夏色初恋ダイアリー!!

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表題作バイバイ、ハックルベリー

大学1年生 小田島槙志
同大学、同学科の1年生 三輪塁

その他の収録作品

  • おやすみ、ロビンソン
  • あとがき

あらすじ

ヒカリ大学の入学式で人違いで呼びかけられたことがきっかけで、
同じ学科、同じサークルの槙志(まきし)と友達になった塁(るい)。
明るくて屈託のない塁と違って大人っぽくて思慮深い槙志を、
知れば知るほど、自分に似ているらしい「ヒカリ」の存在が気になっていった。
そんなある日、ふいに槙志にキスされる。
そのわけも問えぬまま夏休みに入り、塁は槙志と共に彼の実家の離島に向かうけれど……?

(出版社より)

作品情報

作品名
バイバイ、ハックルベリー
著者
一穂ミチ 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403523229
3.2

(52)

(11)

萌々

(9)

(22)

中立

(3)

趣味じゃない

(7)

レビュー数
11
得点
160
評価数
52
平均
3.2 / 5
神率
21.2%

レビュー投稿数11

気は合うのにまるで違う二人

予想を超えるキュン度でした。

友達親子みたいな家庭(でもそれだけじゃない)で育った塁は
素直でなんでもわりとすぐ行動に移せて
誰とでもすぐ仲良くなれるタイプ。
あっけらかんと見せておいて、その実すごくあれこれ考えるのが好ましい。
そのせいで脈絡もない言動になるのがまた愛おしい。

一方の槙志は、寂しい幼少期を送ったせいで
自分で何でもやれるし決して我を通さず
相手の言動を先読みする慎重な男。
でも全く四角張った考え方じゃない、柔軟性もあるヤツ。

「ヒカリ」という“自分の知らない槙志の特別”の存在にやきもきして
もっと槙志を知りたい、深く仲良くなりたいという気持ちが
不用意な結果を招くのがとても切なかったです。

塁が槙志の実家に行って槙志を褒めるシーン、
“どこからでもあけられます”って調味料等の小袋を例えに出すあたり
そんな表現されたらぐぅの音も出ねーよ!!って感じでした。

従姉には無遠慮なのに、気を遣われることで寂しくなるって、
なんだか少しわかります。
(これ、『is in you』の同人誌で、弓削が妹にそんな態度だったのを一束が見て
羨ましくなった、というのを思い出しました)
自分にも、どこまでも槙志の素を曝け出して欲しい、と。

槙志の母親に「ヒカリ」の事を聞いてしまって、
槙志が見せた激しい拒絶と、
その後追いかけてきてくれたけどどんな言葉も聞きたくない塁の苦しさ。
ここ何度も読んでしまうのですが、ぎゅぎゅぎゅと潰されそうになるのです。

『おやすみ、ロビンソン』では、友達でならうまくいってたのに
恋人と呼び名が変わったらやたらとちぐはぐになってしまって
「友達に戻ろうか」と言われたくなかった事を言われる塁。

自分だけの用事は一人で済まし、「付き合せると悪い」と思ってしまうのと
いるだけでも楽しいからいつも一緒に来てほしいのと
どちらの気持ちもわかるだけに考えこんでしまいました。

自分らしくいたいけどいられなくなる、
そんな相手を見たくない、という二人でも
お互い根本の「好き」の気持ちは消えない。

以前、駅で予告も無く待たれた事が好ましくなかったのに、
アパートの前で待っててくれた“塁らしい”行動力を
素直に嬉しいと思う槙志、良かった…。


作中のオセロのエピソードはいちいち的確過ぎて、
更にもちろん他の「ここ好き!」っていう箇所に二度読み時に付箋をつけたら
付箋が足りなくなって前半で断念し、
参考書だったらガリ勉くん的な文庫になってしまって
(さすがにアンダーラインは引かないけどもw)
また何度でも読み返してきゅいきゅいすると思うので『神』です!!
本当に無駄なエピソードがなにひとつとして無いもの。
やっぱりかなり摑まっちゃってるな、という自覚があります!w

8

とても、いとおしい。

こういう一穂さんの小説が読みたかったです。
比較的ごく普通の男の子が、一穂さんの言葉で生き生きと魅力的に描かれている本。

誰かがひどく傷ついたり、
辛すぎる過去を抱えていたり、
特殊な状況を描いていたりという訳ではあまりないと思うので(主観)、
物足りないという人もいそうな気がしますが、
一穂さんの文章をじっくり味わうには、自分にはこれくらいがちょうど良かったです。


明るくて屈託のない、
中高が男子校なのもあってまだ童貞で彼女がいたこともない、子供っぽさが残る塁。
一見、大人っぽくて思慮深い、でも本当は不器用で自信のなさを抱える槙志。

すごく似ていたから・・・と槙志が塁を誤って「ヒカリ」と呼び、始まるふたりの友情。

昔、槙志といつも一緒にいたという、
でも、槙志がひどいことを言って会えなくなってしまったという、ヒカリ。
槙志の親友で幼なじみだったという、ヒカリ。

槙志と塁の掛け合いから、
ふたりは波長や価値観が合って、とてもしっくりきているのだということがよく分かる。
(テンポと小気味のよさの伝わる会話がとてもステキ、さすが一穂さん!)
でも、
単に気の合う親友っていうだけならなんてことないはずなのに、
塁は「ヒカリ」の存在が気になって、自分の中に消化しきれないもやもやが広がる。
今まで自然に誰とでも仲良くやってきた塁が、
深く考え込んでしまうほどに、そうしてでもどうにかしたいほどに、槙志の存在は特別・・・
考え込むと出る塁の癖、高速のまばたき。
槙志と出会ってから初めて、槙志にも他の人にもその癖を指摘されるようになるって、
きっとそういうことなんだろう。

今まで知らなかった感情が芽生えて、
軽口をたたきながらも色んなことを考え、もがきつつ変わっていこうとする。
素直なところを残しつつ成長していく、そんな塁がいとおしい。

話はすべて塁(受け)視点。
きっと塁の何倍も、ぐるぐると考えを巡らせているであろう槙志の気持ちは、
槙志が口にしてくれないと正確には分からない。
でも再読すると、
この時はこういうことを考えていたんじゃないかな、とか、
本当はもっと伝えたかったこういう想いもあったんじゃないかな、とか、
いくらでも思い描ける槙志の気持ちがあって、何度も涙が溢れそうになりました。
言葉にされていないからこそ想像が広がって、よりリアルにふたりを感じれたように思います。

好きと伝え合ってセックスして、happy。
皆が通る幸せへの道の様な気がしていたのに、ふたりは戸惑いと不安で思ったように進めない。
たわいもない友達としての楽しいやり取りならできていたのに、
肝心なことを言葉にするのはとても難しい。

こんなこと言わない方がいい・・・そう思いつつも言葉が止められないのも、
弱い自分を分かって欲しいのに、すべてを晒すのは怖いのも、
自分もそうだった、よく分かるよ・・・と思いながら、ふたりと一緒に苦しくなりつつ、
気がつけば、自分と同じ弱点を持つ我が子を想う様な気持ち(?)で応援していました。
(親になったことはないけど、塁のお母さんとそんなに年が違わないので想像・・・w)


読めば読むほど槙志と塁への愛情がどんどん大きくなって、たまらなかったです。
きっとこんなに気持ちを込めて読めたのは、一穂さんの文章だから。
欲を言うと、その後のふたりの間での、
変っていくところと変わらないところを、もう少し読みたかったな。

でも懐かしさや、いとおしさで、心がとても温かくなりました、
この本を書いてくれた一穂さんに、感謝です。

5

久々に新鮮だった青春ラブストーリー

一穂さんは作家買いしてるはずなのにこれはなぜか読み逃していました。最近は人気お仕事シリーズのスピンオフ作品などで大人キャラの話が多いけど、本来こういう一冊完結の青春物語もお上手な方です。行ったり来たりすれ違いで色々もどかしくもキラキラしたピュアラブストーリーでした。

2人の出会いは大学の入学式。人懐っこくて愛敬のある性格の受けの塁に対し、大人びて落ち着いた雰囲気の攻めの槙志。しかし槙志は意外にも非常にデリケートな面を持っていて…というお話。キーワードになる槙志の昔の知り合い?の「ヒカリ」の存在が明かされた時には驚かされました。

2人は大学でオセロサークルに入るのですが、2人の恋愛も片方が優勢だと思っていたのに一気に展開がひっくり返ったりする所もオセロになぞらえていて上手いと思いました。大学で出会った2人が「一緒にいて楽しいな。相性最高の親友だな」と思っていたのに好きが強くなりすぎて友情が恋愛に発展してしまうというBLの王道が丁寧に描かれていてキュンキュンできます。「さよなら親友、こんにちは恋人」。だからあのタイトルなのかー。

1

タイムリー

この本の発売時期は、まさに新入学真っ盛りの4月。
実にタイムリー。

大学入学したての時に印象的な出会いをして、
普通に、友人としてつきあい始めて、
そして夏休みが終わるまでの、ほんの半年間ほどのお話。

そう、このお話の出会いが「大学」って所がポイント。
これが、中学や高校だと、そもそも恋愛って物の存在に気付くまでに時間がかかってこじれちゃうだろうし、社会人だと、青臭すぎる。
恋愛経験が全くなくても、それなりにあってもおかしくない18歳。
自由度の高くなる、時間とお金。
この絶妙な、時と場所の設定。

また、金ヒカルさんの挿絵の二人がいいの。
この、子供でも大人でもない感じ。
ぴったり。

4

オセロみたいに人の関係も白黒ハッキリしてればね

ネタバレなしで書きます。

大学生のお話です。
派手派手しさはないですが、日常系がお好きでゆったりとしたストーリーがお好きならばハマるかもしれませんよ。


槇志は離島出身で、一人暮らしの大学生。
オセロが趣味で、サークルにも入っています。
真面目であまり外で自己主張しないですが、確固たる信念のありそうなタイプ。

塁も槇志と同級生ですが、性格は正反対。
女の子にはちょっと奥手だけど、明るく素直で誰とも仲良くなれる得な人格。
視点は塁で進みます。


ふたりは大学での入学式で出会います。
槇志が『ヒカリ』と塁を間違え、声をかけてしまったのがきっかけです。
同じサークル(オセロ)に入り、度々槇志のアパートに遊びに行く。
男女だったらきっとすぐ恋人になれていたであろうほどに、育った環境はまったく違うのにお互い不思議と一緒にいて自然な存在。
おまけに夏休みには槇志の里帰りについて行き、一緒に島へ行くという密着ぶり。

はじめは『ヒカリ』を昔の友達かなにかだと思っていた塁も、槇志との中が縮まれば縮まるほど『ヒカリ』が何者なのか気になってきます。
『ヒカリ』が何者なのかは読み進めるとわかると思いますので書きませんが、某昔の名作にあったかなーという感じです。

わたしは金さんのイラストの感じがあまり好みでないために最初どうかなーと思っていたのですよ、ごめんなさい(苦笑
でも読み進めると槇志の少し感情を抑えた感じだとか、ピッタリでした。
塁の癖もすごく可愛いの、すごく好きです。
そして、オセロって意外に奥が深いのですねー。
角をとれば有利だと思ってました。
大人になってからまったくやる機会がなかったので、ビックリしました。

3

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