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キュートな茨城弁男子×まじめっ子の不器用で温かい恋愛ストーリー。
3か月連続刊行ということで!
先日、ようやっと購入し、何度も読み直して、気持ちが落ち着いたので改めてレビューを書かせていただきます。
リスペクトしてやまないララ子さんの新刊本……今回も、ちょびっと泣いたり、ほんわかした気持ちになったり、感情がぐらぐらと揺り動かされるお話の詰まった一冊でした。
「きみにうつる星」~「夜空の果てまで」
もうね、なんていうんでしょう。
恋って一筋縄じゃいかないよなあ、と思わずにはいられないです、はい。
相手を好きなだけじゃダメで、
気持ちが一方通行でもダメで、
それでも「好きだ」って想いを胸にひたすら前を向こうとする姿勢というか、勢いというか、そういうのは学生だからこそできることなのかな、と思ったり(いや、私もまだ学生ですけどもね)。
内容としましては、表題のお話が3話分で一応、ENDという形になります。でも、これって終わりというより、二人がやっと同じスタートラインに立ったとしか思えないんですよね……。
主人公の七瀬は、茨城に引っ越してきて、まあ、温度差というかね、クラスにうまくなじめないんですけど、同じクラスの沼尻に話しかけられたことがきっかけになって、やっと溶け込んでいく形になるんです。おじいちゃん子の沼尻と話しているうちに、「こいつ、ヘンだ」って思いながらも、人を気遣えるいいやつだって認識が芽生えていくんです。
ところが、まあ、色々ありまして、お互い、心に深い傷を負ってしまうんですよ。その傷を埋めあうように、1話目のラストでちゅーをすることになるわけですが、このとき、相手を「好きだ」とはっきり自覚しているのは沼尻のほうですね。ここがうまく2話目に繋がっていくので、もう、もう!読んでいてきゅんきゅんしました!
2話目では、同じクラスの女の子と七瀬の距離が近付いていくことに嫉妬しちゃう沼尻が描かれるんですけどね。なんというか、あまい!展開があますぎる!というか。嫉妬くらい、そりゃあ、誰だってするでしょう、とも思うんですけど、BLだと殊更登場人物の気持ちがピュアなものに見えてしまうというか。ただでさえ、七瀬くんはそれまで女の子と付き合っていたわけで、最初から男の子が好きって子ではないんです。不安にもなりますよね。
もしかしたら、って。
俺じゃダメかな、って、
一緒にいられないのかな、って、
相手のことを好きな分だけ、考えてしまうんでしょうね。
沼尻選手、女の子に対してあちゃー!としか言いようのない暴言を吐いてます。これ、素で言われたら私だって泣きますね。
とはいえ、そんなこんなで二人はA体験からBにCにといくんですけどね?(古い)
そうは問屋が卸さないようでして、3話目に続きます。
なんというか、BLって最近、漫画だけじゃなくて、小説だったり、ゲームだったり、媒介は違いますけどひとつのジャンルとして確立してるじゃないですか。でも、これって、本当に女の子向けというか。言い方は悪くなりますけど腐向けというかね、「女の子にとっての少女漫画」ならぬ「男の子にとっての少年漫画」にはなってないんじゃないかなあ、というか。恋愛におけるバイブルというか、そういうニュアンスのものには程遠いかな、というか。
実際問題として、BLもGLもありの世の中ですけど、親や友達を含めた人間関係の中で、誰かに理解してもらうことって、実は結構、できないことなのかな、とか。
沼尻は自分がゲイだって自覚したときに、不安になって、思わず両親に相談するんですけど、拒絶されてしまうんですよね。
私の友人にも、男の子が好きだって人がいます(もちろん、こういった公の場で私が公言してもよいと言ってくれるような、素敵な人です)。高校生のときの恋愛なんて、付き合って1か月もすれば御の字、AだのBだのくそくらえ、とりあえず彼氏(彼女)がいるだけでめっけもん、というか、そんな淡白な付き合い方をする子ばかりでして、作中に出てくる、「一緒にいるだなんて そんな約束 無責任だ」って言葉がもう、心にぐっさりと刺さったというか。ああ、そっか、そういうことだよね、と納得。
百年先のことなんて誰にも分からないけれど、だからこそ一緒にいたいと思える相手がいることは、たとえ一瞬のことでも幸せなことなんだ、と。
友人いわく、自分がゲイだと自覚すると、中々うまく恋ができないそう。臆病になってしまうようです。相手に自分の気持ちが受け入れてもらえるかどうか……まず、最初の難関がそれだからです。
七瀬だって不安がないわけじゃないんです。沼尻のことは大好きですけど、将来のことを思えばどうなるかなんてわかりません。ゲイに理解のない人を説得する方法なんて、16歳の高校生に分かるわけもないんです。
それでも、こんなふうに純粋に(あまり好きな言葉ではないんですが)相手を想える人にこそ、幸せになってもらいたいなあ、と、思わずにはいられなかったです。
あと3作載っているんですけれども、そちらのほうは是非ともご購入してからのお楽しみにしておきたいのであえてネタバレはしません!
ちょびっと痛々しい描写はありますが、それでもララ子さんの繊細なタッチで描かれるキャラクターたちは、必死に、懸命に、不器用に、恋を知って恋をする、ピュアでやさしい人たちばかりです。
来月に刊行される新刊が待ち遠しい!今後とも、要チェックの作家さんです!
小嶋ララ子さん。大好きです。
ほとんどの単行本は読みましたが、この作品が一番好きです!チルチルではララ子さんの代表作は「君とパレード」となってるのでこの作品から入る人が多いんじゃないかと思うんですが、わたしは断然「きみにうつる星」をオススメします!!
ララ子さんについての感想ですが、絵はすっごくかわいいんです。男の子の絵にしてはちょっとかわいすぎるくらいにかわいい。でもかわいいだけじゃなく表情がうまい。とくに切ない表情!!彼らの心が痛いほど伝わってきてこっちまで顔を歪めてしまいます。
そして展開のスピードが遅すぎず早すぎず、ちょうどいいのでストーリーがすっと染み込んでくる。やっぱり恋愛ものってリズムが大事だと思うんですよね、BLに限らずとも。
なにより一番のポイントなのが、台詞回しがうますぎること。言葉のチョイスが素晴らしいんです、ほんとに。台詞だけで泣けちゃう。少女漫画に近いものがあるかもしれません。
表題作の中でとくに好きな台詞を。
「底から感じるジリジリとした熱の音は まるで恋に落ちていく音のようだと思った」
「こわくないなんて嘘だ 一緒にいるだなんてそんな約束無責任だ それでもオレは オレは 沼尻の傍にいたいんだ」
これらの台詞にすごく素敵な絵が合わさると破壊力凄まじいです。
ララ子さんについて語ってしまいましたが表題作について掘り下げます。
沼尻やばいです!!!かわいい!!!(興奮)
明るく振る舞うその内側には暗いものを抱えています。
ネタバレになりますが沼尻はもともと同性愛者なんですね。それが原因で親と不仲になり、唯一好きに生きろと言ってくれていた祖父まで亡くなってしまって。
BL漫画の世界ってなぜかホモ公認だったり、本人たちはさして気にしていない様子だったりというものが多いので、こうして同性愛特有の悩みが語られているのは珍しい気がしました。
和也は和也でとても魅力的なキャラクターなのですが、わたしには沼尻のインパクトが強すぎてあんまり語れないです。すみません。(笑)
同時収録作品の「七度目のごめんね」は痛々しいお話でした。衝撃的すぎて泣いたなあ……。読み返すのを今でもちょっと躊躇うくらいにはショックを受けました。この絵柄でこんなに酷で悲しい話をかくのかと。
誰が悪いわけじゃないと思うんです。もちろんお母さんは許されないことをしたし、サトルも罪を犯してしまう。それでも、お母さんは元はトオルを無条件で愛していただろうし、ただどうにもならない感情が抑えられずおかしくなってしまった。一度崩壊すると戻ることは難しいですから、ずるずるとトオルの存在を黙殺し、そして虐待…。そんな背景があったのではないかな、と。
願わくば、サトルが釈放された後はトオルと幸せになってほしいです。
その他「恋の淡いの」「あふれたら最後」に関してはわたしはあまり印象には残らなかったかな〜という感じです。
設定が好みじゃなかったからかも。不倫とか、ハッテンバとかはあまり趣味でないので…。
ララ子さん、これからも期待しています。
かわいらしい絵と繊細なお話と台詞回し、全てが合わさってララ子さん特有の世界観がつくられていて、それがドンピシャにわたしの好みなので心酔せざるを得ないです。
かわいらしい絵柄が好みで、柔らかくどこか切ないお話が好きな方でしたらきっとララ子さんの虜になると思います!
ララ子さんの単行本の中では一番好きなお話「きみにうつる星」
高校生らしさの中に潜む、男同士であるが故に理解してもらえないという苦しみ。しかもそれが自分の親だなんて…。しかし最後の七瀬のお父さんの言葉に読者としては救われました。まだ望みはあるよ、諦めないで、負けないで。そんな気持ちになって涙してしまいました。
自分は普段ならエロ多めの本を好む傾向にあるのですが、ララ子さんのお話に限ってはエロよりもストーリー重視で読みたいですね。ストーリー重視派の方にはぜひオススメしたいです。
他の方がたくさん作品自体についてレビューしてくださっているので、個人的に気に入った作品についてレビューします。
ネタバレなので注意してくださいね。
真ん中あたりにある、「七度目のごめんね」。
これをはじめて読んだ日は衝撃でどきどきしっぱなしでした。
サトルとトオル、双子のお話です。
トオルは吃音症でどもったり、うまく感情を伝えられなかったりで、結局は家にこもってしまいます。
そんなトオルを家から出して、ふたりで暮らそうとサトルは進学せずに働くことを決めるぐらい、トオルのことが大事なサトル。
でもある夜、トオルと母のひどい場面を見てしまったサトルは母を殴って警察に入れられてしまいます。
トオルを守ろうとしたのに、サトルのために法廷で全て話すよ、とかかれた手紙。
サトルはどれぐらい泣いたんだろうね。
何年ぐらいでサトルはトオルのもとへ帰れるんだろう。
今は無事に会えたのかな、そんなことが気になって仕方なくなる作品です。
可愛らしい絵柄がキュンキュンさせるララ子さん作品、いつもその中にとても切ない感情や状況が組み込まれていたりするのですが、今回は、チクっと痛い。
特に2本目の『7度目のごめんね』はバッドエンド気味のとても悲しい展開が待っているので、その後の2本も救われてはいるけれど、そのラストに至るまでが痛い場面を通過するので、かわいらしさだけを見て表紙でこの本を追ってしまうと、中には地雷を踏むことになる人がありうると思うので、ご用心召され。
しかし、自分は、こういう悲しさや切なさもララ子作品の特徴だと思っています。
表題は、都会から田舎に越してきて毎日がつまらない高校生の主人公・和也に、親しく話しかけてくる同級生がいた。
彼、沼尻はおじいちゃんが大好きでおじいちゃん子で育ったらしい。
うっとうしいなと流していたところ、ある日沼尻が学校を休む。その祖父が亡くなったというのだ。
先生に頼まれてプリントを持参した和也に沼尻は涙を見せて、研究をしている和也の父親に頼んで死んだ人を生き返らせる薬を開発してほしいと和也に訴える。
かれの悲しみを理解した和也は、それから親しくなり、キスもする仲になるのでした。
普通ここでキュンする学園生活や恋人同士のスレ違いとか、そんなモノがあるのかな?と思うのですが、登場するのは、沼尻のマイノリティの問題です。
彼のいきなりのリアルを見せつけられて、このキュンが楽しいものだけではないことがわかるのです。
親に理解を得られなくて傷を作って登校してくる沼尻。
以前、作者さんの作品で「あの子とジュリエット」という駆け落ちをする話がありましたが、今回のほうが主人公たちが現実を突きつけられて真っ向から立ち向かっています。
これが田舎を舞台にした、田舎であるがゆえの保守的考えと、都会から来たというリベラルな考え方の違いの対比というのではないと思いますが、何もない茨木という舞台設定は、多分そういう意味合いも出しているのだと思います。
そんな切なさを含んだ作品。
まだ主人公たちは16歳。
沼尻の必死な気持ち、幸せが先にあるといいなと願いつつ。。。
【7度目のごめんね】
サトルにはひきこもりの双子のあにトオルがいます。
勉強ができて進学を進められているサトルは、卒業したら就職して自立してトオルと二人で暮らすのを目標にしています。それには深刻な理由が。
母親のトオルへの育児放棄。サトルへの性的虐待。彼等が置かれた状況はとても悲惨です。
なのにトオルを守ろうと必死なサトルの姿を見たトオルは。
実際にありそうな話で、でも目を背けたくないお話です。
萌えとは違う次元のララ子さんの秀作だと思います。
【恋の淡いの】
自分がいないと何もできない、そう思っていた幼馴染みの佐伯は、教師と付き合って学内でエッチをしていた。
百合川はそれを見て佐伯に問いただすと否定もせず、しかし教師は遊びだといい。
それが学内に知れ渡ったとき教師は言い逃れをし、佐伯は裏切られる。
淡い純真な恋心が弄ばれて傷つくお話なんだけど、百合川はきっともっと彼をしっかり守ってあげるに違いないと思うのです。
【あふれたら最後】
東京漫画者の女装男子のアンソロに載っていた作品ですね。
一度関係をもってすっかり彼に熱をあげ、それ以来出会ったハッテンバで彼を健気に待っている友人の瀬川。
オカマとの争いもあれば、無体なセックスもあり、ボロ雑巾のように扱われる瀬川だが、痛い目に合わないと、自分の目で確かめないと実感できない、恋の必死さの話だったと思うのです。
この表題外の登場人物たち、みな不器用に生き過ぎるよ!
でも、不思議とそこに怒りはありません。彼等の必死が伝わってくるからです。
それはきっと誰かがきっと見ている。
誰にでも、きっと自分だけの人が現れる、そんな話ばかりだったのかな?という気がしないでもないようなー。