作品です。

2

初めての友達と恋人と

主人公には聴覚障害があって、耳が聞こえなければ話すこともできません。
こういうコミュニケーションに支障をきたす場合の恋愛ってどんな風に進むんだろう?
興味本位ではありませんが、ハンデを乗り越える場合、主人公の設定によって大きく物語というのは違ってくると思います。
このお話は、主人公がそこそこ裕福な田舎の地方の医者の家の生まれで、親・兄弟などの愛に保護されて、当人自体も外交的ではないにしろ、その障害を受け入れて、色々なものをちょっと諦めて暮らしている、少し老人っぽい感じの純真というべきか、枯れてるとういべきか、そんな人物像でしたので、お話自体もじんわり・ゆっくり・穏やかに流れて行きました。
激しい萌えはありません。
特にこれが好き!といったシチュエーションもありません。
むしろ最後まで読んだ時に、主人公が初めて大人になってからの心を通わせた友達を作れたこと、それによって世界が広がったこと、初めての恋愛体験をしたこと。
そんな成長の(一足飛びでしたがw)お話であったと思います。
なので、ラスト身体の関係は時期尚早のような気もしないでもない?キスで終わりでもよかったんだけどな~
そして彼等は、このお話が終わってからのこれからなんです。

若い頃はその障害から色々思う所もあり、反抗してみたりした主人公・芳郎ですが、その聴覚障害がゆえに家のレセプト作業で働き、外出は参加している句会へたまに出かける程度で、あとは自宅の庭を愛でるのが趣味。
句会でも、自分の障害故に気を遣っていっている、実につつましい人物だと思います。
そんな彼と出会ったのが、家の屋根の修繕に訪れた工務店の次男・元道。
彼は、人なつこく、芳郎が庭に出ると彼にくったくなく話しかけ、色々と聞いてきます。
そんな元道に親しみを持つ頃、一緒に映画に出かけたりと、今までしていなかった楽しいひと時を過ごすようになります。
しかし、芳郎の弟は元道と同じ高校の同級で彼を嫌っていたらしく、芳郎と元道が仲良くするのを快く思っていません。
「兄さんは障害があるんだから一人でなんか生きていけないよ」
元道に嫉妬した弟の言葉です。
激しい独占欲であると同時に、兄の人格を尊重していない言葉に思えました。

また、二人のデーとの最中、支払について元道が「デートでは男が支払うもんだ」といった発言をして芳郎の気分を損ねます。

こういった守られる立場の芳郎という描写に対して、もっと激しいものがあればそれは山谷になり起伏をうんだのだと思いますが、いかんせん芳郎が穏やかです。
代わりに読者の自分が憤りましたwww
元道と、弟と、この二人にキスをされたことで、どちらが違和感がなかったのか、そこが決め手だったというのも、芳郎が奥手だったゆえなのかもしれませんね。
だから弟の存在は、起爆剤としての活用だったのかな?

肝心の障害という面は、やはり筆談であったり手話であったり読唇であったりする分、クッションをおいてしまうので、穏やかになってしまうものなのかも?と思いながら、本当なら意思疎通がもっとしにくいはずなのに、意外にスムーズなのが、障害を余り感じさせませんでした。
そう言う点で、あまり重くない話になっているので、万人に受け入れやすい障害者設定になっているのかもしれません。

2

穏やかな恋

聴覚障害者を主人公にした穏やかに進むストーリーでした。
受け様は聴覚障害があるものの、とても環境にも恵まれ
家族にも愛されてきた誠実で優しいお人です。
攻め様は、今どきの若者って感じですが、
こちらも偏見すら無い男前な攻め様でした。
受け様は家族に支えられながらも実家の医院の医療事務で
働いていますが、聴覚障害もあり、あまり社交的でないので
庭の散歩や俳句などを趣味としている落ち着いた人で
偶然、家に来た工務店の息子と話すようになります。
友達もいなかった受け様は次第に攻め様と仲良くなります。
次第に交流を持つうちに見かけよりもしっかりしていて
気さくな攻め様に好意を抱くようになりますが
受け様の弟で医学生の弟と攻め様が高校の同級生なのがわかり
弟に攻め様を友達だと紹介した途端、態度が激変。
実は弟は攻め様を兄弟以上の感情で見ていたようです。
でも、受け様に諭されて思いを封印しますが
この辺りはなんかやけにあっさりしている感が・・・
攻め様は家の跡継ぎ問題なので塞いでいた気持ちが
受け様の傍にいると癒されて行くように
気持ちが受け様に向かっていきます。
受け様と会話をして思いを伝えたい一心で手話を習い始め
手話で愛を囁く・・・
穏やか過ぎて個人的には物足りないかなぁ~なんて
思ったりもしましたが、受け様の視点で気持ちが丁寧に
描かれていたのではないかと思います。

1

ほのぼの

主人公の芳郎ような素直でうぶな感じがかわいらしくたまらなく好きです。
(きっとそういうところが自分のツボなので)

ストーリーは穏やかに進んでいるけど、元道との出会いが家族に守られて
過ごしていた芳郎の人生に変化をもたらします。

芳郎は本意でなくても周りのやさしさを受入れることが安心させることだと
理解し、また感謝もして好感が持てます。
元道も家族を思い、悩んでやさしい人物です。
自然と応援したくなりました。

芳郎の弟・拓郎については過保護な弟位のほうが良かったなぁ。
でも、拓郎のおかげで元道への気持ちに気づいたし・・・。
身を引いたのは、兄の幸せを想うからこそだと思いたい。

きっと2人は穏やかに生きていくのだろうな。
読後、気持ちがほのぼの、ほっこりしました。

1

綺麗な世界観。キャラクターの心理描写も、ちょっと綺麗すぎたかな‥‥

個人的にあんまり萌えなかった‥‥かな。
日常系BLは好きなんですが、それにつけても物語がフラットだったような
印象を受けてしまいました。

それぞれに事情がある登場人物たちですが、
喜怒哀楽のどのベクトルの感情も、綺麗すぎて上滑りした印象。
毒にも薬にもならないというか‥‥
ドリーミーなBLではなく、どっちかってとリアリティ重視系BLなだけに
キャラクターに「人間くささ」を感じられないのは‥‥

ちょっと物足りなかったのかな。


***以下、ネタバレ***

聴覚障がいを持って生まれた主人公の芳郎(受け)は、
実家が病院を経営していることを活かし、医療事務として働いています。

できることがたくさんあって、できないこともそれなりにある芳郎。

意地を張ってチャレンジする人生よりも、家族の支えや心配を受け止めて
穏やかな、安定した生活を享受することを選んだ。

積極的に外出しない分、庭で自然と触れ合うことを好み、
その気持ちを俳句にのせることを趣味としています。

そんな穏やかなある日、庭の整備をしてくれている工務店の次男坊で、
芳郎の弟と高校時代の同級生でもある年下の男、松永(攻め)と
お庭で出会い、交流していくことになるんです。

物語の主軸は、「気を使ってもらう」ことに慣れていた芳郎が、
障がいのこともあまり知らないし、気も使わず接してくる松永に
「少しずつ世界を広げられていく」
そんなやりとりが中心になっているのかなと思います。

そこにちょっと絡んでくるブラコンの弟の存在があったりしましたが
彼は案外あっさり引っ込みました。

他のレビュアーさんがおっしゃっているとおり、
冒頭の子ども時代のエピソードはとってもキュンキュンして
期待が高まるものでした。

以上。

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