もどかしいくらい長い時間が、傷んだ心には必要でした。

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表題作日月星、それからふたり

家電メーカー社会貢献推進部所属 赤城 25歳
高校時代付き合った現公園職員 小椋 24歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

仕事のプロジェクトで自然体験教室を担当することになった赤城は候補地の一つの公園で、作業服を着て、日に焼けた一人の男を見かける。かなり様変わりしたが、高校時代に付き合い、手ひどく振った、小椋という年下の男だった。小椋の素っ気ない対応に赤城は居心地が悪くなる。そのうえ、候補地は小椋が勤める「おおくわ山公園」に決定してしまい…。

BL界、期待の新人オール書き下ろし!
(出版社より)

作品情報

作品名
日月星、それからふたり
著者
さとみちる  
イラスト
秀良子 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
発売日
ISBN
9784883864027
3.3

(28)

(3)

萌々

(12)

(9)

中立

(1)

趣味じゃない

(3)

レビュー数
9
得点
91
評価数
28
平均
3.3 / 5
神率
10.7%

レビュー投稿数9

作者の姿を感じさせない作品

三人称。章でわけられた両視点です。
エロスも極々低めで、もしかしたらこれは男性でも読めそうな気がします。

**********************
攻めの赤城は家電メーカーに勤めるサラリーマン。
高校時代は輝いていたもののその後は怠惰な生活を送り、今ではただ惰性で生活するために仕事をしています。

受けは赤城の高校の後輩、小椋。
地元の自然公園の職員で、小柄で華奢だった過去とは違いしっかりとした体型の大人の男性に育ちました。
**********************

赤城は高校の頃、後輩の小椋に告白され付き合い、そして最悪の形で別れた過去を苦々しく、そして罪悪感にまみれ、今でも心の奥で重荷なっています。
別れから七年後、赤城が小椋の働く公園を仕事で訪れたことで再会し、赤城が過去の過ちと向き合うきっかけとなります。

高校時代の赤城はなかなかのカッコメンだと思いますよ。
同性に告白されてもまず性別より相手に惹かれて付き合って、学校ではかなりの有名人でも二人でいることにまったく後ろめたさを感じていないという。
素直に行動して、相手の良いところを誉めて、こりゃモテるよねって雰囲気です。
そんな赤城に小椋も夢中で、微笑ましいカップルだったんですよね。
アレ(ぼかします)があるまでは。
いやー、かなりそこはリアルだと思います。
特にそのシーンの『自分の声が〜〜鼓膜を揺すぶっていた』のくだりが、うわあと思いました。
良くこういうものから始まるBLはありますけど、ここまでは書かれてませんからね。
そういう意味では夢を見たい系の方には向かないかもしれませんが、リアルな日常系を求める方にはお勧めしたいですね。
いわゆるこれは攻めざまあと呼ばれるジャンルだと思いますし、や、本当に最初は最悪の男なんですよ。
社会人の方は特に、こういう人と仕事したくないって思うんじゃないかな。

さとみちるさん初めて読みましたけど、すごくうまい。
これは初書籍なのかな?あとがきを読むと。
とてもそうは思えませんでした。
三人称なのに作者が自分で語っている(美しさとかかっこよさとか)ような様子があるとあっという間に冷めるんですけど、登場人物の様子を作者説明でなくきちんと彼らの行動で表しています。
きちんとご自身の色を消して登場人物に表現させているというのはとても少ないので、買って仕舞っておいたことを後悔しました。

5

新鮮な読み応え

初読みの作家さん。
友人から借りて、へぇ、知らない作家さんだけれど、秀さんの表紙素敵だし……
と読み始めたら、予想以上に良かった!!


高校時代カッコいいヒーローのようだった赤城は、
今はやる気のないくたびれたサラリーマンになっている。
そんな中、告白されて短い期間付き合っていた高校の後輩・小椋と
仕事の場で再会してしまう。
ピュアで可愛かった小椋を傷つけ、そのことから逃げてしまった赤城。

自然公園を舞台に、そこで自然を愛し生き生きと働く小椋と
何もかにもが中途半端で、昔の輝きを失ってしまった赤城が
過去を清算して、新たな関係を築く入り口に立つところまでの物語。

ほぼ、赤城視点で話は進む。
流石に7年の歳月を経て、
高校生の時には自分のしたことに目を背け逃げ出すしかなかった赤城も、
悪い事をした謝りたいと思っている。

謝らなきゃいけないと思っていても、やはり出来ず……
葛藤しながら迷い悩みながら季節が巡っていく。
小椋が自分を気にかけてくれる度、話しかけてくれる度、
一喜一憂し悶々とする様は、滑稽でありながらも切ない。


LOVEということでは、これからというところで終わっているため
BL作品としての好みは分かれるかもしれないが、
焦れったい程丁寧に描かれる赤城の心は読みでがあるし、
本当には何を考えていたのか分からなかった小椋の気持ちが
最後に吐露される場面では、思わず涙ぐんでしまった。


描かれる自然公園の四季や、自然に関する蘊蓄も
物語を優しく膨らませている。
一つ不満があるとすると、高校時代の小椋が好きじゃないところかな。
(ああいう可愛らしい受けキャラが好みじゃないのです、私は。)
健気なのはそのままに、いい男になった小椋は
いまさらあんな赤城なんかよりいい相手がいそうにも思うのだけれど、
初恋侮りがたし、ということだろうか……。

と言いつつ、実は傷つけた赤城も、幼さ故の過ちを償う術がなく
上手く生きてくることができなかったのだと思うと憎めないので、
今度は、二人で丁寧に傷を癒して生きていって欲しいと願う。

6

お決まり展開BLに飽きたらどうぞ

初読み作家さん。
ホリーさんからのデビューということで、期待大で読みましたが、中々に面白かったです。
構成自体があまりBLでは見ないというか、諸刃の剣というか、これ良く通ったよね……というくらい、BかLしてません。

物語を要約すると、手ひどく傷つけた初恋の彼に偶然再会した男の果てしない贖罪への道、という感じです。
いやもう、これ以上に表現のしようがないくらいに、そのまんま。
攻はクラスにひとりはいる何でも出来ちゃうマン。
高校時代、そんな攻に憧れて告白してきた受と付き合うことになったけど、初めてのセックスで失敗して恥をかいた攻が、手ひどく受を振ってからの転落劇。
この事件をきっかけに、全てが上手くいかなくなった攻が、仕事の企画で偶然受と再会し、あの時のことを謝りたいと思うものの、受の心は固く閉ざされていて……。
しかも自分は昔の憧れの男の面影すらも失った、ただの草臥れサラリーマンになってました、と。
里山で繰り広げられる、ヘタレアホ攻と、すっかりたくましくなった不憫健気受の繰り広げる壮大な追いかけっこです。

ただし、攻→→→→→→→→……(エベレスト)……(遮断)|||受

高校時代編があまりに切なく、読むのも苦しいくらいの受への仕打ち。
こんな不憫健気ちゃんになんてことしてくれるんだ、このろくでなし!!
からの、攻ざまぁ(笑) は読んでいていっそ小気味良いほど。私大好きなんです、手ひどい扱いをした受から反撃くらう攻の話。
そういった意味では、過去類を見ないほどに攻が散々な目に遭ってます。しかも終盤も終盤、むしろラストまで。

受があまりに頑ななんですが、そうなっちゃうよね、と思ってしまうほど、この攻がろくでなしな上、優柔不断で情けなくてもうどうしようもないです。
そんな攻に対して、カケラほどに残っている情を全て注いでしまう受の優しさがまた切ない……。
この受、ガチ不憫健気です。ツンデレでコーティングしてるけど、中身は純粋100%の健気成分で出来上がってる。
ダメ男になりはてた攻を、ため息をつきながらも見守る姿には涙します。あんな目にあったのに、まだこんな男が良いのかよ、もっと他にいい男いるよ、と思うんですが、コイツがいいんでしょうね……。

ほぼ攻視点で話が進むので、ひたすらじれったくイライラするんですが、そこここに散りばめられたエピーソードが良い感じに作品に色を付けていて楽しく読了。
里山体験にかなり比重を置いているので、ん?これBL? という疑問がふっと沸いたのですが、たまにはこういう話もいいかと思いました。
文章が瑞々しく、田舎の風景の描写が凄いです。
むしろ作者が書きたかったのはこれですか、と言いたくなるほど。

桃色シーンは手酷い失敗初エッチだけというとんでも具合な上、おれたちの戦いはこれからだ! みたいなノリでの締めという、まさかの構成に仰け反りましたが、個人的には楽しく読めたので問題なし。
出来ることならもう1冊出して、ちゃんと仲良くなったふたり編を読みたいところです。
攻に魅力はゼロですが、受の魅力が半端ない。
バランスは悪いですが、今後に期待したいキラキラを秘めてるお話でした。

挿絵が良い仕事してます。

6

謝ろう!

出版社&あらすじ&表紙買いです。
読んだ感想は攻めが全然謝らない!!!!想像以上に謝らない攻に、なんでやねんとツッコミいれました。
機会逃し過ぎ&謝る決心つかなすぎでしっかりしろーーーー!と何度も心の中で叫びました(笑)
こういう設定にしたからこそ、こういう設定にしているからこそお話が出来上がってることも分かっているのですが、ちゃんと謝るまでに2年?3年?かかってますかね。
その間仕事で何度も顔を合わせているのに・・・恋愛においてのヘタレではなく謝らないといけない所で謝れないのはヘタレ属性なのでしょうかっ?!
といいつつ最後で謝るシーンは攻めに感情移入してうるうるきてしまったのですが・・・(笑)
受けの態度が正しくて、正しすぎて、攻めが謝ってもないのに情で仲良くなったり、長く一緒に仕事していくうちに過去のことが風化されてなかったのがとてもよかったです。(BLでは例えばゴウカンされてもすぐに好きになってしまう設定も多い中。それはそれで悪いわけではありませんが。)

あと何よりも仲良くエッチエンドじゃなかったことが最高でした。
とても稀ではないでしょうか?私がそういう作品に出会ってないだけかもしれませんが(泣)
作品の雰囲気上、エッチエンドじゃない方がよかったと思う作品がたくさんあるのですが、さすがさとさん、ホーリーノベルさん、という感じでしょうか。

この2人の続きのお話が読んでみたいなと思っていたのですが、HOLLY MIXに掲載されているのをここで見て知りました。
たまたま違う作家さん目当てで持っていたので読んでみます。

4

巡る季節

とても優しくて、穏やかで、想像以上に切ない作品でした。寡作の作家さんのようですが、他の作品も読んでみたくなりました。

高校時代に付き合っていた数ヶ月間、初々しい二人の日々はこれ以上ない程に愛と希望で満ちていて(その描写がまた素敵です)、その分、二人を別つ痛ましい出来事が際立っています。あって当然と言うには辛すぎる青春時代の失敗を乗り越えようとする二人が愛おしいです。

砕けて散った恋が時間を掛けて新しい形を成していく様子が「おおくわ山公園」の雄大な自然や変わって行く季節とともに丁寧に描かれていて、ピクニックに行きたくなりました(単純)。

3

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