純情と激情のはざま

高校生の蔵之介は成田空港で叔母の帰国を待っていた。
そのとき、ひとりの若者に目がひきつけられた。全身の血がたぎった。
ショックを受けた。
まるでギリシャ神話から抜け出てきたような完璧な容貌とふるまいをもった若者だったのだ。
しかし、彼は蔵之介の前を通り過ぎ人ゴミへと消えていった。
蔵之介は呆然とたたずみ、彼との一瞬の出会い感謝した。「もうこれであの人とは会えないのだ」と悔いもした。
しかし、同じ高校で学び、お互いに愛し合う関係になろうとは、その時は知る由もなかったのだ……。