表題作きつねの嫁入り

颯太/征士郎
凜・《きつね》/鞘・《きつね》

その他の収録作品

  • にじんだ星
  • 瀬をはやみ
  • きこえるよ
  • きつねのねがいごと2
  • トリックオアトリート《きつね》編
  • あとがき

あらすじ

『千流のねがい』番外編

作品情報

作品名
きつねの嫁入り
著者
玄上八絹 
媒体
小説
サークル
27000Hz〈サークル〉
ジャンル
オリジナル
シリーズ
しもべと犬
発売日
4

(2)

(1)

萌々

(0)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
8
評価数
2
平均
4 / 5
神率
50%

レビュー投稿数2

鞘の思い出に涙する一冊

「千流のねがい」の番外編同人誌。
6つの掌編が入っています。

時系列は本編前の鞘と征士郎から本編後までと様々。
凛の話と鞘の話が半々ですが、
表題作は鞘だし、死にネタ絡みの鞘エピに心掴まれるため
鞘の印象が強い一冊。

【にじんだ星】約14P
時系列は本編前、先代の神主・征一郎が亡くなり、
まだ征士郎に心を許していなかった鞘が、
初めて征士郎に歩み寄ったときの話。
征士郎、鞘の両視点になっており、
互いについての切実な心情がよく伝わってきます。

初めは、大好きな征一郎に一番近い場所を
実孫の征士郎に奪われたような気がして
征士郎を憎らしく思っていた鞘ですが、征一郎が亡くなり、
『大切な人を無くすのは怖い』と知ってしまった今では
征士郎と仲良くしたいけれど、
またあの気持ちを味わいたくないからいっそ疎遠のままでいい…
という理由で征士郎を拒んでいます。

それでも、自分に隠れて涙する征士郎を見て、
鞘を喜ばせようと用意した拙い饅頭に覚悟を決めて
『私たちは、二人で生きていかなければならないのだから……』
自分と征一郎のために立派な神主になるように征士郎に伝えます。

【瀬をはやみ】約1P
颯太視点の本編後。
凛と一緒に鞘やその前の《きつね》が眠る保管庫を訪れた颯太。
自分は凛が亡くなったら、遺骸を渡さないと拒むのか
それとも征士郎のようにここに通うのだろうか…と考えるのです。
颯太のくせにシリアス……w

【きこえるよ。】約11P
研究所内で《人形》相手のカウンセリングの仕事を始めている凛。
悲しみを吐き出す《人形》の話を、静かに聞いてあげます。

途中、颯太も『凛に聞いてほしい』と
自分がいかに重症の恋の病であるか打ち明けます。
このあとは、仲良くえっち♪

また、凛のカウンセリングルームを悩める《人形》が訪れます。
持ち主に無視され『何を言っても誰にも届かない』
と悲しむ《人形》に凛は
『あなたの声、(私には)ちゃんと聞こえてるよ』
と伝えます。きっと《人形》の気持ちは少しだけ慰められたはず。

【きつねのねがいごと 2】約4P
本編前、鞘と征士郎の七夕のお話。
前回の七夕に『誕生日がほしい』と書いた鞘のために
神さま業が1日お休みのこの日を、
神さまではなく鞘自身の誕生日にしようと
誕生日オムライスを用意した征士郎。
ろうそくを吹き消した鞘に
『今年も健康でわがままを言ってくれ…』と願う征士郎。

翌年からは、誕生日練り切り、誕生日おはぎ……と
次々とリクエストを投げて甘える鞘とそれを叶える征士郎の姿。

あまりに早く失われてしまったけれど、
二人にとって幸せな日々が確かにあったんだな…
と、涙が出ました。

【トリックオアトリート!!《きつね》編。】約5P
本編後。前半はしっとりいたずら好きの鞘を思い出し、
しっとり杯を重ねる征士郎、そこにぴんぽーんとチャイムの音。
玄関に出るとそこには凛と颯太の姿が…。
仮装に見えるだろうと、耳もしっぽも丸出しの凛に目を剥く征士郎。
お菓子でもてなし、
『夜が明ける前に(誰かに見つからないうちに)帰ってくれ』
と頼む征士郎なのでしたw

【きつねの嫁入り】約11P
本編直前、鞘の体調も大分悪くなっている時期、まだ凛は来ていません。
鞘と征士郎の交互視点。

恐らく頻繁に体調を崩してるのでしょう、
『今度も熱が下がった…』と安堵している鞘が切ない。
鞘のために霧雨の中、紫陽花を摘みに外に出た征士郎。
征士郎がゆっくりと傘を回す様子が好きな鞘が
『あと何回、見られるでしょうか……』
と拝殿の格子越しにその姿を愛おしげに眺めます。

外に出られない鞘は傘を使ったことが無いのですが、
一度傘を差してみたいという鞘の願いを叶えるため、
二人で拝殿に向かい、鞘は征士郎の傘を差してみます。

そして、拝殿の外で天幕を張り巡らせての神事が行われた日。
征士郎に尽くされ、色々な体験をさせてもらったと記憶を噛み締める鞘。

神事が終わり、征士郎が鞘に
『おまえの傘だ』と紅殻色の和傘を差し出します。
使える機会はおそらく来ないという意味で贅沢な美しい傘。
いたたまれないけれど嬉しくて、鞘が傘を開いてみると
ちょうどそこへ天気雨……。

天気雨の別称は『きつねの嫁入り』
気の利いた空の冗談に『花嫁道中と洒落込むか』と
傘を開いたままの鞘を抱き上げ、二人で新しい傘の中に入って
拝殿裏までの短い幕内の道を歩いた思い出……。

そして現在。
荷物の整理をしていてあの時の赤い傘を見つけた征士郎は
一緒にいた凛にその傘をあげます。
鞘の本当の願いを凛が叶えてくれるだろうから、
それを空から鞘が眺めるだろうから……と。

凛の手放しの幸せと、鞘の限られた幸せが好対照で、
だからと言って、鞘の幸せが凛の幸せに比べて劣るということではなく
それぞれが精一杯幸せだというところが「千流」は胸を打ちます。

0

きつね歳時記②

『千流のねがい』の番外編同人誌です。

『金の歳時記』第二弾といったところですね。短編集です。


『にじんだ星』

商業誌本編よりさらに前。
征士郎が鞘に出逢ってすぐ、まだ全然うまく行っていない頃です。

ゴメンナサイ、征士郎×鞘はどうも好みじゃないのでまったく気乗りしません・・・

ラストで、凜がやって来ます。


『きこえるよ』

研究所で《人形》相手のカウンセラーを務める凜。

『聞くだけしかできない』と思い悩む凜と、それでいいと言う颯太。

凜が凜としてできることは・・・

そして、甘くて可愛い(けど薄くはない)H。


『きつねのねがいごと2』

『きつねの願いごと』(『金の歳時記』収録)と同じく七夕です。

ただし、こちらは(本編以前の)征士郎と鞘。


『トリックオアトリート!!《きつね》編』

ハロウィンSSです。

亡き鞘を偲ぶ征士郎のもとに、(なんとも適当な)仮装をして『トリックオアトリート!』とやって来たのはもちろん・・・


表題作。

征士郎と鞘と、鞘の傘。


全体的に、ほのぼのでしんみりの短編集です。
前作(『金の歳時記』)は、メインの颯太×凜が大半でしたが、こちらは征士郎×鞘が結構目立ってます。

正直なところ、私は征士郎×鞘CPにはまったく興味ないので(というかむしろかなり苦手なので)、そちらが入ってくると途端に気が逸れてしまうんです。なので、トータルではいまひとつかなあ。
颯太と凜はホントに好きなんですけどね。本編もね。

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