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表題作神和ぎの我が手取らすも

教団に取材に来た歴史雑誌の編集 太田
教祖のお世話をする神和ぎ 妙泉薫・23歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

「神和ぎ」として教祖を癒す馨。取材に訪れた太田と出会い、なぜか馨に興味を示す彼に戸惑うが、あたたかなその腕に涙がこぼれて…。
宗教団体に勤める馨は、「神和ぎ」として教祖を癒す役割を担っていた。務めを果たせなければ、教祖の側近・葛城に折檻される。身寄りのない馨を引き取ってくれた教祖への恩返し、そう思ってきたが、務めの度に心が打ちのめされるようだった。そんな時、取材に訪れた太田と出会う。なぜか馨に興味を示す彼に戸惑うが、あたたかな感情で包み込むようなその腕に、涙がこぼれて……。

(出版社より)

作品情報

作品名
神和ぎの我が手取らすも
著者
水原とほる 
イラスト
小路龍流 
媒体
小説
出版社
プランタン出版
レーベル
プラチナ文庫
発売日
ISBN
9784829625408
3.7

(12)

(3)

萌々

(3)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
45
評価数
12
平均
3.7 / 5
神率
25%

レビュー投稿数2

洗脳から解放され、恋を知る

宗教もので、若干サスペンスも感じる流れの作品で、エロは少な目、じっくり読みたい
そんな雰囲気のストーリー構成でした。

主人公の受け様は、母子家庭で育ち、父親が誰かも解らぬ環境で育ち、住んでいた町では
親子に対する世間の風況は優しいものでは無かった。
それは母親が誰の子供かもわからぬ相手の子を身ごもったことから始まり、
母親はそんな中で宗教に救いを求め、受け様も必然的に母親と共にその流れに従う。
母親からの教祖様は素晴らしい、救いは宗教だと言われ続け、疑問を持たなかったと言えば
嘘になるが、一心に信仰する母親の為に受け様も教えを守り続ける。
そして受け様が高校生になったとき、母親が突然亡くなり、受け様は身よりが母以外
無かったことから、教祖から保護されながら、母の代わりに「神和ぎ」としての
役目をする事になりますが、それは教祖の欲望を受け止める役目で、更に教団内で
事務方の長を務める男に、教祖様の為にと言う名目でしつけと言う調教や折檻をされる。

しかし、それが自分に与えられた役目だと受け様は考える事を放棄したように過ごす。
そんな生活が何年も続き、受け様は23才になり、受け様は「神和ぎ」以外に事務仕事も
するようになった時に、ある雑誌の取材を教団が受ける事になり、担当になる。
その雑誌記者と話すうちに、いつしか受け様は自分が教団に捕らわれているように感じ
記者の攻め様に助けたいと言われ、心が動き、何度か会ううちに、心まで惹かれて
いくようになるのです。
しかし、それに気が付いた事務方の長に監禁されるように、凌辱され外との一切の
連絡を取る事が出来ない状態になり、自分が知らないうちにクスリの影響を受け、
洗脳されている事実に気づき、教団が陰でしている事を知ってしまう。

記者の攻め様が、実はなんて展開で、受け様を救い出す為に動いてくれて、
事件は解決しながら、教団の洗脳が解けて、自由になった受け様。
でもそれはたった一人での寂しい生活の始まりでもあるのです。
もちろんラストは円満解決、攻め様とは教団から逃げる事が出来て、縁が切れてしまったと
思っていた受け様にとって、明るい未来が待っている内容です。
二人でラブラブと言うよりは、いつの間にか陰謀に巻き込まれ、洗脳と言う檻に入れられ
その呪縛から解き放たれ、初めて恋を知るようなストーリーでした。

6

洗脳からの開放と自我の目覚め

最初一読したときに、うう~ん、、、これが恋愛までいってしまうのは?とか、受けちゃんの無垢さとか、宗教団体が舞台であることとか、そんなこだわりがひっかかって少し素直に受け取れなかったので寝かせてみました。
しかし、じっくり読み始めるとなかなかに興味深いことが分かりました。

母親が未婚で誰ともわからない男の子供を産んだために苦労して主人公・薫を育て、宗教にのめり込み、その教団に世話されて育ってきた過去。
母親の突然の死後も、教団が世話をしてくれて恩義に感じている部分。
ゆえに、教祖の身の回りの世話を始め伽もせねばならないことを、苦痛に感じながらもこの団体から逃れられないでいる気持ち。
自分に外の世界を見せ、自分自身の気持ちの迷いを明確にしてくれた雑誌の記者だという太田との出会い。
その後の転換となる、教団の悪行の露見と薫の開放。

そういった流れで進む物語ですが、普通の巫女モノとは宗教団体が舞台であるがゆえにちょっと違いますが、半分贄のような存在であるのでその点は間々ある設定か。
扱いとしてはよくある宗教団体が悪いことをしているという点はよくあるのですが、
以前別の宗教団体モノ(それは悪ではない)を読んだ時は、どれもすっごくコケてしまったので、何げに危うい設定の先入観があったかもしれません。

しかし、この基本設定の部分が実に興味深いです。
主人公の属する宗教団体は大物主神を祀る団体なのですが、この云われと伝説が主人公設定に実にリンクしているのですよ♪
まず父親がわからないという設定・・・ある姫が毎夜通ってくる男の子供を孕むのですがいぶかしんだ父母がその男がどこから来るのか調べるとそれは三輪山からで途切れていた。
主人公の生い立ちと、本当の苗字が大三輪であることから、因縁を感じさせる基本の設定です。
三輪山とは、大物主神を祀る神社は別名三輪神社とも呼びます。三輪山に祀ったことからはじまるようなのですが、なにげに神の子という設定にぴったりのような。
こうした設定をふまえると、何げに教祖や教団が薫に執着する理由も、その美貌だけではなく納得できるような、気がしませんか?
また、古事記でうたわれる歌が効果的に使われて、この舞台背景にぴったりと合う雰囲気を醸しています。
そういった作りの部分で手が込んでいるな~と、さすがだなと思ってしまったのですヨ。

設定の部分で納得を得て、次は主人公たちの気持ちです。
薫は迷っています。何とかしたいと考えてはいるのですが、神和ぎにはなりたくないとおもっているのですが、どこかあきらめている。
そこへ風穴を開けたのが太田の登場。
薫にとって、初めての心を見せた人であるがゆえに彼の心の動きは何げに納得できる部分が大いにあります。
若干性質が「唐梅のつばら」の主人公に似ている感じを受けます。
太田は最初から薫に興味を示し、胡散臭い存在だとは思いましたが結末は・・・案の定です。
その彼の気持ちの変遷は、もうすでに薫を一目見たときの一目惚れがあったと片付けてしまうのが、ちょっぴり悔しい。

薫にとっては恋愛でも、恋愛物語というよりはタイトルにつけたような、その言葉があてはまる展開であったと思います。
主人公たちの過程よりも、世界観の奥深さに評価が萌に上がった作品です。

4

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