• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作恋をするということ

月浦賢治・モテるが振られてばかりの経済学部の大学生
名波呂久・ブツ録りのフリーランスカメラマン

その他の収録作品

  • 四月 玄鳥至 つばめきたる
  • 八月 大雨時行 たいうときどきふる
  • 十月 水始涸 みずはじめてかるる
  • 十一月 金盞香 きんせんかさく
  • あとがき
  • ぶうたん、かく語りき

あらすじ

大学生の月浦くんとカメラマンの呂久さん。年齢も人生観も違う二人が出会い、季節の移ろいと共に心の距離を縮めていくが……?

(出版社より)

作品情報

作品名
恋をするということ
著者
凪良ゆう 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
幻冬舎ルチル文庫
発売日
ISBN
9784344827035
3.5

(67)

(13)

萌々

(28)

(17)

中立

(3)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
16
得点
231
評価数
67
平均
3.5 / 5
神率
19.4%

レビュー投稿数16

大好きです!

大好きなお話で、もう何度読み返したか分かりません。

居酒屋の息子で大学生の月浦くん(攻め)と、お客さんの呂久(受け)さんのお話。
私が大好きな、“攻めが受けを大好きで強引に迫る”系のお話です。

月浦くんと呂久さんが、お互いに「いい人だな」「いい子だな」と、暖かい気持ちで接しているのがひしひしと伝わって来ます。
説明調の文章は全くなくて、ひとつひとつの会話や言動がとても大切に書かれているので、この可愛さには「くん」「さん」という表記の仕方はなじんでいると思えました。

私は呂久さんのキャラクターが大好きです。
叶わない恋をしているとか、仕事に対して真摯なあまり行き詰る感じとか、信頼していた(元)彼に突き放されてしまう様子とか、月浦くんの女友達にパシリにされてちょっとしょんぼりな感じとか(でもこっそり可愛い反撃に出るのはツボでした☆)、どのエピソードも健気で可哀想で可愛くて、呂久さんの、優しいんだけどいつも損な役回り担当、という性格をよく表現していると思います。

だけど、月浦くんにきちんと説教も出来るような、真直ぐ生きてる大人です。
呂久さんが、幸せになることを祈りながら読み進めました。

そしてそんな彼を満たすのは、居酒屋「つきうら」の「しあわせ丼」。
表紙の絵に描かれていますが、これを文章で読むと本当に、お醤油とニンニクと脂の香りが漂って来そうな臨場感があり、私も「つきうら」に行きたい!と思ってしまいます。
草食男子な呂久さんが、脂たっぷりの肉どんぶりが好きっていうのも可愛い☆

呂久さんの元カレの奥田さんと月浦くんが、呂久さんのいないところでコソコソ親しくなっているのも可笑しかった。
奥田さんは豪胆すぎる人物で、核心を突いた台詞が多いのですが、言動がいちいち芝居がかっていて、憎めないキャラ。
そしてお互いが「呂久さんの一番の理解者は自分」と自負しているのがまた面白いんです。

それから、月浦くんの病気のお父さんと、支える家族の姿が美しいと思いました。
中盤以降は、お父さんの容体や、月浦くんの就職、呂久さんとの今後、そして呂久さん自身も壁にぶちあたり、試練が続きます。
日常的なテーマでありながら、それに対する二人それぞれの向き合い方はとても真剣で美しく、ひとつひとつを確実に乗り越えて行くさまは、読んでいて胸がいっぱいなりました。
ラスト付近の、月明かりの下で、池に落っこちた状態のままでのキスシーンは、彼ららしい優しさに満ち溢れ、とても暖かい気持ちになる名場面です。

ただ、呂久さんをパシリに使いまくった月浦くんの女友達と、スイーツ脳丸出しの元カノは、もっと何か、キツイ制裁があってもいいんじゃないかな~と思ってしまいました☆

猫のぶうたんが、いつも鼻をぶうぶう鳴らしているのも可愛いかった!
猫はちょっとぶちゃいくなくらいが可愛いですね。
ぶうたんを抱きしめて眠ってしまう呂久さんも、同じくらい可愛かったです。

心が暖かく満たされる、大好きな1冊です。
きっとこれからも何度も読み返すと思います。

6

ほのぼの、優しいお話です。

作家買いです。いつもの凪良作品と少し毛色の変わったお話だな、と感じました。特別事件が起こるわけでもなく、出てくる登場人物たちもどこにでもいそうな、ごくごく普通の人たち。それが凪良さんの手にかかると途端に生き生きとした、ふんわりと優しいストーリーになってしまう。さすがだなあ、と感心します。

特に受けの呂久さんがとても好き。ゲイであることから辛い経験もしたことがあるのに、それを周りに気づかれないように配慮のできる優しい青年で、かといってやられっぱなしでもなく、ちゃっかり、こそっと仕返しをしてしまうところもお茶目。
自分の仕事に対していろいろ思うところがありながらも一本筋の通った思いをきちんと思っているところも良い。
草食系男子のような風体でありながら食事はこってり油ものが好きっていうのも意外性があってよかった。
仕事に対しても、自分の性癖に対しても、引け目を感じるところは数多くあれど、かといって卑屈にもならずに淡々と受け止めることのできるナイスガイでした。

一方攻めの月浦くんも可愛かったです。年上が好みで、初めは自分の父親に恋愛感情を持っていた呂久さんを振り向かせたくて一生懸命で。
思い込んだら一直線なところが年齢相応で、呂久さんがキュンキュンしちゃうのも分かる好青年でした。

呂久さんの最低な元カレが「あいのかたち」に出てきた劇団・裏窓の奥田さんだったというのがまたよかった。やっぱりあの人、独特な世界観をお持ちだったんですねえ。奥田さんに振り回される呂久さんと月浦くんに思わず笑ってしまいました。

最後のぶうたんのSSもとても良い。月浦くんと呂久さんを取り囲む、優しい世界にホッコリとする、神作品でした。

4

こそばゆい~>▽<))

え?凪良先生??
語り口調とか雰囲気が今までの作品との違い、表紙を確認してしまった程でした。
ストーリーは淡々と平たく進む「恋始めました」なほのぼのストーリーなんですが、切なさや事件もほどほどで、だからか、それも凪良先生っぽくないな~なんて思ったり、言葉に足された修飾にA.M先生みたい?猫と穏やかな受けにE.Y先生の最近作っぽい?なんて考えたりも。

大学生の月浦くん×家でやっている居酒屋つきうらの客・近所の呂久さん。
女の子にモテる月浦くん×少女のように可憐な呂久さん。
家とは違い静かな店でレポートをする月浦くんと、月浦父が大病で休業中の店の灯りが気になって覗いた呂久さんとの初対面の出会いから、2人は8才差も関係なくお互いが気になる存在になっていった。
早々に、月浦くんは、呂久さんがゲイで、且つ、優しい月浦父に仄かな思いを寄せていると知るが、自分もまた呂久さんを他の女の子達と違う目線で見ていることにも気付く。
なかなか進めない恋を、彼ら周辺の知人や仕事からまた自分の中で出てくる焦りや嫉妬が、少しづつ2人の背中を押していくストーリーでした。

文章が、月浦くんがどうした呂久さんはこう思ったって、小学校の低学年の算数の教科書→佐藤さんがリンゴを5個買って隣の田中さんに2個上げて・・みたいです。
そこら「誰目線?」とか、最初からラストまで気になったけど、もっと気になる巧みでステキな言葉やこそばゆい少女趣味のエピソードがあるからか、気になり過ぎなかったからまぁ良いか。
季節感ある章ごとのタイトルも(オリジナルなのかな?)気持ちと恋のエピソードに合っていて面白いし、時折出てくる「野菊のような人だ」や「まだあげ初めし前髪の」とかマイフェアレディのヒギンズとかにププとなったり、素直な大学生と優しいゲイの恋を楽しめました。

あと、デブ猫視点のSS「ぶうたん、かく語りき」
ぶふーぶふーと、彼の環境を語ってくれています。
優しい月浦家に拾われて良かったね。
だけどラスト、ぶうたんとミチルさんの一時に、これからのちょっとした風雲を匂わせてたから、どうなるのか続きが気になります。読みたいですね。

凪良先生の、今までの短距離走や障害物とは違う走らせ方のこの作品にも、やっぱり満足させて貰いました^^
ほのぼのです、赤くなって俯くやつです、お好きな方にお薦めです。

10

ゆっくりとじんわりと

また新しい凪良さんを読めて幸せです。
最初、本の帯をみたら「呂久さんは野菊みたいな人だ」ってあるから、「野菊の墓」なのか!?と思ったら本当にこの言葉が(笑)
本当にただゆっくりと、出会いがあって恋があって、何気ない日常の中でゆっくりと気持ちが育っていく様が展開されるだけなのに。
だけなのに、って言ってしまったら味がない。
読んでいるうちにまるで自分が、ときに月浦くんになり、ときに呂久さんになり、一緒にこの優しさと気持ちの変遷を共有して体感しているんです!涙腺まで刺激されちゃって!?

こうした一体感はどこからくるのか?と思ったらこの文章の文体ですね。
真っ先に思い出したのが橋本治の「桃尻娘」
あんな感じの書かれ方をしてるんです(うまく説明できなくてすみません、わかる方は想像してみてください・汗)
この「野菊の墓」の有名フレーズをもってくる、しかり。
時としてコピー文のようなワンフレーズが入ってみたり、
登場人物のセリフの喋り方。
すっかり忘れていた、あの青春小説の文体によく似ていました。だからなのか、自分の好きな文章なので、移入が半端なかったのね、、、と。

さておき、月浦くんのお父さんの病気を通した家族の姿もとても素敵でした。
呂久さんのでしゃばりすぎない、まさに野の花のような健気さは、多分月浦くんに群がってくる少女たちと比較しての事かもしれませんが、海のシーンで彼女たちに負けじと座席争いのジャンケンに参加する呂久さんがかわいかったり。
恋人になってから、どうやって接したらいいのか、元カレの登場に焦り、大人になりたいと、焦る月浦くんが若かったり。

どの場面を通しても、キュンを通り越したギュンがありました。
「卒業生」のコピーが”真面目にゆっくり恋をしよう”だったと思いますが、本当にこの話も真面目にゆっくりであり、この真面目にゆっくりほどキュンを催すものはないんだと、改めて感じたのでした(ま、作品の好き嫌いにもよりますがw)

最後に、月浦くんちの猫”ぶうちゃん”かわええ~の~!デブでブサな猫ほどかわいいものはないのです!・・・”ぶひ~ぶひっ”
わが家にも拾ったときあまりにブサイクでぶうちゃんと名付けた猫がwww

8

もっと早く読んでおけば良かった…!!

ああ…。これほどまでにゆっくり進む恋のお話、
不思議とじれったくなりませんでしたし
普段エロ好きなのでもしかしたら物足りないかも…?なんてのが
杞憂に終わりました!!
切ないぞ!!!
いつもの凪良さんの、ただひたすら苦しいような、
どこに救いが待っているのだろうかという不安なものが無くて、
でもきっちりきゅんとさせられて
くすっと笑えるエピソードも盛り込んでくれていました!
(個人的に床屋のおっちゃんの「さ、今日はどうするっち」がツボりました)

月浦くん、という表記に最初戸惑いつつ、だんだん慣れてきて
そう呼ぶお話全体がすごく優しく感じられました。
月浦くんもご両親も温かくて、
呂久さんの幸せとは言いえない過去が少しずつ相殺されて…。

呂久さんの元カレの奥田も、嫌なヤツじゃなくて憎めない存在だったし
月浦くんの年下故の悩みが可愛らしくて(本人は真剣すぎるけど)
こういう恋愛って素敵だな、と素直に思えました。

最後、今まで呂久さんがしたくても出来なかった事をしようと
提案してくれる月浦くん。
ただひたすらに呂久さんを思いやってくれて涙がこぼれました。

どうしたって私は凪良さん作品に泣かされてしまうのだなと
再認識させられたのですw

脂いっぱいの“しあわせ丼”もおひとり様の焼肉も
…食べたいけど恐ろし過ぎる!!
呂久さんだから許されるんじゃないか!?

とにもかくにも、大変幸せな気分に浸れました。
ずっとえっちぃ雰囲気が無かったので
ラスト、多少がっつく月浦くんに悶えるし、
恥ずかしがりながら気持ち良さげな呂久さんにノックアウト!

ぶうたんは……。犬で言えばわさお系なんだろうかw

あー、良い作品を読ませていただきました♪

5

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP