生きる事に疲れた極道幹部×小さな夢を追うハーフの美青年…辛い過去を背負った二人が辿り着いた真実の恋!

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表題作野良犬たちの街

結城/暴力団の幹部/30後半
江里武生(ハーフ)/ウリの仕事をしてる

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

施設で育ったハーフの武生は、ウリの仕事をしながらいつかアメリカに父親を捜しに行くという夢を抱いて生きている。そんな武生の前に現れたのは、全国でも有名な暴力団の幹部・結城。結城は五年前の抗争で妻子を亡くして以来、明日が見えない毎日を死んだように生きていた。結城の奥底に見え隠れする優しさと虚無感に次第に惹かれていく武生。だが、武生と結城の前に、過酷な暴力団の掟が立ちはだかって―――。
(出版社より)

作品情報

作品名
野良犬たちの街
著者
水原とほる 
イラスト
やまかみ梨由 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796402385
2.5

(6)

(0)

萌々

(0)

(4)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
13
評価数
6
平均
2.5 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

線香くさい男

ここんとこ男前受けとか、ポジティブ路線が続いていたので、久々に手酷い凌辱のあるヤクザモノ、しかも切ない痛い系は久々な感じがします。
やっぱり、他と違うのは心の動きの微妙な見せ方と主人公達の境遇の絡め具合とか、そこがいいな~と思わせる箇所だなと思うのです。

武生は米軍事の父親と日本人(本当はハーフ)の間に生まれ、父には認知されず母に捨てられ、施設を出て都会に出てきた青年。
ヤクザに囲われながら、生活費が与えられないことと、毎年バースデーカードだけは送ってくれる父親にいつか会いに行きたいと、売りをしながら金をためて英語は勉強しているという、けっこう底辺を見て生きているのに、ちゃんと希望をもっているという設定です。
一方、武生を囲ったヤクザが、ヤクの横領をした為に乗り込んできたのが関東で大きな勢力を持つヤクザの組の幹部である結城。
彼と武生は街中のカフェで偶然に会ってっているのですが、その時の印象は疲れ果てたサラリーマンという感じの覇気のない雰囲気だったのです。
それが、再会した時は、豹変させて残酷に、武生の一言にキれて強姦するのです。
そうした、結城の顔の二面性というのが、かなり大きなカギになると思われます。
本当なら面子の為に武生も殺されてもよかったのに「生きたい」というその言葉に、武生は結城の家に連れて行かれまもれた生活をすることになります。

こういう場面で書かせないのが、面倒を見る下っ端の幹部を盲目的に崇拝する舎弟です!
彼がいるから、武生は結城の事を知ることができる。
彼が板前見習いだったとかw、おしゃべりとかww、お約束登場ながら、何だか嬉しいですね♪こういうモブキャラ結構すきなんですよv

最初、鬼のように武生を強姦したのに、一緒に住みだすととても優しく、初めて会った時のような生気のない表情とか見せる結城に、舎弟から聞いた過去もあり、武生は結城が寂しい人だということを知ります。
線香の匂いをさせて帰ってくる結城。
武生の祖母の死期が近い時に嗅いだ死臭を、結城は漂わせている。
死んでもいいと思っているのに、それをとどめさせる何かを結城は抱えている。
そして、生きたいと願う武生に結城は同情だけでなく、ほだされていくような、気持ちが満たされて生きる意味を与えられたような気がします。
それは、結城の罪滅ぼし的な面をかんじさせるのかもしれませんが、彼の元兄貴分で、僧侶になった男の登場によって、彼の苦悩と葛藤と彼なりの昇華を見せてくれます。
それは、結末として彼がけじめをつけますが、ヤクザは辞めないという部分にあらわれていると思います。
結城の窮地を救うため、武生は一人でヤクザの元へ乗り込みますが、ちょっと浅はかな・・・(お約束だから仕方ない?)

こうして見てみると、武生は決して弱くもないし、強いわけではないですが、だてにやくざの情夫をしていたわけではない。
そういう世界を見てきていたからこその覚悟や心構えができている、幾分潔い男前部分も持っていたのかな?と思います。

武生はずっと一人で生きてきて誰かに甘えたかった。
結城も過去を抱え、寂しかった。
寂しいもの同士の慣れ合いでは決してなかったとは思います。
そして運命の出会いということでもなく、武生は出ようと思えば結城の傍を離れることはできたのだし、
結城も手放そうと思えばできた。
でも、武生が選択したのです。
だから、そこには確固たる意志が存在していたと思います。

題名も言いえて妙なり。
あとがきにうんうん、、とうなずくのでした。

2

一人で生きるのは難しいね

このお話は痛くて切なくてとても苦しい話でしたが
そんな中で小さな幸せをつかんだ受け様の喜びが
伝わるようなストーリーでした。
生きるために、それも飢えを凌ぐ為だけにヤクザ者の
囲い者になってしまった受け様がさびれたカフェで
偶然相席になった攻め様と知り合う。
名前も知らぬほんのひと時、他愛もない会話をして
二度と会う事のない人との再会は残酷で。
受け様を囲っていたヤクザが目の前で暴行を受け絶命。
薬のありかを聞かれてもわからない受け様は
そのまま連れ去られPVの撮影と言う名の凌辱を受けます。
息も絶え絶えになる姿を攻め様に冷徹な目で見られ・・・
後は殺されるだけという時、攻め様を罵る受け様。
しかし、受け様が言った言葉が引き金になって
我関せずの傍観者だった攻め様にいきなり犯される。
なんとも、ここまで悲惨な受け様も多くはないかも。
それでも死にたくないと言う受け様を助ける攻め様。

これだけひどい目に遭わされているのに何故か
攻め様が気になる受け様、なんだか生きているのに
死んでいるような違和感を攻め様に感じていて。

この受け様、後半まで色々な不運に見舞われてかなり
可愛そうなんですが、生きる希望を失っていない
からなのかどんなに凌辱されてもどこか純粋なんです。
その純粋さで死に場所を求めているような攻め様を
生きて欲しい、その為に自分が出来る事をって行動する
ほんとに健気なんです。
後半ではささやかな幸せを掴んだふたりにほっとしました。
あの場所で出会ったことがきっと運命だったのだと
思える作品でしたね。

0

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