翻訳家の望はべノール王国に呼ばれ、離宮に囚われている第四王子・ムスタファの無聊を慰めることを仕事として頼まれるが…!?

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作蝶宮殿の伽人

幽閉されているベノール第四王子 ムスタファ 22歳
第一王子の友人で翻訳家 羽生望 26歳

その他の収録作品

  • 蝶宮殿の魔人
  • あとがき

あらすじ

大学時代にベノール王国の第一王子・ナイルスに出会い恋をした望。翻訳家となった今も、想いを引きずったまま交流は続いていた。ある日、ベノール王国に呼ばれ、離宮に囚われている第四王子・ムスタファの無聊を慰めることを仕事として頼まれるが…!?

作品情報

作品名
蝶宮殿の伽人
著者
沙野風結子 
イラスト
稲荷家房之介 
媒体
小説
出版社
海王社
レーベル
ガッシュ文庫
発売日
ISBN
9784796404518
3.3

(16)

(3)

萌々

(3)

(8)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
52
評価数
16
平均
3.3 / 5
神率
18.8%

レビュー投稿数3

作者さんらしいユニークなアラブもの

08年にアルルノベルスから出た作者さん初アラブの新装版だそうです。
表紙が新しく稲荷屋イラスト描き下ろしで、少女を少年にしたり主人公の過去を変えたりなどの改稿と、短編【蝶宮殿の魔人】が入っています。
自分、アラブ苦手なのですが確かにお約束の様な傲慢強引俺様・媚薬等もたくさん盛り込まれています。
背景をかなり踏み込んだものにしているところが作者さんらしいオリジナルアラブになっているのではないのか?と。
だからか、苦手意識は薄まって読むことは出来たのですが、その踏み込み方がいくら話とはいえど、ここまで一介の翻訳家だった主人公が関与して踏み込んで、彼によって国が動くほどの大事が発生してしまうという点が・・・
それと、主人公がこの国に来るきっかけとなった第一王子が良く解らなくて・・・
主人公達の恋愛過程はそれだけ見るとなかなかいい感じを得るのですが、
背景自体の思いの他の壮大さに戸惑ってしまった部分はなきにしもあらず。

学生時代、恋心を抱いた友人になったベノール王国の第一王子であるナイルスの招きでベノール王国へやってきた翻訳家の望。
イスラムでは同性愛は禁止という戒律の為に、その気持ちを押し込めなくてはならなかったのですが、4年ぶりの再会は愛しく思う人にあう気持ちの期待が。
しかしナイルスは執務がいそがしくなかなか会えず、
そんな望へ依頼された仕事とは、ファラーシャマハル(蝶宮殿)に幽閉されている第四王子のムスタファの伽人ということでした。

この「伽人」という仕事がよくわからない。
話相手ということなのだが、過去にもムスタファに与えられた伽人は皆いなくなってしまっているというのです。
多分殺されたりしているのでしょうが、一体何の為にムスタファに人をよこすのか?
最初は反逆の疑いから幽閉されて、罪がないことがわかり、だがしかし彼の母親が国民に絶大な支持を得ていた為に殺せなくて幽閉しているというナイルスにとっては邪魔者。
どうして望なのか?
色々考えられるのですが確証がないんです。
同性愛現場を押さえて罪人にする?謀反の情報を得たかった?
ナイルスの片腕であるハッサンがどうも望を良く思ってなくて、彼が影で何か働きかけた?それにしては中途半端とか。
そこんところがわからなくて何だかモヤモヤしているのです。

望はナイルスを最初好きでしたが、ナイルスが上辺だけのいい人であると言うことを感じてしまい、ムスタファを知って彼に惹かれて行く。
でもナイルスも望を自分のものにはしたかったようなのですよ。
彼のほうが典型的アラブの腹黒俺様だったってことなのかな?
ナイルスが圧政を敷いているとはなっているけど、それが具体的にどうなのか、街の人の声だけじゃよくわからなかったです。
しかもあまり出て来なくてやはりキャラ的にもぼんやりしてしまうのです。

望が国が変わる為のキーパーソンになる設定は悪くはないとは思うのですが、一体何が正しくて何が良いことなのか、
彼が正しいと思った方へ加担していくのは仕方ないことですが、宗教も民族もあるそれにこんなに関与していいんだろうか?とよけいな心配を。

シリアス面はこうした色々とひっかかるものがあるのですが、主人公二人の恋愛や絡みはなかなかに興味深いシーンがあってその辺りはとても濃厚です。
最初の出会いのいきなりの乳首攻め♪そしてフェラ♪
ちょっと子供のような幼さを見せる強引な階段エッチ。
クライマックス、砂漠で望を発見したところの眼球舐めは、あれはゾゾゾっとしますよ。
そのエロというのじゃなくて、昔自分が目にゴミが入ったとき眼球を舐めてゴミをとるということをされたことがあって、あの感触を思いだして(笑)

そして【蝶宮殿の魔人】では少年ムスタファが登場します。
暗い過去を捨てて、望と前向きに生きているムスタファが蝶宮殿に残して行った過去の辛い思いが少年ムスタファとなって現れ、
それもムスタファの一部として望が受け入れるというお話なのですが・・・
これって幽霊話みたいですよね。
毎日幽霊の元へ通って生気を吸い取られて衰弱して死んじゃうっていう話。
ギリギリのところで本体ムスタファに助けられますが、これって或る意味3Pなんでは?
とかなりユニークなものでした。

4

生きる指針

新書が発売され、5年後に大幅改稿しての文庫化再販に書下ろしをプラスしたお話。
全体的に前書よりも深みが出ているような印象を受けました。
それに受けである望みの重要度が大きくなっているように感じます。

それは単なる王家兄弟の王位継承問題だけでは無くて、その後の国作りまで望の
責任の重さがより一層解るある意味怖さを感じさせます。
日本で大学生だった頃に中東から来た留学生と通訳が縁で親しくなり、
仄かな恋心まで生まれてしまった望。
しかし、1度のキスの後にナイルスの従者に告げられた王位継承第一王子の事実に
望は仄かな恋心を封印する。
そして突然の別れ、何も言わずに国へ帰ってしまったナイルス。

そして数年後に急にいなくなった経緯を聞かされ、そこからはメールのやり取りや
電話をたまにする友人関係を築くようになるが、ナイルスから頼みごとがあると言われ
国へ来て欲しいと請われるまま出向いた先で4年前には感じなかった違和感を
ナイルスに受け、しかし捨てられなかった恋心故に頼みごとを聞く事に。
それは王位継承第二位の第四王子である日本人を母に持つムスタファの伽人になること。

ただの話し相手だったのに、ムスタファから触れられ関係を持つことになり、
次第にムスタファの過去や現在の状況の理不尽さを感じ絆される事から始まり
いつしか愛しいと、助け出したいと思うようになります。
町の人の話や、ムスタファを後押しする軍人、そして極め付けナイルスの国に対する
思想は、望には到底受け入れる事が出来ないもので・・・

初恋相手の為にやって来て初恋の相手が実は冷たい人間で残酷だった、そして弟は
罪もなく閉じ込められ、頑是ない子供の様に執着され、いつしか愛が育つち、
国も神も助けてくれなかったと思っているムスタファは望の為だけに国王になり、
その事実を知った望は自分が引き金になったクーデターや、国の今後のあり方に
思い悩み苦しみ恐怖を感じながらもムスタファと分かり合えるまでを描いてます。

そして、書下ろしは立派な国王になったムスタファがいつしか望のまでもその姿を
していることに気がつき愕然とし、辛い過去を切り捨てようとしているムスタファに
過去も全て欲しいのだと、苦しみも全て共に抱えたいと訴えるお話。
そのきっかけとなるのが子供時代のムスタファの幻影なのか、過去を封印した
ムスタファの分身なのかが現れるファンタジーです。
ムスタファには見えない子供の頃のムスタファとの幻のような3Pもどきがあります。

3

なかなかの主人公

めずらしく、最初から好きな人と結ばれるのではなく好きな人のために訪れた国で好きな人のために引き受けた仕事で出会った獣ような男に同情からいつしか愛へ〜のお話しです。

正直、出てくるメインキャラはどれも好きになれなかったー!
翻訳の仕事をフリーでこなしながら大学時代に淡い想いをだいていた相手ナイルスと四年間会うことはなくともメールや電話で連絡を取り合うことだけで満足していた望はナイルスから仕事の依頼を受けナイルスが王子として君臨するベノールへ赴く。
かつての淡い気持ちや期待を胸にナイルスの元へ行く。
そこで頼まれたのは小宮殿に囚われたナイルスの弟ムスタファ。
ナイルスからムスタファを好きになる過程は自然で二人が惹かれ合うのは必然的だけどナイルスの学生時代からの様変わりした思考はなんか同情する。
かつての好きな相手なのにその辺をムスタファに説かないあたりが??となりました。
まぁナイルスは極刑はまぬがれたけど奴隷のように働かなきゃいけないとはなんともつらい刑、ナイルスとムスタファが歩みよってほしかったです。

後日談の 宮殿の魔人
こちらは、ムスタファが幼い姿で現れ望とイチャイチャするお話しです。
幼いムスタファが大人ムスタファにヤキモチをやき、望は幼いムスタファとの逢瀬を大人ムスタファに内緒にしていたりイチャイチャなお話しでした。
このラストがあるからお話がしまるなぁと思いました。

0

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP