兄上、罪をこの穢れた体で償えというのですか――。

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作罪の楽園~千夜の夢 兄弟の秘め事~

ザハタル王国の第1王子 バドル 31歳
母違いの弟の第3王子 マラーク 22歳 

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

砂漠の地、ザハタル王国の王子マラークは、天真爛漫で無垢な青年。
一方、母違いの兄バドルは異国の血がまじり肌が白く、
第一王子にもかかわらず差別されていた。
王宮でも孤立する中、ただ一人マラークだけはバドルを敬愛していた。
仲睦まじい兄弟だった──あの悲劇の夜までは。
因縁うずまく王家に隠された恐るべき真実。そして、弟の裏切りを知ったバドルは、マラークを秘密の城に閉じこめ、夜ごと陵辱するのだった。
絢爛豪華なアラブの王宮で繰り広げられる兄弟の確執愛!

(出版社より)

作品情報

作品名
罪の楽園~千夜の夢 兄弟の秘め事~
著者
丸木文華 
イラスト
相葉キョウコ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHY文庫
発売日
ISBN
9784813041153
3

(42)

(3)

萌々

(10)

(18)

中立

(7)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
11
得点
116
評価数
42
平均
3 / 5
神率
7.1%

レビュー投稿数11

とあるアラブの国の兄弟の愛憎劇

2013年刊。
発売当時にあらすじを読んで興味を持っていたものの、買う機会をずっと逃していた一冊。

異国の母の血が色濃く、肌の色の違いで周囲から冷遇されている第1王子・パドルと、母親違いでも構う事なく兄を慕う第3王子・マラーク。
マラークはパドルこそ次期王に相応しいと信じるだけでなく、神と同格のように兄を慕い、パドルのほうも純粋に好意を向けてくれる弟に信頼を寄せている。
その頃から既にパドルが向ける感情には兄弟の範疇を越えるものが滲んでいるのだが、そんな兄弟仲の行方はどうなっていくのか…

話はある日の事件を境に彼らの状況が一変し、マラークが知らずに暮らしてきた王宮内のドロドロした背景が明るみになっていく展開だ。
兄弟間の倫理の壁を一気にぶっ壊してマラークを陵辱するパドルだが、想像していた愛憎の感情以上にマラークを溺愛する恋慕にの念を強く感じた。
独特の表現での濡れ場が濃厚でなかなかエロい。
マラークも最後まで「兄上」呼びで通しているところが禁忌感を煽っている。

一族の復讐や改革を推し進めていくパドルの姿は、病で余命幾ばくもない父王の願望とも被る。
また、ガチ兄弟、一夫多妻制で女性と絡む、更に子供まで産まれるといった複数の地雷も、二転三転する流れに絡めギリギリのところで躱されている。
そういたか!!って意表を突く絶妙さだった。
生き残った脇役も、単にワルとか純朴以外にも違う一面が伺える。

アラブものとして堪能できる一方で、根底にあるのは愛憎劇だろうけれど捻りもあり、最後まで惹き付けられる展開で面白かった。

2

耽美な千夜一夜物語

丸木文華さんでアラブもの、
しかも親違いの兄×弟で監禁愛とくれば凄いドロドロを予想していましたが
意外や意外とってもラブラブで、
互いの美しさを褒め合ったり、愛を告白し合ったりするアツさに
すっかり魅入られてしまいました。
白皙×褐色の肌という組み合わせも良くて
相葉さんの挿絵の効果もあり、コントラストの美しさが伝わってきました。


あらすじとしては、
アラブの小国で、王の跡目争いに乗じてクーデターが勃発。
王位に就いた第一王子バドルは、第三王子マラークを除く親族を皆殺しにし、
マラークを妾が住む城に監禁して夜ごと陵辱する…というお話です。


マラークは、監禁される前から兄の美しさにドキドキしていて
抱かれるようになってからは禁忌に悩みつつも明らかに兄にメロメロ。
(濡れ場での「兄上…」呼びがエロかったです)
バドルも「復讐だ」等と言いつつ、マラークへの愛がダダ漏れなので、
監禁モノということを忘れてしまう位とても甘いムードが漂っていました。

また、石油収入依存や、異文化に閉鎖的な政策への批判、政治への親族や軍部の干渉など
近現代のアラブ社会を思わせるような問題もストーリーにうまく絡んでいて、
耽美やファンタジーに寄りすぎない点が良かったです。

ただ、主人公のマラークが囚われの身&甘ちゃんな性格のため、
ストーリーの根幹を占める色んな秘密・策略について
「実は〇〇だったんだよ~」と後で知らされる展開が多いのが
ちょっとワンパターンな感じはしました。
ページ数的に分厚くなってもいいので、他者視点も盛り込んで
個性的な脇役達をもっと活かしてくれても面白かったかも。

ラストは、争いを経て日常に戻った二人が
監禁生活という非日常を懐かしみ、儚い夢のような日々に思いを馳せる。
千夜一夜物語を思わせるサブタイトルがとてもしっくりくるエンディングでした。

5

比喩表現がとても美麗で、絵がとても煌びやかです。

新刊チェックで、丸木先生と相葉先生の組み合わせを目にした時から
楽しみにしていました。
確かまだ粗筋も載っていなかったと思いますが、読むまで粗筋を読まず、
特典つきのお店で予約し購入しました。


アラブ同士、またはアラブと日本人の組み合わせは在り来たりな印象があり、
どの作家さんにも限らず、興味を惹かれず面白味がないと感じているのですが、
攻めが西洋的な容姿で、受けが純粋なアラブの容姿という設定が面白くて
興味を惹かれ、早く読みたいという気持ちになりました。

物語の最後の最後になって、「まさかの死ネタ!?」と寿命が縮む思いで
ヒヤヒヤしましたが、そこは回避されていて良かったです。


あとがきによると、今回、初めてアラブものを書いたということですが、
やはり元々文章表現など土台がしっかりしているので、初めて書いたとは
思えないほど安定していて、アジアや西洋的な要素が混ざって濁ることなく
アラブの雰囲気が十分に伝わってきました。
舞台がアラブになっても、言葉の選び方や、登場人物の言葉遣いが
とても丁寧で、気品が溢れていて、気持ちよく安心して読むことが出来ました。

表紙カバーの折り返し、作者のプロフィール欄で、相葉先生のコメントには
「念願のアラブものがやっと描けた」と書いてありましたが、
特に表紙絵は相葉先生の思い入れが伝わってきて、相葉先生の今までの
作品の中でも、最も豪華絢爛な作品だと思いました。
二人の顔の表情がとても素晴らしく表現されていて、
一枚の絵画作品として飾って鑑賞したいくらいに思えました。


今回の評価は、「萌×2」と「神」で非常に迷いました。
物語の内容や展開、人物設定、挿絵など、もう何も言うことがないくらい、
不快な所が一切なく、とても素晴らしい作品です。
しかし、どんなに良くても萌えの感情が「神」評価と迷う所まで至らなかったので、
今回は少し心苦しい気もしますが、読み終えた直後の印象を優先して、
最終的に「萌×2」評価にしました。
気持ちは「神」に近い「萌×2」です。

3

温室の天使が夢から醒める時(ドロドロ)

すごく面白かったです!
神率低いのは萌えより物語優先だからだと思います。
太陽のような弟(第3王子)のマラークと、保守的な国民性を持たない第1王子のパドル。お互いを神のように信じ思い合っているのがすごく良かった。

マラークが剣術より音楽が好きと言ったことに、パドルが「俺にも才があれば」と言った時にマラークが
「兄上は兄上ご自身が美しいのだからそれで十分ではございませんか」としれっと言ってのける関係。そしてマラークが思い悩む時ほど楽器を奏でるので、音を聞けば話を聞こうと近寄ってくるパドル。

丸木先生はテーマによって文体?を変えているようですが、こちらは「忍姦」に近いような硬さがあって、王族や異国っぽさが感じられて良かったです。その中でこの二人のお互いへの賛辞は甘く艶かしさがあり塩梅が素敵でした。

王室のドロド〜ロな関係図がすごくて、何も知らず平和を甘受していたマラークは驚愕の真実に何度も打ちのめされ、宗教や慕っていた兄を疑い混乱するばかり。こういった常識や思想が覆されるお話面白くて大好きです。

丸木先生なのでエロエロだと思って読みましたが全体の半分にきてようやくといった感じで、他の作品よりはぐにゃんぐにゃんではないと思いました個人比。でも「俺のマラーク」と連呼し日常から溺愛していたパドルの箍が外れればそれはもう言葉も愛撫も尽くし狂おしく重なるのが(しかも監禁)壮絶です。
お互いの唯一神的なところや監禁、兄弟(義)などなど楽しめました。学生ものの印象があった相葉さんのゴージャス絵柄も素敵!

1

王宮と母親と家に翻弄される運命

丸木さんの初アラブ、一体どんなアラブになるんだろうと実は楽しみにしてました。
アラブって苦手なんですが、あらすじを見るとアラブの王子同士の組み合わせで、しかも丸木作品お得意の禁忌兄弟モノで、きっとアラブでそういう設定って珍しいのかな?(余り読んだことないからわからないですが)なので期待しちゃってたんですよ。

冒頭の入りは兄に喘がされる弟の描写から入ります。
これが、丸木文華さんのあの独特の淫靡な文章で表現されるので、ワクワクを誘います。
-永遠に俺の鞘になれ-
作中のエッチ描写にもそうした色々な比喩の言葉が多用されていて、エロさは十二分に堪能できます♪
いやー好きだな、こういう表現遣いってv

あらすじの通りに、周りの者がどんなに忌み嫌う存在であろうと、唯一そんな兄を慕い尊敬し続けてきた弟が、突然クーデターに加担し、失敗したことで兄の慰みものとして生かされる存在になるという話なのだが、
そこにある、そうなってしまった色々のしがらみや理由や本当の彼等の気持ちなどがあるが故のこうした展開になるというものであります。
そこには2回ターニングポイントとしてクーデターが存在しております。
そのくらいしがらみの強い国であるという設定なのです。
それはアラブであるな~と思うと共に、アラブものっていったい時代はいつ?みたいなタイムパラドックスみたいのを感じますよね。それも特徴ですよね。

第3王子のマラークはとにかくまっすぐで健気です。
西方の血が混じっているために誰からも忌み嫌われている兄バドルをずっと慕い、病気で伏せる父王の跡継ぎはこの兄しかないと思っている。
第2王子はマラークの母親の妹の息子で、彼は母親の影響でバドルは追うにふさわしくなく自分かマラークがなるべきだと思っており、散々説得しているのですがマラークは決してなびかず、むしろそれを憂いている。
それがどうして急にクーデターに加担することになったのか?
それがこの王族であるがゆえの、母親達の父王が唯一愛したバドルの母親である西方の女性への嫉妬と、家柄と、権力欲というそうしたドロドロしたものに巻き込まれた結果だったのですよ。
当人には罪はないのですが、真っ直ぐなマラークであるが故に罪の意識から自分を殺して反逆の立場に立ってしまったという、とてつもなく深いしがらみです。

またバドルはそうした嫌われる立場で、誰も擁護してくれない中、唯一自分を好いてくれ慕ってくれる弟のマラークに持つ感情がそれは成長と共に深いものになっていった。
本当は彼は王にはなるつもりはなく、優しくてまっすぐなマラークが王になればいいと思っていたのです。
それが裏切られた事で、マラークを幽閉してカラダを蹂躙することになるのですが、それは或る意味渡に船?
バドルは長年の想いを叶えることができたわけですよ。
だから酷い強姦というわけではありません。
マラークもまだ恋愛も性愛も知らない青年でしたから、ダメだと思いながらも溺れて行くし、決して愛のない行為ではないですから痛くないのです。
むしろ冒頭描写のように淫靡で甘美です。

しかしそこで話は終わりではありません。
再びドンデンが待っています。
素直すぎるマラークって或る意味周囲に流されるタイプかもしれない。
決して賢いとは思えない、ちょいアホの子かも・・・しれない?
最後のクライマックス、とうとうデッドエンドになるのか!?とちょい期待をしたのですが~まあ、これで本当の幸せはおとずれたのでしょう。

この話、主人公達の母親の他にも女性が登場しますが、女性ってしたたかで怖いです。
マラークはとても良い対比になっていたかもしれないですね。
とてもスッキリさわやかなエンドでないことは、この作家さんらしいと思います。
和モノでも見せた表現部分を舞台をアラブに変えただけで、そこにあるドロドロしたものをクローズアップして前面出ししてきたという意味ではひょっとして斬新なのでしょうか?
ちょっとラストは甘いですが、作家さんなりに工夫して独自のものをみせてくれたのでは?と思います。
イラストの相葉キョウコさんも素敵でしたよ、カラー口絵なんかドキドキしちゃいます♪

6

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP