―混乱する、泣き出したくなる、まるで僕がアルジーを愛しているみたいに…。

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表題作スウィート・リベンジ(1)

美貌の貴族・アルジー
駆け出しの探偵・バート

その他の収録作品

  • undo―アンドゥ―

あらすじ

時は19世紀末、ロンドンで探偵をするバートは、美貌の貴族アルジーと時にベッドを共にしている。
それは法律に背く関係。
しかも、互いに別の相手を思いながらの行為に、愛はない筈だったが…。
表題作ほか、二人の取引の始まりを描く「undo―アンドゥ―」を収録。
醜聞と恐喝、毒薬、そして幽霊―英国式Forbidden Romance。

作品情報

作品名
スウィート・リベンジ(1)
著者
真瀬もと 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403520266
5

(2)

(2)

萌々

(0)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
10
評価数
2
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数2

近世英国の本格ミステリ

舞台は19世紀のロンドンで、ミステリーって作品がとても似合う時代。
加えて同性愛は法律違反の時代です。
駆け出し探偵のバートと、その探偵事務所の出資者である准男爵のアルジーのちょっとゆがんだ関係がメインですが、それにプラスして本格的なミステリというジャンルが楽しかった。

バートはアルジーが持ってきたある婦人の遺体喪失事件の謎を解くためお屋敷に出かけます。
英国のお屋敷で起こる他殺事件、幽霊に毒薬騒ぎ、晩餐を囲む一族に加えその家族の弁護士に医者が一同に介してまた事件が起きる…。
この中の誰が犯人?て感じがミステリ好きにはたまりません。
事件の真相も推理も本格的でとても楽しめました。

でもそれ以上によかったのがアルジーとバートのゆがんだ関係です。
アルジーという人物がとても歪んでいて、それがお話に甘かったり苦かったり複雑で深い味を出しています。

綺麗で賢く狡く、鬼畜ででも脆くて不安定です。
バートも過去にいろいろな傷を持ってるのですが、攻めであるアルジーのほうがとても鬱屈した過去を持ってあまりにも痛々しい。

外国語も堪能で楽器も乗馬もこなして頭も良く資産家、それも親のお金でなく自分で作った資産をもって、彼はバートのパトロンについています。

まわりからバードはなぜアルジーがついてるのかわからないと言われるたびに自分との差を感じていますが、アルジーは半分脅してバートに自分が作った探偵事務所の探偵をやらせています。
パトロンの関係だけど体の関係もある。

アルジーは、バートに好きな人がいること、昔売春をしていたことを盾にとって無理やり身体の関係を要求する、「愛してない」とか「君には興味が無い」などはっきり何度も口にだす、捜査のためなら別の男性にバートをさしだそうとする…。かなり酷いと感じます。
それだけだったら受けの気持ちを考えない冷たい攻めって感じで苦手なのですが、バートに何かあったときに垣間見るうろたえぶりとか、大事にしてるところが見えるととても萌えるんです。

バートもバートでアルジーに対する思いを認めず、たまにアルジーの行動一つ一つに揺さぶられ泣きそうになり、そんな自分に動揺し、そういうところも読んでいてせつなくてきゅんとなりました。
きっと、結ばれるには紆余曲折があるんだろうなあと予感させるカップルです。

ラストはすれ違い屋やきもきする感じで終わるので、一巻でまとまったという感じはほどんどありません。
でも事件を解決するのは事務所の出資者で頭の回転も早いあるアルジーで、バートがほとんど推理においては何もしていないのが惜しいなぁと思います^^;
間違いなくアルジーの癒しになっているとは思うのですが、次の巻ではもっと活躍してほしいと思います。

1

愛しているのは別の人

貴族のアルジーに出資してもらい、探偵事務所を開いているバート。
二人の関係は投資する人・される人というだけではなく、
夜はベッドも共にする仲なのです。

それでは「恋人同士」なのか?と問われると、それは「違います」。
なんと二人にはそれぞれ愛している人がいます。
お互いに好きになってはいけない人を好きになり、
相手へのやり場のない思いを持て余して傷つき、
その傷を舐めあうように身体を重ねている二人なのです。

お互い、別の人が好き。
二人の逢瀬はひとときの慰めであるということを、
了解済みで始まった関係でしたが。
徐々にその関係に不協和音が……

肌を合わせることによって、相手に対して生まれる「情」。
アルジーを愛しているのか?それとも愛と錯覚しているだけなのか?と、
混乱するバート。そしてアルジーもまた、複雑な思いを抱えている様子。
この葛藤と苦悩が、切なくてたまりません……!!

別に本命がいつつも、いま目の前の相手にも心を惹かれている二人。
愛なのか、遊びなのか曖昧でじれったい様子にイライラしながらも、萌えます。
アルジーが特に素直じゃなくて(素直になれない原因もあるのですが)、
バートが彼の何気ない言葉に傷つく様子が可哀想。痛々しいです。

作者は大のシャーロキアンで、この作品の主人公も「探偵」です。
探偵の元へ舞い込んだ依頼に絡めて、二人の恋も進んで行きます。
ミステリー好きにも楽しめる作品ではないかと思います。

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