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表題作花篝

佐鞍宗秋,恋人,村の小学校教員
華谷幸彦,大学院をやめ宗秋の故郷へ

同時収録作品花嵐

堤漱一,佐鞍家の書生兼下男
佐鞍智生,仏師,21歳

あらすじ

生家のある山間の村へと帰りたい――。恋人の佐鞍にそう告げられて、華谷は将来を期待されている研究室や、住み慣れた街を捨てる決意をした。佐鞍の故郷に移り住めば、恋人との別離もなく幸せでいられると思っていた華谷だが、日に日に変わっていく佐鞍の態度に不安を覚えずにはいられなかった。白く美しい花をつける『白鳳仙』に、まるで魅せられてしまったようで……。

作品情報

作品名
花篝
著者
池戸裕子 
イラスト
桜海 
媒体
小説
出版社
オークラ出版
レーベル
アイスノベルズ
発売日
ISBN
9784872785074
3.6

(3)

(1)

萌々

(1)

(0)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
10
評価数
3
平均
3.6 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数1

幻想小説好きには堪らない世界観

美少年の精が宿る花の樹「白鳳仙」に
魅入られ翻弄される人々を描いた
耽美でややホラー色の強い作品。

「白鳳仙」は、人を死の世界に誘う
いわば死神で、その描写は幻想的で美しい一方、非常に不気味でもあります。
泉鏡花作品を連想させるような世界観に大変引き込まれました。

■「花篝」
生家の庭に咲く「白鳳仙」に取りつかれた佐鞍(攻め)と、彼を現世に繋ぎ止めようとする恋人・華谷(受け)の話。
佐鞍と少年(白鳳仙の精)の情事を
華谷が目撃するシーンは背徳感に溢れ切なくもエロティックです。

華谷のおかげで正気を取り戻す佐鞍ですが、その代償で華谷は目が見えなくなってしまう。
後半は、華谷に尽くす佐鞍の献身的な姿がクローズアップされており、
二人のお互いへの一途な愛がとても沁みます。

愛の力で霊的なものを撃退するという
王道のストーリーではありますが
耽美な描写と登場人物の健気さが
大変魅力的な一篇でした。


■「花嵐」
戦時中の話で、表題作同様、
佐鞍家の庭が舞台となります。
佐鞍家の養子で仏師の智生(受け)と
書生・漱一(攻め)との
あまりに切ないすれ違いの物語。

ここでの白鳳仙は、元々病弱であった智生を死の世界に誘う死神であると同時に、二人を結びつける恋のキューピッドとしての役割も担っています。

佐鞍への想いを込め、命を削るようにして仏像を彫る華谷も、
そんな華谷の想いを受け止める佐鞍も、どちらも非常に健気。
時代の波に翻弄された彼らですが
お互いへの想いは最後まで消えることはなかった。
それを強く感じさせるラストには
思わず涙が出そうになりました。


1999年の作品ですが、古さを感じさせない魅力がありました。

1

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