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気鋭の実力派・恋煩シビトのヤンキー三角関係
「前に何かの雑誌で見かけた漫画、誰の何て作品なんだろう。読みたいな」。
ふと過ぎる疑問に『これかもしれないよ』と手を差し伸べてくれた友人に心底感謝。
少ない情報と曖昧な記憶でありながら、ピンポイントでこの作品だと知れたとき、異常な鳥肌が立ちました。
単にこの作品と再会できただけじゃなく、何とも言えない感情が湧き上がる感動にも。
中学からの仲間。多感な時期の高校生。
幼馴染を好きな馳男。
はじめての恋人が出来た次郎。
馳男の視線の雰囲気に、自分と同じ空気を感じ取ったハチ。
はじめ、この3人によるドロドロの三角関係なのかと思っていたが、そうではなく拍子抜けしたのが第一印象。
馳男を中心としつつ、次郎、ハチ目線でも話が進み、時折すんなりと解釈できないときがあったのだが、その為何度も読み返した。
その『読み返し』が、徐々に効いてくるのだ。
愛する男に彼女ができ、ずっと隣に居たはずのポジションをいとも簡単に奪われた馳男。
本当は俺の場所だったのに。
お前じゃなく俺だったのに。
幼馴染という特権が、馳男のココロに揺さぶりをかける。
なぜなら次郎こそが、『幼馴染』という言葉にしがみついているのを分かっていたから。
馳男に肩入れをすると、次郎がいやらしい男に見えなくもないが、実はシンプルで幼いバカなだけだった。
自分以外の人間と目の前で仲良くなっていくことに、ヤダヤダと駄々をこねているだけ。
それをハチは「ずるい」と言うが、何の事はなく、次郎の立場で見ると、何もズルくはなかった。単なる幼稚な考えなだけなのだから。
ハチは早い段階で自身の性癖を分かっていたし、馳男にトキメキを感じたし、そして馳男の視線の先に気付き――と、3人の中では1番細い光に希望を見出した男なのではないかなと思う。
だからこそ、どんな手を使ってでも馳男のココロの中に潜り込もうとしたんだろう、と。
それが最初は恋じゃなくたっていい。
ただ、気になるようにさせるだけでいい。
それさえできれば、あとはこっちのもの。
どう考えたって、もう最初から勝負は見えていたのかもしれない。
馳男は次郎に彼女が出来て、いやで、焦って、振り切ってでも本当は自分の場所を取り戻したかった。
ハチは、ただひたすら静かに静かに、馳男の気持ちの中に自分を沁み込ませて、僅かな希望を持ち続けた。
心がちりちりして熱くなるのも、燃えるのも焦がれるのも散るのもいいけれど。
地に足つけて、両手広げて堕ちて来るのを待つ。
そんなのも恋なのだと、改めて気付く1冊。
体の関係から始まった馳男とハチだけれど、改めて彼を見た時に感じた
「恥ずかしい」
こそ、彼に堕ちた証拠なのだと思う。
自分だけじゃなく、相手を自然と思い、会いたくなること。
どれが愛で恋で友情か。
『三角関係』という言葉は私自身の中ではちょっと当てはまらない言葉かな、としっくりは来なかったのだけれど、それすら吹き飛ばす余韻に頭がぼうっとします。
正直、萌えとは違うのだけれど。
読めば読むほど言葉では言い表せられない気持ちに包まれました。
神以外、考えられません。
真っ先に目に飛び込んでくるタイトルと、独特の絵柄で描かれた人物。すっきりとシンプルな表紙に銀色の帯。
装丁に一目惚れでした。それがシビト先生の作品だと判った瞬間、気になって仕方が無かったのですが、購入するかは迷いました。今までの短編集で、面白いと思うことはあれど「萌え」を感じたことが無かったからです。
ですが今回は自分の直感を信じて正解でした。とても良かったです。
幼なじみに彼女ができ、それに嫉妬する主人公に気付いた友人が「なぐさめてやろう」と押し倒してきて…というよくある(?)設定なのですが、それ以上に予測のつかない展開と魅力的なキャラクターが、本書を「ありがち」で終わらせていません。
独占欲や狡さを通して三角関係は変化し、主人公は自分の「本性」に気付きます。その過程がゆっくり丁寧に描かれているので、無理なく登場人物の感情の揺れや変化を感じ取ることができました。
また、先生は男子の何気ないやり取りを描くのがとても上手い。ヘラヘラしててバカっぽくて、本人たちでさえすぐ忘れてしまうような、くだらない会話や距離感。私たち女子には絶対知りえない空間を、そしてそこから生まれる萌えを、見事に描き出してくれています。
この憧れにも似たうずうずした気持ち。次郎の彼女のさとみちゃんが「いいなあ」と繰り返すのもわかる気がします。
シビト先生自身が「今一番萌えると思っている話を素直に」と仰っているように、この作品は先生の真骨頂だと思います。そして先生が力を生かしきれるのも、短編ではなく長編なのではないかと感じました。
またひとり、先が楽しみな作家さんが増えました。on BLUEでの次回作にも期待しています。
シビトさんのなんともいえない感じ、あの独特の世界観が続き物で読めます!
好きとか嫌いとかそういう言葉じゃ表現できないことをじわじわ読めます。
三角関係なんだけどわかりにくい、高校生だけどカラッとしない。
でもそれがすごく癖になる作品です!
好き嫌いのわかれそうな作品でもあるのかな…
受けとか攻めとかそういうわかりやすい目印がないんですよね(挿入でわかりますがw)
その関係性にも魅力を感じます。
どろどろしてはいるんだけど、BLだからかそこまで重くない。
そして最後はハッピーエンド(とは違うかな?でも暗い終わりじゃないんです)のが良い。
なかなかうまくいかなくて悩んでる馳男(主人公)がすき。
ハチ(攻)がいて良かったね~…って私は思います。
恋情と友情、独占欲と性欲。
そんなキーワードが高校生という囲いの中でネットリサワヤカに描かれていました。
ノンケだけどお前のことは好きだとか、お前は俺のものだから友情の延長線上でセックスもして恋人同士になるとか、ってのはBLでよくある話だけどいつもそんな簡単な話ではなくて。
独占欲なんて恋情でも友情でも抱く、性欲だって恋情でも友情でも抱く。
恋情と友情に明確な境目なんかないんだろうな。
性嗜好が同性なら特に。
好き合うだけでも恋人同士じゃないし、セックスするだけでも恋人同士じゃない。
付き合うとか恋人同士になるとかっていうのは単に二人の周りにその境目をあえてひくってだけのことなのかもしれない。
結局馳男はハチを好きになって恋人同士になったけど、次郎への気持ちは単なる独占欲だったのか?
馳男の初恋は間違いなく次郎だったけど恋人になったのはハチ、というただそれだけのこと、だと思います。
今後、馳男もハチもまた誰かに恋情や友情や性欲や独占欲を抱くことがあるでしょう。(あと次郎も)
でも馳男とハチの二人でひいた境目を大事にしていって欲しいなと思いました。(一応ついでに次郎も)
蛇足
この話最後まで誰と誰がくっつくのかドキドキしながら読みました。
次郎なのか!?ハチなのか!?と。
でも読み返すとこりゃハチだわと思うんです。
第一話のモノローグが次郎視点だからなのかな。
一話では次郎はさとみちゃんを思うより強く馳男に対して独占欲を抱いていてるし、馳男は次郎が大好きなのがわかる。
そしてハチはほぼ空気w
くっつかない当て馬が一話のモノローグって……!
うまい!うまい構成です。
そして全編通してこの話モノローグがとてもうまいです。
この話のモノローグは誰視点なのか考えながらモノローグだけ読んでもおもしろい。
!とか!?の使い方一つに感動しました。
これぞ神!って作品でした!
恋煩シビトさん初読みです。
予想外に良かった。すごく。
とても仲の良かった友達同士がふとしたきっかけで気になる存在になる所が非常にうまく描けているのと、そうなるきっかけを作った次郎の性格が最後まで肝だったってとこが良いですね。ハチもふとしたきっかけでそうなった一人だけど、馳男を振り向かせようとする行動の仕方が独特というか、狡いけど色っぽさがある。なんというか、こんなに深い三角関係を見たことがないですね(正確には四角関係だけど)。漫画的ではないリアルな人間模様って感じでした。見方によっては終わり方がすっきりしないと思う方もいるかもしれません。馳男が強く想っていた次郎と結ばれないからですね。それに加え、次郎は彼女がいるのに馳男とハチの仲に嫉妬し出すので(そこがおもしろいんですけど)。次郎は結局友情に関してただ独占欲の強い男だった、という流れで最後は落ち着いているように見えますが、そう見せかけて馳男に対する密かな感情を覗かせる場面があり、真意がわからないところがいい味出してます。私としてはたぶん次郎自身も気づいていないって感じなのかなと思いました。バッドエンドといえばバッドエンド、ハッピーエンドといえばハッピーエンドな作品。馳男の気持ちが最後まで結局は次郎なんですよ。そこがスッキリしないけど、でも、なんか良い。本来こういう作品は好みじゃないんですけど、世界で2番目に好きな人と結ばれたら案外しっくりきちゃった感覚ですかね。描き下ろしの二人のその後がそれを物語っているようでした。
とにかくキャラクターがすごく個性がはっきりしていてわかりやすかったです。
※女性との絡みシーンがあるので苦手な方は注意が必要です。
☆詩雪様☆
コメントありがとうございます!詩雪さんのツボを突けて光栄です(笑)
そうなんですよね、何か作者の世界観に飲まれるような感覚で、私も読後抜け出せなくて何回も読み返しました。
最近ちょっと変わった感じの三角関係のお話はチョコチョコ出てたりしますけど、こういったリアルな感情のものってありきたりになっちゃったりしがちなのに独自のストーリーになっている所が惹きつけられるポイントですよね。
それありますよね!わかったうえで受け入れてるハチが馳男も恐らく愛しくてたまらないはず!最後お洋服買ってって会いたかったって言うところでズキュンとやられてしまいました。
そうなんですか、あとで試してみますね!
ありがとうございました(*´∀`)