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宝物はぜんぶここにある

takaramono wa zenbu koko ni aru

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表題作宝物はぜんぶここにある

役者 チャコ /子連れ 榊 /親友 橘高
童話作家 轟信太郎(藤木心多郎)

その他の収録作品

  • 2年後のぼくら

あらすじ

行方不明の父親を探すため旅に出る母親。見知らぬ男の家にあずけられた旬之介。
その男は恋愛に奔放な児童文学作家・轟信太郎。
旬之介は書生になり信太郎の世話をすることになった。
轟家にやってくる信太郎をとりまく不器用な男たち…。
信太郎の高校の同級生であり担当編集の橘高。劇団俳優で現在の信太郎の恋人・チャコ。バツイチ子持ち、信太郎の大ファンで突然家を訪ねてきた榊。そして、旬之介の同級生、ワケあり女装男子の美少年・春威。
ひとつ屋根の下で寝食を共にしたり、時には身体を重ねたり、傷つけたり傷つけられたり…。
恋愛、家族愛、友愛――すべての愛がつまったキラキラ輝く宝物を探すそれぞれのラブストーリー。

(出版社より)

作品情報

作品名
宝物はぜんぶここにある
著者
糸井のぞ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
リブレ
レーベル
シトロンコミックス
シリーズ
コイノヒ
発売日
ISBN
9784799712085
4.2

(33)

(15)

萌々

(13)

(3)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
10
得点
138
評価数
33
平均
4.2 / 5
神率
45.5%

レビュー投稿数10

人は色々な絆と共に生きているんだな、と。

あー、そうくるか!というBLっぽくないラスト。
でも読後感は晴れやかで幸せで納得できて、
そして妙にリアルもあって。
よかった、しみじみと、よかった。
期待以上に涙線を突かれた。


愛に飢えた作家・シンタローが
周囲の人々と関わる中で、
悩み・傷つき・自分を認め、
その全ての関係が大切なんだと受け入れてく話。
…簡単に言うとそうなんだけども、
ただ描かれる関係性が多い分、
説明やレビューがとても難しい。

シンタローと高校の同級生・橘高。
シンタローと恋人・チャコ。
シンタローとそのファン・榊。
シンタローと最愛の母。過去の恋人。
そしてシンタローと書生・旬之介。
それぞれに「肩書き」はあるけれど、
シンタローにとってその相手がどういう存在か、
自分の認識と同じレベルで誰かにそれを
伝えるのはきっと難しいだろう。
でもそのどれもが大切なのは真実だ。
それって読者の誰もが共感できる部分だと思う。
これはそういう、曖昧で大切な絆のお話だ。


作者・糸井のぞさんの
キャラ設定・表現方法の巧みさも
この物語に暖かい印象を与えている一因だろう。
通常のマンガに比べて登場人物が多いのに
どのキャラも本当に愛おしさがあって憎めない。
カバー下の、のぞさんによる人物紹介には、
「うんうん」と思わず頷いてしまった。
ただ、シンタローの性愛に自由奔放な設定が
ダメな人っているかもしれないな、とは思いました。
でもそれこそがこの物語の鍵であり、
リアルさでもある。
物語全体に漂うのは、暖かさと切なさ。
恋愛以外の側面が描かれるBLって結構好き、
っていう方にはオススメしたい。
読後じんわりとくる「良作だった…」という感覚が
とても気持ちが良かったんだよなぁ…。


描き下ろしは旬と春威を中心にした2年後。
ほんの2Pの4コマ連作で
小さいエピながら、かなりきゅん!
15年後の旬之介と春威とぽっぽちゃんのお話も
ぜひ読んでみたい。

7

影を追っても逃げられる

家出した父を連れ戻すと言って、家を出て行った母。
母が連れてきた弟。
恋人3人と半同居する兄は、作家。
兄の宝物は、出会った大事な人達。

大事なもの=父を、何時までも探しに外に出る、諦めない母。
出会った人達を宝物だ、母;ひとみに心の中で呟く兄は家守。
・・・母は、陰を追いかけても、影も逃げていくことに気づく必要がありそう。追い付けない。
追いかけたいものが有る間は、それが生きがいになっているということなのかな。
余韻ある終り方でした。

0

読後感はほっこり

なんでこの作品見逃してたのか!
書生視点なんだけど、途中からシンタローが主役なこのに気づく。
あくまでも書生は語り部といったところか。
その書生、旬之助と春威の大人になってからの話が読みたい!って思いながらあとがき読んでびっくり。自分の記憶力のなさに。
『コイノヒ』に載ってたとは。でもきっとそれは子供の頃の話かな。どっちにしろ覚えてない・・・。

無責任な父親と身勝手な母親のせいで、誰かにおいて行かれる恐怖や喪失感を常に抱えているシンタローがみつけた宝物。
それが最後に見れてよかった。

2

苦手要素は多いけど

BLとしてではなく、人間ドラマとして読みました。
あまりにいろいろな感情が入り混じっていて、ぶつかり合いそうでぶつからないままだったり、BLという枠で括ってしまうには大きすぎる作品だと思います。
糸井のぞさんの作品っていつもそうですよね。
BLの切なさではない、人間としての切なさ、やるせなさ、もどかしさをすごく丁寧に描き出せる作家さん。

母に置いていかれたため、作家の信太郎の家に身を寄せる旬之介。
作家を「先生」と呼び、自らの身分は「書生」。
そして先生の家にはもうひとり、同居人がいて…。

という始まりです。
やっぱりストーリーテリングの妙と言うのでしょうか。手の内の見せ方が上手い!
先生と旬之介の関係には衝撃が走りました。そうだったのか!じゃあひとみさんというのは…と絡まった糸がほどける感じ。旅館の写真もあのときはよく分からなかったけれど、そういうことか、と。いくつも分からないまま読み進めてきたものが、ひとつの事実が分かった瞬間にぱっと全部つながるのです。すごい。素晴らしい。

ただ先生の生き様はよく分かりませんでした。「一番欲しいものは手に入らない」と言っていた高校時代、欲しいものはたったひとりだったのに、最終的にはそのひとに求めたものを分散化してしまっただけのような。橘高が不能でなければきっと橘高だけを求めたかもしれませんね。ただその場合、橘高は深雪との間に子供もいるような、いわゆる完全な関係を築けるわけで、そうなると話が全く変わってしまうのだなあ。
母親が欲したのはたった1人、父親だけ。だけど先生には最高の友人である橘高、恋人のチャコ、愛人(と言っていいのかな?)の榊、子供のような存在でもある旬之介がいる。1人を追い求めてなお旅を続ける生き方と、4人に囲まれてしあわせに暮らす生き方の対比。
それぞれの宝物。どちらがしあわせなのかは本人次第、というところでしょうか。

でもビッチは受け付けないので何とも厳しかったです。榊が絡んでくるのが一番いやでした。ぽっぽちゃんを置いて逃避行とか、旬之介が殴ってくれたから少しはスッとしたけれど、本当にほんのちょっと。わたし自ら殴りたかった!いや、むしろ某アイドルの握手会ばりに、この本を購入した全員で「榊殴り会」を開催したいほど。チケットは購入した本で。

先生は苦手ながらも、先生が橘高の娘になりたい、と言ったシーンはすごく胸に沁みました。「恋人」という立場では、マスターを引き留めることはできなかった。「息子」という立場では、母親を引き留めることができなかった。自分が娘だったら、娘が欲しかった父親を引き留められたかもしれない。目の前でぽっぽちゃんという「娘」のために戻った榊を見ていただけに、橘高を引き留めておきたい気持ちの強さが痛いほどに伝わってきました。

でもなあ、やっぱり先生の生き方は嫌なんだよなあ。
せめて恋をする相手と性欲を満たす相手を統一してもらえないものかと願ってしまう。チャコと榊がそれでいいならいいのですが、何だかなあと思ってしまう。
半分同じ血を継いでいる(ヒトミさんは後妻だと思っているのですが、合ってますか?)旬之介はきっとたったひとつの宝物をいつか手にするのだろうけど(あらすじでは30才前後と書いてありましたね。長い…)、わたしはこういう生き方の方がやっぱりいいなと思えました。

春威の短編も読み直したら出てましたね、藤木くん!あの子がこの子か、とちょっと感慨深かったです。

2

一筋縄ではいかない

ぐるっと回って、すとんと落ち着いた。
そんな感じの作品でした。
途中参加の榊だけが、新しく仲間入りしたというくらいです。

チャコと別れて橘高や榊とくっつくわけでもなし。
橘高はかけがえのない人。でも恋人じゃない。
橘高、チャコ、榊、旬之助。信太郎にとっては、みんなそれぞれ違う別の立ち位置というのが、個人的に共感できました。

この人、一人が傍にいてくれたら自分は生きていけるという猪突猛進的なものも良いですが、別々の人間なのだから、自分にとってもそれぞれ別々の大切な存在で順位をつけるものでないというスタイルも素敵です。ある意味我儘ともいえるのですけれど。

最後に出てきたヒトミがまた良かったですねぇ。ぜひ手にとって欲しいです。

それにしても…表紙裏を読むまで春威を思い出しませんでした。「コイノヒ」を先に読んでいたのに(汗)

1

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